レビュー・1991年

「本の洪水」で第二言語を学んだ子どもは、型どおりの授業の子より速く伸びた

Elley, W. B. (1991). Acquiring Literacy in a Second Language: The Effect of Book-Based Programs. Language Learning, 41(3), 375–411 doi:10.1111/j.1467-1770.1991.tb00611.x

年少者読解教室での実践

ひとことで言うと:面白い絵本を教室にたくさん置いて読ませた子どもは、文型練習中心の授業の子より速く英語を身につけた。

対象:第二言語(主に英語)で学ぶ小学生を対象にした、複数の「ブック・フラッド(本の洪水)」研究のまとめ

なぜこの研究?

途上国などでは、小学生が母語ではない言語(英語など)で読み書きを学ぶことが多い。その授業は、文型や単語を細かく管理した教科書で、決まったパターンをくり返し練習する「オーディオリンガル方式」が中心だった。一方、子どもに面白い本を大量に与える「ブック・フラッド」の実験がいくつか行われていたが、あまり知られていなかった。Elleyはそれらの結果をまとめ、言語教育の方針に生かそうとした。

どうやって調べた?

新しい実験を1つ行ったのではなく、小学校で行われた一連のブック・フラッド研究をまとめたレビュー論文(複数の研究を整理して論じる論文)である。比べられているのは、①文型や語彙を管理した教材で練習する従来型の授業を受けた子どもたちと、②興味をひく挿絵入りの物語本を幅広く与えられ、それを読んで内容を分かち合うよう励まされた子どもたちである。目標言語の習得の速さ、本への態度、他教科や他の言語への波及などが検討されている。

何がわかった?

まとめた研究の結果は一貫していた。面白い物語本にたっぷり触れ、読んで分かち合うよう励まされた子どもたちは、管理された教材で学んだ子どもたちより速く目標言語を身につけていた。文法や語彙を厳しく管理していない本でも、意味のある文章に浸ることで、子どもは言語を「付随的に」(覚えようと意識しなくても自然に)学ぶようだ。本を好きになるという態度面の効果もあり、研究によっては他教科や他の言語にまで良い影響が広がった。Elleyはここから途上国の言語政策への提言を行い、「理解可能なインプット」(わかる言語を大量に受け取ることが習得を進めるという考え方)や「ホール・ランゲージ」(言葉を細かく分けず、本物の文章まるごとで学ぶ考え方)を支持する証拠になると論じた。

  • 物語本を大量に与えられた子どもは、オーディオリンガル型の授業の子どもより一貫して速く第二言語を習得した
  • 文法・語彙を細かく管理しない本でも、子どもは意味のある文章から言語を自然に学んでいた
  • 本に対する前向きな態度が育った
  • 一部の研究では、効果が他の教科や他の言語にも広がった

読むときの注意(研究の限界)

複数の研究を言葉で整理したレビューで、メタ分析のように効果の大きさを数字で統合したものではない。また、まとめられた研究の多くは、母語でない言語が授業の言語になっている小学校が舞台である。日本の中高生や大人が「外国語」として英語を学ぶ状況とは、英語に触れる量も目的も違うので、そのまま当てはめるときは注意がいる。

多読をする人・教える人へ

子どもの英語学習では「管理された教材で一歩ずつ」よりも「面白い本をたくさん手の届くところに置き、楽しく読む」ほうが力になることを示した古典的な研究。家庭や教室で英語の絵本・児童書をまとめてそろえ、読んで話題にする環境をつくることが大切だ。大人の多読でも「わかる英文を大量に読む」という基本を支える証拠の一つになる。

今日からできること

  • 絵の多い英語の絵本を10冊まとめて借り、表紙を見て気になったものから読む
  • 授業では教室に学級文庫を置き、読んだ本を1人一言ずつ紹介し合う時間をつくる

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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