語学・英語学習ホント

英単語は「口の中で発音できない」と覚えられない? 声を封じると外国語の単語が覚えにくくなった実験

英単語は「口の中で発音できない」と覚えられない? 声を封じると外国語の単語が覚えにくくなった実験

読む前に予想してみよう!

外国語の単語を覚えるとき、正しい発音を知らなくても、つづりと意味だけで同じように覚えられる

研究カード(どんな研究?)
対象
イタリアの大人、フィンランドの子どもなど
規模
複数の研究
研究の種類
実験研究・縦断研究・理論レビュー
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「ザ・ザ・ザ」と口を動かし続けて頭の中の発音をジャマすると、外国語の単語は覚えにくくなった。単語を覚えるには、頭の中で音をくり返す「音韻ループ」が大事だった。

ひとことで言うと単語は頭の中で「声に出して」くり返せるから覚えられる。音を知るのが第一歩!

もくじ
  1. 口を封じると、外国語の単語が覚えにくくなる
  2. 「音をまねる力」が英語の成績を予測した
  3. 音韻ループは「言語を学ぶための装置」
  4. まとめ

英単語を覚えるとき、あなたは頭の中で発音していますか?

「当たり前でしょ」と思うかもしれません。でも、この頭の中の「声」こそが、外国語の単語を覚えるカギだったことが、心理学の実験でわかっています。

01口を封じると、外国語の単語が覚えにくくなる

母語の単語ペア(例:「イヌ—リンゴ」)は、すでに知っている単語どうしなので、意味で結びつけることができます。でも外国語の単語は、音そのものが新しい。新しい音の並びを覚えるには、頭の中でくり返して保持する必要があったのです。

この「頭の中で音をくり返す記憶のしくみ」を、心理学では音韻ループと呼びます。

02「音をまねる力」が英語の成績を予測した

フィンランドの心理学者サーヴィスは1992年、小学生を3年間追跡しました。

つまり、新しい音の並びを一時的に頭に保てる力が、外国語の語彙を増やす土台になっているということです。

新しい音を「まねて保つ」力が、単語を覚える入口
新しい音を「まねて保つ」力が、単語を覚える入口

03音韻ループは「言語を学ぶための装置」

バドリーらは1998年の総説で、こうした研究を整理し、音韻ループは単なる「電話番号を覚えるための記憶」ではなく、新しい単語の音を学ぶための「言語学習装置」だと主張しました。

これは英語学習にとって重要な示唆を持っています。正しい音を知らないまま、つづりだけで単語を覚えようとすると、音韻ループがうまく使えない可能性があるのです。

ただし注意点も。音韻ループの力には個人差がありますが、これは「才能で決まる」という話ではありません。単語の知識が増えるほど、知っている音のパターンを手がかりに新しい単語も覚えやすくなる、という相互作用も指摘されています。

04まとめ

外国語の単語を覚えるカギは、頭の中で音をくり返す「音韻ループ」でした。口を封じると、母語の単語は覚えられても、外国語の単語は覚えにくくなったのです。

だからこそ、単語はまず音から。つづりと意味だけでなく、正しい発音を頭の中で鳴らせる状態にしてから覚えましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerPsychologists use the term "phonological loop" for the part of memory that holds sounds by repeating them… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Psychologists use the term "phonological loop" for the part of memory that holds sounds by repeating them silently in the head. A 1991 Italian study showed how important it is for vocabulary learning. While learning, some adults repeated a meaningless sound aloud, which stopped them from rehearsing words in their heads. This hardly affected their learning of word pairs in their native language, which could be linked by meaning.

However, it greatly reduced their learning of Russian words, because the sounds were new. In Finland, a 1992 study followed children for three years and found that those who could accurately repeat English-like nonsense words later did better in English, but not especially in math. This suggests that hearing and holding new sounds is a key step in learning words.

129 words ・ CEFR B1

和訳を見る

心理学者は、頭の中で音を声に出さずにくり返すことで音を保持する記憶の部分を「音韻ループ」と呼びます。1991年のイタリアの研究は、それが語彙学習にとってどれほど重要かを示しました。学習中、一部の大人は意味のない音を声に出してくり返し、そのせいで頭の中で単語を復唱できなくなりました。これは、意味で結びつけることのできる母語の単語ペアの学習にはほとんど影響しませんでした。

しかし、音が新しいロシア語の単語の学習は大きく低下しました。フィンランドでは、1992年の研究が子どもたちを3年間追跡し、英語らしい無意味な単語を正確にくり返せた子どもほど、後に英語の成績がよかったものの、算数では特にそうではなかったことを見いだしました。このことは、新しい音を聞いて保持することが、単語を学ぶうえでのカギとなる段階であることを示唆しています。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the "phonological loop"?

Q2. Why was learning native word pairs hardly affected?

Q3. What can we infer from the Finnish study?

重要単語

  • phonological loopC1
    名詞(句)音韻ループ(音を頭の中でくり返して保つ記憶)The phonological loop helps us learn new words. バドリーのワーキングメモリ・モデルの構成要素。phonological は「音韻の」。心理学・SLA の入試長文で頻出。
  • short-term memoryB2
    名詞(句)短期記憶New sounds are held in short-term memory. long-term memory(長期記憶)と対。working memory(作業記憶)は「保ちながら処理する」短期記憶を指す。
  • rehearseB2
    動詞(頭の中で)くり返す・復唱するRehearse the word quietly in your head. 日常では「リハーサルする」。記憶研究では情報を保つために心の中でくり返すこと。名詞 rehearsal。
  • suppressC1
    動詞抑える・封じるSaying "the the the" suppresses inner speech. sup-(下に)+ press(押す)。名詞 suppression。articulatory suppression「構音抑制」は心理学の実験手法名。
  • pseudowordC1
    名詞疑似語(実在しない単語)Children repeated pseudowords in the test. pseudo-(偽の)+ word。発音は /ˈsuːdoʊ/ で p は読まない。nonword とも言う。
  • pronunciationB1
    名詞発音Check the pronunciation before you memorize a word. 動詞は pronounce だがつづりは pronunciation(o が消える)。入試のつづりミス頻出語。
  • correlationalC1
    形容詞相関的なCorrelational data cannot prove cause and effect. correlation(相関)の形容詞。correlation does not imply causation「相関は因果を意味しない」は研究リテラシーの合言葉。

4コマでわかる

英単語は「口の中で発音できない」と覚えられない? 声を封じると外国語の単語が覚えにくくなった実験の4コマ漫画
単語を覚えている間に「ザ・ザ・ザ」と口を動かし続けて頭の中の声をジャマすると、母語の単語ペアは平気なのに、外国語の単語は覚えにくくなったらしい。英単語は“音”で覚えるのが基本だった。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Papagno, Valentine & Baddeley (1991) Phonological short-term memory and foreign-language vocabulary learning. Journal of Memory and Languagedoi.org
  2. Service (1992) Phonology, working memory, and foreign-language learning. The Quarterly Journal of Experimental Psychology Section Adoi.org
  3. Baddeley, Gathercole & Papagno (1998) The phonological loop as a language learning device. Psychological Reviewdoi.org