考えが行いになり、行いが習慣になり、習慣が暮らしになる。だから自分の考えを選べば、人生は少しずつ変えられる——というのがこの本の中身です。
英語は古風で文も長めですが、同じ比喩と同じ構文がくり返されるので、英検準1級〜1級・大学受験の上級くらいの人なら対訳つきで十分読めます。高校生は名言11文と第4章から始めると入りやすいです。
知ってた? 目から鱗の3連発
題名の thinketh って何?
thinks の古い形です。昔の英語では3人称単数の -s が -eth でした(he thinketh, he hath, he seeketh)。題名は聖書の英訳(1611年の欽定訳)の言い回しをそのまま借りています。
「原因と結果の法則」は原題の直訳?
ちがいます。 原題は「人は考えるとおりに」という意味で、「原因と結果の法則」は日本の出版社がつけた題です。ただ、本文には cause and effect(原因と結果)が何度も出てきて、中身をよく表した題になっています。
本文に聖書・シェイクスピア・仏典が隠れている
「探す者は見つけ」は新約聖書のマタイ、「わたしたちの行く末を形づくる神」はシェイクスピア『ハムレット』、第1章の詩は仏典『ダンマパダ』、最後の「静まれ、黙れ」はマルコによる福音書です。引用元を知ると、1冊で英語圏の教養の入口に立てます。(下の「引用元を知る」)
01どんな本? だれが書いた?
ジェームズ・アレン(James Allen, 1864–1912) はイギリスの作家です。イングランド中部のレスターで生まれ、1879年に父を亡くし、15歳で学校をやめて働きはじめました。工場の事務や秘書の仕事をしながら文章を書き、1902年に雑誌 The Light of Reason(のちに The Epoch)を始め、1903年にイングランド南西部の海辺の町イルフラクームへ移って、亡くなるまでそこで書きつづけました。この本のまえがきの最後に書かれた住所が、そのイルフラクームです。
As a Man Thinketh は1903年に出た、7つの短い章からなる小さな本です。題名は旧約聖書の箴言23章7節「For as he thinketh in his heart, so is he.(人は心の中で考えるとおりの人である)」から取られています。アレンは生きているあいだは有名ではありませんでしたが、この本は出版から120年以上たった今も刷られつづけ、のちの自己啓発の書き手たちに影響をあたえたとされています。
日本では『原因と結果の法則』(坂本貢一 訳、サンマーク出版、2003年)の題で広く知られています。
英語の原文はパブリックドメインです。 作者のアレンは1912年に亡くなっていて、日本でも保護期間はとうに終わっています(2018年に保護期間が死後70年へ延びたときも、すでに切れていた作品は延長の対象外です)。このページの英文は Project Gutenberg が公開しているテキスト(eBook #4507)をもとに、明らかな打ちまちがいだけを直したものです。
日本語訳は、このページのために原田英語が新しく訳したものです。 書店で売られている邦訳には、原文とは別に翻訳者の著作権があります。翻訳書の文章は1文も使っていません。英語の学習に役立つよう、原文の語順と比喩がわかる範囲で、なるべく素直に訳しています。
027章を1分でつかむ
この本は答えを全部書くための本ではなく、「人は自分の考えで自分をつくっている」と読者が自分で気づくための本だ、という宣言です。
1考えと人柄Thought and Character人柄は、その人がくり返し考えてきたことの合計。種が植物になるように、考えが行いになり、行いが喜びや苦しみという実を結ぶ。だから人は自分の考えの「主人」になれる。
2考えが境遇をつくるEffect of Thought on Circumstances心は庭。手入れしなければ雑草が生える。考えは固まって習慣になり、習慣は固まって境遇になる。人は境遇を直接は選べないが、考えは選べるので、間接的に境遇を形づくれる。
3考えと体と健康Effect of Thought on Health and the Body体は心のしもべ。不安や悪意は体をむしばみ、明るく清らかな考えは体を若々しくする。顔のしわも、その人の考え方が刻むもの。
4考えと目的Thought and Purpose目的のない考えは海をただよう小舟。まず目的を決め、大きな目的がなければ目の前の務めを完ぺきにこなす。疑いと恐れを追い出せば、考えは「生み出す力」になる。
5成し遂げる力は考えからThe Thought-Factor in Achievement成功も失敗も、自分の考えの結果。人を本当に変えられるのは本人だけ。何かをなしとげるには、欲の一部を手ばなす「犠牲」が要り、大きくなしとげたいほど大きな犠牲が要る。
