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日本語のマジか!?ホント

小さい「っ」が当たり前になったのは戦後。国の決まりも今なお「なるべく小さく」

小さい「っ」が当たり前になったのは戦後。国の決まりも今なお「なるべく小さく」

読む前に予想してみよう!

日本国憲法の条文には、小さい「っ」が使われている

研究カード(どんな研究?)
対象
百科事典の記述と国の告示・法令・自治体の通知
規模
百科事典2種・内閣告示2件・国語審議会答申1件・憲法・県の通知1件・総務省の文書1件
研究の種類
文献の記述の比較
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「がっこう」の小さい「っ」がふつうの書き方になったのは戦後。国の「現代仮名遣い」も「なるべく小書き(小さく書く)にする」と書くだけ。日本国憲法には小さい「っ」が1つもない。

ひとことで言うと小さい「っ」は戦後に広まった書き方。憲法は「よつて」と大きく書いている!

もくじ
  1. 日本国憲法には、小さい「っ」が1つもない
  2. 「つ」で書くのは平安時代から。小さくなったのは800年近く後
  3. 国の決まりは「なるべく小書きにする」
  4. 法律は1989年ごろまで大きな「つ」だった
  5. どんでん返し:決まりを書いた文書そのものが「従つて」
  6. まとめ
  7. よくある質問

「きつて」「もつて」「よつて」。

こう書いてあったら、たいていの人は「打ちまちがい?」と思うはずです。でも、これは昔の日本語ではふつうの書き方でした。

小学館の『日本大百科全書』によると、「っ」「ッ」と小さく書くのが一般化したのは第二次世界大戦後のこと。しかも、国が今定めている「現代仮名遣い」でさえ、小さく書くことを「必ず」とは言わず、「なるべく小書きにする」(なるべく小さく書く)と書いています。

01日本国憲法には、小さい「っ」が1つもない

いちばん身近な証拠は、日本国憲法です。

e-Gov法令検索で前文を読むと、「わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し」「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうに」とあります。「わたって」「よって」の「っ」が、どちらも大きな「つ」です。

本文全体を数えてみると、「よつて」が6回、「あつて」が12回。小さい「っ」は1つもありません。ついでに言うと、小さい「ゃ・ゅ・ょ」もゼロです。

日本国憲法の公布は1946年11月3日。新しい書き方の決まり「現代かなづかい」が国から出されたのは、その2週間ほど後の11月16日でした(日本大百科全書)。憲法が「やうに」「ゐる」のような昔の仮名遣いで書かれているのも、同じ理由です。

02「つ」で書くのは平安時代から。小さくなったのは800年近く後

「がっこう」「きって」の「っ」が表す音を、促音(そくおん)、または「つまる音」と呼びます。

『日本大百科全書』によると、この音はもともと正式な音とは考えられていなかったようです。平安時代の中ごろまでは、多くの場合なにも書かずにすませていました(「をはって(終わって)」を「ヲハテ」と書くなど)。その後も、カタカナの「ム」を使ったり、「∨」のような記号を使ったりと、書き方はばらばらでした。

「ツ」「つ」で書く方法がほぼ定着したのは、平安時代の終わりごろです。ただし、そのときの「つ」はふつうの大きさでした。「つ」で書くようになってから、小さく書くのがふつうになるまでに、800年近くかかったことになります。

促音を「つ」で書く方法は平安時代の終わりごろにほぼ定着した。小さく書くのが一般化したのは第二次世界大戦後(日本大百科全書)
促音を「つ」で書く方法は平安時代の終わりごろにほぼ定着した。小さく書くのが一般化したのは第二次世界大戦後(日本大百科全書)

03国の決まりは「なるべく小書きにする」

では、今の国の決まりはどうなっているのでしょう。

文化庁のサイトに載っている内閣告示「現代仮名遣い」(1986年)の本文には、「がっこう(学校)」「かっき(活気)」などの例のあとに、こう書かれています。

「促音に用いる『つ』は,なるべく小書きにする。」(内閣告示「現代仮名遣い」本文 第1の4)

「きゃ」の「ゃ」のような小さい「ゃ・ゅ・ょ」も同じで、「拗音に用いる『や,ゆ,よ』は,なるべく小書きにする」。どちらも「必ず」ではなく「なるべく」です。

さかのぼると、1946年に国語審議会がまとめた「現代かなづかい」の時点で、すでに「なるべく右下に小さく書く」となっていました。戦後の新しい仮名遣いは、最初から「小さく書く。ただし、なるべく」という言い方だったのです。

