第11章|ライティング11-5メールとSNSの英語英語メールに「お世話になっております」はない。要るのは件名と1行目

「お世話になっております」を英語でどう書くか。英語でメールを書こうとすると、まずこの一行で手が止まります。ところが、アメリカの大学院生が教員に送ったお願いのメールを調べた研究では、英語を母語とする学生にとっても、丁寧なメールの書き方は固まっているとは言えませんでした。英語のメールの丁寧さは、決まり文句の訳では決まらないようです。では、何で決まるのでしょうか。
01英語メールは「用件が先」
日本語のメールは「お世話になっております」から始まり、本題に入る前に前置きが続くことがあります。英語のメールでは、件名と最初の1〜2文で用件を伝えるのが基本です。
型は次の6つの部品です。
- 件名(Subject): 用件が分かる短い語句(Question about the essay deadline)
- 宛名: Dear Ms. Brown, / Hello Ken,
- 1行目:用件 I'm writing to ask about ...
- くわしい内容: 必要な情報を短く
- お願いやお礼: Could you ...? / Thank you for your help.
- 結びと署名: Best regards, +名前
悪い例→よい例
先生に宿題の締め切りを確かめるメールで比べます。
- 件名なし / Hello. I am Yuki. I want to ask about homework. Please tell me the deadline.(こんにちは。ユキです。宿題について聞きたいです。締め切りを教えてください。)
件名がなく、どの宿題か分かりません。I want to ... や Please tell me ... は、目上の人には要求が強く響くことがあります。
- Subject: Question about the essay deadline
- Dear Ms. Brown,
- I hope you are well. I'm writing to ask about the deadline for the essay on climate change. Could you tell me whether it is due this Friday or next Monday?
- Thank you for your help.
- Best regards,
- Yuki Tanaka (Class 2-B)
(件名:作文の締め切りについての質問/ブラウン先生、お元気でしょうか。気候変動についての作文の締め切りについてお聞きしたく、ご連絡しました。今週の金曜日か来週の月曜日か、教えていただけますか。よろしくお願いします。田中ユキ(2年B組))
日本語の「よろしくお願いします」にあたる決まった一文はありません。場面に合わせて Thank you for your help. や I look forward to hearing from you.(お返事をお待ちしています)を使います。
02丁寧さの3段階を使い分ける
英語の丁寧さは、敬語の単語より「頼み方の形」で調整します。
| 場面 | くだけた(友だち) | ふつう(先生・同僚) | 丁寧(初めての相手・目上) |
|---|---|---|---|
| 書き出し | Hi Ken, | Hello Ms. Brown, | Dear Mr. Smith, |
| お願い | Can you send me the file? | Could you send me the file? | Would it be possible for you to send me the file? |
| お礼 | Thanks! | Thank you for your help. | I really appreciate your help. |
| 結び | See you! | Best, | Best regards, |
Biesenbach-Lucas(2007年)は、アメリカの大学の大学院生が教員に送ったお願いのメールを調べました。その結果、慣習的に丁寧とされる間接的な頼み方(Could you ...? など)は少なく、直接的な頼み方やほのめかしが多く見られました。また、英語を母語とする学生のほうが、そうでない学生より丁寧なメールを作るための表現を多く使えていました。メールの丁寧さの慣習は母語話者にとっても固まっていない、ということです。逆に言えば、いくつかの型を身につけるだけで差がつきます。
すぐに使える言いかえを挙げます。
- I want you to check my essay. → Could you check my essay?(作文を見ていただけますか。)
- Tell me the time. → Could you let me know the time?(時間を教えていただけますか。)
