英語を話す前の「1分」で何が変わる? 準備時間の研究で見えた"1分の壁"と点数の落とし穴

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話す前の準備時間は、長ければ長いほど外国語の正確さが上がる
準備0〜5分を比べた研究では、正確さがはっきり上がる境目は1分。5分ではかえって効果が目減りした。
- 対象
- 第二言語の学習者(ドイツ語・英語など)
- 規模
- 31人・90人などの実験+研究レビュー・メタ分析
- 研究の種類
- メタ分析・レビュー・実験研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
話す前の準備でいちばん安定して伸びるのは流暢さ。正確さは「1分」が境目という実験も。ただしIELTSを使った研究では1〜2分の準備で点数は変わらなかった。
ひとことで言うと話す前の1分で、言葉はなめらかに。でも点数アップは別の話!
「では、1分間考えてください」。英語のスピーキングテストでは、話し出す前に短い準備時間がもらえることがあります。たとえば IELTS のスピーキング第2部では、公式に1分間の準備時間と、メモ用の鉛筆と紙が用意されます。
この1分、本当に意味があるのでしょうか? 第二言語の研究では、話す前に内容や言い方を考えておくことをプランニング(pre-task planning)と呼び、数多くの実験が重ねられてきました。
調べてみると、「1分」がひとつの境目だったという研究と、準備してもテストの点数は変わらなかったという研究の両方が見つかります。
01準備で確実に伸びるのは「流暢さ」
研究では、話す力をよく CAF の3つで測ります。止まらずに話せるか(流暢さ=Fluency)、凝った構文や多様な単語を使えるか(複雑さ=Complexity)、文法の誤りが少ないか(正確さ=Accuracy)です。
応用言語学者ロッド・エリスが2009年に研究を整理したレビューによると、「話す前の準備」「同じ課題の予行演習」「話しながらじっくり考える」の3タイプとも、流暢さにはプラスでした。一方で複雑さと正確さは結果がまちまちで、課題の作り方や実施の仕方、学習者の個人差に左右される、とまとめられています。
2022年には、ジョンソンとアブディ・タバリが、準備が第二言語の発話(構文の複雑さ・正確さ・語彙の豊かさ・流暢さ)に与える効果をメタ分析し、準備にははっきりした効果があると結論づけました(要旨に効果の大きさは示されていないので、ここでは数字を出しません)。
0230秒では足りず、5分では目減り。"1分の壁"
面白いのは、時間の長さを変えた実験です。
レビュー全体では「正確さは結果がまちまち」なのに、準備時間の長さを比べたこの2つの研究では、むしろ正確さが動きました。1分で「何を言うか」が決まると、話しながら文法に気を配る余裕が生まれるのかもしれません(ここは記事としての推測です)。

03どんでん返し:IELTSを使った実験では、点数が変わらなかった
では、本番の採点ではどうでしょう。IELTS のスピーキングを使ったウィグルスワースとエルダーの研究(2010年)では、中級と上級の受験者90人が、3つの課題を「準備なし」「1分」「2分」で話しました。
結果は、2人の採点者がつけた点数でも、発話を文字に起こした分析でも、準備時間による有意な差はなし。それでも著者らは、公平さと、受験者から見たテストの納得感(表面的妥当性)のために、1分の準備を設けることは検討に値すると論じています。
なぜ食い違うのでしょう。この研究では、発話を文字に起こした細かい分析でも差が出なかったので、「試験の採点が大まかだから」だけでは説明がつきません。課題の種類、受験者のレベル、準備時間の使い方は研究ごとに違い、そのどれもが結果を左右する可能性があります。少なくとも、実験で見つかった変化がそのまま試験の点数に表れるとは限らない、ということです。
04長く準備すると、凝った英語が出ることも
メーネルトの実験で複雑さが上がったのは、10分準備したときだけでした。ふだんの練習なら、たっぷり準備して難しい構文に挑戦する日と、1分だけで本番のように話す日を分けるのも手です。前者で使えるようになった表現が、後者でも自然に出てくれば、それは「準備に頼らない力」になっています。
05まとめ
話す前の準備で、いちばん確実に変わるのは流暢さ。時間を細かく変えた研究では、正確さには「1分」が境目という結果もありました。ただし、それがそのまま試験の点数アップになるとは限りません。
次にスピーキングの練習をするときは、スマホのタイマーを1分にセットして、キーワード3つと最初の1文だけ決めてから話し始めてみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn Part 2 of the IELTS speaking test, you get one minute and a pencil before you talk.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
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Before a speaking test, you sometimes get one minute to think. Does it help? In 1998, a researcher gave learners of German no time, one minute, five minutes or ten minutes before they spoke. With more time, they spoke more smoothly.