しかも「現代仮名遣い」の前書きには、この決まりは法令・公用文書・新聞・雑誌・放送など、一般の社会生活での「よりどころ」であり、個々人の表記にまで及ぼそうとするものではないと書かれています。

04法律は1989年ごろまで大きな「つ」だった

戦後、世の中では小さい「っ」が広まりました。それでも、法律の文章はしばらく大きな「つ」のままでした。

滋賀県が1989年(平成元年)1月20日に出した通知があります。そこには、県の条例や規則などは「従来慣例的に大書きにすることとしてきた」(これまで習わしとして大きく書いてきた)が、国の法令について扱いが改められることになったので、県もそれにならう、と書かれています。滋賀県では、1989年2月1日以後に審査を終える条例などから「や・ゆ・よ・つ」を小書きにすることになりました。

文化庁のサイトでも、同じ変化が見られます。1986年の内閣訓令(内閣から役所への指示)「『現代仮名遣い』の実施について」は「内閣告示第1号をもつて」。2025年に「ローマ字のつづり方」を出したときの内閣訓令は「内閣告示第4号をもって」です。同じ形の文書でも、40年近くたって「つ」の大きさが変わっています。

ただし、今の法律がすべて小さい「っ」になったわけではありません。総務省が2022年に政令案への意見に答えた文書によると、国の法律は1988年12月に召集された国会に出されたものから、政令(内閣が定める決まり)は1989年1月の最初の閣議に出されたものから、小さく書くようになりました。それより前にできた法律や政令を直すときは、今でも元の書き方に合わせて大きな「つ」で書きます。

05どんでん返し:決まりを書いた文書そのものが「従つて」

もう一度、「現代仮名遣い」の前書きを見てみましょう。文化庁が公開している全文の1行目に、こうあります。

この仮名遣いは,語を現代語の音韻に従つて書き表すことを原則とし……

「なるべく小書きにする」と決めた文書の書き出しが、大きな「つ」なのです。ところが、同じ文書の本文に入ると「現代語の音韻に従って」と小さく書かれ、前書きの別の項目にも「テッカク(的確)」と小さい「ッ」が出てきます。

滋賀県の通知にあったように、当時の法令などには大きな「つ」で書く慣例がありました。前書きの「従つて」は、その慣例に沿った書き方だと考えられます。ただ、なぜ前書きと本文で書き分けたのかは、今回調べた資料には書かれていませんでした。

はっきり言えるのは、小さい「っ」がある日いっせいに切りかわったのではない、ということです。世の中の文章、法律、告示と、場所ごとに少しずつ広がっていきました。

06まとめ

「きつて」「よつて」のように「つ」を大きく書くのは、昔はふつうの書き方でした。小さい「っ」がふつうになったのは第二次世界大戦の後。法律の文章が小さく書くようになったのは、昭和の終わりから平成のはじめにかけてのことです。

そして、今の国の決まりも「なるべく小書きにする」。古い本で大きな「つ」を見かけたら、それは誤植ではなく、日本語の書き方が変わってきた跡なのです。

よくある質問

小さい「っ」はいつから使われていますか?

小さく書くのが一般化したのは、第二次世界大戦の後です(『日本大百科全書』)。つまる音を「つ」で書く方法は平安時代の終わりごろにほぼ定着しましたが、そのころの「つ」はふつうの大きさでした。

昔は「っ」をどう書いていましたか?

大きな「つ」で書いていました。「きつて」「よつて」のような書き方です。さらに古く、平安時代の中ごろまでは多くの場合なにも書かず、その後もカタカナの「ム」や記号を使うなど、書き方はばらばらでした(『日本大百科全書』)。

「っ」は必ず小さく書かないといけないのですか?

国の決まりは「なるべく」です。1986年の内閣告示「現代仮名遣い」は「促音に用いる『つ』は,なるべく小書きにする」としています。前書きには、個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない、とも書かれています。

日本国憲法に小さい「っ」はありますか?

1つもありません。e-Gov法令検索で本文を数えると「よつて」が6回、「あつて」が12回で、すべて大きな「つ」です。憲法の公布は1946年11月3日で、「現代かなづかい」が出たのはその後の11月16日でした。

法律で小さい「っ」を使い始めたのはいつですか?

1988年12月から1989年1月にかけてです。総務省の文書によると、法律は1988年12月に召集された国会に出されたものから、政令は1989年1月の最初の閣議に出されたものから小さく書くようになりました。

小さい「っ」の音を何と言いますか?

