授業外の多読を全学で必修に:京都の大学で約2,200名、前年の学年より読解の点が上昇
Robb, T., & Kano, M. (2013). Effective extensive reading outside the classroom: A large-scale experiment. Reading in a Foreign Language, 25(2), 234–247 doi:10.64152/10125/66870
ひとことで言うと:授業の外で本を読む課題を全学で必修にしたら、前の年の学年より読解テストの点が上がった。
対象:京都産業大学の英語非専攻の1年生(2009年度の多読必修の学年と、多読なしの2008年度の学年を比較。2009年度の対象は約2,200名)
なぜこの研究?
これまでの多読研究の多くは、授業中の活動を多読に置きかえる「置きかえ型」だった。しかし授業時間には限りがあり、多読に時間を割けない教師も多い。授業外で読ませる「上乗せ型」の多読は、生徒が本当に読んだかを確かめる手間が教師の負担になり、広がりにくかった。著者らは、この確認作業をコンピュータで自動化する仕組みを作り、大学全体で授業外の多読を必修にした効果を調べた。
どうやって調べた?
2009年度の英語非専攻の1年生全員に、授業時間外の多読を課題として課し、多読をしていなかった2008年度の1年生と比べた。両年度のカリキュラムと教員はほぼ同じで、約70名の教員がかかわった。学生が読んだかどうかは、Moodle(学習管理システム)に組み込んだ「MoodleReader」で、本ごとの短い時間制限つきクイズを受けさせて確認した(要求は5冊)。両学年は入学時のプレースメントテストの共通10問で同等と判断され、学期末の大学共通テスト(読解32問・リスニング36問)の点数を学部ごと・レベルごとに比べた。
何がわかった?
多読を必修にした2009年度の学年は、すべての学部で読解セクションの平均点が2008年度の学年を有意に上回った。3つの学部ではリスニングの点も有意に高かった。クラスのレベル別に見ると、2009年度の最も下のレベル(レベル1)の学生は2008年度のレベル3と同じくらい、2009年度のレベル3は2008年度の最上位レベル5を上回る成績だった。しかもこの結果は、1冊以上のクイズを受けた学生が約70%にとどまった状態で得られた。著者らは、上乗せ型の多読を全学規模で成功させる条件として、①管理側が全学生に多読を課すこと、②教師の負担を増やさずに読んだことを確認する方法、③手間のかからない成績評価、④図書館などによる本の一元管理、の4つを挙げている。
- 多読を必修にした学年は、全学部で読解の点が前年の学年を有意に上回った
- 3つの学部ではリスニングの点も有意に高かった
- 2009年度のレベル1は2008年度のレベル3と同程度、レベル3は前年のレベル5を上回った
- 自動クイズ(MoodleReader)で、教師の負担を増やさずに大規模な多読を実施できた
主な数字
- 2009年度の対象:約2,200名(レベル別合計2,220名)、教員約70名
- 要求冊数:5冊(クイズを1冊以上受けた学生は約70%)
- 比較に使ったテスト:読解32問(35分)・リスニング36問
読むときの注意(研究の限界)
同じ年に統制群を置いたのではなく、前年の学年と比べた研究なので、年度ごとの違いを完全には除けない。著者ら自身も、伸びは多読そのものではなく、英語に触れる時間が増えたことによる可能性があると認めている。要求は5冊と少なく、多くの学生にとっての読書量は大きくない。
多読をする人・教える人へ
授業時間を削らなくても、授業外の多読を「上乗せ」する形で全体の英語力を底上げできることを示した、日本の大学での大規模な実践例。成功のカギは、学校全体で必修にすること、読んだことの確認を自動化して教師の手間を減らすこと、図書館で本を一元管理することにある。学校で多読を広げたい人にとって具体的なモデルになる。
今日からできること
- 自習ではMReaderのような読書クイズのサイトを使い、読んだ冊数と語数を記録する
- 授業では学年全体で授業外の多読目標を決め、図書館と協力して本の貸し出しを一元化する
確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録+本文(RFL、オープンアクセス)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
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