多読の効果は見積もりすぎ?公平な比較に絞ると1学期の効果は「やや小さめ」
Hamada, A. (2020). Using Meta-Analysis and Propensity Score Methods to Assess Treatment Effects Toward Evidence-Based Practice in Extensive Reading. Frontiers in Psychology, 11, Article 617 doi:10.3389/fpsyg.2020.00617
ひとことで言うと:多読の効果は本物だが、比べ方が不公平な研究を除くと、1学期の効果は思ったより小さめだった。
対象:研究1:22の先行研究(33データ・6,806名)のメタ分析/研究2:日本の大学1年生224名(多読群109名・対照群115名)、1学期間
なぜこの研究?
これまでのメタ分析では、多読の効果は中程度とされてきた。しかし、もとの研究の多くは、多読群と比較群の力がそろっていない(もともと差がある)状態で比べていた。そうした「選択バイアス」(群の選び方のかたより)があると、効果を大きく見積もったり小さく見積もったりしてしまう。この研究は、証拠に基づく教育(エビデンス・ベースト・プラクティス)のために、多読の効果をより正確に見積もる方法を示そうとした。
どうやって調べた?
研究1では、授業の一部として多読を行い、読解力を測った22の研究(33データ、合計6,806名)を集めてメタ分析(多くの研究の結果を統計的にまとめる方法)を行った。事前テストで群の力がそろっていたかどうかによって効果がどう変わるかを調べた。研究2では、日本の大学1年生224名を対象に、1学期間授業中に英検の読み物などを使った多読をした群(109名)と、別の英語の授業を受けた群(115名)を比べた。もともとの読解力や語彙サイズなどの違いを、傾向スコア分析(似た条件の人どうしを組み合わせて公平に比べる統計手法)でそろえ、効果を推定した。
何がわかった?
研究1では、全体の効果量(差の大きさを表す指標)はd = 0.55だった。しかし、事前テストの情報がない研究は効果を大きく見積もっており(d = 0.94)、多読群と比較群の力がそろっていた研究だけで見ると、効果量はd = 0.37だった。また、1学期だけの多読では効果量はd = 0.25と小さかった。研究2では、力をそろえる前は両群の事後テストに有意な差がなかったが、傾向スコアで条件をそろえると、多読の効果量は全体でd = 0.24〜0.44、実際に多読をした学生についてはd = 0.32〜0.40となり、研究1で求めた基準とよく一致した。多読群の学生が1学期に読んだのは平均約2万5千語だった。
- 先行研究の中には、比較の公平さが不十分で効果を大きく見積もっているものがあった
- 多読群と比較群の力がそろった研究に限ると、効果量は中程度より小さめ(d = 0.37)だった
- 1学期だけの多読では、効果量は小さかった(d = 0.25)
- 日本の大学生のデータでも、条件をそろえると小〜中程度の効果が確認された
主な数字
- 研究1:22研究・33データ・6,806名、全体の効果量 d = 0.55
- 群の力がそろった研究 d = 0.37、事前テストの情報がない研究 d = 0.94、1学期の多読 d = 0.25
- 研究2:224名(多読群109名・対照群115名)、効果量 d = 0.24〜0.44
- 多読群の読書量:1学期で平均約2万5千語
読むときの注意(研究の限界)
研究2の多読は、GRなどの本ではなく英検の短い読み物を使った1学期だけのもので、読んだ量も多くない。傾向スコア分析は、測定した要因(事前の読解力など)の違いしかそろえられず、測っていない要因の影響は残る。研究1も、条件をしぼったぶん対象の研究数は多くない。
多読をする人・教える人へ
多読の効果は確かにあるが、「すぐに大きな効果が出る魔法」ではない。1学期・数万語程度では効果は小さめなので、長く続けることが大切だ。学校で多読の効果を検証するときは、比べる群の力をそろえること、そして短期間で結論を出さないことが大切だ。自習する人も、短期間の結果で一喜一憂せず、長い目で読書量を積み上げよう。
今日からできること
- 多読の効果を感じられなくても、まずは1年・数十万語を目標に続ける
- 授業で効果を検証するときは、事前テストで群の力を確かめ、学期をまたいで追跡する
確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録+本文(Frontiers、オープンアクセス)で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。
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