促音(そくおん)、または「つまる音」と言います。「がっこう」「きって」の「っ」が表す音です。国の決まり「現代仮名遣い」では、小さく書くことを「小書き」と言っています。

小さい「っ」はローマ字でどう書きますか?

次の子音の文字を重ねて書きます。2025年の内閣告示「ローマ字のつづり方」の例では、zasshi(雑誌)、teppan(鉄板)、nicchoku(日直)、yakkyoku(薬局)です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerJapanese uses a small "tsu" to mark a doubled consonant, as in "kitte" (stamp) or "gakkō" (school). 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Japanese uses a small "tsu" to mark a doubled consonant, as in "kitte" (stamp) or "gakkō" (school). Writers have used the letter "tsu" for this sound since the end of the Heian period, but for most of that time they wrote it at full size. According to a major Japanese encyclopedia, the small form became common only after World War II.

You can still see the old style in Japan's Constitution, which came out on November 3, 1946. It writes "yotte" with a big "tsu" six times and never uses the small one. A new set of kana rules followed less than two weeks later. It asked writers to use the little version "whenever possible," and the current rules from 1986 use very similar words.

125 words ・ CEFR B1

和訳を見る

日本語では、「きって(切手)」や「がっこう(学校)」のように、子音が重なることを示すのに小さい「っ」を使う。この音を「つ」の字で書くようになったのは平安時代の終わりからだが、その期間のほとんどは、ふつうの大きさで書かれていた。日本の大きな百科事典によると、小さい形がふつうになったのは第二次世界大戦の後のことだ。

古い書き方は、1946年11月3日に公布された日本国憲法で今も見ることができる。憲法は「よつて」を大きな「つ」で6回書き、小さい「っ」は一度も使っていない。その2週間足らず後に、新しい仮名遣いの決まりが出された。それは書き手に、小さい形を「なるべく」使うように求めていて、1986年の今の決まりもとてもよく似た言葉を使っている。

4択リーディングクイズ

Q1. What does the passage say about the history of the small "tsu"?

Q2. How many times does the Constitution write "yotte" with a big "tsu"?

Q3. What can we guess about the Constitution from the passage?

重要単語

  • double consonantB2
    名詞重なった子音The "ss" in "zasshi" is a double consonant. consonant は「子音」、vowel は「母音」。ローマ字では小さい「っ」を子音字を重ねて書く(zasshi, teppan)。
  • spellingA2
    名詞つづり、書き表し方The spelling of many words changed after the war. spell(つづる)+-ing。spelling test「つづりのテスト」。
  • whenever possibleB1
    句できるときはいつも、なるべくWrite the small "tsu" whenever possible. if possible「できれば」より「いつも心がける」感じが強い。as much as possible も近い。
  • compulsoryB2
    形容詞義務の、強制的なWearing a uniform is compulsory at our school. compel(強いる)の仲間。compulsory education「義務教育」は入試頻出。反対は optional。
  • guidelineB2
    名詞指針、よりどころThe government calls these rules a guideline for everyday writing. 複数形 guidelines で使うことが多い。follow the guidelines「指針に従う」。
  • constitutionB2
    名詞憲法Japan's Constitution was written in an older style of kana. 国の憲法は大文字で the Constitution。もとは「体のつくり、体質」の意味もある。
  • customB1
    名詞慣例、習慣By custom, old laws used the big "tsu." 社会の習慣は custom、個人の癖は habit。customs(複数)は「税関」。
小さい「っ」がふつうになったのは第二次世界大戦の後(日本大百科全書)。国の「現代仮名遣い」も今なお「なるべく小書き(小さく書く)にする」。日本国憲法は「よつて」「あつて」と大きな「つ」で書かれ、小さい「っ」は1つもない。

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出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. 日本大百科全書(ニッポニカ)「促音」(安田尚道)・改訂新版 世界大百科事典「促音」(亀井孝)(小学館・平凡社、コトバンク掲載)kotobank.jp
  2. 内閣告示第1号「現代仮名遣い」(1986年、一括ダウンロード版:前書き・本文・付表、文化庁)bunka.go.jp
  3. 国語審議会答申「現代かなづかい」(1946年9月21日、文化庁)bunka.go.jp
  4. 日本国憲法(昭和二十一年憲法、e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
  5. 滋賀県 総務部総務課長通知「県公報に登載する例規における拗音および促音に用いる『や・ゆ・よ・つ』の表記について」(平成元年1月20日 滋総第56号)pref.shiga.lg.jp
  6. 総務省「住民基本台帳法施行令の一部を改正する政令(案)に対する意見募集の結果」(2022年)soumu.go.jp

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