語学・英語学習ホント

中1で習う「三単現のs」、なぜ上級者でも言い忘れる? 文法には"身につく順番"があった

中1で習う「三単現のs」、なぜ上級者でも言い忘れる? 文法には"身につく順番"があった

読む前に予想してみよう!

三単現の-sは中学1年で習う簡単なルールなので、英語の文法の中でも早く身につく

研究カード(どんな研究?)
対象
英語を第二言語とする子ども・大人
規模
12研究・924人のメタ分析ほか
研究の種類
横断研究+メタ分析+レビュー
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

三単現の-sは「ルールは簡単なのに身につくのが最も遅い」文法の代表。目立たない・意味の情報が少ない・日本語にない、の三重苦が原因と考えられている。

ひとことで言うと三単現のsは、わかっていても口から出にくい「最後のボス」だった!

もくじ
  1. 文法には「自然な習得順序」がある
  2. なぜ三単現の-sは遅いのか?
  3. 日本語話者には「母語の影響」もプラスされる
  4. 「知っている」と「使える」は別物
  5. まとめ

He play tennis every Sunday.

テストなら一瞬で「-sが抜けてる!」と気づくのに、会話になると自分も言ってしまう。三単現(三人称・単数・現在形)の-sです。

中学1年で習う、ルールとしては英文法の中でもトップクラスに簡単なもの。それなのに、英語がかなり話せる人でもよく抜けます。

実はこれ、あなたの注意力のせいではありません。研究によると、文法には「身につく順番」があり、三単現の-sはかなり後のほうなのです。

01文法には「自然な習得順序」がある

1970年代、アメリカの研究者デュレイとバートは、英語を学ぶスペイン語話者や中国語話者の子どもたちの話し言葉を調べました。

すると、母語が違っても、-ing(進行形)や複数形の-sなどは早めに、三単現の-sなどは遅めに正しく使えるようになる、というよく似た順番が見られたのです。これは「自然な習得順序」と呼ばれ、大きな話題になりました。

02なぜ三単現の-sは遅いのか?

三単現の-sをこれに当てはめると、

  • 目立たない:「プレイズ」の「ズ」は短く、会話では聞き逃しやすい
  • 意味の情報が少ない:主語の He を見れば三人称単数だとわかるので、-sはなくても意味が通じる
  • 考えることが多い:人称・数・時制の3つを同時に考えないと付けられない

と、不利な条件がそろっています。

小さくて目立たず、なくても意味が通じる。だから脳がつい見逃してしまう
小さくて目立たず、なくても意味が通じる。だから脳がつい見逃してしまう

03日本語話者には「母語の影響」もプラスされる

さらに、母語の影響もあります。ルクと白井恭弘は2009年、日本語・韓国語・中国語・スペイン語を母語とする学習者の研究を見直しました。

すると、日本語・韓国語・中国語の話者は、おおむね複数形の-sや冠詞の習得が「自然な順序」の予想より遅い一方、所有格の's(Tom's)は早いことがわかりました。母語に似たしくみがあるかどうかで、順番が前後していたのです。日本語には、動詞を主語に合わせて変える仕組みがありません。

04「知っている」と「使える」は別物

上級者の-s抜けには、もう一つ理由があります。中国語話者の英語学習者を調べた研究では、文を読むとき、数を表す語尾(-s)の誤りにはほとんど反応しないのに、ほかの種類の誤りには反応していました。

ルールを「知っている」ことと、リアルタイムの処理で自動的に使えることは、別の能力なのです。

05まとめ

三単現の-sが抜けるのは、あなたがダメだからではありません。目立たない・意味が少ない・日本語にない——多くの英語学習者にとっての「ラスボス」だからです。

「知っている」を「使える」に変えていくには、くり返しの練習が役に立ちます。今日から「She likes」を口ぐせにしてみませんか。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThird person singular -s, as in 'He plays', is taught in the first year of junior high school, but even… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Third person singular -s, as in 'He plays', is taught in the first year of junior high school, but even advanced learners often drop it when speaking. In the 1970s, Dulay and Burt studied children learning English and found a similar order of acquisition regardless of their first language. Forms like -ing came early, while third person -s came late.

In 2001, a meta-analysis of 12 studies with 924 learners showed that this order could largely be explained by five factors, including how easy a form is to hear and how often it appears. The -s is hard to hear, adds little meaning, and requires thinking about person, number and tense at the same time.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「He plays」のような三人称単数の -s は中学1年で習いますが、上級の学習者でさえ、話すときにはよく落としてしまいます。1970年代、デュレイとバートは英語を学ぶ子どもたちを調べ、母語に関係なく似た習得の順番があることを見つけました。-ing のような形は早く、三単現の -s は遅く身についたのです。

2001年、12の研究・924人の学習者をまとめたメタ分析は、この順番は、形の聞き取りやすさや出てくる頻度を含む5つの要因で大部分が説明できることを示しました。-s は聞き取りにくく、意味をほとんど足さず、人称・数・時制を同時に考える必要があるのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Dulay and Burt find?

Q2. How many learners were included in the 2001 meta-analysis?

Q3. Why might advanced learners still drop the -s when speaking?

重要単語

  • morphemeC1
    名詞形態素(意味を持つ最小の単位。-sや-edなど)The -ed in "played" is a morpheme. morph(形)+-eme(単位)。phoneme(音素)と並ぶ言語学の基本用語。
  • third person singularB1
    名詞(句)三人称単数"She" is third person singular. first person(一人称 I/we)、second person(二人称 you)とセットで。singular ⇔ plural(複数)。
  • acquisition orderC1
    名詞(句)習得順序Researchers studied the acquisition order of grammar. natural order(自然な順序)とも言う。acquisition は acquire の名詞形。
  • salienceC1
    名詞目立ちやすさThe -s ending has low salience in speech. 形容詞 salient(目立つ、顕著な)。salient feature「顕著な特徴」は難関大の長文で見かける。
  • redundantC1
    形容詞余分な・なくても意味が通じるThe -s is redundant because "he" already shows the subject. 「(人員が)余剰の、解雇された」の意味もある。名詞 redundancy。
  • transferB2
    名詞・動詞(母語からの)転移/移すL1 transfer affects how we learn English. 母語が学習を助ける positive transfer と、邪魔する negative transfer(干渉)がある。
  • notoriouslyC1
    副詞(悪い意味で)よく知られているようにEnglish spelling is notoriously difficult. 形容詞 notorious(悪名高い)。famous(良い意味で有名)との違いが語彙問題で狙われる。

4コマでわかる

中1で習う「三単現のs」、なぜ上級者でも言い忘れる? 文法には"身につく順番"があったの4コマ漫画
中1で習う「He plays」の三単現のs。英語が話せる人でも、会話では「He play」と言い忘れがち。実は研究で、-sは身につく順番が最も遅い文法のひとつと分かっていた。「簡単なルール=簡単に身につく」ではなかった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Dulay & Burt (1974) Natural Sequences in Child Second Language Acquisition, Language Learningdoi.org
  2. Goldschneider & DeKeyser (2001) Explaining the "Natural Order of L2 Morpheme Acquisition" in English: A Meta-analysis of Multiple Determinants, Language Learningdoi.org
  3. Luk & Shirai (2009) Is the Acquisition Order of Grammatical Morphemes Impervious to L1 Knowledge?, Language Learningdoi.org
  4. Jiang (2004) Morphological insensitivity in second language processing, Applied Psycholinguisticsdoi.org