原田英語の英語大全勉強法ぜんぶ入り

精読:1文を正確に読む精読と多読は敵じゃない。「教習所」と「路上運転」の関係だった

原田英語6分で読める研究・公式情報 4件第8章の2/6節

精読:1文を正確に読むのイメージ

「精読とは、全文をきれいな日本語に訳すこと」。そう思われがちですが、和訳は理解を確かめる手段のひとつにすぎません。きれいな訳が書けても、主語と動詞を指させないなら、たまたま当たっただけかもしれないのです。たとえば What surprised the teacher most was how quickly the class understood the rule. この文の中心になる動詞は、どれでしょうか。

この節の目次(5項目)
  1. 精読とは「説明できる」まで読むこと
  2. 構文をつかむ4つの道具
  3. 精読の5ステップ
  4. 精読と多読は「教習所」と「路上」
  5. 精読のやりすぎで起きること

01精読とは「説明できる」まで読むこと

精読(intensive reading)は、1文1文を、なぜその意味になるのかを説明できるレベルまで正確に読む読み方です。

よく誤解されるのが「精読=全文を和訳すること」という考えです。和訳は理解を確かめる手段のひとつにすぎません。精読の本当のゴールは、次の3つを言えることです。

  1. この文の主語と動詞はどれか
  2. どの語句が、どの語句を説明(修飾)しているか
  3. 文と文が、どんなつながり(理由・対比・例など)でつながっているか

これが言えれば、日本語にしなくても意味はとれています。逆に、きれいな和訳が書けても、主語と動詞を指させないなら、たまたま当たっただけかもしれません。

精読で鍛えるのは「速さ」ではなく「正確さ」です。多読で速さを、精読で正確さを育てる。この分担を意識するだけで、教材の使い方が変わります。

02構文をつかむ4つの道具

長い英文は、次の4つの道具で骨組みがはっきりします。

道具1:本当の動詞(述語動詞)を探す

英文の中心は動詞です。まず「時制のついた動詞」を探します。-ing形や to不定詞は、たいてい中心の動詞ではありません。

道具2:主語の終わりを見つける

動詞が見つかれば、その前までが主語です。英語の主語は、後ろに説明がついて長くなることがよくあります。

道具3:説明のカタマリをカッコでくくる

前置詞から始まるカタマリは [ ]、関係詞や接続詞から始まる文のカタマリは ( ) でくくると、骨組みだけが残ります。

道具4:つなぎの言葉に印をつける

because, however, for example, as a result などは、文と文の関係を示す標識です。

実際にやってみます。

  • The students (who had finished the test early) were allowed to leave the room.(テストを早く終えた生徒たちは、部屋を出てよいことになった)

時制のついた動詞は had finished と were allowed の2つ。had finished は who で始まるカッコの中なので、文全体の動詞は were allowed です。主語は The students で、カッコの中はその説明です。

  • What surprised the teacher most was (how quickly the class understood the rule).(先生がいちばん驚いたのは、クラスがそのルールをどれほど早く理解したかだった)

時制のついた動詞は surprised・was・understood の3つです。それぞれが、どのカタマリの中にあるかを見ます。

  • surprised:What surprised the teacher most(先生をいちばん驚かせたこと)という名詞のカタマリの中にあります。このカタマリ全体が、文の主語です
  • understood:how で始まるカッコの中にあります。このカタマリは was の後ろで、主語が「何だったのか」を説明しています(補語)
  • was:どちらのカタマリにも入っていません。これが文全体の中心の動詞です

骨組みは「主語 was 補語」、つまり「AはBだった」の形です。カタマリの中の動詞は、そのカタマリの中だけで働きます。

  • Reading a book (that is slightly too easy) can make you a faster reader.(少しやさしすぎる本を読むことで、読むのが速くなることがある)

主語は Reading a book that is slightly too easy という長い -ing のカタマリ。動詞は can make です。make you a faster reader で「あなたをより速く読む人にする」。

慣れてきたら、カッコを紙に書かず、頭の中でくくれるようになります。それが「構文が見える」状態です。

03精読の5ステップ

教材1本(200〜400語くらい)を、次の順で読みます。

  1. 通して1回読む:止まらずに最後まで。わかった内容を日本語で一言メモする
  2. つまずいた文に印をつける:意味がとれない文、なんとなくの文に線を引く
  3. 印の文だけ構文をとる:4つの道具で、主語・動詞・カッコ・つなぎ言葉を書き込む
  4. 答え合わせ:解説や訳で確かめ、「なぜ読み違えたか」を1行で書く(例:関係詞の終わりを見落とした)
  5. もう一度通して読む:最後は止まらず、意味を頭に浮かべながら読む。音読を加えるとさらによい

ステップ4の「読み違えた理由」が、精読でいちばん価値のある記録です。理由はたいてい数種類に集まります。自分の弱点のパターンがわかれば、次からその場所で自然と注意が働きます。