Their grammar got better after just one minute, but more time did not make it better. Another study found that 30 seconds was too short. But in a test study with 90 people, planning did not change their scores.
80 words ・ CEFR A2
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スピーキングテストの前に、1分間考える時間がもらえることがあります。それは役に立つのでしょうか。1998年、ある研究者がドイツ語の学習者に、話す前の時間を「なし」「1分」「5分」「10分」のどれかで与えました。時間が長いほど、学習者はなめらかに話しました。
文法は1分だけでよくなりましたが、それ以上時間があっても、さらによくはなりませんでした。別の研究では、30秒では短すぎることがわかりました。でも、90人が参加したテストの研究では、準備をしても点数は変わりませんでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
第1〜2文で「話す前に考える1分は役に立つか」と問いかけ、その研究を紹介しているので B。
Q2. What happened to the learners' grammar after one minute?
Their grammar got better after just one minute とあるので C。それ以上の時間では、さらによくはならなかった。
Q3. In this passage, "smoothly" is closest in meaning to ...
spoke more smoothly は「よりなめらかに話した」。つっかえずに話す様子なので A。
In Part 2 of the IELTS speaking test, you get one minute and a pencil before you talk. Researchers have studied this kind of planning time for many years. A 2009 review by Rod Ellis found that planning helps fluency, so learners pause less.
The results for accuracy and complexity were mixed. Two studies looked closely at the length of planning time. In one, learners of German made their speech more accurate after one minute, and extra time did not improve accuracy further.
In the other, one minute was the point where accuracy clearly improved. Thirty seconds was too short, and five minutes worked less well. But when 90 people did IELTS tasks with no planning, one minute or two minutes, their scores stayed about the same.
127 words ・ CEFR B1
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IELTSのスピーキングの第2部では、話す前に1分間と鉛筆が与えられます。研究者たちは長年、こうした準備時間について調べてきました。ロッド・エリスによる2009年のレビューでは、準備は流暢さを助け、学習者が言葉に詰まることが減るとわかりました。
正確さと複雑さについては、結果がまちまちでした。2つの研究が、準備時間の長さを詳しく調べました。1つ目では、ドイツ語の学習者は1分の準備で話す内容がより正確になり、それ以上時間を増やしても正確さはさらには上がりませんでした。
2つ目では、正確さがはっきり上がる境目が1分でした。30秒では短すぎ、5分では効果が小さくなりました。しかし、90人が準備なし・1分・2分の条件でIELTSの課題に取り組んだとき、点数はほとんど変わりませんでした。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the 2009 review, what does planning help most consistently?
planning helps fluency とあり、正確さと複雑さは results were mixed なので C。
Q2. What did the second study find about 30 seconds of planning?
Thirty seconds was too short とあるので B。境目は1分だった。
Q3. What can we infer from the IELTS study?
研究では準備で正確さなどが変わったのに、IELTSの課題では scores stayed about the same だった。研究で見つかる変化が点数に表れるとは限らないので B。
Thirty-one learners of German were split into four groups in a 1998 experiment. One group started talking at once, and the others had one, five or ten minutes to plan. Fluency rose steadily with more time. Accuracy went up after a single minute and then stayed flat, and complexity only improved with ten minutes.
A later study of test-style tasks compared six conditions, from no planning up to five minutes. Accuracy improved the most, with one minute as the threshold. Thirty seconds was not enough, and five minutes brought smaller gains.
A 2009 review of the field found that planning helps fluency, while its effects on accuracy and complexity depend on the task and the learner. Test scores are another matter. Ninety intermediate and advanced IELTS candidates did three tasks with no planning, one minute or two minutes.
