実験・2014年

1学期の多読で、精読クラスより読む速さが約21語/分多く伸びた

Huffman, J. (2014). Reading rate gains during a one-semester extensive reading course. Reading in a Foreign Language, 26(2), 17–33 doi:10.64152/10125/66879

読む速さ大学生日本の研究教室での実践

ひとことで言うと:1学期だけでも、多読クラスの学生は読むスピードが上がり、精読クラスはほとんど変わらなかった。

対象:日本の看護系大学の1年生66名(多読群34名・精読群32名)、1学期15週間

なぜこの研究?

多読はたくさんの「わかる英語」に触れられる方法として知られているが、効果の証拠がまだ足りないと考える教員や管理職も多い。とくに、多読が「読む速さ」を伸ばすかどうかを調べた研究は少なかった。そこで、1学期という短い期間でも、多読の授業が精読(1つの文章を細かく読み解く)の授業より読む速さを伸ばすかを確かめた。

どうやって調べた?

看護系大学の1年生(全員女性、19〜20歳)を、名前順で分けられたクラスごとに多読群34名と精読群32名に分けた。期間は15週間で、どちらも週1回90分の授業。多読群はGraded Readers(400〜3,800語レベル)を読み、授業中に時間を計って読む練習(タイムド・リーディング)も行った。精読群は従来型の精読の授業を受けた。学期の初めと終わりに、読む速さと内容理解を測るテストを両群に行い、伸びを比べた。多読群には語彙サイズテストも行った。

何がわかった?

多読群は1学期で平均約111語/分から約131語/分へと、20.73語/分速くなった。一方、精読群は平均で0.62語/分遅くなり、ほとんど伸びなかった。この差は統計的にはっきりしたもので、伸びのばらつきの約36%が「どちらのクラスにいたか」で説明できた(効果量=効果の大きさを表す指標が大きい)。しかも多読群は、速くなったからといって内容理解が下がることはなかった。ただし、多読群の中で「たくさん読んだ人ほど速くなった」という関係は確認できなかった。著者は、授業中のタイムド・リーディングが伸びを後押しした可能性も指摘している。

  • 1学期(15週)の多読で、読む速さが平均20.73語/分伸びた
  • 精読クラスは読む速さがほとんど変わらなかった(−0.62語/分)
  • 速く読めるようになっても、内容理解は下がらなかった
  • 多読群の中では、読んだ量と速さの伸びの間にはっきりした関係は見られなかった

主な数字

  • 参加者:66名(多読群34名・精読群32名)
  • 多読群:約110.6語/分 → 約131.3語/分(+20.73語/分)
  • 精読群:−0.62語/分
  • クラスの違いで説明できた伸びのばらつき:36%(イータ二乗)
  • 1週間の読書時間(自己申告):多読群 3.59時間、精読群 2.44時間

読むときの注意(研究の限界)

クラス単位で分けた準実験で、教えた教員や授業の内容も群によって違う。多読群は時間を計って読む練習もしていたので、伸びがすべて多読によるものとは言い切れない。参加者は1つの看護系大学の女子学生だけで、読んだ語数は本によって数え方がばらつくため正確な比較が難しい。

多読をする人・教える人へ

多読の効果は長い期間をかけないと出ないと思われがちだが、1学期でも読む速さには目に見える変化が出うる。易しいGraded Readersをたくさん読むことに、時間を計って読む練習を少し組み合わせると、速さを伸ばす後押しになる。読んだ量と伸びが単純に比例しないこともあるので、個人の伸びを長い目で見ることも大切。

今日からできること

  • 月に1回、同じくらいの易しさの文章で「1分あたり何語読めるか」を測って記録する
  • 授業では、多読の時間とは別に、短い文章で時間を計って読む練習を週1回入れてみる

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録+本文(オープンアクセス)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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