実験・2010年

本物の小説を1冊読むと、10回以上出会った語は8割以上意味がわかるようになった

Pellicer-Sánchez, A., & Schmitt, N. (2010). Incidental vocabulary acquisition from an authentic novel: Do Things Fall Apart?. Reading in a Foreign Language, 22(1), 31–55 doi:10.64152/10125/66652

語彙読解

ひとことで言うと:英語の原書の小説を読むと、何度も出てくる知らない単語のつづりや意味がかなり身についた。

対象:スペインの上級の英語学習者20名(成人)、約1か月

なぜこの研究?

英語の本を辞書なしで読むには8,000〜9,000語(ワード・ファミリー)が必要だという計算があり、これはGraded Readersの最上級レベルをはるかに超える。こうした中頻度の単語に触れる方法の一つが、学習者向けに書き直されていない本物の本(原書)を読むことである。これまでの外国語学習者の研究では、読書で覚える単語は少ないとされてきたが、上級者が原書の小説を読んだ場合にどれだけ単語が身につくかを詳しく調べた。

どうやって調べた?

スペインの上級の英語学習者20名が、ナイジェリアの小説『崩れゆく絆(Things Fall Apart)』を約1か月かけて、楽しみのために読んだ。この小説には、学習者が誰も知らないアフリカの言葉(イボ語)が出てくるため、事前テストなしで新しく覚えた語を測れる。34語の目標語を本の中の出現回数ごとに分け、読み終えて2〜5日後に、面接形式でつづり・品詞・意味(選択して見分ける/自分で思い出す)をテストした。

何がわかった?

単語の学習は、出会った回数が増えるほど進んだ。1〜4回程度の出会いではあまり差がなく、5〜8回で目に見えて増え、10〜17回の出会いで大きく伸びた。10回以上出会った語では、意味を選んで見分けられたのが84%、つづりを見分けられたのが76%、意味を自分で思い出せたのが55%、品詞を答えられたのが63%だった。著者らは、原書の小説を読むことは語彙を伸ばす有効な方法だと結論づける一方、十分な学習には10回以上の出会いが必要なことは多読だけで語彙を増やすうえでの課題であり、意図的な単語学習を組み合わせることも勧めている。

  • 原書の小説を読むだけで、かなりの量の単語知識が身についた
  • 出会いが10回以上になると学習が大きく伸びた
  • 意味を「見分ける」ことはできても、「思い出す」ことはそれより難しかった
  • 中頻度語を増やすには、多読に意図的な学習を組み合わせるとよいと提案された

主な数字

  • 参加者:20名、目標語34語
  • 10回以上出会った語:意味を見分ける84%、つづりを見分ける76%
  • 10回以上出会った語:意味を思い出す55%、品詞63%

読むときの注意(研究の限界)

参加者は20名の上級者だけで、初級・中級者に同じ結果が出るとは限らない。目標語は物語の中で特別に目立つ外来語なので、ふつうの英単語より注意を引きやすかった可能性がある。テストは読み終えて数日以内で、長期的な記憶は調べていない。

多読をする人・教える人へ

Graded Readersを卒業した上級者にとって、原書の小説は中頻度の単語を増やすよい教材になる。ただし、ある語に10回以上出会うにはかなりの量を読む必要があるので、気になる語は読み終えてから意図的に確認するなど、多読と単語学習を組み合わせるのが現実的である。また、出会う回数が少ない語はあまり身につかないので、同じ作家やシリーズの本を続けて読み、よく出る語に何度も出会うのも有効である。

今日からできること

  • Graded Readersの上級レベルが楽に読めるようになったら、短めの原書に挑戦する
  • 何度も出てくる気になる語は、読み終えてから意味を確認してノートに残す

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録+本文(オープンアクセス)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

関連する研究