「草」の由来は「笑(わら)」→「w」。各国の笑い方8例で、日本のwだけ笑い声の音じゃない

読む前に予想してみよう!
ネットの「w」は、「ワッハッハ」という笑い声の音をまねた文字だ
2020年の論文は、日本語の「wwww」は「笑(warai)」の読みから来たとみられ、笑い声の音をまねたものではないとしている。タイの555やスペイン語の jajaja は笑い声の音を表す。
- 対象
- 辞書編集者による新語の選評と、各国のネットの笑いの書き方の比較
- 規模
- 選評2年分+各国の8例
- 研究の種類
- 新語の記述+探索的な比較研究(例はブログから収集)
- 確かさ
- ★★★☆☆
ネットの「草」は、笑いを「ワラ」「藁」と書き、「w」に縮め、「www」が草原に見えて生まれた(三省堂の辞書編集者の説明)。ネットの笑い8例をくらべた論文では、日本のwだけが笑い声の音ではなかった。
ひとことで言うと「草」は「笑(わら)」→「w」→「www」と変わってできた。wは笑い声の音じゃない!
もくじ
「人多すぎて草」「テスト全滅で草」
ネットでよく見る「草」は、「笑える」という意味です。でも、笑いと草にどんな関係があるのでしょう。
三省堂の辞書編集者たちの説明によると、道すじはこうです。「笑い」→「ワラ」「藁」→「w」→「wwww」→「草」。wを並べると草が生えているように見えるから「草」。そしてこの「w」は、各国のネットの笑い方8例の中で一つだけ「笑い声の音」ではない、と指摘する論文があります。
01「草」は2017年の「今年の新語」6位
三省堂は毎年、辞書を作る人たちが「これから辞書に載ってもおかしくないことば」を選ぶ「辞書を編む人が選ぶ 今年の新語」を発表しています。2017年、「草」は6位に選ばれました。選んだ理由を説明した文章(選評)には、こう書かれています。
「笑い」をカタカナで「ワラ」と書き、それに漢字を当てて「藁」。さらにローマ字の頭文字で「w」。それをたくさん並べたら「草」。文字の上では、藁から草へ、植物から植物へと移ってきたことになります。ただし選評が書いているのは書き方の移り変わりで、「藁」がそのまま「草」の語源だという意味ではありません。

02最初は「気持ち悪い」と言われていた
今は当たり前の「草」も、すぐに受け入れられたわけではありません。選評によると、使われ始めたころは「気持ち悪い」「うざい」という声も目につきました。2017年の2、3年前までは、「『草』って何ですか」という質問をネットでよく見かけたそうです。それが2017年には、若い人が「人多すぎて草」のように普通に使うようになっていました。
その5年後の「今年の新語2022」でも、「草」は一般からの投稿数で12位に入りました。選評は、2017年に6位だったことばが今でも新しいと感じられている例として挙げています。
03論文の8例では、日本以外は「笑い声の音」
では、ほかの国の人はネットでどう笑うのでしょう。南アフリカ大学の研究者グルンドリング(Grundlingh)が2020年に学術誌『Cogent Education』に発表した論文は、ブロガーたちが集めた各国の例を並べています。
辞書も、これらが「笑い声」であることを裏づけています。スペイン王立アカデミーの辞書では、ja は「笑い・あざけり・信じられない気持ちを表す声のことば」で、多くはくり返して使うとあります。韓国の『標準国語大辞典』では、ㅋの音で始まる 킥킥(キッキッ)が「こらえきれずに続けて漏れる笑い声」です。
つまり、タイの人の「555」も、スペインの人の「jajaja」も、声に出せば笑い声になります。でも日本の「www」を声に出して「ダブリュー、ダブリュー」と読んでも、笑い声にはなりません。wは笑い声の音ではなく、「笑」という漢字の読みの頭文字だからです。
04英語では「hahaha」と「LOL」
英語のネットの笑いは、笑い声の音そのままの hahaha。グルンドリングの論文は、おそらくネットでいちばんよく使われる笑い方だろうと書いています。もう一つ有名なのが LOL。オックスフォードの学習辞典によると、laugh out loud(声を出して笑う)の略で、メッセージやSNSで、楽しい気持ちや笑いを表すのに使います。
- That video was so funny, hahaha.(あの動画、めっちゃおもしろかった、ハハハ)
- I put my shoes on the wrong feet, lol.(靴を左右逆にはいてた、草)
05どんでん返し:日本だけが「特別」とは言い切れない
「世界で日本だけが変わった笑い方をしている」とまでは言えません。理由は三つあります。
一つ目は、英語の LOL も音ではなく頭文字だということ。laugh out loud の頭文字を並べた LOL は、日本の w と同じく、笑い声をまねた形ではありません。じつは論文は、ネットの笑いには lol のような頭文字の略語、hahaha のような笑い声の音、絵文字があると書いたうえで、笑い声の音の書き方だけを扱うと決めていました。LOL が8例に入っていないのはそのためです。
二つ目は、論文自体の性格です。挙げられた8例は、論文が「網羅したものではない」と断っているとおり、ブロガーたちが紹介した例を集めたものです。どの国でどの書き方がどれくらい使われているかを数えた調査ではありません。
三つ目に、「草」の意味の説明は、選評が「『三省堂国語辞典』風」に試しに書いたもので、辞書に正式に載ったという意味ではありません。今回調べた辞書(コトバンク掲載の国語辞典)でも、ネットの「草」の意味は確認できませんでした。
06まとめ
「笑い」を「ワラ」と書き、「藁」と書き、「w」に縮め、並べて「草」。ネットの「草」は、書き方を何度も変えて生まれたことばでした。
世界の「hahaha」「jajaja」「555」は笑い声の音。日本の「w」は「笑」の読みの頭文字。同じ笑いでも、笑い声の音を書くことばと、頭文字で書くことばがある。次に「草」と打つときは、タイの友だちなら「555」と打つのだと思い出してみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe Japanese internet word "kusa" grew out of several older spellings.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In Japan, people often write "kusa," which means "grass," when something is funny online. Why grass? First, people wrote "w" for "warai," the Japanese word for laughing. A long line like "wwwww" looks like grass, so people started to say "kusa."
