実験・2016年

視線の動きで見ると、知らない単語も8回ほど出会うと既知語のように読めるようになる

Pellicer-Sánchez, A. (2016). Incidental L2 vocabulary acquisition from and while reading: An eye-tracking study. Studies in Second Language Acquisition, 38(1), 97–130 doi:10.1017/s0272263115000224

語彙読む速さ

ひとことで言うと:物語の中の知らない単語は、3〜4回目から速く読まれるようになり、8回目には知っている単語と同じように読まれた。

対象:英語を外国語・第二言語として学ぶ学習者(比較のため英語母語話者も)

なぜこの研究?

読書が単語を覚える大切な場であることはわかってきたが、読んでいる最中に知らない単語に出会ったとき、頭の中で何が起きているのかはよくわかっていなかった。そこで、読書後の単語テスト(結果)と、読書中の目の動きを記録する「アイトラッキング」(過程)を組み合わせ、未知語の学習がどのように進むのかを調べた。目の動きは、読み手がどこでつまずいているかを知る手がかりになる。

どうやって調べた?

英語学習者に、作り語(実在しない単語)を含む物語を読ませ、その間の目の動きを記録した。作り語は物語の中で何回も出てくるようにし、何回目の出会いでどれくらいの時間その語を見ているかを調べた。読書後には、形と意味を見分けるテストと、意味を思い出すテストを行った。比較の基準として、英語母語話者にも同じ実験を行った。アイトラッキングでは、目がどの語にどれくらいの時間とどまったかを細かく記録できるため、未知語を何回目で「すらすら」読めるようになったかを調べることができる。作り語を使うことで、参加者がもともと知っていた可能性をなくしている。

何がわかった?

8回出会ったあと、学習者は作り語の形の86%、意味の75%を見分けられ、意味の55%を思い出すことができた。目の動きを見ると、3〜4回目の出会いから作り語を読む時間がはっきり短くなり、8回目には、もともと知っている本物の単語とほぼ同じように読まれていた。また、読書中にその語をじっくり長く見ていた人ほど、意味を思い出すテストの点が高いという関係もあった。母語話者でも同じような結果になったが、母語話者と学習者の違いは「最終的にどこまで覚えるか」ではなく「覚えるスピード」にあった。この研究は、単語の学習が読書中の目の動きにも表れることを示した。読書後のテストだけでは見えない「覚えていく途中の様子」をとらえた点が新しい。

  • 8回の出会いで、形の86%・意味の75%を見分けられるようになった
  • 3〜4回目から未知語を読む時間が短くなり、8回目には既知語並みになった
  • 読書中に長く注目した語ほど、意味を思い出しやすかった
  • 学習者と母語話者の違いは、覚える量より覚えるスピードにあった

主な数字

  • 8回出会ったあと:形を見分ける86%、意味を見分ける75%、意味を思い出す55%
  • 読む時間が短くなり始めた出会い:3〜4回目

読むときの注意(研究の限界)

作り語を使った実験室の研究で、実際の本の中の本物の単語とは条件が違う。抄録で確認できる範囲では、参加者の人数などの詳細は確かめていない。物語は1つで、読書の直後のテストが中心なので、長く覚えていられるかはこの研究だけではわからない。

多読をする人・教える人へ

多読中、知らない単語は最初は目が止まりやすいが、何度か出会ううちに自然とすらすら読めるようになっていく。8回前後の出会いがひとつの目安になる。読んでいて気になる語に少し注意を向けることは、覚えるうえでプラスになりうる。わからない語でいちいち止まって辞書を引かなくても、読み進めるうちに自然と理解が進むことを示す結果でもある。

今日からできること

  • 同じ本の中で何度も出てくる語は、「また出てきた」と意識しながら読む
  • 授業では、物語に何度も出てくるキーワードを読後にクラスで確認し、意味の推測を共有する

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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