6年間「読む・聞く」中心で英語を学んだ子どもたち:理解と会話は同等、作文は不足
Lightbown, P., Halter, R., White, J., & Horst, M. (2002). Comprehension-Based Learning: The Limits of ‘Do It Yourself’. The Canadian Modern Language Review, 58(3), 427–464 doi:10.3138/cmlr.58.3.427
ひとことで言うと:読む・聞く中心の英語学習を6年続けた子は、理解や会話では他の子と同等だったが、書く力では差がついた。
対象:小学校から理解中心(読む・聞く)の実験的なESLプログラムで学んだ子どもたちを、8年生(中学2年生にあたる)まで追跡
なぜこの研究?
著者らは以前、子どもが本を読み、聞くことを中心に英語を学ぶ「理解中心」の実験的プログラムを報告していた。4・5年生の時点では、2〜3年このプログラムで学んだ子どもは、3年間オーディオリンガル方式(パターン練習中心)で学んだ子どもと、ほとんどの測定で同等かそれ以上だった。では、このやり方を長く続けると、最終的にどこまで力がつくのか。それを確かめるため、8年生の時点で追跡調査を行った。
どうやって調べた?
理解中心のプログラムで学んだ子どもたちが8年生になった時点で、英語の力を比較群の生徒と比べた。理解中心の子どもたちは、6年間ほぼ読む・聞くだけの方法でESL(第二言語としての英語)を学んできた。測定したのは、聞いたり読んだりして理解する力、話す力(口頭での産出)のいくつかの指標、書く力(書いて表現する力)である。さらに、子どもたちの作文に見られる具体的な弱点を分析し、中等学校の生徒を対象にした追跡調査も行った。
何がわかった?
6年間ほぼ理解中心のプログラムで学んだ子どもたちは、理解力の測定と、話す力のいくつかの測定では比較群と同じくらいの成績だった。しかし、書く力の測定では比較群に及ばなかった。論文では、理解中心で学んだ子どもたちの作文に見られる特有の抜け(文法的な正確さなどのギャップ)を具体的に示している。著者らは、大量のインプットは理解力の土台として非常に有効だが、それだけ(「自分でやって」の学習)では限界があり、特に書く力を伸ばすには教師による指導や手助けが必要だと結論づけた。題名の「自分でやって(Do It Yourself)」の限界とは、この点を指している。
- 4・5年生時点では、読む・聞くだけで学んだ子どもは、オーディオリンガル方式の子どもと同等以上だった(以前の研究)
- 8年生時点でも、理解力と話す力の一部は比較群と同等だった
- 書く力では比較群に及ばなかった
- 作文に特有の弱点があり、書く力には指導の手助けが必要だと結論づけた
主な数字
- 理解中心のプログラムでの学習期間:約6年(8年生時点の追跡)
読むときの注意(研究の限界)
プログラムは教師の指導をほとんど入れない特殊な形で、ふつうの多読(授業や他の学習と組み合わせるもの)とは違う。参加者の人数や地域は抄録では確認できない。また、学校で英語を使う機会がある第二言語環境の子どもが対象なので、日本の外国語環境とは条件が異なる。
多読をする人・教える人へ
読む・聞くインプットだけでも、理解力は他の方法と同じくらい育つ。一方で、正確に書く力は、インプットだけでは十分に育ちにくい。多読を中心にしつつ、ときどき書く活動や、書いたものへのフィードバックを組み合わせるのが現実的だ。「多読だけで全部できる」と考えず、目的に合わせて足りない部分を補うとよい。教える側は、多読で理解力の土台をつくりながら、作文の指導を計画的に入れたい。
今日からできること
- 多読で読んだ本について、週1回3〜5文の感想を英語で書いてみる
- 授業では多読に加え、短い作文と、よくある間違いへのフィードバックを定期的に入れる
確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。