In many other languages, people write the sound of laughing. English speakers write "hahaha," and Spanish speakers write "jajaja." In Thailand, people write "555" because five sounds like "ha."
70 words ・ CEFR A2
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日本では、ネットで何かがおもしろいとき、「草」とよく書きます。なぜ草なのでしょう。まず、人々は笑うことを表す日本語「warai」の「w」を書きました。「wwwww」のように長く並べると草のように見えるので、「草」と言うようになりました。
ほかの多くの言語では、人々は笑い声の音を書きます。英語を話す人は「hahaha」、スペイン語を話す人は「jajaja」と書きます。タイでは、5が「ハー」のように聞こえるので「555」と書きます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
日本の「草」とほかの国のネットの笑いの書き方の話なので B。
Q2. Why do people in Thailand write "555"?
people write "555" because five sounds like "ha" とあるので A。
Q3. In the passage, what does "funny" mean?
funny は「おかしい、笑える」。何かがおもしろいときに「草」と書く、という文脈なので D。
The Japanese internet word "kusa" grew out of several older spellings. According to dictionary editors at Sanseido, laughter was once written as "wara" on online message boards and then cut down to a single "w." When people typed many w's in a row, the line looked like grass, and "kusa" (grass) became slang for "that's funny."
In 2017, the editors ranked it sixth among their new words of the year. A 2020 study looked at eight examples of written laughter from different languages. Forms like "hahaha," "jajaja" and Thai "555" all copy the sound of laughing. Japanese "www" was the only one that did not. It comes from "warai," the Japanese word for laughter, so it shows the idea of laughing instead of the sound.
125 words ・ CEFR B1
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日本のネットのことば「草」は、いくつもの古い書き方から生まれた。三省堂の辞書編集者たちによると、笑いはかつてネット掲示板で「ワラ」と書かれ、その後「w」1文字にまで縮められた。wをたくさん並べて打つと、その列が草のように見えたので、「草」が「笑える」という意味の俗語になった。
2017年、編集者たちはこれを今年の新語の6位に選んだ。2020年のある研究は、さまざまな言語のネットの笑いの書き方を8例取り上げた。「hahaha」「jajaja」タイ語の「555」などは、どれも笑い声の音をまねている。日本語の「www」だけがそうではなかった。これは笑いを表す日本語「warai」から来ているので、音ではなく「笑っている」という意味を表している。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「草」が生まれた道すじと、日本語のwが他の言語の笑いと違う点を述べているので B。
Q2. What happened in 2017?
In 2017, the editors ranked it sixth among their new words of the year とあるので C。比較研究は2020年。
Q3. What can be inferred from the passage?
www は笑い声の音ではなく warai から来た、とあるので、声に出しても笑い声にはならないと推測できる。A。
When something online makes Japanese users laugh, they may simply type "kusa," the word for grass. Dictionary editors at Sanseido, who picked it as the sixth new word of 2017, trace a chain of spellings behind it. Laughter was written "wara" on message boards, then shortened to "w," and rows of w's came to look like a field of grass.
