英語は「話そうとして詰まった瞬間」に伸びる? スウェインのアウトプット仮説を研究で確かめた

読む前に予想してみよう!
英語は聞いたり読んだりするだけで十分で、話したり書いたりしても新しい文法はほとんど身につかない
話す・書くと自分の知識の穴に気づき、その後のインプットで文法に注目しやすくなる。実験でもアウトプットした学習者のほうが文法を多く身につけた。
- 対象
- 英語・フランス語などの学習者
- 規模
- 35件の研究のメタ分析ほか
- 研究の種類
- 実験研究+メタ分析
- 確かさ
- ★★★★☆
話したり書いたりすると「言いたいのに言えない」穴に気づき、文法に目が向く。実験やメタ分析でも、アウトプットは特に「使える知識」を長く残す働きがあった。
ひとことで言うと言えなくて詰まった時こそ、英語が伸びるチャンス!
英語で何か言おうとして、「えっと……これ、何て言うんだっけ?」と固まった経験はありませんか。
恥ずかしくて、もう話したくなくなる瞬間です。でも、ある研究者に言わせれば、それこそが英語が伸びる瞬間。
提唱したのは、カナダの応用言語学者メリル・スウェイン。「話す・書く」ことの役割を見直した、アウトプット仮説です。
01きっかけは「英語漬けでも文法が伸びない」子どもたち
カナダには、英語を母語とする子が何年も授業をフランス語で受けるイマージョン教育があります。インプットは十分すぎるほど。実際、子どもたちの聞く・読む力はとても高くなりました。
ところが、話したり書いたりすると、文法の誤りがなかなか減らない。スウェインは、授業の中で子どもたちが長く・正確に話すよう求められる機会が少ないことに注目しました。
聞いて意味がわかるだけなら、文法を細かく処理しなくても何とかなります。でも、自分で文を作るときは、時制も語順も自分で決めなければならない。ここに大きな違いがあると考えたのです。
02アウトプットの3つの働き
スウェインは、話す・書くことに次の働きがあると提案しました。
- 気づき:言いたいのに言えない「穴」に気づく
- 仮説の検証:「こう言えば通じるかな?」と試し、相手の反応で確かめる
- ふり返り:言葉そのものについて考え、話し合う

03実験でも「アウトプット組」が勝った
日本人研究者の和泉伸一(Shinichi Izumi)は2002年、英語の関係詞節(the book that I bought など)を使って実験しました。
文章を読んで自分で書き直す(再構成する)グループと、同じ文章を理解のために読むだけのグループを比べると、書き直したグループのほうが関係詞節をよく身につけたのです。
さらに2013年、理解中心の指導と産出中心の指導を直接比べた35件の研究(30本の論文)をまとめたメタ分析では、
- どちらの指導も大きな効果があった
- 「聞いて・読んでわかる知識」は、直後は理解中心が有利だったが、時間がたつと差は縮まった
- 「自分で使える知識」は、時間がたったテストで産出中心の指導が上回った
という結果でした。使える英語を長く残したいなら、アウトプットが効くというわけです。
04まとめ
話そうとして詰まるのは、失敗ではなく自分の穴が見えた瞬間。その穴を意識して次の英語に触れると、今まで素通りしていた文法が目に入ってきます。
インプットでエンジンをかけ、アウトプットでハンドルを切る。詰まったら、ラッキーです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn Canada, English-speaking children who studied in French for years understood French very well, but they…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Have you ever tried to say something in English and stopped because you did not know the words? That moment can help you learn. Merrill Swain, a Canadian researcher, said that speaking and writing help us notice what we cannot say yet.
Then we pay more attention to grammar. In one experiment, students who rewrote a text learned a grammar point better than students who only read it.
68 words ・ CEFR A2
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英語で何か言おうとして、言葉がわからなくて止まってしまったことはありますか?その瞬間は、学ぶのに役立つことがあります。カナダの研究者メリル・スウェインは、話したり書いたりすることは、自分がまだ言えないことに気づくのを助けると言いました。
すると私たちは、文法にもっと注意を向けるようになります。ある実験では、文章を書き直した生徒のほうが、読んだだけの生徒より、ある文法事項をよく身につけました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
話したり書いたりすること(アウトプット)が学習を助ける、というスウェインの考えが中心なので B。
Q2. Who learned the grammar point better in the experiment?
students who rewrote a text learned a grammar point better とあるので C。
Q3. In this passage, "notice" means ...
notice は「気づく」。自分がまだ言えないことに気づく、という意味なので A。
In Canada, English-speaking children who studied in French for years understood French very well, but they still made many grammar mistakes when they spoke and wrote. Merrill Swain noticed that these children rarely had chances to speak at length or accurately. She proposed the output hypothesis, which says that when learners speak or write, they notice gaps in their knowledge, test their ideas about the language, and think about language itself.
In a 1995 study, students who said their thoughts aloud while writing were seen noticing problems and trying other forms. In 2002, Izumi found that learners who reconstructed a text learned English relative clauses better than those who only read it for meaning.
114 words ・ CEFR B1
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カナダでは、何年もフランス語で勉強した英語話者の子どもたちは、フランス語をとてもよく理解しましたが、話したり書いたりするときには、まだ多くの文法の誤りをしました。メリル・スウェインは、こうした子どもたちには長く、あるいは正確に話す機会がめったにないことに気づきました。彼女はアウトプット仮説を提唱しました。学習者は話したり書いたりするとき、自分の知識の穴に気づき、言語についての考えを試し、言語そのものについて考える、というものです。
1995年の研究では、書きながら考えを声に出した生徒たちが、問題に気づき、別の形を試している様子が観察されました。2002年、和泉は、文章を再構成した学習者のほうが、意味を理解するために読んだだけの学習者より、英語の関係詞節をよく身につけることを見いだしました。
4択リーディングクイズ
Q1. Why did Swain become interested in output?