- I can't come tomorrow. → I'm afraid I can't come tomorrow.(あいにく明日はうかがえません。)
断るときや悪い知らせを伝えるときは、I'm afraid ...(あいにく〜)や Unfortunately, ...(残念ながら〜)を最初につけると、やわらかく伝わります。
03試験のEメール問題とのつながり
英検は2024年度のリニューアルで、準2級のライティングにEメール問題を加えました。3級にもEメール問題があります。2026年度第1回の公式の過去問で確かめた語数の目安は次のとおりです。
| 級 | Eメール問題の目安 | 同じ回の意見文の目安 |
|---|---|---|
| 準2級 | 40〜50語 | 50〜60語 |
| 3級 | 15〜25語 | 25〜35語 |
2026年度第1回では、3級は外国人の友達からのメールにある2つの質問に答える返信、準2級は相手のメールの下線部について、くわしく知るための質問を2つする返信でした。どちらも、相手のメールに対応していないと判断されると0点になることがあると書かれています。ここでも「用件が先」の型がそのまま使えます。相手の質問に、最初の文で答える。理由や説明を1〜2文つける。必要なら質問を返す。この順番を守ると、少ない語数でも内容がはっきりします。
たとえば「週末に何をしたか」「それはどうだったか」の2つを聞かれたら、次のように書けます(23語)。
- Thank you for your e-mail. Last weekend, I went hiking with my family. The view from the top of the mountain was beautiful.(メールをありがとう。先週末は家族とハイキングに行きました。山の頂上からの景色がとてもきれいでした。)
返信の最初の Thank you for your e-mail. は、短くて使いやすい書き出しです。試験の形式は年度で変わることがあるので、受験する回の公式情報を必ず確認してください。
04SNSの英語:短い。でも公開されている
SNSの英語は、メールよりずっとくだけています。主語の I を省いたり、文の途中で切ったりするのはよくあることです。
- Made matcha cookies for the first time. A little bitter, but I loved them!(初めて抹茶クッキーを作った。少し苦いけど、気に入った!)
- Finished my first English novel today! It took me two months.(今日、初めて英語の小説を読み終えた!2か月かかった。)
最初の例の Made ... は I made ... の I を省いた形です。日記やSNSのくだけた文体としては自然ですが、試験の作文やメールでは主語を省きません。SNSの書き方をそのまま作文に持ちこまないよう、場面で切りかえます。
SNSで英語を書くうえで、大事なことが2つあります。
- 公開された文章は消えにくい。 投稿を消しても、ほかの人が保存したり画面を撮ったりしていることがあります。書く前に「先生や家族に見られても困らないか」を考えます。
- 短い文ほど誤解されやすい。 冗談のつもりの一言が、文脈なしでは失礼に読まれることがあります。迷ったら、主語と動詞をそろえた完全な文で書くほうが安全です。
大人の学習者にとって、SNSは英語で発信する練習の場になります。一方で中高生には、次の項で見るように、年齢の条件と安全面での注意が欠かせません。
05中高生が守る安全のルール
多くのSNSや言語交換サービス、AIサービスには利用できる年齢の条件があります。たとえば TikTok は利用規約で13歳以上を条件とし、国によってはさらに高い年齢や保護者の同意を求めています。Claude は18歳以上です。条件はサービスごとに違い、変わることもあるので、使う前に保護者と一緒に公式の規約を確かめてください。
総務省は、18歳未満の人や保護者、先生向けに「インターネットトラブル事例集」を公開しています。2026年版では、SNS、出会い、個人情報、犯罪被害などの事例が漫画や解説つきで紹介され、生成AIによる画像の被害を扱った特集もあります。英語でのやりとりでも、起きるトラブルの形は同じです。
英語で書くときに守るルールは次のとおりです。
- 本名、学校名、学年、住所、最寄り駅、部活の予定を書かない
- 制服や家の外観、窓の外の景色が写った写真を載せない
- 写真の位置情報(GPS)をオフにする
- 知らない人と個別のメッセージ(DM)でやりとりしない
- 写真や個人情報を求められたら、返信せずに保護者か先生に相談する
英語で次のようなメッセージが来たら、危険のサインです。
- Can we talk on another app?(別のアプリで話さない?)
