なまりがあると、言い間違いを聞き手が「直して」聞いてくれやすい。483人で再確認

読む前に予想してみよう!
なまりのある人が言い間違えると、聞き手はかえって字義どおりに受け取りやすい
483人の追試では、第二言語なまりの話し手の言い間違いのほうが、聞き手は「本当はこう言いたかったはず」と意図に沿って解釈しやすかった。
- 対象
- 英語母語話者の聞き手
- 規模
- 483人
- 研究の種類
- 実験研究(先行研究の追試+拡張)
- 確かさ
- ★★★☆☆
toが抜けた変な文も、なまりのある人が言うと、聞き手は意図を汲んで解釈しやすい。2017年の発見を483人で追試し、言語障害のある話し手にも広がると確認。
ひとことで言うとなまりがあると、聞き手は言い間違いを好意的に直して聞きがち!
英語で「The mother gave the candle the daughter.」と言ってしまったとします。文字どおりに読むと「母親が、ろうそくに娘をあげた」。かなりホラーな文です。
でも聞き手はしばしば、「ああ、to が抜けたんだな。ろうそくを娘にあげたのね」と補って理解します。そしてこの「補ってあげる」働きは、話し手に外国なまりがあると強くなるらしいのです。
2026年1月、この現象を英語母語話者483人であらためて確かめた追試研究が、学術誌『Language, Cognition and Neuroscience』に発表されました。
01「誤解されることの効用」:2017年の発見
もとになったのは、ギブソンらの研究チームが2017年に発表した研究です。論文の題名は、直訳すると「誤解されることの効用をあなどるな」。
英語母語話者に文を聞かせたところ、聞き手は冒頭のようなおかしな文を、なまりのない話し手より外国なまりの話し手のときのほうが、「もっともらしい意味」で解釈しやすかったのです。3つの実験で、それぞれ再現も確かめられました。
背景にあるのが「ノイジー・チャネル」という考え方です。会話には、言い間違い・聞き間違い・雑音がつきもの。だから聞き手は、聞こえた言葉と「ありそうな意味」を頭の中で天秤にかけて、意図を推測します。ギブソンらは2013年、ノイズが多そうな場面ほど、字義どおりでない解釈が増えることを実験で示していました。
なまりのある話し手に対しては、聞き手が「言い間違いも起きやすいだろう」と見込む。その分、おかしな文を「たぶん言い間違い」と受け止めて直しやすくなる、というわけです。
02483人で追試、言語障害のある話し手にも
2017年の「なまりへの寛大さ」が再現されただけでなく、言語障害のある話し手にも同じ傾向が広がることがわかりました。著者らは、聞き手がこうした話し手に対して、字義にこだわらない別の聞き方に切り替えているのではないかと考えています。
03言葉足らずも、大目に見てもらえる
この寛大さは、文法の誤りだけの話ではないようです。
ファーチャイルドとパパフラグーの2018年の研究では、「鼻の穴が2つある鼻を持つ人もいる」のような、ちょっと言葉足らずな文を読ませました。すると、書き手が非母語話者だと思わされた場合のほうが、文の意味を高く評価したのです。
この実験は文字で読ませているので、なまりの聞き取りにくさは関係ありません。「相手は母語話者ではない」という思い込み(期待)だけで、解釈が変わることを示しています。

04どんでん返し:「直されすぎる」リスクもある
いいことばかりではありません。寛大な解釈とは、裏を返せば「この人の言葉は、文字どおりには受け取らない」ということでもあります。著者らも、この聞き方の違いが人とのやりとりに影響しうると指摘しています。
たとえば、本当に意外なことを言いたかったのに、聞き手が「言い間違いだろう」と普通の意味に直してしまうこともありえます。また、カファーラらの2018年の研究では、スペイン語の母語話者が、外国なまりで語られた「皮肉のほめ言葉」を、母語話者のときより皮肉っぽくないと受け取りました。なまりがあると、皮肉が伝わりにくくなる場合もあるのです。
ちなみに「なまりがあると話の中身まで信じてもらえない」という説は、追試で結果がそろっていません(なまりのある英語は「信じてもらえない」?)。なまりの影響は、一言で「得」とも「損」とも言えないのです。
05まとめ
なまりのある人の言い間違いは、聞き手が「たぶんこう言いたかったんだな」と好意的に直して聞いてくれやすい。この現象は、483人の追試で再確認されました。
だから、完璧な文法でなくても、英語は伝わることが多い。ただし「直されすぎる」こともあるので、ここぞという内容は言い換えて確認する。この2つをセットで覚えておけば、英語で話すのが少し楽になるはずです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf you hear "The mother gave the candle the daughter," you may not think a candle received a child.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Someone says, "The mother gave the candle the daughter." The word "to" is missing. But listeners often still understand the real meaning. Scientists in the US tested 483 native English speakers. The listeners heard sentences with mistakes like this one.