6ビジョンと理想Visions and Ideals夢見る人が世界を前に進める。どんぐりの中に樫の木が眠るように、夢は現実の苗。貧しい若者も、理想を思いえがき、空き時間を使って力を伸ばせば、境遇の外へ出ていける。
7心の静けさSerenity心の落ち着きは知恵の宝石。原因と結果がわかると、人はいらいらしなくなる。落ち着いた人は信頼され、仕事もうまくいく。自制は強さ、正しい考えは熟達、落ち着きは力。
03このページの使い方
- 1章のまとめを日本語で読む
各章の頭の「この章のまとめ」と「教養メモ」を先に読み、話の筋を頭に入れます。筋がわかっていると、長い英文でも迷いません。
- 21段落ずつ、英語 → 訳 → 英語
「英日を並べる」で、まず英語を読み、わからないところだけ右の訳を見て、もう一度英語を読みます。
- 3「訳をかくす」で自分で読む
訳をぼかして英語だけを読み、意味がとれたかをタップで確かめます。わからなかった段落だけ印をつけて、あとで読み直します。
- 4名言を音読して覚える
11文の名言を1日2〜3文、音声をまねて5回ずつ音読し、最後は見ないで言ってみます。As A, so B などの型がそのまま身につきます。
7日で読みきるプラン
まえがき+第1章(約800語)。題名と As A, so B の型をつかむ。
第2章の前半(22〜36段落)。心の庭のたとえ。
第2章の後半(37〜52段落と詩)。三つの例と「考え → 習慣 → 境遇」の連鎖。
第3章(体と健康)。読むときの注意もいっしょに。
第4章(目的)。いちばん短く、いちばん使える章。
第5章(なしとげる力)。He who would 〜 の型。
第6章・第7章。名言11文を通して音読して仕上げ。
04古い英語の読み方
100年以上前のイギリスの英語なので、今の教科書と少しちがう形が出てきます。先にこの4つを知っておくと、ぐっと読みやすくなります。
古い動詞の形
- thinketh / seeketh / findeth / knocketh
- = thinks / seeks / finds / knocks(-eth は古い3単現)
- hath
- = has
- ye
- = you(複数・主語)。最終段落の wherever ye may be
- unto
- = to。Say unto your heart
- Be not impatient
- = Don't be impatient(古い否定の命令)
イギリス式のつづり
- mould / moulder
- = mold(米)。形づくる
- favour / labour / harbour / demeanour
- = favor / labor / harbor / demeanor(米)
- armoury / centre
- = armory / center(米)
- gaoler
- = jailer。発音も同じ「ジェイラー」
- focussed
- = focused。イギリスでは s を重ねることもある
man は「人間」
- A man is literally what he thinks
- man は男性だけでなく「人間・人」。当時の書き方で、まえがきでは men and women と書いています
- manly / unmanly
- 当時の価値観で「しっかりした/意気地のない」の意味。訳ではそう訳しました
読めると一気に楽になる型
- As A, so B
- 「A のように B」。この本の骨組み
- If you would 〜
- 「〜したいなら」。would は意志
- Let 〜, and ...
- 「〜してみなさい、そうすれば…」
- be it A or B
- 「A であれ B であれ」
- Not A but B を前に出した倒置
- Not what he wishes ... does a man get, but what he justly earns.
05引用元を知ると、教養になる
アレンは聖書・シェイクスピア・仏典の言葉を、出典を書かずに文章へ織りこんでいます。英語圏の人にはピンとくる「元ネタ」です。
- 題名・第1章
For as he thinketh in his heart, so is he.
人は心の中で考えるとおりの人である。
出典旧約聖書 箴言 23章7節(欽定訳)
題名の出どころ。アレンは he を a man に変えて引いています。
- 第1章の詩
Thought in the mind hath made us, ...
心の中の考えが、わたしたちをつくった……
出典仏典『ダンマパダ(法句経)』第1・2偈
「心がすべてに先立つ。悪い心で語り行えば、苦しみがついてくる。車輪が牛の足あとについていくように」という一節を英語の詩にしたもの。
- 第1章の最後
He that seeketh findeth; and to him that knocketh it shall be opened.
