なまりのある英語は「信じてもらえない」? 有名な実験と、その後の追試の結末

読む前に予想してみよう!
外国なまりの英語で話すと、内容が信じてもらえなくなることが、くり返し確かめられている
2010年の実験は有名だが、その後の追試では差が見られないことが多い。
- 対象
- 大学生・一般成人の聞き手
- 規模
- 数十〜数百人規模の実験を複数
- 研究の種類
- 実験研究(追試・事前登録追試を含む)
- 確かさ
- ★★☆☆☆
外国なまりで話された雑学は「本当らしくない」と判断された、という2010年の実験が有名。でもその後の追試では同じ結果が出ないことが多かった。
ひとことで言うとなまりで「うそっぽい」と思われる説は、まだ決着していない!
英語を話すとき、「日本人っぽい発音」が気になって話しづらい。そんな人は多いと思います。
そこに追い打ちをかけるような研究があります。外国なまりで話すと、話の内容まで信じてもらいにくくなる――2010年に発表された、とても有名な実験です。
でも、この話には続きがありました。その後の追試で、同じ結果が出ないケースが相次いだのです。
012010年:なまりで「うそっぽく」聞こえた
研究者たちは、これを処理流暢性で説明しました。なまりがあると聞き取りに少し手間がかかる。その「わかりにくさ」を、聞き手が無意識に「内容のあやしさ」と取り違えてしまう、というのです。
処理流暢性とは、情報が頭に入ってくるときの「スムーズさ」のこと。読みやすい文字で書かれた文の方が本当らしく感じられる、といった現象が知られており、なまりもその一種だと考えられたわけです。
この研究は数百回引用され、「なまり差別」を説明する代表的な研究になりました。
02ところが、追試では差が出なかった
ところが、ほかの研究者が同じような実験をくり返すと、結果は揺らぎ始めます。
スイスで約380人を対象にした研究(シュトッカー、2017年)では、なまりによる信頼度の差は見られませんでした。イタリアのロレンツォーニらの2024年の研究でも、真偽の判断にはなまりの影響が見られなかった一方で、話し手の印象(社会的な評価)は外国なまりで低めに出ました。
さらに、なまりに慣れると偏りが減るとした2021年の研究を、イギリス英語の話者を対象に事前登録してほぼそのまま追試した研究(バーロウら、2024年)でも、なまりの影響そのものが再現されませんでした。

03「偏見がない」わけではない
ここで注意したいのは、「なまりは何の影響もない」ということではない点です。
ハーバード大学のキンズラーらは2007年、乳児でさえ母語を話す人を好んで見ること、幼児はなまりのない話し手を友だちに選びやすいことを報告しています。人が話し方で相手をグループ分けする傾向は、早くから見られるのです。
つまり、「内容が信じてもらえない」効果は不安定だけれど、「話し手の印象」には影響しうる。研究の現在地は、そのあたりにあります。
04まとめ
「なまりのある英語は信じてもらえない」は、半分ホント・半分まだわからない。有名な実験はあるものの、追試ではくり返し揺らいでいます。
なまりを恥じる必要はありません。大切なのは「伝わること」。それを支えるのは、ネイティブっぽさより、わかりやすさです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerCan a foreign accent make people doubt what you say?
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
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この研究を英語で読もう
Many English learners worry about their accent. In 2010, a famous study in the US found something surprising. People heard short facts, like "Ants don't sleep." When the speaker had a foreign accent, listeners thought the facts were less true.
But later, other researchers did the same kind of test in Switzerland, Italy, and the UK. They often found no difference. So the idea is not proven. Being easy to understand is more important than sounding native.