When the speaker had a foreign accent, listeners more often guessed what the speaker wanted to say. The same thing happened with speakers who have a language disorder, a problem with using language. So don't be afraid of small mistakes.
80 words ・ CEFR A2
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誰かが「The mother gave the candle the daughter.」と言ったとします。「to」という語が抜けています。でも、聞き手はそれでも本当の意味を理解することがよくあります。アメリカの科学者たちは、英語を母語とする483人を調べました。聞き手たちは、このような間違いのある文を聞きました。
話し手に外国のなまりがあると、聞き手は話し手が言いたかったことをより多く推測しました。言語障害、つまり言葉を使うことに困難がある話し手の場合にも、同じことが起こりました。だから、小さな間違いを怖がらないでください。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
間違いのある文を聞き手がどう理解するかを調べた研究の話なので A。
Q2. How many native English speakers were tested?
Scientists in the US tested 483 native English speakers. とあるので C。
Q3. In this passage, "missing" means ...
The word "to" is missing. は「to という語が抜けている」という意味。missing は「欠けている・そこにない」なので B。
If you hear "The mother gave the candle the daughter," you may not think a candle received a child. Listeners often add the missing "to" in their heads. In 2017, a research team reported that native English listeners make this kind of repair more often when the speaker has a foreign accent. They seem to expect more errors from non-native speakers, so an odd sentence is more likely to be treated as a slip.
Chen and colleagues have now retested the idea with 483 native English speakers. Listeners heard sentences and answered a question about each. The effect appeared again for speakers with a second-language accent and also for speakers with a language disorder. So listeners often work to understand what you meant, even when your grammar is not perfect.
130 words ・ CEFR B1
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「The mother gave the candle the daughter」と聞いても、ろうそくが子どもを受け取ったとは思わないかもしれない。聞き手は頭の中で、抜けている「to」を補うことが多い。2017年、ある研究チームは、話し手に外国なまりがあると、英語母語話者の聞き手がこの種の修正をより多く行うと報告した。聞き手は非母語話者からはより多くの誤りを予想するようで、そのためおかしな文が言い間違いとして扱われやすくなる。
チェンらは今回、英語母語話者483人でこの考えを検証し直した。聞き手は文を聞き、それぞれについての質問に答えた。効果は第二言語なまりのある話し手で再び現れ、言語障害のある話し手でも見られた。だから、文法が完璧でなくても、聞き手はあなたの言いたかったことを理解しようとしてくれることが多い。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
なまりや言語障害のある話し手の誤りを、聞き手が意図に沿って直しやすいという研究の話なので A。
Q2. What did the listeners in the new study do?
Listeners heard sentences and answered a question about each one. とあるので B。
Q3. Why do listeners correct odd sentences from non-native speakers more often?
They seem to expect more errors from non-native speakers, so ... とあるので C。誤りを予想しているから、おかしな文を言い間違いとして扱う。
Speech is full of small slips, and listeners are good at repairing them. Hear "The mother gave the candle the daughter" and you might assume a missing "to" instead of a strange gift. Psycholinguists explain this with the noisy-channel model.
Listeners weigh what they heard against what a speaker is likely to mean, and the more errors they expect, the more freely they correct. In 2017, researchers showed that native English listeners corrected implausible sentences more often when the speaker had a foreign accent.
Chen, Chau and Schroeder have now repeated it with 483 native speakers and added speakers with language disorders. Listeners were lenient with both groups. This cuts two ways. Learners can worry less about perfect grammar, because listeners tend to fill the gaps for them.