探す者は見つけ、たたく者には開かれる。
出典新約聖書 マタイによる福音書 7章8節
Ask, and it shall be given you(求めよ、さらば与えられん)の続きの部分。
- 第2章
The "divinity that shapes our ends" is in ourselves
「わたしたちの行く末を形づくる神」は、わたしたちの中にいる
出典シェイクスピア『ハムレット』5幕2場
元は There's a divinity that shapes our ends, rough-hew them how we will.(人が荒けずりしても、最後の形を決めるのは神だ)。アレンは「その神は自分自身だ」とひっくり返して使っています。
- 第6章
"ask and receive"
「求めよ、そうすれば受けとる」
出典新約聖書 ヨハネによる福音書 16章24節ほか
ask, and ye shall receive という聖書の言い回しを短くしたもの。
- 第7章
more to be desired than gold—yea, than even fine gold
金よりも、そう、純金よりも望ましい
出典旧約聖書 詩編 19編10節
More to be desired are they than gold, yea, than much fine gold. を下じきにした言い回し。yea は yes の古い形。
- 第7章の最後
Peace, be still!
静まれ、黙れ。
出典新約聖書 マルコによる福音書 4章39節
嵐の湖で、舟の中で眠っていたイエスが起きて、風と湖に言う言葉。直前の「魂の小舟で主が眠っている。起こしなさい」もこの場面です。
06読むときの注意(120年前の本として)
この本には、病気も貧しさも考えの結果だと読める強い言い方が何度も出てきます。けれども今わかっていることでは、病気には感染・遺伝・環境が、貧しさには生まれた家や社会のしくみ、運が大きくかかわります。自分や人を責める材料にしないことが、この本を今読むときのいちばん大事な注意です。
第3章のこの一文(63段落)は、医学的にはまちがいです。手洗い・予防接種・具合が悪いときの受診は、考え方とは関係なく必要です。この部分は1903年の文章として読みましょう。
第5章の84〜86段落は、しいたげられる側の弱さも原因だと読める書き方です。今の人権の考え方とは大きくずれていて、差別や暴力を受けている人に責任があるという意味に使ってはいけません。
「境遇は直接選べないが、考えは選べる」「考えは習慣になり、習慣は暮らしになる」「大きな目的がないなら、目の前の務めを完ぺきに」「失敗のあいだに身についた強さが本当の成功」——ここは英語の勉強にもそのまま使えます。自分で変えられるところ(考えと毎日の行い)に集中する、と読むのがおすすめです。
07全文対訳:As a Man Thinketh
1段落ずつ、左が英語の原文、右が日本語訳です。音声(イギリス英語)は、各章の名言1文と、下の「名言11」につけています。「訳をかくす」にすると訳がぼやけるので、英語だけで読んでから、タップして意味を確かめられます。段落の番号は原文の段落の通し番号です。
Forewordまえがき
この章のまとめこの本は答えを全部書くための本ではなく、「人は自分の考えで自分をつくっている」と読者が自分で気づくための本だ、という宣言です。
They themselves are makers of themselves. 人は、自分で自分をつくっている。
教養メモ心を「織り手」、人柄を「内側の衣」、境遇を「外側の衣」にたとえています。全体をつらぬく比喩は、このあと「種と実」「庭」「小舟と舵」と姿を変えて何度も出てきます。比喩を追いかけながら読むと、長い文でも迷いません。
この章の単語と、読みにくい文の読み方
単語
- meditation
- 瞑想・深く考えること
- exhaustive
- すべてを網羅した
- treatise
- (学術的な)論文
- suggestive
- 考えるきっかけをくれる、示唆に富む
- by virtue of
- 〜によって、〜のおかげで
- hitherto
- これまで(かたい言い方)
読みにくい文
It is suggestive rather than explanatory
A rather than B =「B というより A」。比べる順番が日本語と逆になるので注意。
as they may have hitherto woven in ignorance and pain they may now weave in enlightenment and happiness
as =「〜のように」。「これまで〜のように織ってきたかもしれないが、これからは〜に織れる」と前後を対にして読みます。woven は weave(織る)の過去分詞。
Thought and Character考えと人柄

この章のまとめ人柄は、その人がくり返し考えてきたことの合計。種が植物になるように、考えが行いになり、行いが喜びや苦しみという実を結ぶ。だから人は自分の考えの「主人」になれる。
A man is literally what he thinks, his character being the complete sum of all his thoughts. 人は文字どおり「考えているものそのもの」であり、人柄とは考えをすべて足し合わせたものです。
教養メモ題名のもとになった旧約聖書の箴言(23章7節)の一文から始まります。後半には新約聖書の「探せ、そうすれば見つかる」も出てきます。アレンはキリスト教の言葉と仏教の言葉(ダンマパダ)を同じ章に並べていて、宗派をこえた「心の法則」として語ろうとしているのがわかります。
By thought was wrought and built. If a man's mind
Hath evil thoughts, pain comes on him as comes
The wheel the ox behind....
