発音指導は本当に効く? 86本のメタ分析は「効く」、でも"会話の発音"は別問題だった

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発音指導の効果は、自由に話すテストより、音読のような統制されたテストのほうが大きく出やすい
メタ分析では、統制された測り方ほど効果が大きく、自由な発話での効果ははっきりしないと報告されている。
- 対象
- 第二言語の学習者(さまざまな国・年齢)
- 規模
- 86本の研究報告
- 研究の種類
- メタ分析
- 確かさ
- ★★★★☆
発音指導の効果は86本の研究のメタ分析で「大」。ただし伸びが見えやすいのは音読など統制されたテストで、自由な会話での効果はまだはっきりしない。
ひとことで言うと発音の練習はちゃんと効く! でも、会話で使えるようになるには一手間いるよ。
「発音は子どものうちにやらないと手遅れ」「大人になったら、なまりは直らない」。英語の発音について、こんな"あきらめの言葉"を聞いたことはありませんか。
では、大人や中高生が発音の授業を受けたら、実際どれくらい変わるのか。世界中の研究をまとめて調べた答えは、「かなり効く」でした。
ただし、そこには大きな"ただし書き"があります。伸びがはっきり見えたのは、主に音読のような「準備できるテスト」の上だったのです。
0186本をまとめたら、効果は「大」
「大人だからもう無理」というのは、少なくとも研究のデータとは合いません。指導を受ければ、発音はちゃんと動くのです。
ポイントは②のフィードバック。「今の音はここが違う」と教えてもらえる指導のほうが、効果が大きい傾向があった、ということです。
02ところが…テストの多くは「音読」だった
同じ年、Thomson と Derwing は75本の発音研究を一つずつ読み込み、その中身を整理しました(ナラティブ・レビュー)。
見えてきたのは、研究の偏りです。
- 伸びを測る方法で一番多かったのは音読
- 自由に話す場面で測った研究はごくわずか
- 目標が「ネイティブらしさ」になっている研究が多い
- 比べる対照グループがない研究もある
音読なら、学習者は発音に注意を向ける余裕があります。でも実際の会話では、「何を言うか」で頭がいっぱい。準備できる場面でできることが、会話でもできるとは限らないのです。

03測り方を変えると、効果の見え方も変わる
この問題を正面から調べたのが、Saito と Plonsky の研究(2019年)です。77本の研究で使われたテストを、「特定の音か、全体の印象か」「人が聞くか、機械で測るか」「統制された課題か、自由な発話か」で分類し直しました。
結果、特定の音を、意識して発音できる場面では指導の効果がはっきり出る一方、自由な発話を人が全体的に評価すると、効果は「まだよくわからない」レベルにとどまりました。
日本人を対象にした研究もあります。英語圏で学ぶ日本人20人を2グループに分け、/f/ /v/ /θ/ /l/ など英語特有の子音・母音を4時間指導した実験では、文を読む課題でのわかりやすさは上がったものの、なまりの強さははっきりとは減らなかったと報告されています(Saito, 2011)。
一方で、希望の持てる結果も。中国の大学生90人を18週間追った研究では、強勢やリズム、イントネーション(超分節的な要素)を中心に教わったグループだけが、自由な発話でもわかりやすさが伸び、その効果が後のテストでも残っていました(Zhang & Yuan, 2020)。
04まとめ
発音指導は、しっかり効きます。「大人だから手遅れ」とあきらめる必要はありません。
ただ、音読でうまく言えることと、会話で自然に使えることの間には、まだ距離があります。ねらいをしぼって、直してもらいながら、最後は"自由に話す場面"まで持っていく。この三段階を意識すると、練習が会話につながりやすくなるはずです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAdults are commonly told that they cannot improve their pronunciation, but research disagrees.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
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この研究を英語で読もう
Many people think adults cannot change their English pronunciation. Research says this is not true. Scientists looked at 86 studies about pronunciation lessons, and the lessons worked very well. They helped more when they were long and when teachers corrected the students.
