実験・2021年

速読・音読・多読を組み合わせた12週間で、初級の大学生の読む速さが約46語/分伸びた

Milliner, B. (2021). The Effects of Combining Timed Reading, Repeated Oral Reading, and Extensive Reading. Reading in a Foreign Language, 33(2), 191–211 doi:10.64152/10125/67400

読む速さ大学生日本の研究テスト・資格

ひとことで言うと:時間を計る速読、音読の繰り返し、多読を合わせて行うと、初級の大学生でも読む速さが大きく伸びた。

対象:日本の私立大学の初級(CEFR A2)学習者56名、12週間

なぜこの研究?

日本の大学1年生の多くは、6年間英語を学んでも英文を読むのが遅い。読む速さを伸ばす方法として、時間を計る速読(TR)、声に出して読み直す音読(ROR)、多読(ER)がそれぞれ研究されてきたが、3つを授業の中で組み合わせたときの効果や、多読の量によって伸び方が違うのかは、あまり調べられていなかった。そこで、ふだんの授業の中で実行できる形で3つを組み合わせ、その効果を確かめた。

どうやって調べた?

TOEICの平均が338点(初級)の大学生56名を対象に、12週間の授業で3つの活動を組み合わせた。週2回、易しい速読用文章で時間を計って読み(TR)、そのあとペアで文章を音読し合った(ROR)。多読はGraded Readersを使い、オンラインの読後クイズ(MReader)で読んだ語数を管理し、授業の始めに5〜10分の黙読時間も取った。前後に速読テスト(理解度75%以上を条件に、標準化した1分あたりの語数を計算)を行い、TOEICの点数の変化も見た。さらに、多読で9万5千語を超えた「よく読んだ群」(39名)とそれ以下の群(17名)を比べた。

何がわかった?

56名全体で、読む速さは平均約101語/分から約147語/分へと約46語/分伸び、効果量(効果の大きさを表す指標)もとても大きかった。多読をたくさんした群のほうが速さの伸びは平均で大きめだったが、少なかった群との差は統計的に意味のあるものではなかった。一方、TOEICのリーディングの点数は、よく読んだ群のほうがはっきり大きく伸びた。著者は、TR・ROR・ERを組み合わせることは初級者の読む速さを伸ばすのに役立ち、特に多読はリーディングやリスニングの力全体にも貢献すると考えている。3つの活動はどれも授業の一部の時間で行えるもので、ふだんの授業に組み込みやすい点も特徴である。

  • 12週間の組み合わせ授業で、読む速さが平均約46語/分伸びた
  • 多読の量が多い群と少ない群で、速さの伸びに統計的な差は出なかった
  • TOEICのリーディングは、多読をたくさんした群のほうが大きく伸びた
  • 授業中の音読(ROR)も、速さを伸ばす活動の一つとして役立つと考えられた

主な数字

  • 参加者:56名(TOEIC平均338点)
  • 読む速さ(標準化した語/分):約100.7 → 約147.1(+46)、効果量 d = 1.91
  • 多読を9万5千語より多く読んだ群:39名、少なかった群:17名
  • TOEICリーディングの伸び(中央値):よく読んだ群 +15点、少なかった群 −20点

読むときの注意(研究の限界)

比較のための「何もしない群」がないので、伸びのうちどれだけが授業の効果で、どれだけが他の授業や慣れの効果かはわからない。3つの活動を同時に行ったため、どの活動がどれだけ効いたのかも区別できない。多読の量で分けた群は、もともとやる気や力が違っていた可能性がある。

多読をする人・教える人へ

読む速さは、速読・音読・多読を組み合わせると短期間でも大きく伸びうる。速さそのものは多読の量だけでは決まらないが、多く読んだ人はテストの読解点も伸びやすい。授業では短い速読と音読で「速く読む感覚」をつかませ、授業外の多読で量を確保する二本立てが現実的。また、9万5千語程度という語数は、1学期の多読でも十分に届く目標なので、具体的な語数目標を示すと学習者が取り組みやすくなる。

今日からできること

  • 週2回、短い文章を時間を計って読み、そのあと声に出してもう一度読む
  • 多読の語数を記録して、9万〜10万語くらいを当面の目標にしてみる
  • 授業では最初の5〜10分を黙読タイムにして、多読の習慣づくりを助ける

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録+本文(オープンアクセス)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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