..If one endure
In purity of thought, joy follows him
As his own shadow—sure."
考えによって形づくられ、建てられたもの。心に
悪い考えを抱けば、苦しみがついてくる。
牛のあとを、車輪がついていくように……
……清らかな考えを
保ちつづければ、喜びがついてくる。
自分の影のように、確かに。仏典『ダンマパダ(法句経)』の冒頭(第1・2偈)を英語の詩にしたもの。アレンは訳者名を書いていません。
この章の単語と、読みにくい文の読み方
単語
- aphorism
- 格言
- spontaneous
- とっさの、自然に起きる
- garner
- 刈り取る、集める
- artifice
- 小細工、たくらみ
- harbour
- (考えを)心に抱く(米 harbor)
- importunity
- しつこく求めること
読みにくい文
As the plant springs from ... the seed, so every act of a man springs from the hidden seeds of thought
As A, so B =「A のように、B も」。この本でいちばん多い型です。as を見たら、あとに so が来るか探しましょう。
thus does a man garner in the sweet and bitter fruitage of his own husbandry
thus のあとで does a man garner と主語と助動詞がひっくり返る倒置。husbandry は「農業・畑仕事」の古い言い方。
Only by much searching and mining, are gold and diamonds obtained
Only by 〜 が文頭に来ると、あとが疑問文の語順(are gold ... obtained)になります。入試の倒置そのままの形。
Effect of Thought on Circumstances考えが境遇をつくる

この章のまとめ心は庭。手入れしなければ雑草が生える。考えは固まって習慣になり、習慣は固まって境遇になる。人は境遇を直接は選べないが、考えは選べるので、間接的に境遇を形づくれる。
Men do not attract that which they want, but that which they are. 人が引き寄せるのは「ほしいもの」ではなく、自分が「そうであるもの」です。
教養メモいちばん長く、この本の中心になる章です。「考え → 習慣 → 境遇」の連鎖(49段落)は、今の言葉でいえば「習慣化」の話です。一方で「貧しさも病気も本人の考えのせい」と読める強い言い方もあり、ここは今の知識と照らして読む必要があります(下の「読むときの注意」)。シェイクスピア『ハムレット』の一句も、さりげなく引用されています。
Let failure find its false content
In that poor word, 'environment,'
But spirit scorns it, and is free.
"It masters time, it conquers space;
It cows that boastful trickster, Chance,
And bids the tyrant Circumstance
Uncrown, and fill a servant's place.
"The human Will, that force unseen,
The offspring of a deathless Soul,
Can hew a way to any goal,
Though walls of granite intervene.
"Be not impatient in delays
But wait as one who understands;
When spirit rises and commands
The gods are ready to obey."
失敗は「環境」というみすぼらしい言葉に
にせの満足を見つければいい。
けれども精神はそれをあざ笑い、自由である。
精神は時を治め、空間を征し、
「偶然」という大口たたきのぺてん師をひるませ、
暴君「境遇」に王冠をはずさせて、
しもべの座につかせる。
人の意志、その見えない力は、
死なない魂から生まれた子。
花こう岩の壁が立ちはだかっても、
どんなゴールへも道を切りひらく。
遅れにいらだつことなく、
わけを知る者として待ちなさい。
精神が立ちあがって命じるとき、
神々はしたがう用意ができているのだから。アレンは作者名を書いていません。
この章の単語と、読みにくい文の読み方
単語
- cultivate
- 耕す、育てる
- indispensable
- なくてはならない
- buffet
- (風や波が)もみくちゃにする
- vicissitudes
- 移り変わり、浮き沈み
- thwart
- じゃまする、くじく
- gaoler
- 看守(jailer の古い英つづり)
- almshouse
- 救貧院(貧しい人の収容施設)
- indolent
- 怠惰な
- indigence
- ひどい貧しさ
- crystallize
- 結晶する、はっきり固まる
読みにくい文
thought ... rapidly crystallizes into habit, and habit solidifies into circumstance
A crystallizes into B =「A が固まって B になる」。into は「変化の結果」。このあと同じ型が12回くり返されます。
Not what he wishes and prays for does a man get, but what he justly earns.