- Don't tell your parents about me.(わたしのことは親に言わないで。)
- Send me a picture of you.(あなたの写真を送って。)
英語の練習が目的なら、知らない人とつながる必要はありません。日記を書く、学校の先生に見てもらう、登録不要で使える Write & Improve のような学習用の道具を使う、といった方法で、安全に書く力を伸ばせます。
件名と1行目で用件を伝え、丁寧さは依頼の形で調整する
今日からのやり方
- メールを書く前に、用件を日本語で1文にまとめる
- 件名を用件が分かる5語前後の英語で書く
- 1行目に I'm writing to ... で用件を書き、お願いは Could you ...? にする
- 結びに Thank you for your help. と Best regards, を入れて署名する
- SNSに書く前に、個人情報と写真の写りこみを確認する
レベル別:あなたならこうする
英検3級のEメール問題(目安15〜25語)を使い、相手の質問に1文で答え、理由を1文つける練習をします。Thank you for your e-mail. から書き始めます。
同じ用件を、友だち向け・先生向け・初めての相手向けの3通りで書き分けます。Can / Could / Would it be possible の違いを意識します。
断り・お詫び・催促など、気をつかうメールを書きます。I'm afraid、Unfortunately、I was wondering if ... などで角を立てずに伝える練習をします。
よくある失敗と対策
決まった訳はありません。I hope you are well. や Thank you for your quick reply. のように、場面に合った一文で始めるか、すぐ用件に入ります。
I want you to ... は要求が強く響きます。Could you ...? や I was wondering if you could ... に言いかえます。
文章だけでなく、写真の制服・看板・景色にも注意します。投稿前に、知らない人が見て住んでいる場所が分からないかを確かめます。
1 MIN
先生に質問するメールの件名と1行目だけを英語で書く
友だちに出したい、この節の3問
タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。
11-5英語のメールで丁寧さを出すいちばんの方法は?
決まった挨拶文より、お願いの言い方です。Send me ... より Could you send me ...? のほうが相手に選ぶ余地を残すので丁寧に響きます。命令文に please をつけても、命令であることは変わりません。
11-5英語の母語話者なら、丁寧なメールは書ける?
アメリカの大学院生が教員に送ったメールの研究では、直接的な頼み方やほのめかしが多く、丁寧なメールの慣習は母語話者にとっても固まっていませんでした。学ぶ価値のある技術です。
11-5SNSの年齢制限は何歳から?
サービスごとに違います。たとえば TikTok は利用規約で13歳以上が条件で、国によってはさらに高い年齢や保護者の同意を求めています。使う前に、それぞれの公式の規約を確かめます。
PRACTICE KIT
この節の実践キット
原田英語のサイトで練習する
使えるサイト・アプリ
動画で学ぶ
もっと詳しく(コラム)
この節の根拠(研究・公式情報)
米国の大学院生が教員に送った依頼メールを分析。慣習的に丁寧な間接的依頼より直接的な依頼やほのめかしが多く、母語話者のほうが丁寧なメールを作る表現を多く使えていた。
Biesenbach-Lucas, S. (2007). Students writing emails to faculty: An examination of e-politeness among native and non-native speakers of English. Language Learning & Technology, 11(2), 59–81.出典を開く ↗18歳未満の人・保護者・教員向けに、SNS、出会い、個人情報、犯罪被害などのトラブル事例を漫画と解説で紹介。生成AIによる画像被害の特集もある。
総務省「インターネットトラブル事例集(2026年版)」出典を開く ↗サービスは13歳以上の人だけが対象と定めている。国・地域ごとの追加規定で、より高い年齢や保護者の同意を求める場合もある。
TikTok「Terms of Service」(利用規約)出典を開く ↗Eメール問題の語数の目安は準2級で40〜50語、3級で15〜25語。準2級のEメール問題は2024年度のリニューアルで加わった。
公益財団法人 日本英語検定協会「2026年度第1回検定 一次試験問題(準2級・3級)」出典を開く ↗よくある質問
Dear と Hi はどう使い分ける?
初めての相手や、仕事・学校の正式な連絡では Dear +名字が無難です。何度かやりとりして相手が Hi で書いてきたら、合わせて Hi にしてかまいません。
結びは Sincerely と Best regards のどちら?
Best regards はメールで広く使える無難な結びです。Sincerely はより改まった手紙や正式な書類で使われることが多い言い方です。迷ったら Best regards を選びます。
中学生が英語でSNSを使ってもいい?
サービスごとに年齢の条件があり、13歳以上を条件とするものもあります。条件を満たしていても、保護者と使い方のルールを決め、知らない人とのやりとりはしないことが大前提です。




