同じ文法を含む文を何度も読むだけで、日本の高校生がその文法に気づき習得した
Aka, N. (2020). Incidental learning of a grammatical feature from reading by Japanese learners of English as a foreign language. System, 91, Article 102250 doi:10.1016/j.system.2020.102250
ひとことで言うと:to不定詞(〜すること)を含む文をたくさん読んだ高校生は、教わらなくてもその使い方を身につけた。
対象:日本の高校生157名(実験群74名・統制群83名)
なぜこの研究?
多読で単語が自然に身につくことはよく研究されてきたが、文法も読むだけで身につくのかについての研究は少ない。読むときの注意は内容の理解に向いているので、文法の形には気づかないかもしれない。この研究は、日本の高校生が、特定の文法項目を何度も含む文章を読むことで、その文法を付随的に(覚えようとしなくても自然に)学べるかを調べた。
どうやって調べた?
日本の高校生157名を、実験群(74名)と統制群(83名:比較のための、条件を変えないグループ)に分けた。どちらも5つの読み物を読んだが、実験群の読み物には「名詞として使われるto不定詞(例:To read is fun.)」を含む文が合計40文入っていたのに対し、統制群の読み物には同じ形の文が10文しか入っていなかった。読む前と後に文法テストを行い、to不定詞の名詞的用法の理解がどれだけ伸びたかを比べた。
何がわかった?
実験群は、読むことを通して名詞的用法のto不定詞に付随的に気づき、それを学んでいた。学習者は内容の理解に集中しているときでも、言語の形に注意を向けていることが示された。著者は、目標の文法項目に何度もくり返し触れることが、学習者が文法の規則に気づくきっかけになり、それが付随的な文法習得につながると結論づけている。多読で同じ文法に何度も出会うことの意味を、実験で確かめた研究といえる。統制群の読み物にも同じ文法が10文含まれていたので、比べているのは「その文法に触れた回数の違い」である。触れる回数が多いほど気づきが起こりやすいことを、条件をそろえた実験で示した点に意味がある。量のある読書が文法の学習にも役立つという考えを支える結果である。
- to不定詞の名詞的用法を多く含む文章を読んだ実験群は、その文法を付随的に学んだ
- 学習者は内容理解に集中しながらも、言語の形に注意を向けていた
- 同じ文法に何度も触れることが、規則への気づきと習得を助けると考えられる
主な数字
- 参加者:157名(実験群74名・統制群83名)
- 目標の文法を含む文:実験群40文、統制群10文(5つの読み物の中)
読むときの注意(研究の限界)
扱ったのは1つの文法項目だけで、読む量も5つの読み物と短い。本格的な多読(本を何冊も読むこと)の効果を直接調べたものではない。習得を測ったのは事後の文法テストで、長く記憶に残るか、話したり書いたりするときに使えるかまではわからない。
多読をする人・教える人へ
文法は「教わって覚える」だけでなく、同じ形に何度も出会うことで自然に気づき、身につく面がある。多読でたくさんの英文に触れることは、学校で習った文法を何度も実例で確認する機会になる。授業で文法を習った後に、その文法がたくさん出てくるやさしい本を読むと、理解が深まりやすい。多読でいろいろな文法に何度も出会うことは、文法の問題集とは違う形の「復習」になる。
今日からできること
- 授業で習った文法が多読の本に出てきたら、その文を声に出して読んでみる
- 授業では新しい文法を扱った後、その文法が多く使われている短い読み物を読ませる
確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。