「先生、テープが速すぎます!」——初級者には聞き方の戦略より多聴を
Renandya, W. A., & Farrell, T. S. C. (2011). 'Teacher, the tape is too fast!' Extensive listening in ELT. ELT Journal, 65(1), 52–59 doi:10.1093/elt/ccq015
ひとことで言うと:英語力の低い学習者には、聞き方のコツを教えるより、易しい英語をたくさん聞かせる「多聴」がよいという提案。
対象:なし(研究や実践をもとにした論考)
なぜこの研究?
長い間、リスニング研究では、上手な聞き手が使う「聞き方の戦略」(予測する、キーワードを拾うなど)を明らかにし、それを苦手な学習者に教えることが重視されてきた。その結果、戦略を教える活動は多くのリスニング教科書に入るようになった。しかし、とくに英語力の低い学習者にとって、それが本当に効果的なのかには疑問が残っていた。
どうやって調べた?
この論文は実験ではなく、これまでの研究や教室での実践をもとに、リスニング指導のあり方を論じたものである。戦略指導がうまくいっている証拠や、教員にかかる負担を検討し、多読の考え方をリスニングにあてはめた「多聴(エクステンシブ・リスニング)」を代わりの方法として提案している。とくに、英語力の低い学習者を念頭に置いて、現在の指導の問題点と、多聴を取り入れる意味を整理している。実験の数値ではなく、議論の筋道を示すことが中心の論文である。
何がわかった?
著者らは、英語力の低い学習者に対して聞き方の戦略を教えることが成功しているという証拠は乏しく、しかも戦略指導は教員に大きな負担をかけると指摘する。そのうえで、多読と同じ考え方で、学習者が理解できる易しい英語の音声を、楽しみながら大量に聞く「多聴」を取り入れるべきだと主張している。タイトルの「テープが速すぎる」という学習者の声は、聞き取りの難しさの多くが、そもそも聞く量の不足や、音声が学習者のレベルに合っていないことから来ていることを表している。著者らは、多聴を多読と同じように授業の柱の一つとして位置づけることを勧めている。
- 英語力の低い学習者に聞き方の戦略を教える効果は、はっきり示されていない
- 戦略指導は教員の負担が大きい
- 多読と同じ考え方で、易しい音声を大量に聞く多聴を取り入れるべきだと提案した
読むときの注意(研究の限界)
新しいデータを集めた実験ではなく、著者らの考えを示した論考である。多聴の効果を示す根拠はこの論文の中では限られており、その後の研究(音声つきGraded Readersを使った多聴の実験など)とあわせて読む必要がある。
多読をする人・教える人へ
リスニングが苦手な人は、難しい音声で「コツ」を練習するより、まず自分が楽に理解できる易しい音声をたくさん聞くことから始めるとよい。Graded Readersの音声や、知っている話の朗読など、内容がわかる素材を楽しく聞き続けることが、聞く力の土台になる。教える側にとっては、多聴は特別な戦略指導の技術がなくても始められる点も利点である。
今日からできること
- すでに読んだ易しい本の音声を、通学時間などに聞き流さずに楽しんで聞く
- 授業では、教科書の難しい音声の前に、レベルに合った物語の音声を聞く時間を設ける
確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
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