語学・英語学習ホント

英文の「単語の注釈」で覚える量は約1.7倍に。でも絵や音声つきの“豪華版”は差がなかった

英文の「単語の注釈」で覚える量は約1.7倍に。でも絵や音声つきの“豪華版”は差がなかった

読む前に予想してみよう!

単語の注釈は、絵や音声をつけたほうが文字だけより必ずよく覚えられる

研究カード(どんな研究?)
対象
第二言語の学習者
規模
42研究・3,802人
研究の種類
メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

英文の難しい単語に意味の注釈(グロス)をつけると、覚える単語は約1.7倍に。母語の注釈や選択式が効きやすく、絵や音声を足しても差は出なかった。

ひとことで言うと長文の下にある「単語の意味」のメモは、ちゃんと単語を覚える助けになる!

もくじ
  1. 42研究のまとめ:覚える単語が約1.7倍
  2. どんでん返し:絵や音声を足しても伸びなかった
  3. 読解にも効く? 日本語の注釈は誰向け?
  4. まとめ

英語の長文問題の下に並ぶ「*1 sustainable:持続可能な」。あの小さな注釈、ただの「お助けメモ」だと思っていませんか。

実はこの単語の注釈(グロス)は、応用言語学で何十年も研究されてきたテーマです。読みながら単語も覚えられるのか。そもそも読解の助けになるのか。

その答えを、40を超える研究から導き出した大規模なメタ分析があります。結論は「注釈は効く。ただし、豪華にすればいいわけではない」です。

0142研究のまとめ:覚える単語が約1.7倍

注釈つきだと、覚える単語の割合は直後も遅延テストも約1.7倍。読んでいるだけで覚えるのは難しいと言われる単語が、注釈ひとつでぐっと残りやすくなるのです。

選択式がよく効くのは、「どの意味が文に合うか」を自分で考えるぶん、頭の中で単語をしっかり処理するからだと考えられています。

02どんでん返し:絵や音声を足しても伸びなかった

「文字だけより、イラストや発音音声がついたほうが覚えやすいはず」。そう思いますよね。

ところが上のメタ分析では、文字・絵・音声という注釈の形式の間に、有意な差は見られませんでした。

注釈の「モード」の足し算に注目した別のメタ分析(22研究)でも、文字だけの注釈にもう1種類(絵など)を加えると効果は上がったものの、2種類を3種類に増やしても、それ以上は伸びなかったと報告されています。情報を盛りすぎると、かえって読む側の負担になる可能性もあります。

注釈は「豪華さ」より「ちょうどよさ」
注釈は「豪華さ」より「ちょうどよさ」

03読解にも効く? 日本語の注釈は誰向け?

注釈は単語だけでなく、読解の助けにもなります。パソコン上の注釈を調べた初期のメタ分析(11研究)では、読解への効果は中程度、単語の習得への効果は大でした。

では、注釈は日本語と英語のどちらがいいのでしょうか。26研究をまとめたメタ分析では、全体としては母語の注釈がやや有利でした。ただしその差が目立ったのは主に直後の単語テストで、遅延テストや読解テストでははっきりしませんでした。また、母語の注釈が特に有利だったのは初級者でした。

04まとめ

長文の下の小さな注釈は、ちゃんと単語を覚える力を持っています。ただし遅延テストの数字を見ると、注釈つきでも、覚えた単語の割合は直後の45.3%から33.4%へ下がっています。

注釈で出会った単語は、単語帳や次の長文でもう一度会いに行く。それが、注釈の効果をいちばん長持ちさせる方法です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerA gloss is a short explanation of a difficult word, usually placed in the margin or at the bottom of a page. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

A gloss is a short explanation of a difficult word, usually placed in the margin or at the bottom of a page. A 2020 meta-analysis by Yanagisawa, Webb and Uchihara combined 42 studies with 3,802 learners. People who read glossed texts learned 45.3 percent of the target words on immediate tests and 33.4 percent on delayed tests, compared with 26.6 and 19.8 percent for people who read without glosses.

Multiple-choice glosses, which ask readers to choose the correct meaning, worked best, and glosses in the learners' first language worked better than English ones. But adding pictures or audio did not make a significant difference. Even with glosses, however, many words were forgotten later, so learners need to meet them again.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

グロスとは、難しい単語の短い説明で、ふつうページの余白や下に置かれます。ヤナギサワ、ウェブ、ウチハラによる2020年のメタ分析は、3,802人の学習者を含む42の研究をまとめました。グロスつきの文章を読んだ人は、直後テストで対象の単語の45.3パーセント、遅延テストで33.4パーセントを覚えていました。これに対し、グロスなしで読んだ人は26.6パーセントと19.8パーセントでした。

読み手に正しい意味を選ばせる選択式のグロスが最もよく効き、学習者の母語のグロスは英語のグロスよりよく効きました。ただ、絵や音声を加えても有意な差は出ませんでした。しかし、グロスがあっても多くの単語は後で忘れられたので、学習者はそれらに再び出会う必要があります。

4択リーディングクイズ

Q1. Which type of gloss worked best?

Q2. What percentage of target words did readers without glosses learn on delayed tests?

Q3. Why does the writer say learners need to meet words again?

重要単語

  • glossC1
    名詞注釈・語注The gloss at the bottom of the page explained the word. glossary「用語集」と同じ語源。動詞で「注釈をつける」。
  • marginB2
    名詞余白・欄外Write a short note in the margin. 「利ざや・差」の意味もある多義語。by a narrow margin「僅差で」は入試頻出。
  • incidentalC1
    形容詞偶発的な・付随的なIncidental learning happens while you read for meaning. incident「出来事」の形容詞。incidental vocabulary learning は「読む・聞くうちに自然に覚える語彙学習」。
  • comprehensionB2
    名詞理解・読解Glosses can support reading comprehension. comprehend「理解する」。comprehensive「包括的な」と混同しやすいので注意。
  • multiple-choiceB2
    形容詞多肢選択式のMultiple-choice glosses make readers think before they choose. multiple「多数の」+ choice「選択」。テストの「4択問題」は a multiple-choice question。
  • delayedB2
    形容詞遅れた・時間をおいたThe delayed test showed how much was remembered. delay「遅らせる」の過去分詞。delayed posttest は学習研究の定番語。
  • elaborateC1
    形容詞手の込んだ・念入りなAn elaborate gloss is not always better than a simple one. 動詞(イラボレイト)で「詳しく述べる」。形容詞(イラボレット)と発音が異なる。
英語長文の下にある「単語の意味」の注釈。42研究のメタ分析では、注釈つきで読むと覚える単語が約1.7倍に。一番効いたのは意味を「選ばせる」注釈で、絵や音声をつけた豪華版は文字だけと差がなかったらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Yanagisawa, Webb & Uchihara (2020) How do different forms of glossing contribute to L2 vocabulary learning from reading? A meta-regression analysis, Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
  2. Abraham (2008) Computer-mediated glosses in second language reading comprehension and vocabulary learning: A meta-analysis, Computer Assisted Language Learningdoi.org
  3. Kim, Lee & Lee (2024) The relative effects of L1 and L2 glosses on L2 learning: A meta-analysis, Language Teaching Researchdoi.org
  4. Ramezanali, Uchihara & Faez (2021) Efficacy of Multimodal Glossing on Second Language Vocabulary Learning: A Meta-analysis, TESOL Quarterlydoi.org