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外国語で考えると冷静になれる?「外国語効果」の発見と、再現性をめぐる論争

外国語で考えると冷静になれる?「外国語効果」の発見と、再現性をめぐる論争

読む前に予想してみよう!

外国語で考えると、どんな場面でも必ず冷静で合理的な判断ができる

研究カード(どんな研究?)
対象
外国語を使う大学生など
規模
17研究・47実験
研究の種類
メタ分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

外国語で読むと、言い回しにだまされにくくなったり、道徳的な判断が変わったりする「外国語効果」。メタ分析では確認されたが、再現できなかった研究もある。

ひとことで言うと外国語だと気持ちが少し遠くなって、判断が変わることがあるみたい!

もくじ
  1. 「言い方のワナ」にかかりにくくなった
  2. 道徳の判断まで変わった?
  3. メタ分析では「ある」、でも追試では…
  4. まとめ

大事な決断をするとき、あえて英語で考えてみる。そんなことで判断が変わるなんて、信じられますか?

2012年、アメリカの心理学者たちが、まさにそんな結果を発表しました。同じ問題でも、外国語で読むと、言い回しにまどわされにくくなるというのです。

「外国語で考えると冷静になれる」。この発見は外国語効果と呼ばれ、世界中で追試が行われました。そして、その後の展開はなかなかスリリングです。

01「言い方のワナ」にかかりにくくなった

人は、内容が同じでも言い方で判断が変わります。「手術の成功率は90%」と言われると受けたくなり、「10%は失敗する」と言われるとためらう。これをフレーミング効果と言います。

研究チームは、外国語は母語より感情との結びつきが弱いため、言い回しが引き起こす感情的な反応がおさえられたのではないかと考えました。

02道徳の判断まで変わった?

2014年には、さらに驚く結果が報告されます。

暴走するトロッコを止めるため、1人を線路に突き落とせば5人が助かるとしたら、突き落とすか?——という有名な道徳のジレンマ(歩道橋問題)。これを外国語で読んだ人は、母語で読んだ人より「突き落とす」と答える割合が高くなったのです。

その後の研究では、外国語を使うと「人を傷つけてはいけない」という感情的なブレーキが弱まることが主な原因で、より深く考えて合理的になったわけではない、という解釈も示されています。

外国語は、感情との間に1枚の「ガラス窓」をはさむのかもしれない
外国語は、感情との間に1枚の「ガラス窓」をはさむのかもしれない

03メタ分析では「ある」、でも追試では…

では、外国語効果は本物なのか。

一方で、雲行きのあやしい結果もあります。ドイツの研究チームが事前登録(実験前に方法と分析計画を公開すること)をして行った2つの実験では、外国語効果は再現されませんでした。また別のメタ分析では、外国語の読解力が高い人ほど効果が小さくなるという結果も出ています。

効果は「ある」けれど、言語の組み合わせや課題、語学力によって出たり出なかったりする、デリケートな現象のようです。

04まとめ

「外国語で考えると冷静になれる」は、半分ホント。一部の判断では、外国語が感情の熱を少し冷ます役割をすることがあるようです。

ただし、それは「外国語なら正しい判断ができる」という意味ではありません。言葉が変わると判断も変わる。その事実こそが、私たちの心の不思議さを教えてくれています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerPeople often make different choices depending on how a problem is worded. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

People often make different choices depending on how a problem is worded. For example, a treatment with "a 90% success rate" sounds better than one where "10% fail," even though they mean the same thing. This is called the framing effect. In 2012, researchers at the University of Chicago found that this effect became weaker when students read the problems in a foreign language. They suggested that a foreign language is less connected to emotions.

In 2014, another study found that people reading a famous moral dilemma in a foreign language were more willing to sacrifice one person to save five. A 2021 meta-analysis supported this foreign language effect, but two carefully planned, preregistered experiments in Germany failed to find it.

121 words ・ CEFR B1

和訳を見る

人は、問題がどのように言い表されているかによって、違う選択をすることがよくあります。たとえば、「成功率90%」の治療は「10%が失敗する」治療よりもよく聞こえますが、それらは同じ意味です。これはフレーミング効果と呼ばれます。2012年、シカゴ大学の研究者たちは、学生が外国語で問題を読むとこの効果が弱まることを見出しました。彼らは、外国語は感情との結びつきが弱いのではないかと考えました。

2014年には、有名な道徳的ジレンマを外国語で読んだ人は、5人を救うために1人を犠牲にすることをより受け入れやすいことが別の研究でわかりました。2021年のメタ分析はこの外国語効果を支持しましたが、ドイツで慎重に計画され事前登録された2つの実験では、それが見つかりませんでした。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the "framing effect"?

Q2. Why did the 2012 researchers think the effect became weaker?

Q3. What can we conclude about the foreign language effect?

重要単語

  • foreign language effectC1
    名詞(句)外国語効果(外国語を使うと判断が変わる現象)The foreign language effect was first reported in 2012. 2012年にケイサーらが名づけた心理学用語。「冷静になる」というより「感情のブレーキが弱まる」とする解釈もある。
  • framing effectC1
    名詞(句)フレーミング効果(同じ内容でも言い方で判断が変わること)"90% survive" and "10% die" create a framing effect. frame「枠」。広告や医療の説明でも使われる。行動経済学の基本用語で、入試長文にも出る。
  • moral dilemmaC1
    名詞(句)道徳的ジレンマThe trolley problem is a famous moral dilemma. dilemma は「板ばさみ」。be in a dilemma「ジレンマに陥っている」。発音は /dɪˈlemə/。
  • utilitarianC2
    形容詞功利主義的な(より多くの利益を優先する)People gave more utilitarian answers in a foreign language. utility(有用性)から。ベンサムの「最大多数の最大幸福」。倫理の長文で頻出。
  • aversionC1
    名詞嫌悪・強い嫌気Most people have a strong aversion to harming others. have an aversion to ~。loss aversion「損失回避」は行動経済学の重要語。
  • preregistrationC2
    名詞事前登録(実験前に方法や分析計画を公開すること)Preregistration makes research more trustworthy. pre-(前に)+registration。結果を見てから分析を変える「後出し」を防ぐ仕組み。再現性危機への対策。
  • replicateC1
    動詞再現する・追試するThe experiment failed to replicate the effect. 名詞 replication。fail to replicate「再現できない」は研究ニュースの定番表現。

動画でもっと知る

4コマでわかる

外国語で考えると冷静になれる?「外国語効果」の発見と、再現性をめぐる論争の4コマ漫画
同じ問題でも、母語ではなく外国語で読むと「言い方のちがい」にだまされにくくなる——2012年に発表された「外国語効果」。その後の分析で効果は確認されたけど、事前登録した追試では再現できなかった例もあるらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Keysar, Hayakawa & An (2012) The foreign-language effect: Thinking in a foreign tongue reduces decision biases, Psychological Sciencedoi.org
  2. Costa et al. (2014) Your morals depend on language, PLOS ONEdoi.org
  3. Circi et al. (2021) The foreign language effect on decision-making: A meta-analysis, Psychonomic Bulletin & Reviewdoi.org
  4. Stankovic, Biedermann & Hamamura (2022) Not all bilinguals are the same: A meta-analysis of the moral foreign language effect, Brain and Languagedoi.org
  5. Nadarevic et al. (2021) Does foreign language alter moral judgments? Inconsistent results from two pre-registered studies with the CNI model, Open Psychologydoi.org