日本人学習者でも「ちょうどよい聞く速さ」と「読む速さ」はほぼ同じだった
Hirai, A. (1999). The Relationship between Listening and Reading Rates of Japanese EFL Learners. The Modern Language Journal, 83(3), 367–384 doi:10.1111/0026-7902.00028
ひとことで言うと:日本人の大学生でも、理解しやすい「聞く速さ」と「読む速さ」はだいたい同じだった。ただし初級者は聞き取り自体が難しかった。
対象:英語力の異なる日本の大学生56名
なぜこの研究?
母語では、内容が易しければ、理解に最適な「聞く速さ」と大学生の「読む速さ」は同じくらいだと言われてきた。しかし、英語の音声にあまり触れていない外国語学習者でも同じなのかは疑問だった。聞く速さと読む速さの関係がわかれば、リスニングとリーディングの指導をどう結びつけるかを考える手がかりになる。この研究は、日本人の大学生を対象にこの問いを確かめた。
どうやって調べた?
英語力のレベルが異なる日本の大学生56名を対象に、それぞれの学習者が最もよく理解できる「聞く速さ」と「読む速さ」を実験で調べ、両者の関係を英語力のレベル別に検討した。ここでいう「最適な速さ」とは、内容をきちんと理解したまま、いちばん速く処理できる速さのことである。母語での先行研究と同じ考え方を、外国語として英語を学ぶ日本人に当てはめ、聞く場合と読む場合の速さを同じ学習者の中で比べたところに、この研究の特徴がある。英語力によって結果が違うかどうかを見るため、上級から初級まで幅広い学習者を含めている。
何がわかった?
外国語として英語を学ぶ日本人大学生でも、最も理解しやすい聞く速さと読む速さはほぼ同じくらいだった。つまり、ゆっくりしか読めない人は、聞く場合もゆっくりでないと理解しにくいと考えられる。一方で、英語力が低い学習者の多くはリスニングの理解そのものにかなり苦労し、そのため最適な聞く速さを推定すること自体が難しかった。著者は、こうした結果から英語の指導・学習に重要な示唆があると論じている。この結果は、リスニングの苦手さの一部が、耳の問題というより、英語を処理するスピードそのものの問題であることを示している。読む速さが上がれば、理解できる音声の速さも上がっていくと考えられ、読む練習と聞く練習を結びつけて指導する意味がある。
- 日本人学習者でも、最適な聞く速さと読む速さは似ていた
- 英語力が低い学習者の多くは、リスニングの理解そのものに大きな困難があった
- そのため、初級者については最適な聞く速さを決めること自体が難しかった
主な数字
- 参加者:日本の大学生56名
読むときの注意(研究の限界)
抄録で確認できる範囲では、速さの具体的な数値や、どんな文章・音声を使ったかの詳細は確かめられなかった。1つの大学の学生を対象にした研究で、読む速さと聞く速さが似ているからといって、片方を鍛えればもう片方が伸びるという因果関係までは示していない。
多読をする人・教える人へ
読む速さと聞いてわかる速さは連動していると考えられるので、読む速さが遅い人にとって、ナチュラルスピードの音声はついていけないのが当然である。多読・多聴では、自分が無理なく理解できる速さの音声や、聞きながら読める教材から始め、少しずつ速さを上げていくとよい。逆に、多読で読む速さを伸ばすことは、リスニングの土台づくりにもなると考えられる。
今日からできること
- 自分の読む速さ(語/分)を測り、それに近い速さの音声つき教材を選んで聞き読みする
- 授業では、初級クラスには速すぎる音声を避け、速度を落とした音声や文字つきの音声から始める
確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
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