語学・英語学習ホント

英語力があっても話さない日本人。カギは"話す意欲(WTC)"と「国際的志向性」だった

英語力があっても話さない日本人。カギは"話す意欲(WTC)"と「国際的志向性」だった

読む前に予想してみよう!

英語を話そうとする意欲は、英語のテストの点数が高い人ほど必ず強い

研究カード(どんな研究?)
対象
日本の大学生・高校生
規模
160〜297人
研究の種類
構造方程式モデリングによる調査研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

英語を「話そうとする気持ち(WTC)」は英語力だけでは決まらない。日本の研究では「話せる」という自信と、世界とつながりたい「国際的志向性」が大きく関わっていた。

ひとことで言うと英語を話すかどうかは、英語力より「自信」と「世界への興味」で決まっていた!

もくじ
  1. 英語力があっても「話す」とは限らない
  2. 日本の大学生で見えた「国際的志向性」
  3. 留学中の高校生でも見えた「話す回数」と満足度
  4. まとめ

英語の授業で、先生が「何か質問ある人?」と聞く。わかっている。言いたいこともある。でも、手が挙がらない。

英語の知識はあるのに、いざとなると話さない——。日本人の英語学習者によく見られる姿です。

この「話すか・話さないか」の分かれ道を研究したのが、WTC(Willingness to Communicate:コミュニケーションしようとする意志)の研究です。日本では、関西大学の八島智子さんが中心となって研究を進めてきました。

01英語力があっても「話す」とは限らない

カナダの心理学者マッキンタイアらは1998年、外国語で話すかどうかを決める要因をピラミッド型のモデルで表しました。

ピラミッドの頂点は「実際に話す」。そのすぐ下に「その場で話そうとする意志(WTC)」があり、さらにその下に、

  • その場での自信(「今なら言えそう」)
  • 相手と話したいという気持ち
  • 性格、動機づけ、これまでの経験

などが積み重なっています。ポイントは、英語力は土台の一部にすぎないということ。英語力が高くても、自信や「話したい」気持ちが欠けていれば、ピラミッドの頂点にはたどりつきません。

02日本の大学生で見えた「国際的志向性」

つまり、「世界とつながりたい」という気持ちが、勉強の意欲を通じても、直接にも、英語を話そうとする気持ちを後押ししていたのです。

世界への興味→やる気→自信→話す意欲。一段ずつのぼる階段のように
世界への興味→やる気→自信→話す意欲。一段ずつのぼる階段のように

03留学中の高校生でも見えた「話す回数」と満足度

八島さんらは2004年、日本の高校生でも研究を行いました。

160人を調べた調査では、国際的志向性がWTCにつながり、WTCが高いほど実際に英語で話す頻度も高かった。さらに、アメリカに留学した60人の調査でも同じパターンが確認され、留学中によく話した生徒ほど、現地での人間関係に満足していたこともわかりました。

その後、世界中のWTC研究をまとめたメタ分析でも、WTCとの関連が示されている主な要因として、「自分は話せる」という感覚、不安(マイナスの関係)、動機づけの3つが取り上げられ、いずれも中程度の相関でした(最も大きかったのは「話せる」という感覚)。

04まとめ

英語を話せるかどうかは、英語力だけでは決まりません。「話せる」という自信と、世界とつながりたいという気持ちが、最後の一歩を後押ししていました。

テストの点数を上げることも大事。でも、それと同じくらい、話したい相手と話題を見つけることが、英語を「使える」力に変えてくれます。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1998, MacIntyre and his colleagues described willingness to communicate, or WTC, as a pyramid. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In 1998, MacIntyre and his colleagues described willingness to communicate, or WTC, as a pyramid. At the top is actually speaking, and just below it is the willingness to speak at that moment. Under that are confidence, the desire to talk with someone, personality and past experience. English ability is only one part of the base.

In 2002, Tomoko Yashima studied 297 Japanese university students. She introduced the idea of 'international posture', an interest in foreign countries and in people from other cultures. International posture increased motivation, which led to confidence in speaking English, and this confidence raised WTC. So feeling ready matters as much as knowing English.

108 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1998年、マッキンタイアらは、話す意欲(WTC)をピラミッドとして表しました。頂点は実際に話すことで、そのすぐ下に、その瞬間に話そうとする意欲があります。その下には、自信、誰かと話したいという気持ち、性格、これまでの経験があります。英語力は土台の一部にすぎません。

2002年、八島智子さんは日本の大学生297人を調べました。彼女は「国際的志向性」という考え、つまり外国や異文化の人々への関心という考えを導入しました。国際的志向性はやる気を高め、やる気は英語を話す自信につながり、その自信がWTCを高めていました。ですから、話す準備ができていると感じることは、英語を知っていることと同じくらい大切なのです。

4択リーディングクイズ

Q1. In MacIntyre's pyramid, what is at the top?

Q2. What is "international posture"?

Q3. Which student is most likely to have high WTC?

重要単語

  • willingness to communicateC1
    名詞(句)話す意欲(WTC)Willingness to communicate grows with confidence. be willing to do「~する気がある」の名詞形。reluctant(気が進まない)が反対の意味で出る。
  • international postureC1
    名詞(句)国際的志向性(世界への関心や態度)Her international posture made her want to study abroad. posture は「姿勢、態度」。八島智子氏が提唱した、日本の英語学習を説明する概念。
  • self-confidenceB2
    名詞自信Small successes build self-confidence. 形容詞は self-confident / confident。lack confidence「自信がない」。
  • perceived competenceC1
    名詞(句)自分で感じる能力(できるという感覚)Perceived competence can decide whether you speak up. perceived は「(本人に)認識された」。実際の能力(actual competence)と区別する。
  • anxietyB2
    名詞不安Anxiety can stop you from speaking. 形容詞 anxious。be anxious about ~「~を心配する」と be anxious to do「~したがる」の意味の違いが頻出。
  • study abroadB1
    名詞(句)留学Study abroad gave him more chances to talk. 動詞句 study abroad「留学する」。abroad は副詞なので go to abroad は誤り(go abroad が正しい)。
  • engage withB2
    熟語~と関わる、~に取り組むShe wants to engage with people from other cultures. engage in ~「~に従事する」との前置詞の違いに注意。名詞 engagement。

動画でもっと知る

英語の知識はあるのに、いざとなると話せない。この悩みを研究者・八島智子さんたちは「WTC(話す意欲)」から調べた。カギは英語力そのものより、「話せる」という自信と、世界とつながりたいという気持ちだったらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. MacIntyre et al. (1998) Conceptualizing Willingness to Communicate in a L2: A Situational Model of L2 Confidence and Affiliation, The Modern Language Journaldoi.org
  2. Yashima (2002) Willingness to Communicate in a Second Language: The Japanese EFL Context, The Modern Language Journaldoi.org
  3. Yashima, Zenuk-Nishide & Shimizu (2004) The Influence of Attitudes and Affect on Willingness to Communicate and Second Language Communication, Language Learningdoi.org
  4. Elahi Shirvan et al. (2019) A Meta-analysis of L2 Willingness to Communicate and Its Three High-Evidence Correlates, Journal of Psycholinguistic Researchdoi.org