77 words ・ CEFR A2
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多くの英語学習者は自分のなまりを気にしています。2010年、アメリカの有名な研究が驚くべきことを見つけました。人々は「アリは眠らない」のような短い雑学を聞きました。話し手に外国なまりがあると、聞き手はその雑学をあまり本当ではないと考えました。
しかしその後、ほかの研究者たちがスイス、イタリア、イギリスで同じような実験を行いました。彼らは差を見つけられないことがよくありました。ですから、この考えは証明されていません。ネイティブらしく聞こえることより、わかりやすいことのほうが大切です。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
なまりがあると雑学が「本当らしくない」と思われるかを調べた研究と、その追試の話なので B。
Q2. What happened when other researchers did the same kind of test?
They often found no difference. とあるので C。後の追試では同じ結果が出ないことが多かった。
Q3. In this passage, "proven" means ...
prove は「証明する」。not proven は「証明されていない=まだ確かとは言えない」なので D。
Can a foreign accent make people doubt what you say? In a 2010 study at the University of Chicago, native English speakers heard trivia statements such as "Ants don't sleep" and rated how true each one seemed. Native speakers and speakers with mild or heavy accents read the same sentences.
The stronger the accent, the less true the statements seemed. This happened even though listeners knew the speakers were just reading. The researchers explained this with an idea called processing fluency. Speech that is harder to process may feel less believable.
But later studies in Switzerland, Italy and the UK often failed to find the same effect. So an accent might affect how listeners see the speaker, but there is little evidence that it makes them doubt the facts.
129 words ・ CEFR B1
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外国なまりがあると、人はあなたの言うことを疑うのでしょうか。シカゴ大学で行われた2010年の研究では、英語のネイティブが「アリは眠らない」のような雑学を聞き、それぞれがどれくらい本当らしいかを評価しました。ネイティブと、軽いなまりまたは強いなまりのある話し手が、同じ文を読みました。
なまりが強いほど、文は本当らしくないと感じられました。聞き手は、話し手が文を読んでいるだけだと知っていたのに、そうなったのです。研究者はこれを「処理流暢性」という考え方で説明しました。処理しにくい話し言葉は、信じにくく感じられるのかもしれない、というのです。
しかしその後、スイス、イタリア、イギリスでの研究では、同じ効果が見つからないことがよくありました。つまり、なまりは聞き手が話し手をどう見るかに影響するかもしれませんが、内容そのものを疑わせるという証拠はほとんどないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the listeners in the 2010 study do?
rated how true each one seemed とあるので B。読み上げたのは話し手の側。
Q2. How did the researchers explain their result?
processing fluency の説明として Speech that is harder to process may feel less believable. とあるので C。
Q3. What can we infer from the last two sentences?
追試では効果が見つからないことが多く、内容を疑わせる証拠はほとんどない一方、話し手の印象は変わるかもしれない、とあるので D。「全く影響がない」とまでは言っていない。
A 2010 experiment by Lev-Ari and Keysar shaped much of the discussion about accent prejudice. Native English-speaking participants rated the truth of obscure trivia statements, such as "Ants don't sleep," read aloud by native, mildly accented, and heavily accented speakers. Statements delivered with an accent were judged less likely to be true, even though participants knew the speakers were merely reading sentences written by native speakers.
The authors attributed this to processing fluency: the extra effort needed to understand accented speech may be mistaken for doubt about the content itself. The study has been cited hundreds of times, yet its central result has proved fragile. A Swiss study of about 380 participants found no credibility difference, an Italian study in 2024 found no effect on truth judgments, and a preregistered close replication of a 2021 study, run with British English speakers, also failed to reproduce the effect. This does not mean accents are irrelevant.
The Italian study found that foreign-accented speakers received lower social ratings, and research on infants suggests that people group others by the way they speak from very early in life. For learners, the practical goal is therefore intelligibility rather than an accent-free voice.
