実験・1991年

日本の高校生・大学生も、短い物語を楽しく読むだけで単語を覚えた

Day, R. R., Omura, C., & Hiramatsu, M. (1991). Incidental EFL vocabulary learning and reading. Reading in a Foreign Language, 7(2), 541–551 doi:10.64152/10125/67035

語彙大学生日本の研究

ひとことで言うと:約1,000語の物語を30分読んだだけで、読まなかった人より単語テストの点が高かった。

対象:日本の私立高校の生徒191名と、西日本の3大学の1・2年生397名

なぜこの研究?

子どもは母語の単語の多くを、教わるのではなく読んだり聞いたりする中で自然に覚える(偶発的学習)と考えられている。外国語でも同じことが起きると主張されていたが、とくに英語が日常で使われない国(EFL環境)の学習者について、実際に確かめた研究はほとんどなかった。そこで、日本の高校生と大学生が、楽しみのために物語を読むだけで単語を覚えるかを調べた。

どうやって調べた?

英語の推理小説風の短い物語を1,032語に短くし、登場人物を日本人にして、高校生でも30分ほどで読めるようにした。物語には、事前テストで多くの学習者が知らなかった17語が、意味を推測できる文脈で何度か出てくるようにした。高校生は個人ごとに、大学生はクラスごとに、物語を読む群と読まない群に分けた。読む群には、あとでテストがあることを知らせずに物語を読ませ、辞書は使わせなかった。読んだあと(読まない群はそのまま)、17語の意味を選ぶ多肢選択テスト(「わからない」の選択肢つき、当てずっぽうを差し引く採点)を行った。

何がわかった?

高校生でも大学生でも、物語を読んだ群のほうが、読まなかった群より単語テストの点が統計的にはっきり高かった。高校生は平均5.2点対4.1点、大学生は9.34点対6.28点(いずれも17点満点)だった。著者らは、日本の学習者も楽しみのための黙読を通して単語を偶発的に学べると結論づけた。ただし、1つの物語で1回出会っただけでは、単語が長く記憶に残るとは考えにくく、実際の多読のように同じ語に何度も、いろいろな文脈で出会うことが必要だとも述べている。そのうえで、英語の授業に楽しみのための読書をもっと取り入れるべきだと提案している。

  • 物語を読んだ群は、読まなかった群より単語テストの点が高かった(高校生・大学生とも)
  • 日本のようなEFL環境でも、読むことで単語が偶発的に身につくことが示された
  • 1回読んだだけでは長期記憶になるとは限らず、多読でくり返し出会うことが必要と考えられた

主な数字

  • 物語:1,032語、目標語17語、読む時間 約30分
  • 高校生:読んだ群92名 平均5.2点、読まない群89名 平均4.1点
  • 大学生:読んだ群200名 平均9.34点、読まない群197名 平均6.28点

読むときの注意(研究の限界)

測ったのは読んだ直後の意味の選択問題だけで、どれだけ長く覚えていられるかはわからない。目標語は実在の英単語なので、もともと少し知っていた語が含まれていた可能性もある。著者ら自身も、これは一般的な意味での多読ではなく、1つの短い物語を読んだだけの研究だと断っている。

多読をする人・教える人へ

単語は単語帳だけでなく、物語を楽しんで読む中でも少しずつ身につく。ただし1回の出会いでは足りないので、易しい本をたくさん読み、同じ単語に何度も出会うことが大切になる。授業に楽しみのための読書の時間を入れることには、語彙を育てるという点でも意味がある。日本の高校生・大学生を対象にした早い時期の研究として、日本の教室で多読を取り入れる根拠の一つにもなる。

今日からできること

  • 辞書を引かずに、わからない語は前後から推測して読み進める練習をする
  • 授業では、テストのためではなく「楽しむため」の読書時間を毎週少しでも確保する

確認方法:Crossref(書誌)+本文(オープンアクセスのスキャンPDFを画像で確認)。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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