実験・2016年

多聴のあとに「聞く活動」を多くこなした学生ほど、TOEICのリスニングが伸びた

Chang, A. C.-S., & Millett, S. (2016). Developing L2 Listening Fluency through Extended Listening-focused Activities in an Extensive Listening Programme. RELC Journal, 47(3), 349–362 doi:10.1177/0033688216631175

リスニング聞き読みGraded Readersテスト・資格

ひとことで言うと:音声つきの本を聞き読みしたあと、聞く練習を15回こなした学生は、TOEICのリスニングが大きく伸びた。

対象:英語を外国語として学ぶ大学生76名+統制群39名、15週間

なぜこの研究?

Graded Readersの音声を聞きながら読む「多聴」は、リスニングの流暢さ(聞いてすぐわかる力)を伸ばすことがわかってきた。しかし、聞き読みのあとに、聞くことに集中した活動をどれだけ行えば効果が上がるのか、また物語の音声で鍛えた力が、会話のような別のタイプの英語を聞く力にも広がるのかは、よくわかっていなかった。

どうやって調べた?

大学生76名が、15週間の多聴プログラムで計15冊のGraded Readersを読みながら聞いた。そのあとに行う「聞くことに集中した活動」をこなした回数によって、5回の群(30名)、10回の群(20名)、15回の群(26名)に分けた。多聴をしない統制群(比較のための群、39名)も置いた。全員に、教員が作ったテストと、本番形式のTOEICリスニング模擬テストを、プログラムの前後に行った。分析では、伸びの大きさに加えて、物語の音声で練習した力が会話形式の音声を聞く力にも広がるか(転移)も検討した。

何がわかった?

リスニングの伸びの効果量(効果の大きさを表す指標)は、5回の群ではとても小さく、10回の群では中くらい、15回の群ではとても大きかった。TOEICリスニング模擬テスト(100点換算)では、5回・10回・15回の群がそれぞれ約2点・9点・16点伸びた。さらに、物語の音声で練習した力が、会話形式のリスニングにも広がる効果(転移)が見られたのは、15回の群だけだった。著者らは、英語力の低い学習者がはっきりした伸びを得るには、もっと多くの本を読んで聞く必要があると論じている。この結果は、聞き読みの量だけでなく、その後にどれだけ「聞くこと」に集中して取り組むかが、リスニングの伸びを左右することを示している。

  • 聞き読みのあとの聞く活動を多くこなすほど、リスニングの伸びが大きかった
  • TOEICリスニング模擬テストの伸びは、活動回数が多い群ほど大きかった
  • 会話形式のリスニングにまで効果が広がったのは、最も多く取り組んだ群だけだった

主な数字

  • 参加者:5回群30名・10回群20名・15回群26名、統制群39名、15週間で15冊
  • TOEICリスニング模擬テストの伸び(100点換算):約2点・約9点・約16点

読むときの注意(研究の限界)

群は学習者自身がこなした活動の回数で分かれており、もともとやる気や力の高い学生が多くの活動をした可能性がある。そのため、伸びがすべて活動の量によるとは言い切れない。15週間で15冊と量も限られ、長期的な効果はわからない。

多読をする人・教える人へ

多聴は、ただ聞き流すだけでなく、聞いた内容を確かめたり、もう一度聞いたりする活動を重ねるほど力になる。物語の音声で鍛えた力が会話を聞く力にまで広がるには、かなりの量が必要。初級者ほど、たくさんの本を聞き読みすることが大切である。授業で多聴を取り入れるなら、聞き読みのあとの活動まで計画に入れておきたい。

今日からできること

  • 聞き読みした本の音声を、今度は文字を見ずにもう一度聞いて、どこまでわかるか確かめる
  • 授業では、多聴のあとに短い内容確認やディクテーションなど「聞くことに集中する活動」を毎回入れる

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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