197 words ・ CEFR B2
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レヴ=アリとケイサーによる2010年の実験は、なまりへの偏見をめぐる議論に大きな影響を与えました。英語を母語とする参加者が、「アリは眠らない」のようなあまり知られていない雑学の真偽を評価しました。文はネイティブ、軽いなまり、強いなまりの話し手によって読み上げられました。なまりのある話し方で伝えられた文は本当である可能性が低いと判断されました。
参加者は、話し手がネイティブの書いた文を読んでいるだけだと知っていたにもかかわらずです。著者たちはこれを処理流暢性によるものと考えました。なまりのある話し言葉を理解するのに余分にかかる手間が、内容そのものへの疑いと取り違えられるのかもしれない、というわけです。この研究は数百回引用されてきましたが、その中心的な結果はもろいものだとわかってきました。約380人を対象にしたスイスの研究では信頼度の差は見られず、2024年のイタリアの研究では真偽判断への影響は見られず、2021年の研究を、イギリス英語の話者を対象に事前登録してほぼそのまま追試した研究でも、なまりの効果は再現されませんでした。
とはいえ、なまりが無関係だというわけではありません。イタリアの研究では外国なまりの話し手は社会的な評価が低めに出ましたし、乳児の研究からは、人がごく幼いうちから話し方で他者をグループ分けすることがうかがえます。したがって学習者にとって現実的な目標は、なまりのない声ではなく、聞き取りやすさなのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
有名な結果は yet its central result has proved fragile とされ、一方で This does not mean accents are irrelevant と続くので A。
Q2. Which of the following was a feature of the British replication study?
a preregistered close replication of a 2021 study, run with British English speakers とあるので B。380人はスイスの研究。
Q3. Why does the author mention research on infants?
This does not mean accents are irrelevant の根拠として、人は幼い頃から話し方で他者をグループ分けする、と述べているので C。
重要単語
- accentA2名詞なまり・話し方の特徴Everyone speaks with some kind of accent.
「アクセント(強勢)」の意味もあるが、speak with an accent は「なまりがある」。have a strong / slight accent の形で頻出。 - credibilityC1名詞信頼性・信じてもらえる度合いClear explanations build credibility.
cred-(信じる)は credit・incredible と同語源。形容詞 credible「信頼できる」とセットで。 - replicationC1名詞追試・再現Replication is how science checks itself.
動詞 replicate「再現する」。fail to replicate「再現できない」は研究紹介の定番。replica(複製)も同じ語源。 - biasB2名詞偏り・偏見Hidden bias can affect our judgments.
bias against ~「~への偏見」、bias toward ~「~びいき」。前置詞で向きが変わる点に注意。 - processing fluencyC1名詞(句)処理流暢性(情報の頭への入りやすさ)Processing fluency can make statements feel true.
SLAで言う「話す fluency(流暢さ)」とは別概念で、心理学の用語。処理が楽だと「正しい・好ましい」と感じやすい現象を指す。 - intelligibilityC1名詞聞き取りやすさ・伝わりやすさIntelligibility matters more than a native-like accent.
intelligible「理解できる」の名詞形。発音指導の世界では「ネイティブらしさ」より重視される目標。
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- How You Say It(シカゴ大学 発達社会認知研究室)dsclab.uchicago.edu
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「アリは眠らない」みたいな雑学を外国なまりで読むと、ネイティブが読むより「うそっぽい」と判断された――2010年の有名な実験。ところがその後、スイスやイギリスでの追試では差が出なかったらしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Lev-Ari & Keysar (2010) Why don't we believe non-native speakers? The influence of accent on credibility. Journal of Experimental Social Psychologydoi.org
- Stocker (2017) The impact of foreign accent on credibility: An analysis of cognitive statement ratings in a Swiss context. Journal of Psycholinguistic Researchdoi.org
- Lorenzoni, Faccio & Navarrete (2024) Does foreign-accented speech affect credibility? Evidence from the illusory-truth paradigm. Journal of Cognitiondoi.org
- Barlow et al. (2024) The effects of exposure and explicit stereotypes on veracity judgments of Polish-accented English speech: A preregistered close replication. Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
- Kinzler, Dupoux & Spelke (2007) The native language of social cognition. PNASdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











