コーパス研究・1999年

Graded Readersを週1冊ペースで読めば、新しい語にくり返し出会える

Nation, P., & Wang Ming-tzu, K. (1999). Graded readers and vocabulary. Reading in a Foreign Language, 12(2), 355–380 doi:10.64152/10125/66966

Graded Readers語彙

ひとことで言うと:Graded Readers 42冊を分析した結果、各レベルの単語を知ってから読み、週1冊くらい読めば単語に何度も出会えるとわかった。

対象:Oxford Bookworms シリーズの Graded Readers 42冊(6レベル×各7冊)

なぜこの研究?

Graded Readersは、使う単語や文法をレベルごとに制限して書かれた学習者向けの本である。多読の中心的な教材だが、そのシリーズが語彙学習にとってどれだけうまく作られているか、学習者はどのくらい読めば新しい単語に十分くり返し出会えるのかを、実際の本で調べた研究はほとんどなかった。そこで、本の中の単語を数えて、この問いに答えようとした。

どうやって調べた?

代表的なシリーズであるOxford Bookworms(6レベル、全体で2,410ワード・ファミリー)から、各レベル7冊、計42冊をコンピュータに取り込んで分析するコーパス研究を行った。各レベルの本で、どの単語がどのくらいの割合を占めるか(カバー率)、新しい語がどのくらいの密度で出てくるか、同じ語が何回くり返されるかを調べた。また、英語でよく使われる単語がシリーズ全体でカバーされているかも検討した。

何がわかった?

あるレベルの本で、本文の95%の語を知っている状態(カバー率95%)にするには、そのレベルの単語をすでに知っている必要があった。シリーズの単語の多くは、各レベルで何冊か読めばくり返し出会えるようになっており、前のレベルで出た語は後のレベルの本でもよく出てきた。新しい語を忘れる前に次の出会いがあるようにするには、およそ週に1冊のペースで読む必要があると計算された。一方、最上級レベルを読み終えても、普通の原書では10語に1語がわからない(カバー率90%)ままなので、著者らはシリーズを5,000語レベルまで伸ばし、レベル間の新出語の密度を20語に1語以下、できれば50語に1語以下にするなどの設計を提案している。

  • あるレベルを快適に読むには、そのレベルの単語をあらかじめ知っている必要がある
  • 同じレベルを何冊も読むと、そのレベルの単語にくり返し出会える
  • 新しい語を忘れないうちに再会するには、週1冊程度のペースが必要
  • 最上級レベルから原書へ移るにはまだ差があり、5,000語レベルまでのシリーズが望ましい

主な数字

  • 分析した本:42冊(6レベル×7冊)、シリーズ全体の語彙 2,410ワード・ファミリー
  • 読書の目安:週に約1冊
  • 最上級レベル後に原書を読むときのカバー率:約90%(10語に1語が未知語)
  • 提案されたレベル構成:500・700・1,000・1,500・2,000・3,000・5,000ワード・ファミリー

読むときの注意(研究の限界)

1つのシリーズ(Oxford Bookworms)だけを、語彙の面からだけ分析した研究で、話のおもしろさや文章の質は扱っていない。実際の学習者が単語を覚えたかどうかを測った実験ではなく、本の中の単語の出方からの推定である。分析は1990年代のシリーズに基づいている。

多読をする人・教える人へ

多読では、自分の語彙力に合ったレベルの本を、同じレベルで何冊も読んでから次のレベルへ進むのがよい。週1冊程度のペースを保つと、新しく出会った単語に忘れる前に再会でき、自然に定着しやすくなる。Graded Readersの最上級から原書への間には大きな差があることも知っておきたい。また、Graded Readersは単語の出会いが計算された教材なので、語彙を増やす目的でも原書よりまず優先してよい。

今日からできること

  • 1つのレベルで少なくとも数冊は読んでから、次のレベルに上がる
  • 「週に1冊」を最低ラインの目標にして、読書記録をつける
  • 授業では、各レベルの本を十分な冊数そろえ、生徒が同じレベルで何冊も選べるようにする

確認方法:Crossref(書誌)+本文(オープンアクセスのスキャンPDFを画像で確認)。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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