The editors also admit that the word was hardly new in 2017. One of them had posted an image with the phrase "kusa haeru" on Twitter two years earlier, and some early reactions called it creepy. A 2020 paper by Lezandra Grundlingh of the University of South Africa set Japanese "www" beside seven other forms, including English "hahaha," Korean "kkkk" and Thai "555," where the number five is read "ha."
Every form except the Japanese one copied a laughing sound. The comparison has limits. The examples came from bloggers, and the paper did not count how often each form is used. English also has "LOL," short for "laugh out loud," which is built from letters just like "www," so Japanese is less unusual than the list makes it look.
189 words ・ CEFR B2
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ネットで何かに笑ったとき、日本の利用者は「草」とだけ打つことがある。2017年の新語の6位にこれを選んだ三省堂の辞書編集者たちは、その背後にある書き方の連なりをたどっている。笑いは掲示板で「ワラ」と書かれ、次に「w」に縮められ、wの列が草原のように見えるようになった。
編集者たちは、2017年の時点でこの語がほとんど新しくなかったことも認めている。編集者の一人は2年前に「草生える」という言葉の入った画像をツイッターに投稿しており、初期の反応には「気持ち悪い」というものもあった。南アフリカ大学のレザンドラ・グルンドリングによる2020年の論文は、日本語の「www」を、英語の「hahaha」、韓国語の「kkkk」、数字の5を「ハー」と読むタイ語の「555」など、ほかの7つの形と並べた。日本語以外の形はすべて笑い声の音をまねていた。
この比較には限界がある。例はブロガーたちから集めたもので、論文は各形がどれくらい使われているかを数えていない。英語にも「laugh out loud」の略である「LOL」があり、これは「www」と同じく文字で作られている。だから日本語は、この一覧が見せるほど珍しいわけではない。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「草」が生まれた経緯と、各言語のネットの笑いの比較(とその限界)を述べているので A。
Q2. Where did the examples in Grundlingh's paper come from?
The examples came from bloggers とあるので C。
Q3. Why does the writer mention "LOL"?
LOL is built from letters just like "www," so Japanese is less unusual とあるので、文字で笑いを書くのは日本語だけではないと示すため。B。
重要単語
- laughterB1名詞笑い、笑い声Laughter filled the room.
laugh(笑う)の名詞形。発音は「ラフター」。burst into laughter「どっと笑い出す」。 - imitateB2動詞まねるChildren often imitate the sounds of animals.
名詞は imitation(まね、模造品)。hahaha や jajaja は笑い声を imitate した書き方。 - abbreviationB2名詞略語、省略形LOL is an abbreviation of "laugh out loud."
an abbreviation of / for ~「~の略」。動詞は abbreviate(省略する)。 - slangB2名詞俗語、スラング"Kusa" is internet slang for "that's funny."
数えられない名詞なので a slang とは言わない。a slang word / a slang expression ならOK。 - consonantB2名詞子音The letter "k" stands for a consonant sound.
反対は vowel(母音)。韓国語の ㅋㅋㅋ は子音だけをくり返す書き方。 - repeatA2動詞くり返すThai speakers repeat the number five to laugh online.
名詞は repetition。re-(再び)+peat(求める)が語源。 - in a rowB1熟語一列に;連続してShe typed ten w's in a row.
three days in a row「3日連続で」のように「連続して」の意味でもよく使う。
公式・一次情報をチェック
- lol(Cambridge Dictionary)dictionary.cambridge.org
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ネットの「草」は「笑い」→「ワラ」「藁」→「w」→「wwww」が草原に見える→「草」と生まれた(三省堂の辞書編集者の説明)。ネットの笑い8例をくらべた論文では、hahaha・jajaja・555は笑い声の音で、日本のwだけが「warai」の頭文字だった。
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出典・参考文献(6件)タップで表示
- 三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2017」選評(全文)dictionary.sanseido-publ.co.jp
- 三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2022」選評(全文)dictionary.sanseido-publ.co.jp
- Grundlingh (2020) Laughing online: Investigating written laughter, language identity and their implications for language acquisition, Cogent Education 7(1)doi.org
- Real Academia Española, Diccionario de la lengua española「ja」dle.rae.es
- 국립국어원『표준국어대사전』「킥킥」stdict.korean.go.kr
- Oxford Advanced Learner's Dictionary「LOL」oxfordlearnersdictionaries.com
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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