実験・1998年

本を1冊まるごと読むと、5つに1つの割合で知らない単語を覚えた

Horst, M., Cobb, T., & Meara, P. (1998). Beyond a Clockwork Orange: Acquiring second language vocabulary through reading. Reading in a Foreign Language, 11(2), 207–223 doi:10.64152/10125/66953

語彙聞き読みGraded Readers大学生

ひとことで言うと:Graded Readerを1冊、先生の朗読を聞きながら読み切ると、知らない単語の約5語に1語を覚えた。

対象:オマーンの大学の英語集中コースの学生34名(初中級)、10日間

なぜこの研究?

母語話者が小説『時計じかけのオレンジ』を読むと、作中の造語をたくさん覚えたという有名な研究がある。しかし外国語学習者で同じことを試した研究では、覚えた語はわずか(12語に1語ほど)で、読む量も1時間以内と短く、方法にも問題が多かった。そこで、本1冊分という長い読書で、どれだけ単語を覚えるか、どんな単語が覚えやすいかを、よりきちんと管理した条件で調べた。

どうやって調べた?

オマーンの大学の学生34名が、トマス・ハーディ『カスターブリッジの市長』の簡略版(109ページ、21,232語)を読んだ。全員が本当に全文を読むように、教員が全文を朗読し、学生は本を目で追った(聞きながら読む形)。約1時間の授業6回、10日間で読み終えた。本は授業後に回収し、家で調べられないようにした。読書の約1週間前と後に、45語の意味を選ぶテストと、13問の語の結びつきテストを行い、語彙サイズも測った。

何がわかった?

45語のテストの平均は21.64点から26.26点に上がり、平均で約5語を新しく覚えていた。もともと知らなかった語は平均約23語だったので、その約22%、つまり約5語に1語を覚えたことになり、これまでの研究(12語に1語ほど)より高い割合だった。語どうしの結びつきの知識も少し伸びた。本の中に出てくる回数が多い語ほど覚えられやすく(相関0.49)、8回以上出てきた語では大きな伸びが安定して見られた。一方、英語全体での使用頻度が高い語ほど覚えやすい、という関係は見られなかった。語彙サイズが大きい学習者ほど多く覚える傾向もあったが、その関係は強くなかった。

  • 本1冊を読み切ると、知らなかった語のおよそ5語に1語を覚えた
  • 本の中で何度も出てくる語ほど覚えやすく、8回以上で大きな伸びが見られた
  • 英語全体でよく使われる語かどうかは、覚えやすさと関係がなかった
  • 語彙の多い学習者ほど多く覚える傾向があった(ただし弱い関係)

主な数字

  • 参加者:34名、簡略版小説 21,232語を10日間で読む
  • 45語テスト:21.64点 → 26.26点(平均約5語の伸び)
  • 覚えた割合:知らなかった語の約22%(約5語に1語)
  • 本の中の出現回数と伸びの相関:0.49

読むときの注意(研究の限界)

比較のための「読まない群」はなく、前後テストの差で伸びを見ている。教員の朗読を聞きながら読む形だったので、ふだんの黙読の多読とは条件が違う。10日後までの伸びしか測っておらず、長期的な定着はわからない。テストした語は45語に限られる。

多読をする人・教える人へ

短い文章を少し読むより、1冊を最後まで読み切るほうが単語に出会う回数が増え、覚えやすくなる。同じ語に8回以上出会えるくらいの量を読むことが目安になる。音声を聞きながら読む方法は、全文を確実に読み切る助けにもなる。一方で、1冊で覚えられるのは知らない語の一部なので、何冊も読み続けて少しずつ語彙を増やしていくという長い目で取り組むことが大切になる。

今日からできること

  • 1冊のGraded Readerを途中でやめず最後まで読み切ることを目標にする
  • 音声つきの本なら、音声に合わせて目で文字を追い、ペースを保って読み切る
  • 授業では、クラス全員で同じ本を朗読に合わせて読む「クラス読書」を短期間取り入れてみる

確認方法:Crossref(書誌)+Semantic Scholarの抄録+本文(オープンアクセスのスキャンPDFを画像で確認)。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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