第1文で、理解はできるのに話す・書くときに文法の誤りが多いことが述べられ、それがきっかけになっているので D。A は本文と逆。
Q2. What grammar point was used in Izumi's experiment?
learned English relative clauses better とあるので A。
Q3. Which activity best fits the output hypothesis?
アウトプットで自分の知識の穴(言えないこと)に気づくことが重要なので、要約を書いて言えなかった表現を確認する C が最も合う。
Canadian French immersion programs produced a puzzle. Students had years of rich French input and understood the language well, yet they kept making grammatical errors in speech and writing. Merrill Swain noticed that they were seldom pushed to produce long, accurate stretches of language. Comprehension, she argued, can often succeed by relying on meaning alone.
Production is different, because the speaker has to decide on tense, word order and other forms. Her output hypothesis gives output three jobs. It helps learners notice gaps in their knowledge, lets them test hypotheses about how the language works, and invites them to reflect on language itself.
Swain never argued that learners could do without input. In a 1995 think-aloud study, learners writing in French were seen spotting problems and trying out alternatives. Izumi's 2002 experiment found that learners who reconstructed a text acquired English relative clauses more successfully than those who only read it for comprehension.
A 2013 meta-analysis of 35 research projects comparing the two approaches found large effects for both, and the winner depended on what was measured. Comprehension-based teaching had an early edge for receptive knowledge that later narrowed. Production-based teaching came out ahead for productive knowledge on delayed tests.
200 words ・ CEFR B2
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カナダのフランス語イマージョン教育は、ひとつの謎を生みました。生徒たちは何年も豊富なフランス語のインプットに囲まれ、フランス語をよく理解していたのに、話したり書いたりするときには文法の誤りをし続けたのです。メリル・スウェインは、彼らが長く正確なまとまりの言葉を産出するよう求められることがめったにないことに気づきました。彼女の主張によれば、理解は意味だけに頼ってもうまくいくことが多いものです。
産出はそうはいきません。話し手は時制や語順などの形を決めなければならないからです。彼女のアウトプット仮説では、アウトプットには3つの働きがあります。学習者が自分の知識の穴に気づくのを助け、言語の仕組みについての仮説を試させ、言語そのものについてふり返る機会を与えるのです。
スウェインは、学習者がインプットなしでやっていけると主張したことはありません。1995年の思考発話法による研究では、フランス語で作文をしている学習者が、問題を見つけ、別の言い方を試している様子が観察されました。和泉の2002年の実験では、文章を再構成した学習者が、理解のために読んだだけの学習者よりも英語の関係詞節をうまく習得しました。
2つの指導法を比較した35件の研究をまとめた2013年のメタ分析では、どちらにも大きな効果が見られ、どちらが優れているかは何を測るかによって変わりました。理解中心の指導は受容的知識で最初は優位でしたが、その差は後に縮まりました。産出中心の指導は、時間をおいたテストで産出的知識において上回りました。
4択リーディングクイズ
Q1. According to Swain, why does production push grammar development more than comprehension?
Production is different, because the speaker has to decide on tense, word order and other forms. とあるので A。
Q2. What did the 2013 meta-analysis find about productive knowledge?
Production-based teaching came out ahead for productive knowledge on delayed tests. とあるので D。B は found large effects for both と矛盾。
Q3. Which statement would the author agree with?
Swain never argued that learners could do without input. から、アウトプットはインプットを補うものと読めるので B。
重要単語
- outputB1名詞アウトプット(話す・書くこと)Output helps you notice what you can't say yet.
第二言語習得では speaking と writing を指す。反対は input(聞く・読む)。 - notice the gapB2動詞句自分の知識の穴に気づくI noticed the gap when I couldn't explain my idea.
gap は「すき間、差」。generation gap(世代間の溝)など長文で頻出の語。 - pushed outputC1名詞(句)少し背伸びして正確に言おうとする発話Teachers can encourage pushed output.
push は「(人を)促す、追い込む」。be pushed to do「~するよう求められる」。 - think-aloudC1名詞考えていることを声に出す方法(思考発話法)The researchers used think-aloud data.
think aloud(考えを声に出す)を名詞化した研究用語。 - relative clauseB2名詞(句)関係詞節"The book that I bought" has a relative clause.
relative pronoun(関係代名詞)と合わせて文法用語として覚えておくと解説が読みやすい。 - productive knowledgeC1名詞(句)産出知識(自分で使える知識)Productive knowledge is harder to build than receptive knowledge.
receptive knowledge(受容知識=見て・聞いてわかる知識)との対比で使われる。 - comprehensionB2名詞理解(力)Her reading comprehension improved a lot.
reading comprehension(読解)。comprehensive(包括的な)との区別に注意。
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英語で何か言おうとして「これ何て言うんだ?」と詰まる瞬間こそ、伸びるチャンスらしい。スウェインは、話す・書くことで自分の“穴”に気づくと提唱。35件の研究の分析でも、話す・書く練習中心の指導は、時間をおいたテストで「使える知識」の成績が理解中心を上回っていた。
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- Swain & Lapkin (1995) Problems in Output and the Cognitive Processes They Generate: A Step Towards Second Language Learning, Applied Linguisticsdoi.org
- Izumi (2002) Output, Input Enhancement, and the Noticing Hypothesis, Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
- Shintani, Li & Ellis (2013) Comprehension-Based Versus Production-Based Grammar Instruction: A Meta-Analysis of Comparative Studies, Language Learningdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。









