実験・2010年

速読コースで速くなった力は、本物の英文を読むときにもある程度生きる

Macalister, J. (2010). Speed reading courses and their effect on reading authentic texts: A preliminary investigation. Reading in a Foreign Language, 22(1), 104–116 doi:10.64152/10125/66649

読む速さ大学生教室での実践

ひとことで言うと:速読コースで練習した人は、練習用でない本物の英文でも速く読めるようになった人が多かった。

対象:ニュージーランドの大学進学準備コースの留学生36名(速読コース24名・比較クラス12名)、12週間

なぜこの研究?

速読コースは、語彙をしぼった同じ長さの文章を時間を計って読む練習で、読む速さを伸ばす活動として勧められてきた。しかし、練習用の文章で速くなっても、それは「慣れ」にすぎず、ふだん読む本物の英文(オーセンティックな文章)では速くならないのではないか、という疑問があった。そこで、速読の伸びが別の種類の文章にも移るかを小規模に調べた。

どうやって調べた?

ニュージーランドの大学の進学準備コース(12週間)の4クラスを対象にした。3クラスはコース前半に速読コースを行い、1クラスは速読コースの代わりに多読を取り入れた。全員が、速読用の文章に加えて、ジョージ・オーウェルの文章から取った3本の本物の英文を、コースの初め・速読コースの終わり・コース全体の終わりの3回に分けて読み、1分あたりの語数を記録した。最後まで記録がそろった36名を分析した。速読用の文章は語彙と長さがそろえられているのに対し、本物の英文はそうではないため、「練習の成果が本物の文章にも出るか」を確かめられる。

何がわかった?

速読コースを受けた24名は全員、速読用の文章で速くなった。ただし、コースが終わったあとも伸びを保てた人は半分ほどで、残りは伸びが止まったり下がったりした。本物の英文での結果は個人差が大きかったが、速読コースが終わった時点で初回より速く読めた人は、速読クラスでは16名(67%)だったのに対し、比較クラスでは2名(17%)にとどまった。著者は、速読コースが別の種類の文章を速く読む力にもつながる可能性があるとしつつ、規模が小さいのでさらに実験が必要だとまとめている。速読の練習が「慣れ」だけで終わるのか、本当に読む力として身につくのかを考えるうえで、参考になる結果である。

  • 速読コースを受けた24名全員が、速読用の文章で速くなった
  • 本物の英文でも、速読クラスのほうが速くなった人の割合が大きかった(67%対17%)
  • ただし個人差が大きく、コース後に伸びを保てなかった人も半数近くいた
  • 速読の伸びは「練習用文章への慣れ」だけではない可能性が示された

主な数字

  • 分析対象:36名(速読クラス24名・比較クラス12名)
  • 速読コース終了時に本物の英文で速くなった人:速読クラス 16名(67%)、比較クラス 2名(17%)

読むときの注意(研究の限界)

著者自身が「予備的な調査」と呼ぶ小規模な研究で、統計的な検定よりも人数の割合で傾向を見ている。比較クラスは多読をしていたが、教員もクラスも違うため条件はそろっていない。本物の英文は3本だけで、文章ごとの読みやすさの違いが結果に影響した可能性もある。

多読をする人・教える人へ

速読の練習は、本を読む速さにも生きる可能性がある。ただし、練習をやめると元に戻る人もいるので、短期間の集中練習で終わらせず、多読などで「速く読む状態」を続けることが大切。速読と多読を組み合わせ、易しい英文を大量に読む環境を保つとよい。なお、比較クラスが多読をしていた点から見ると、速読と多読は対立するものではなく、目的の違う活動として組み合わせるのが現実的である。

今日からできること

  • 速読の練習をしたら、ふだん読んでいるGraded Readersでも1ページの読む時間を測り、伸びが本にも出ているか確かめる
  • 授業では、速読コースのあとも多読の時間を続け、学期末にもう一度速さを測って「保てているか」を確認する

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録+本文(オープンアクセス)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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