目的語の Not what 〜 を文頭に出したので、does a man get と倒置。ふつうの語順なら A man gets not what he wishes for, but what he earns.
Let a man radically alter his thoughts, and he will be astonished
Let 〜, and ... =「〜してみなさい、そうすれば…」。命令文+and の古風な形。
be it foul or clean
= whether it is foul or clean(きたなかろうと、きれいだろうと)。be が文頭に来る譲歩の形で、今も be it ever so humble などに残っています。
Effect of Thought on Health and the Body考えと体と健康
この章のまとめ体は心のしもべ。不安や悪意は体をむしばみ、明るく清らかな考えは体を若々しくする。顔のしわも、その人の考え方が刻むもの。
If you would protect your body, guard your mind. 体を守りたいなら、心を守りなさい。
教養メモ心と体がつながっているという考え方は今では広く知られていますが、この章には「恐れが何千人も殺している」「考えを清めればばい菌を気にしなくていい」など、医学的には言いすぎ・まちがいの部分もあります。1903年の文章として、比喩と事実を分けて読みましょう。
この章の単語と、読みにくい文の読み方
単語
- decay
- おとろえ、腐ること
- demoralize
- 気力をくじく
- plastic
- 形を変えやすい(プラスチックの元の意味)
- malevolent
- 悪意のある
- countenance
- 顔つき、表情
- dissipate
- 散らす、追いはらう
読みにくい文
If you would protect your body, guard your mind.
if 節の would は「〜したいなら」という意志。If you want to protect 〜 と同じ意味です。If you would renew your body も同じ。
who cannot distinguish them?
形は疑問文でも「誰でも見分けられる」という意味の修辞疑問。
There is no physician like cheerful thought
There is no A like B =「B ほどの A はない」。最上級と同じ意味になります。
Thought and Purpose考えと目的

この章のまとめ目的のない考えは海をただよう小舟。まず目的を決め、大きな目的がなければ目の前の務めを完ぺきにこなす。疑いと恐れを追い出せば、考えは「生み出す力」になる。
The will to do springs from the knowledge that we can do. やろうとする意志は、自分には「できる」と知っていることから生まれます。
教養メモ英語の勉強にいちばんそのまま使える章です。「大きな目的がまだない人は、目の前の小さな務めを完ぺきに」(73段落)は、「とりあえず今日の10分を確実に」という習慣づくりの考え方そのもの。「何度失敗しても、そのあいだに身についた強さが本当の成功のものさし」(72段落)も、伸び悩みの時期の支えになります。
この章の単語と、読みにくい文の読み方
単語
- drift
- ただよう、流される
- prey
- 餌食(fall an easy prey to 〜 = 〜のかっこうの餌食になる)
- legitimate
- 正当な、まっとうな
- ephemeral
- はかない、つかのまの
- disintegrating
- ばらばらにくずす
- wielder
- (力や道具を)使いこなす人
読みにくい文
Until thought is linked with purpose there is no intelligent accomplishment.
Until A, (no) B =「A してはじめて B」。not ... until の形を日本語では「〜してはじめて」と訳すと自然です。
The weakest soul, knowing its own weakness, ... will at last grow divinely strong.
最上級の主語(The weakest soul)は「いちばん弱い魂でさえ」と even の意味で読みます。
Thoughts of doubt and fear never accomplished anything, and never can.
never can のあとに accomplish anything が省略されています。英語は同じ動詞のくり返しをよく省きます。
The Thought-Factor in Achievement成し遂げる力は考えから
この章のまとめ成功も失敗も、自分の考えの結果。人を本当に変えられるのは本人だけ。何かをなしとげるには、欲の一部を手ばなす「犠牲」が要り、大きくなしとげたいほど大きな犠牲が要る。
He who would accomplish little must sacrifice little; he who would achieve much must sacrifice much. 少しなしとげたい人は少し、多くなしとげたい人は多く犠牲にしなければなりません。
教養メモ「犠牲」というと大げさですが、中身は「スマホの時間を少し勉強に回す」のような、今の楽しみを少し手ばなすことです。一方、圧制者と奴隷の段落(84〜86)は、しいたげられる側の弱さも原因だと読める書き方で、今の人権の考え方とは大きくずれます。当時の考え方として距離をとって読みましょう。
この章の単語と、読みにくい文の読み方
単語
- equipoise
- つり合い、均衡
- oppressor
- 圧制者、しいたげる者
- abject
- みじめな、卑屈な
- latent
- 眠っている、潜在的な
- magnanimous
- 心の広い、寛大な
- zenith
- 天頂、頂点
- diadem
- 王冠
読みにくい文
He who would accomplish little must sacrifice little
He who 〜 = The person who 〜(〜する人は)。would はここでも「〜したい」という意志。
As he thinks, so he is; as he continues to think, so he remains.
