年配の大人の学習者でも多読は効く:伸びを説明したのは「読んだ量」だけ
Renandya, W. A., Sundara Rajan, B. R., & Jacobs, G. M. (1999). Extensive Reading With Adult Learners of English as a Second Language. RELC Journal, 30(1), 39–60 doi:10.1177/003368829903000103
ひとことで言うと:大人になってから英語を学ぶ人でも多読で力が伸び、伸びの大きさを決めたのは「どれだけ読んだか」だった。
対象:英語を学ぶベトナムの政府職員(年配の成人学習者)
なぜこの研究?
多読の研究の多くは子どもや若い学生を対象にしており、年齢の高い大人の学習者でも多読がうまくいくのかはあまり調べられていなかった。また、多読で伸びる人と伸びない人の違いが、読んだ量なのか、本の面白さや難しさの感じ方なのか、多読への考え方なのかもはっきりしていなかった。この研究は、英語を学ぶベトナムの政府職員を対象に、これらの点を調べた。
どうやって調べた?
ベトナムの政府職員として英語を学んでいる年配の成人学習者のグループに、多読を取り入れたプログラムを行った。プログラムの前後で英語力を測って伸び(ゲインスコア)を求めた。さらに、多読に関する変数として、読んだ量、読んだ本をどれくらい面白いと感じたか、やさしい/難しいと感じたか、理解できたと感じたか、多読を役に立つ・楽しい活動だと感じたか、を調べた。これらのうち、どれが伸びを予測するかを重回帰分析(複数の要因の影響を同時に調べる統計手法)で分析した。
何がわかった?
結果から、年配の成人のESL学習者でも、よく計画され体系的に実施された多読プログラムから十分に恩恵を受けられることがわかった。さらに重回帰分析では、伸びの大きさを有意に予測した変数は「読んだ量」だけだった。本を面白いと感じたか、やさしいと感じたか、多読を楽しいと感じたかといった変数は、伸びを有意には予測しなかった。つまり、多読の成果を左右したのは、何よりもまず実際にどれだけ読んだかだった。大人の学習者は、子どもや学生と違って仕事などで忙しいことが多いが、それでもきちんと計画された多読は成果につながった。年齢に関係なく、多読の基本は「たくさん読むこと」だと確かめた研究である。
- 年配の成人学習者でも、計画的な多読プログラムで英語力が伸びた
- 伸びを有意に予測したのは「読んだ量」だけだった
- 本の面白さ・難しさの感じ方や、多読への好みは伸びを有意に予測しなかった
読むときの注意(研究の限界)
1つのグループの研究で、抄録からは参加人数、期間、読んだ量、英語力の測定方法を確認できない。統制群(比較のためのグループ)がない場合、伸びのすべてを多読によるものとは言えない。また、「読んだ量」が多い人はもともと意欲が高い可能性もあり、量そのものの効果と意欲の効果を完全には分けられない。
多読をする人・教える人へ
多読は子どもや学生だけのものではなく、社会人になってから英語をやり直す大人にも効果が期待できる。そして成果を左右するのは「どれだけ読んだか」なので、読書量を記録し、少しずつ増やしていくことが大切だ。教える側も、プログラムをきちんと計画し、学習者が量を確保できるよう支えることが重要になる。年齢を理由にあきらめる必要はない。
今日からできること
- 読んだ本の語数を記録し、月ごとの合計が増えているかを確認する
- 社会人向けの講座では、通勤時間などに読める短い本を多めに用意する
確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
関連する研究
授業外の多読を全学で必修に:京都の大学で約2,200名、前年の学年より読解の点が上昇
Robb, T., & Kano, M. (2013)
2009年度の対象:約2,200名(レベル別合計2,220名)、教員約70名
長期の研究2011高専で9年間の多読授業:TOEICを伸ばしたのは「やさしい本」を長く大量に読むこと
Nishizawa, H., Yoshioka, T., Ito, K., Nagaoka, M., Hiroyama, S., & Asai, H. (2011)
5年継続の専攻科1年生20名:読書量中央値87万語、TOEIC平均572点(最低470点)、2〜3年受講の学生より平均102点高い
長期の研究2007台湾の大学で3年連続の多読研究:長く続けるほど従来の授業より有利に
Lee, S.-Y. (2007)
研究の数:3年連続の3研究
実験2012日本の大学生97名を1年追跡:精読より多読のほうが読む速さが伸びた
Beglar, D., Hunt, A., & Kite, Y. (2012)
参加者:日本の大学1年生97名、期間1年