語学・英語学習ビミョー

「独り言英語」は効くのか? セルフトークの研究からわかったこと・わからないこと

「独り言英語」は効くのか? セルフトークの研究からわかったこと・わからないこと

読む前に予想してみよう!

英語の独り言は、英語力を伸ばす方法として大規模な実験で効果が確かめられている

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生・スポーツ選手・L2学習者など
規模
数百人規模の実験とメタ分析
研究の種類
実験研究・メタ分析(L2への直接検証は少数)
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

声に出す独り言は集中や気持ちの整理を助ける研究がある。英語の独り言は「言えない」に気づく練習として理にかなうが、直接の効果検証はまだ少ない。

ひとことで言うと英語の独り言は「言えない言葉」を見つける練習になる!

もくじ
  1. 独り言には、ちゃんと効果を示す研究がある
  2. 英語の独り言が「効きそう」な理由
  3. でも、直接の証拠はまだ少ない
  4. まとめ

「相手がいなくても、独り言で英語は上達する」。英語学習の本やSNSでよく見かけるテクニックです。

朝の支度をしながら "I'm making coffee." とつぶやく。通勤中に今日の予定を英語で説明してみる。お金もかからず、いつでもできるのは魅力ですよね。

では、科学的にはどうなのでしょう? 調べてみると、「独り言」そのものの研究は意外と豊富。でも、「英語の独り言で英語力が伸びた」という直接の実験は、まだ少ないのが実情でした。

01独り言には、ちゃんと効果を示す研究がある

まず、独り言の効果そのものから。

クロスらは、自分を名前で呼ぶと、自分を少し離れたところから眺める「心理的な距離」が生まれ、気持ちを整えやすくなると説明しています。

スポーツの世界でも、セルフトークの介入研究32本をまとめたメタ分析(ハツィゲオルギアディスら、2011年)で、中程度のプラス効果が報告されています。特に、新しく覚える技術や細かい動きで効きやすいそうです。

また、物を探すときにその名前を声に出して言うと、探すのが速くなることがある、という実験もあります(ルピアンとスウィングリー、2012年)。言葉には、注意を向ける力があるのです。

ただし、名前と探す物の結びつきが弱い場合は、声に出すとかえって邪魔になることもありました。

02英語の独り言が「効きそう」な理由

第二言語習得の研究では、カナダのメリル・スウェインらがアウトプット仮説を唱えてきました。

話したり書いたりしようとすると、「あれ、これ英語で何て言うんだっけ?」という穴に気づく。その気づきが、次に英語を聞いたり読んだりするときの注意を変え、学習を進める、という考え方です。

英語の独り言は、まさにこの「穴に気づく」体験を一人で何度も起こせる方法といえます。

独り言は「言えない穴」を見つける作業
独り言は「言えない穴」を見つける作業

03でも、直接の証拠はまだ少ない

一方で、「英語の独り言をする群」と「しない群」を比べて、英語力の伸びを測った実験は、調べた限りほとんど見当たりません。

第二言語の内言(頭の中の言葉)や私的発話(自分に向けた発話)を研究してきたデ・ゲレロらの仕事も、学習者が独り言をどう使っているかを記述するものが中心です。

つまり今のところは、「理屈の上では有望」「でも効果の大きさは不明」というのが正直なところ。

04まとめ

英語の独り言は、集中や緊張対策に役立つ「独り言の力」と、言えない穴に気づく「アウトプットの力」の両方を使える、筋のいい練習法です。

ただし、つぶやくだけで終わらせず、詰まった表現を調べて直すところまでやってこそ、学習になります。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany English learning books recommend talking to yourself in English, such as describing what you are doing… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many English learning books recommend talking to yourself in English, such as describing what you are doing while getting ready in the morning. Research on self-talk in general is quite positive. In 2014, a team at the University of Michigan reported seven studies with 585 people. Those who used their own name instead of "I" when talking to themselves before a stressful speech felt less anxious and performed better.

In sports, a 2011 meta-analysis found a moderate positive effect of self-talk. For language learning, Merrill Swain's output hypothesis suggests that trying to speak helps learners notice gaps in what they can say. However, very few experiments have directly compared learners who practice English self-talk with those who do not, so no one knows yet how much it improves English skills.

130 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの英語学習の本は、朝の支度をしながら自分がしていることを説明するなど、英語で独り言を言うことを勧めています。独り言全般についての研究はかなり前向きなものです。2014年、ミシガン大学のチームは585人が参加した7つの研究を報告しました。緊張するスピーチの前に、自分に語りかけるとき「私」ではなく自分の名前を使った人は、不安が少なく、よりよいパフォーマンスを見せました。

スポーツでは、2011年のメタ分析が独り言に中程度のプラスの効果を見出しました。語学学習については、メリル・スウェインのアウトプット仮説が、話そうとすることで学習者は自分が言えることの「穴」に気づけると示唆しています。しかし、英語の独り言を練習する学習者としない学習者を直接比べた実験はほとんどないため、英語力への本当の効果はまだわかっていません。

4択リーディングクイズ

Q1. What did people in the Michigan studies do differently?

Q2. What does Swain's output hypothesis suggest?

Q3. What is the writer's conclusion about English self-talk?

重要単語

  • self-talkB2
    名詞独り言・自分への語りかけPositive self-talk helped her stay calm. スポーツ心理学の用語。talk to oneself「独り言を言う」も覚えておく。SLAでは private speech(私的発話)とも。
  • outputB2
    名詞アウトプット(話す・書くこと)Output pushes you to notice your gaps. スウェインの Output Hypothesis:話す・書くことで「言えない」に気づき、習得が進むとする説。input と対。
  • noticeB1
    動詞・名詞気づく・通知I noticed that I didn't know the word for "sink." SLAの noticing(気づき)は習得の第一歩とされる重要概念。notice+目的語+doing の形も頻出。
  • fluencyB2
    名詞流暢さDaily practice builds fluency. SLAでは accuracy(正確さ)・complexity(複雑さ)と並ぶ評価軸。独り言は fluency 練習に向くが accuracy は確認が必要。
  • rehearseB2
    動詞予行演習する・リハーサルするI rehearse what I'll say before a meeting. 名詞 rehearsal。記憶研究では「頭の中でくり返すこと」も rehearsal と呼ぶ。
  • plausibleC1
    形容詞もっともらしい・妥当そうなThe theory offers a plausible explanation. 「証明はされていないが筋は通る」というニュアンス。研究紹介で頻出。反意語 implausible。
  • scarceB2
    形容詞乏しい・不足しているDirect evidence is still scarce. 名詞 scarcity。副詞 scarcely は「ほとんど~ない」(hardly と同義)で入試頻出。

動画でもっと知る

自分を「私」ではなく名前で呼んで独り言を言うと、スピーチの緊張が和らいだという実験がある。英語の独り言練習も、使い方しだいで“最強の一人英会話”になるかも。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Kross et al. (2014) Self-talk as a regulatory mechanism: How you do it matters. Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  2. Hatzigeorgiadis et al. (2011) Self-talk and sports performance: A meta-analysis. Perspectives on Psychological Sciencedoi.org
  3. Lupyan & Swingley (2012) Self-directed speech affects visual search performance. Quarterly Journal of Experimental Psychologydoi.org
  4. Swain & Lapkin (1995) Problems in output and the cognitive processes they generate. Applied Linguisticsdoi.org
  5. de Guerrero (2005) Inner Speech — L2: Thinking Words in a Second Language. Springerdoi.org