But many tests asked students to read sentences aloud. When students spoke freely, the changes were harder to see. So practice your sounds with help, and then try to use them when you talk.
76 words ・ CEFR A2
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多くの人は、大人は英語の発音を変えられないと考えています。研究によると、これは本当ではありません。科学者たちが発音の授業に関する86本の研究を調べたところ、授業はとてもよく効いていました。授業が長いときや、先生が生徒の発音を直したときに、より役立ちました。
しかし、多くのテストは生徒に文を音読させるものでした。生徒が自由に話したときには、変化は見えにくくなりました。ですから、助けを借りて音を練習し、それから話すときに使ってみましょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
発音の授業が効くかどうかを、86本の研究をもとに説明している文章なので B。
Q2. When did the lessons help more?
They helped more when they were long and when teachers corrected the students とあるので C。
Q3. What does "freely" mean in "When students spoke freely"?
音読(read sentences aloud)と対比されているので、原稿なしで自分の言葉で話すという意味。正解は B。
Adults are commonly told that they cannot improve their pronunciation, but research disagrees. In 2015, a team of applied linguists combined the results of 86 studies on pronunciation teaching and found a large average effect. Lessons worked better when they lasted longer, when learners received feedback, and when tests were controlled, such as reading sentences aloud.
However, another review of 75 studies pointed out that very few researchers measured spontaneous speech. In one experiment, 20 Japanese learners became easier to understand when reading sentences after only four hours of lessons, but their accent did not clearly become weaker. This shows that being understood and sounding like a native speaker are different goals. Learners should practice target sounds with feedback and then use them in free conversation.
126 words ・ CEFR B1
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大人は発音を上達させられないとよく言われますが、研究の結果はそれに反しています。2015年、応用言語学者のチームが発音指導に関する86本の研究の結果をまとめ、平均して大きな効果を見つけました。授業は、期間が長いとき、学習者がフィードバックを受けたとき、そして文の音読のような統制されたテストのときに、より効果を発揮しました。
しかし、75本の研究を調べた別のレビューは、自由な発話を測った研究者はごくわずかだと指摘しました。ある実験では、20人の日本人学習者がわずか4時間の授業の後、文を読むときにわかりやすくなりましたが、なまりははっきりとは弱まりませんでした。これは、理解してもらうこととネイティブのように聞こえることが別の目標であることを示しています。学習者はフィードバックを受けながら目標の音を練習し、それから自由な会話で使うべきです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 2015 study find?
combined the results of 86 studies ... and found a large average effect とあるので B。
Q2. What problem did the review of 75 studies point out?
very few researchers measured spontaneous speech とあるので A。
Q3. What can we infer from the Japanese learners' results?
わかりやすさは上がったが、なまりははっきり弱まらなかった。つまりなまりが残っても伝わりやすくはなれる、と推論できるので C。
Adult pronunciation is often said to be fixed for life, but the research says otherwise. A 2015 meta-analysis of 86 reports found that pronunciation instruction produced a large average effect, with stronger gains for longer programs, for treatments that included feedback, and for controlled outcome measures. That last point, however, deserves attention.
A narrative review of 75 studies published the same year showed that reading aloud was the most common way of measuring progress, while spontaneous speech was rarely tested. When Saito and Plonsky later reclassified the measures used in 77 studies, instruction appeared most effective when learners could carefully monitor specific sounds, whereas gains in free speech judged holistically by listeners were not clearly shown.
Individual studies point in a similar direction. Twenty Japanese learners who received four hours of instruction on difficult consonants and vowels became more comprehensible when reading sentences, yet their perceived accent did not significantly decrease. In contrast, Chinese university students taught stress, rhythm and intonation for 18 weeks improved in spontaneous speech as well. Pronunciation teaching works, but carrying the gains over into real conversation takes deliberate practice beyond the script.
