実験・2011年

多読にシャドーイングを加えても、1年間の読解テストの伸びに差は出なかった

Nakanishi, T., & Ueda, A. (2011). Extensive reading and the effect of shadowing. Reading in a Foreign Language, 23(1), 1–16 doi:10.64152/10125/66662

読解聞き読み大学生日本の研究

ひとことで言うと:1年間、多読だけ・多読+シャドーイング・訳読の授業を比べたが、読解テストの伸びに群による差はなかった。

対象:日本の大学1年生89名(多読のみ20名・多読+シャドーイング22名・訳読中心の統制群21名と24名)、1年間

なぜこの研究?

多読が読解力を伸ばすことは多くの研究で示されているが、ほかの活動と組み合わせると効果が高まるのかはよくわかっていなかった。シャドーイングは、聞こえた英語のすぐあとを影のように追いかけて声に出す練習で、音声の処理を速くし、新しい表現を取り込む助けになると考えられている。そこで、多読にシャドーイングを加えると読解力の伸びが大きくなるかを調べた。

どうやって調べた?

人間科学を専攻する大学1年生89名の4クラスを比べた。多読のみのクラス(20名)、多読+シャドーイングのクラス(22名)、そして文章を日本語に訳して内容問題に答える従来型の訳読クラス2つ(21名・24名)である。どの群も80分の授業を30回、1年間(2学期)受けた。読解力は、SLEP(中高生向けの英語力テスト)の読解部分で、1年の初め・1学期後・1年後の3回測り、分散分析(複数の群の平均の差を調べる統計手法)で比べた。

何がわかった?

4つの群の間で、読解テストの点数に統計的に意味のある差は見られなかった。つまり、この研究では、多読をしたクラスが訳読クラスより、あるいはシャドーイングを加えたクラスが多読だけのクラスより、読解テストで大きく伸びたとは言えなかった。一方、どの群も3回のテストの間で点数ははっきり伸びており、1年間の英語学習全体の効果は見られた。著者らは、シャドーイングについての理解を深めるとともに、カリキュラムや授業への示唆について論じている。多読の効果は読む量や期間、測るテストによって見え方が変わるため、この結果は「多読やシャドーイングに効果がない」というより、「この条件では読解テストに差が表れなかった」と読むのが適切である。

  • 多読のみ・多読+シャドーイング・訳読の群の間で、読解テストの伸びに差はなかった
  • シャドーイングを加えても、多読の効果がはっきり高まることはなかった
  • どの群も、1年間で読解テストの点数は伸びた

主な数字

  • 参加者:89名(20名・22名・21名・24名の4クラス)
  • 授業:80分×30回(1年間)
  • 読解テスト:SLEP、3回(初め・1学期後・1年後)

読むときの注意(研究の限界)

各群20名ほどのクラス単位の比較で、教員や授業の内容の違いも結果に影響しうる。読解力は1種類のテストだけで測っており、読む速さや語彙、リスニングなど多読やシャドーイングが効きやすい面は測っていない。差が出なかった理由として、期間や読書量が十分でなかった可能性もある。

多読をする人・教える人へ

多読にほかの活動を足せば必ず効果が上がるわけではない。シャドーイングはリスニングや発音には役立ちうるが、読解テストの点を上げる近道とは言えない。多読の効果を読解テストで確かめるには、十分な読書量と期間、そして読む速さなど多読が伸ばしやすい力も測ることが大切である。差が出なかった研究も、多読の効果を正しく理解するために大切な情報である。

今日からできること

  • シャドーイングは、読解力を上げる目的より、リスニングや発音の練習として取り入れる
  • 授業で多読の効果を確かめるなら、読解テストだけでなく読む速さや読んだ語数も記録する

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録+本文(オープンアクセス)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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