実験・2009年

厳しい環境でも、多読は精読と同じくらい力を伸ばし、学生の態度はずっと前向きになった

Al-Homoud, F., & Schmitt, N. (2009). Extensive reading in a challenging environment: a comparison of extensive and intensive reading approaches in Saudi Arabia. Language Teaching Research, 13(4), 383–401 doi:10.1177/1362168809341508

読む速さ語彙読解動機づけ

ひとことで言うと:読書の習慣があまりない環境・短い期間でも、多読クラスは精読クラスと同じくらい伸び、読書をずっと好きになった。

対象:サウジアラビアのカレッジの準備コース(短期間)の学生

なぜこの研究?

読書が外国語学習に役立つことを示す研究は多いが、教室の中で一定期間、多読を続けた効果を調べたものは比較的少ない。とくに、英語力が低めの学生、楽しみのために読む習慣が一般的でない環境、短い期間といった、多読にとって不利な条件でも効果が出るのかは、あまりわかっていなかった。そこで、多読に向かない条件がそろった教室で効果を確かめた。

どうやって調べた?

サウジアラビアのカレッジの準備コースで、多読を行うクラスと、精読と語彙練習を中心にした従来型のクラスを比べた。この環境は、学生の英語力が比較的低く、楽しみのための読書が一般的でなく、コースの期間も短いという点で、多読にとって「厳しい」条件だった。前後のテストで、読解力、読む速さ、語彙の伸びを比べ、読書や授業、学習への態度もアンケートで調べた。あえて多読に不利な条件の教室を選ぶことで、「多読は条件がよい場合にしか効かないのではないか」という疑問に答えようとした。

何がわかった?

読解力、読む速さ、語彙のいずれの伸びでも、多読クラスは精読クラスと同じくらいの効果を上げた。しかも、使ったテストの一部は、本来なら精読クラスのほうが有利になるはずのものだった。さらに、多読クラスの学生は、読書、授業、自分の学習に対して、精読クラスの学生よりずっと前向きな態度を示した。著者らは、調べた範囲では、多読は焦点をしぼった精読と同等か、それ以上に良い方法だとまとめている。この研究は、多読の効果が恵まれた条件の教室だけのものではないことを示した点で重要である。成績面で精読と並び、気持ちの面ではそれを上回ったという結果は、多読を取り入れる十分な理由になる。

  • 読解力・読む速さ・語彙の伸びは、多読クラスと精読クラスで同じくらいだった
  • 一部のテストは精読クラスに有利なものだったにもかかわらず、多読クラスは劣らなかった
  • 多読クラスの学生は、読書・授業・学習への態度がずっと前向きだった

読むときの注意(研究の限界)

抄録で確認できる範囲では、参加者の人数、期間の長さ、具体的な得点は確かめていない。クラス単位の比較で、教員や学生の違いが結果に影響した可能性もある。「同じくらい」という結果は、短い期間では差が出にくかったことを反映しているかもしれない。

多読をする人・教える人へ

読書習慣がない、英語が苦手、時間が短い、といった条件でも、多読を取り入れて損はない。少なくとも従来の精読と同じくらいの効果が期待でき、そのうえ学生の読書への気持ちを前向きにできる。とくに英語嫌いの学習者が多いクラスでは、態度の変化こそ多読の大きな利点になる。精読をやめる必要はないが、多読を加える価値は大きい。

今日からできること

  • 精読の授業の一部を多読の時間に置きかえ、学生の反応や読む速さの変化を記録してみる
  • 短期間の講習でも、易しい本を自由に選んで読む時間を少しでも入れてみる

確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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