187 words ・ CEFR B2
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大人の発音は一生変わらないとよく言われますが、研究はそうではないことを示しています。86本の報告を対象にした2015年のメタ分析は、発音指導が平均して大きな効果を生むことを示し、期間の長いプログラム、フィードバックを含む指導、統制された成果の測り方で、伸びがより大きくなっていました。しかし、最後の点には注意が必要です。
同じ年に発表された75本の研究のナラティブ・レビューは、伸びを測る最も一般的な方法が音読であり、自由な発話はめったにテストされていないことを示しました。後にSaitoとPlonskyが77本の研究で使われた測定法を分類し直したところ、指導は学習者が特定の音を注意深くモニターできる場合に最も効果的に見える一方、聞き手が全体的に判断する自由な発話での向上ははっきりとは示されませんでした。
個々の研究も同じような方向を示しています。難しい子音と母音について4時間の指導を受けた20人の日本人学習者は、文を読むときにはわかりやすくなりましたが、聞き手が感じるなまりは有意には減りませんでした。対照的に、強勢・リズム・イントネーションを18週間教わった中国の大学生は、自由な発話でも伸びました。発音指導は効果がありますが、その成果を実際の会話に持ち越すには、原稿を超えた意図的な練習が必要です。
4択リーディングクイズ
Q1. Why does the author say the "last point" deserves attention?
統制されたテストで効果が大きいという点の後に、自由な発話はめったに測られていないと続くので、実際の会話より効果が大きく見えている可能性を示唆している。正解は A。
Q2. Which group improved in spontaneous speech?
Chinese university students taught stress, rhythm and intonation for 18 weeks improved in spontaneous speech as well とあるので B。
Q3. What is the author's main conclusion?
最終文で、指導が失敗するのではなく、会話への持ち越しには原稿を超えた練習が必要だと述べているので C。
重要単語
- pronunciationB1名詞発音Her pronunciation improved after the course.
動詞は pronounce(発音する)。つづりは pronoun- ではなく pronun- になる点に注意。入試のつづり問題でも定番。 - comprehensibleB2形容詞理解できる・わかりやすいHis English became more comprehensible to listeners.
comprehend(理解する)+-ible(〜できる)。名詞 comprehensibility は発音研究で「聞き手にとってのわかりやすさ」を表す専門語。 - accentB1名詞なまり・アクセントYou can have an accent and still be easy to understand.
日本語の「アクセント(強く読む場所)」の意味もあるが、英語では「話し方のなまり」の意味でよく使う。 - feedbackB1名詞フィードバック(評価・指摘の返し)Feedback from a teacher helps you notice your mistakes.
不可算名詞。give / receive feedback on ~ の形で使う。 - spontaneousC1形容詞自発的な・準備なしのSpontaneous speech is harder to control than reading aloud.
副詞 spontaneously。spontaneous speech は「台本なしの発話」。 - intonationB2名詞イントネーション(声の上げ下げ)Intonation shows whether you are asking a question.
stress(強勢)・rhythm(リズム)とあわせて suprasegmental features(超分節的特徴)と呼ばれる。 - transferB2名詞・動詞転移(学んだことを別の場面に持ち越すこと)・移すSkills learned in class do not always transfer to real life.
学習研究では「ある場面で学んだことが別の場面でも使えること」を指す重要語。
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「大人になってから発音は直らない」は研究的にはあやしい。86本の研究をまとめると、発音指導の効果はかなり大きかった。ただし伸びたのは主に“音読テスト”の上。自由な会話で使える発音にするには、もう一段の練習が要るらしい。
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- Lee, Jang & Plonsky (2015) The Effectiveness of Second Language Pronunciation Instruction: A Meta-Analysis, Applied Linguisticsdoi.org
- Thomson & Derwing (2015) The Effectiveness of L2 Pronunciation Instruction: A Narrative Review, Applied Linguisticsdoi.org
- Saito & Plonsky (2019) Effects of Second Language Pronunciation Teaching Revisited: A Proposed Measurement Framework and Meta-Analysis, Language Learningdoi.org
- Saito (2011) Examining the role of explicit phonetic instruction in native-like and comprehensible pronunciation development, Language Awarenessdoi.org
- Zhang & Yuan (2020) Examining the effects of explicit pronunciation instruction on the development of L2 pronunciation, Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。