Neither the raters' scores nor a close analysis of their speech showed a significant difference. Lab and test studies differ in tasks, learners and scoring, so a gain in one setting may not carry over to the other. Even so, the authors argued that offering one minute is worth considering, because it could make the test fairer for candidates.
197 words ・ CEFR B2
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1998年の実験で、ドイツ語の学習者31人が4つのグループに分けられました。1つのグループはすぐに話し始め、ほかのグループは1分、5分、10分の準備時間をもらいました。流暢さは時間が増えるほど着実に上がりました。正確さは1分で上がり、その後は横ばいで、複雑さは10分のときだけ向上しました。
その後、テスト形式の課題を使った研究が、準備なしから5分までの6つの条件を比べました。いちばん伸びたのは正確さで、境目は1分でした。30秒では足りず、5分では伸びが小さくなりました。
この分野の2009年のレビューは、準備が流暢さを助ける一方、正確さと複雑さへの効果は課題や学習者によって変わるとまとめています。テストの点数は別の話です。中級と上級のIELTS受験者90人が、準備なし・1分・2分の条件で3つの課題に取り組みました。
採点者の点数でも、発話の詳しい分析でも、有意な差は見られませんでした。実験室の研究とテストの研究では、課題も、学習者も、採点の仕方も違うので、一方で見られた伸びがもう一方にそのまま表れるとは限りません。それでも著者らは、受験者にとってテストがより公平になりうるので、1分の準備を設けることは検討に値すると主張しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
前半で準備による流暢さ・正確さ・複雑さの変化を、後半で Test scores are another matter としてIELTSで点数が変わらなかったことを述べているので B。
Q2. In the 1998 experiment, when did complexity improve?
complexity only improved with ten minutes とあるので C。正確さは1分で上がって横ばいだった。
Q3. What can we infer from the passage about the IELTS study?
実験室の研究では準備で正確さなどが伸びたのに、IELTSでは有意な差がなく、a gain in one setting may not carry over to the other とあるので B。著者らは1分の準備を検討に値すると主張したので D は誤り。
重要単語
- planning timeB1名詞準備時間You will have one minute of planning time before you speak.
試験の指示文に出る表現。preparation time とも言う。plan は「計画する」だけでなく「話す内容を前もって組み立てる」の意味でも使う。 - fluencyB2名詞流暢さShort pauses are a sign of good fluency.
形容詞は fluent(be fluent in English)。flu- は「流れる」の語根で、fluid(液体)と同じ仲間。 - accuracyB2名詞正確さShe spoke slowly to keep her accuracy high.
形容詞は accurate、反意語は inaccurate。研究では「誤りの少なさ」を指すことが多い。 - complexityC1名詞複雑さTen minutes of planning raised the complexity of their speech.
complex(複雑な)の名詞形。言語研究では「構文や語彙の豊かさ」というプラスの意味で使う。 - thresholdC1名詞境目、しきい値One minute was the threshold for a clear change.
元は「家の入り口の敷居」。the threshold of ~ で「~の入り口、始まり」の意味もあり、長文で狙われやすい。 - rehearseB2動詞下稽古する、予行演習するHe rehearsed the first sentence in his head.
名詞は rehearsal。劇や発表の「リハーサル」と同じ語。rehearse in one's head(頭の中で練習する)は便利な表現。 - candidateB2名詞受験者、候補者Each candidate gets a pencil and paper.
選挙の「候補者」の意味が有名だが、試験では「受験者」。IELTSなどの公式文書でよく使われる。
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- Johnson & Abdi Tabari (2022) Task Planning and Oral L2 Production: A Research Synthesis and Meta-analysis, Applied Linguisticsdoi.org
- Ellis (2009) The Differential Effects of Three Types of Task Planning on the Fluency, Complexity, and Accuracy in L2 Oral Production, Applied Linguisticsdoi.org
- Mehnert (1998) The Effects of Different Lengths of Time for Planning on Second Language Performance, Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
- Li, Chen & Sun (2015) The Effects of Different Lengths of Pretask Planning Time on L2 Learners' Oral Test Performance, TESOL Quarterlydoi.org
- Wigglesworth & Elder (2010) An Investigation of the Effectiveness and Validity of Planning Time in Speaking Test Tasks, Language Assessment Quarterlydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。