But a listener who expects mistakes may also "fix" something you actually meant. A 2018 study found that Spanish listeners heard ironic praise as less ironic when it was delivered in a foreign accent. The new study tested listeners with a comprehension question after each sentence, so real conversation, with context and the chance to ask again, may work differently. When your meaning is unusual or important, say it a second way.
200 words ・ CEFR B2
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話し言葉には小さな言い間違いがつきもので、聞き手はそれを直すのが得意だ。「The mother gave the candle the daughter」と聞けば、奇妙な贈り物ではなく、「to」が抜けたのだろうと考えるかもしれない。心理言語学者はこれをノイジー・チャネル・モデルで説明する。
聞き手は、聞こえたことと、話し手が言いそうなことを天秤にかけ、誤りを予想するほど自由に修正する。2017年、研究者たちは、話し手に外国なまりがあると、英語母語話者の聞き手がありそうにない文をより多く修正することを示した。
チェン、チャウ、シュローダーは今回、483人の母語話者でこれをくり返し、言語障害のある話し手を加えた。聞き手はどちらのグループにも寛大だった。これには両面がある。聞き手が隙間を埋めてくれやすいので、学習者は完璧な文法をそれほど心配しなくてよい。
しかし、誤りを予想している聞き手は、あなたが本当にそう言いたかったことまで「直して」しまうかもしれない。2018年の研究では、スペイン語の聞き手が、外国なまりで語られた皮肉のほめ言葉を、より皮肉っぽくないと受け取った。今回の研究は一文ごとに理解質問で聞き手を調べたものなので、文脈があり聞き返すこともできる実際の会話では、事情が違うかもしれない。言いたいことが意外なときや大事なときは、別の言い方でもう一度言おう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ノイジー・チャネルによる修正、なまりで修正が増えること、学習者にとっての利点とリスクを述べているので A。
Q2. What did Chen, Chau and Schroeder add to the earlier research?
added speakers with language disorders とあるので B。
Q3. According to the passage, what is one risk of lenient listening?
a listener who expects mistakes may also "fix" something you actually meant とあり、本当に言いたかったことまで直されてしまう恐れを述べているので B。
重要単語
- interpretB2動詞解釈する・意味をとるListeners interpret a sentence using what they already know.
名詞 interpretation「解釈」、interpreter「通訳者」。interpret A as B で「AをBと解釈する」。 - literalB2形容詞字義どおりの・文字どおりのThe literal meaning of the sentence made no sense.
letter(文字)と同じ語源。副詞 literally は口語で「マジで」の強調にも使われる。反対は figurative(比喩的な)。 - lenientC1形容詞寛大な・大目に見るThe teacher was lenient about small spelling mistakes.
be lenient with 人 / about 物事。反対は strict(厳しい)。論文の lenient listener は「寛大な聞き手」。 - intendedB2形容詞意図されたShe guessed the intended meaning from the context.
動詞 intend「意図する」の過去分詞。the intended meaning(意図された意味)は言語学・読解問題でよく出る組み合わせ。 - plausibleC1形容詞もっともらしい・ありそうなThat is a plausible explanation.
反対は implausible(ありそうにない)。論文では、意味がおかしい文を implausible sentence と呼んでいる。 - replicateC1動詞再現する・追試で確かめるOther scientists tried to replicate the result.
名詞 replication「追試」。a replication and extension(追試と拡張)は今回の論文タイトルにも入っている。
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「The mother gave the candle the daughter」みたいな言い間違い、なまりのある人が言うと、聞き手は「toが抜けたんだな」と意図を汲んで理解しやすいらしい。483人の追試で再確認。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Chen, Chau & Schroeder (2026) People leniently interpret sentences from second-language accented and language disordered speakers: a replication and extension, Language, Cognition and Neurosciencedoi.org
- Gibson et al. (2017) Don't Underestimate the Benefits of Being Misunderstood, Psychological Sciencedoi.org
- Gibson, Bergen & Piantadosi (2013) Rational integration of noisy evidence and prior semantic expectations in sentence interpretation, PNASdoi.org
- Fairchild & Papafragou (2018) Sins of omission are more likely to be forgiven in non-native speakers, Cognitiondoi.org
- Caffarra, Michell & Martin (2018) The impact of foreign accent on irony interpretation, PLOS ONEdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。