As A, so B の対句。リズムがよいので、音読して丸ごと覚えるのに向いています。
None but himself can alter his condition.
None but A =「A 以外の誰も〜ない」= Only A。
Visions and Idealsビジョンと理想

この章のまとめ夢見る人が世界を前に進める。どんぐりの中に樫の木が眠るように、夢は現実の苗。貧しい若者も、理想を思いえがき、空き時間を使って力を伸ばせば、境遇の外へ出ていける。
Dreams are the seedlings of realities. 夢は、現実の苗なのです。
教養メモ作業場で働く若者が、わずかな空き時間とお金で自分を伸ばし、やがて多くの人を動かす人になる——という106段落は、この本でいちばん物語らしい場面です。成功した人を見て「運がいい」と言う人は、その人の暗闇と努力を見ていない、という108段落も有名です。コロンブス・コペルニクス・ブッダの名前が「ビジョンを実現した人」の例として並びます。
この章の単語と、読みにくい文の読み方
単語
- sordid
- さもしい、卑しい
- cherish
- 大切にする、心に抱く
- acorn
- どんぐり
- uncongenial
- 気に入らない、性に合わない
- gravitate
- (自然に)引き寄せられる
- bucolic
- 田舎の、ひなびた
- undaunted
- くじけない
- arduous
- 骨の折れる、つらい
読みにくい文
You cannot travel within and stand still without.
within =「内側で」、without =「外側で」。without を「〜なしで」ではなく、古い副詞の「外で」として使っています。
Chance is not.
be 動詞だけで「存在する」。Chance does not exist.(偶然というものはない)と同じです。To be, or not to be の be と同じ使い方。
Very soon so altered has his mind become that the workshop can no longer hold him.
so 〜 that ... の so altered を前に出した倒置。ふつうの語順なら His mind has become so altered that 〜。
Serenity心の静けさ

この章のまとめ心の落ち着きは知恵の宝石。原因と結果がわかると、人はいらいらしなくなる。落ち着いた人は信頼され、仕事もうまくいく。自制は強さ、正しい考えは熟達、落ち着きは力。
Self-control is strength; Right Thought is mastery; Calmness is power. 自制は強さ。正しい考えは熟達。落ち着きは力。
教養メモ最後の「静まれ、黙れ(Peace, be still!)」は、新約聖書のマルコによる福音書で、嵐の湖の舟の中で眠っていたイエスが起きて風と湖に言う言葉です。その直前の「魂の小舟で主が眠っている。起こしなさい」は、この場面を下じきにしています。元の場面を知ると、締めくくりの意味がぐっと深くなります。
この章の単語と、読みにくい文の読み方
単語
- equanimity
- 心の平静
- reverence
- 敬う(動詞)/敬意
- demeanour
- ふるまい、態度(米 demeanor)
- tumultuous
- 大さわぎの、荒れくるう
- tempest
- 嵐
- helm
- 舵
読みにくい文
The more tranquil a man becomes, the greater is his success
The 比較級 A, the 比較級 B =「A すればするほど B」。後半は the greater is his success と倒置しています。
He does but sleep: wake Him.
but = only。He only sleeps(眠っているだけだ)。have but to 〜(〜しさえすればよい)も同じ but です。
wherever ye may be, under whatsoever conditions ye may live
ye は古い英語の「あなたがた」(主語)。whatsoever は whatever を強めた形。
08名言11:音読して覚える
短くて型のはっきりした文を選びました。音声をまねて音読し、最後は見ないで言ってみましょう。
A man is literally what he thinks, his character being the complete sum of all his thoughts.
人は文字どおり「考えているものそのもの」であり、人柄とは考えをすべて足し合わせたものです。
Act is the blossom of thought, and joy and suffering are its fruits.
行いは考えの花であり、喜びと苦しみはその実です。
Circumstance does not make the man; it reveals him to himself.
境遇が人をつくるのではありません。境遇は、その人を本人に見せるのです。
Men do not attract that which they want, but that which they are.
人が引き寄せるのは「ほしいもの」ではなく、自分が「そうであるもの」です。
Men are anxious to improve their circumstances, but are unwilling to improve themselves; they therefore remain bound.
人は境遇をよくしたがるのに、自分をよくしようとはしません。だから、しばられたままなのです。
A man cannot directly choose his circumstances, but he can choose his thoughts, and so indirectly, yet surely, shape his circumstances.
人は境遇を直接選ぶことはできませんが、考えは選べます。そうすることで、間接的に、けれども確かに、境遇を形づくれるのです。
If you would protect your body, guard your mind.
体を守りたいなら、心を守りなさい。
The will to do springs from the knowledge that we can do.
やろうとする意志は、自分には「できる」と知っていることから生まれます。
He who would accomplish little must sacrifice little; he who would achieve much must sacrifice much; he who would attain highly must sacrifice greatly.
少しなしとげたい人は少し、多くなしとげたい人は多く、高みに達したい人は大きく犠牲にしなければなりません。
Dreams are the seedlings of realities.
夢は、現実の苗なのです。
Self-control is strength; Right Thought is mastery; Calmness is power.
自制は強さ。正しい考えは熟達。落ち着きは力。
09読めたかチェック(7問)
Q1題名の thinketh は、今の英語で言うと?
-eth は古い英語の3人称単数の語尾。hath = has、seeketh = seeks と同じです。
Q2If you would protect your body, guard your mind. の would の意味は?
if 節の would は「〜するつもりなら・〜したいなら」。If you want to protect your body と同じです。
Q3Men do not attract that which they want, but that which they ___.
「人が引き寄せるのは、ほしいものではなく、自分がそうであるもの」。この本でいちばん有名な文の一つです。
Q4Chance is not. の意味は?
be 動詞だけで「存在する」。Chance does not exist. と同じです。
Q5You cannot travel within and stand still without. の without は?
within(内側で)と対になる古い副詞の without(外側で)。「心の中で旅をしながら、外では立ち止まっていられない」。
Q6The oak sleeps in the ___.
どんぐり(acorn)の中に樫の木(oak)が眠っている。「夢は現実の苗」という話につながります。
Q7最後の「Peace, be still!」の出典は?
嵐の湖で、舟で眠っていたイエスが起きて風と湖に言う言葉。直前の「小舟で眠る主を起こしなさい」もこの場面です。
よくある質問
『原因と結果の法則』は著作権が切れていますか?
英語の原書 As a Man Thinketh(1903年)は、作者のジェームズ・アレンが1912年に亡くなっているので、パブリックドメインです。ただし日本語の翻訳書には翻訳者の著作権があります。このページの日本語訳は、翻訳書を使わずに原田英語が新しく訳したものです。
英語のレベルはどのくらい?
単語は古風でかためのものが多く、1文も長めなので、ふつうに読むと英検準1級〜1級、大学受験の上級くらいです。ただ、同じ比喩(種・庭・小舟)と同じ構文(As A, so B など)がくり返されるので、対訳と音声を使えば英検2級くらいからでも読み進められます。
高校生でも読めますか?
全部を一度に読む必要はありません。名言11文と、いちばん短い第4章「考えと目的」から始めるのがおすすめです。倒置・if 節の would・As A, so B など、入試に出る構文の練習にもなります。
音声はありますか?
各章の名言1文と「名言11」に音声があります(Azure の音声合成で作った MP3、イギリス英語の声)。「ゆっくり」にも切りかえられます。本文の段落には音声をつけていません。
全文はどのくらいの長さですか?
本文はおよそ7,400語で、英語の本としてはとても短い部類です。1日1章ずつなら1週間で読みきれます。
出典・参考にした資料
[1] 英語の原文(As a Man Thinketh, eBook #4507)
Project Gutenberg出典を開く ↗[2] ジェームズ・アレンの生涯(1864年レスター生まれ、1912年イルフラクームで死去、1903年の出版、題名は箴言23章7節から)
Wikipedia: James Allen (author)出典を開く ↗[3] 日本語版『原因と結果の法則』(坂本貢一 訳、サンマーク出版、2003年)の書誌
CiNii Books出典を開く ↗[4] 日本の保護期間(2018年に死後70年へ延長。すでに切れていた作品は延長されない)
文化庁「著作物等の保護期間の延長に関するQ&A」出典を開く ↗