教材の難しさは、知らない語が少しある程度がちょうどいいです。多読の国際団体 ERF の手引きは、知っている語が90〜98%の英文を「教わりながら読むレベル」としています。多読用の本より少し難しく、1文ごとに辞書を引くほどではない英文が、精読の練習に向いています。

単語を知っている割合と理解度については、Schmitt ほか(2011)が8か国661人を調べ、「ここを超えると急にわかる」という境目はなく、知っている語の割合が増えるほど理解もほぼ直線的に上がることを示しました。精読で単語を1つずつ確かめることは、理解を少しずつ確実に積み上げる作業です。

04精読と多読は「教習所」と「路上」

精読と多読は、どちらが正しいかを争うものではありません。

Paul Nation は、語学の学びを次の4本の柱(four strands)に分けました。

柱中身読む学習の例
意味を受け取る内容を理解するためのインプット多読
意味を伝える話す・書くアウトプット読んだ内容を英語で要約
言葉に注目して学ぶ文法・単語・構文の意識的な学習精読
すらすら使う知っていることを速く使う練習やさしい本を速く読む

Nation は、よく設計された学習なら、この4本の柱にほぼ同じくらいの時間を配るのがよいとしています。精読は「言葉に注目して学ぶ」柱の中心で、多読は「受け取る」と「すらすら」の柱を支えます。

多読の国際団体 ERF の手引きも、精読は新しい言葉を教え、多読はそれを練習して深く身につける、と2つを補い合う関係で説明し、車の運転にたとえています。教習所で操作を学ぶのが精読、実際の道を走るのが多読です。どちらが欠けても運転は上達しません。

1週間の配分の例です。

レベル精読多読
初級1日10分(教科書の本文)1日10分(絵の多い読みもの)
中級1日15分(長文問題1題)1日15分(レベル別の本)
上級週3回20分(論説文)毎日20分以上(一般書・記事)

05精読のやりすぎで起きること

日本の英語学習は、精読、とくに和訳による読み方に偏りやすい歴史があります。日野信行氏(1988)は、英語を語ごとに日本語にし、それを日本語の語順に並べ替える読み方を「訳読(yakudoku)」と名づけ、千年以上前に中国語(漢文)を学びはじめたころから続く伝統として論じました。漢文の返り点と同じく、後ろから前へ戻りながら日本語を組み立てるやり方です。

訳読は、正確に理解したかを確かめるには役立ちます。問題は、それが読むときのいつもの方法になってしまうことです。次のサインが出ていたら、精読に偏っているかもしれません。

  • 和訳問題は得意なのに、長文を時間内に読み終えられない
  • 1文を読むたびに、頭の中で日本語の文を完成させないと先へ進めない
  • 英語の音声を聞くと、読めば分かる内容でもついていけない

これは精読をやめる理由ではありません。精読で理解した英文を、最後に前から速く読み直すことで解決できます。ステップ5の「もう一度通して読む」と音読がそのためにあります。前から読む具体的な方法は、次の節「返り読みをやめる」で扱います。

この節の答え

文の骨組みを見抜き、なぜその意味になるか説明できるまで読む

今日からのやり方

  1. 200〜400語の英文を1本選び、止まらずに1回通して読む
  2. 意味があいまいな文にだけ線を引く
  3. 線の文の本当の動詞と主語を見つけ、説明のカタマリをカッコでくくる
  4. 解説で答え合わせし、読み違えた理由を1行で記録する
  5. 最後に同じ英文を前から止まらず読み直し、できれば音読する

レベル別:あなたならこうする

初級 A1〜A2

教科書の本文を使い、1文ごとに主語と動詞に線を引く練習から。and や but で文がつながる場所にも印をつけ、骨組みを見る習慣を作る。

中級 B1

英検2級や共通テストの長文を1日1題。関係詞・分詞・不定詞のカタマリをカッコでくくり、読み違えた理由を記録して弱点の型を見つける。

上級 B2〜

論説文や英字記事で、段落ごとの主張と、文どうしのつながり(譲歩・対比・具体例)まで読む。精読した記事は数日後に速読で読み直す。

よくある失敗と対策

全文をノートに和訳する

時間がかかるわりに、構文の理解は深まりません。和訳は意味がとれない文だけにし、残りは主語・動詞・カッコの書き込みで済ませましょう。

難しすぎる英文で精読する

知らない語だらけだと、単語調べで終わって構文に目が向きません。知らない語が1割を超えない英文を選んでください。

精読した英文を二度と読まない

理解しただけでは読む速さは上がりません。数日後に前から止まらず読み直すと、精読の成果が速さに変わります。

TODAY
1 MIN

今日の英文から1文を選び、本当の動詞に二重線を引いてみる

友だちに出したい、この節の3問

タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。

8-2英文を和訳して読むやり方はいつからある?

英文を語ごとに日本語にし、日本語の語順に並べ替える読み方は「訳読(やくどく)」と呼ばれます。日野信行氏の1988年の論文は、その源流を千年以上前の中国語(漢文)学習にさかのぼる伝統として論じています。

X で出題する

8-2精読と多読、時間はどう分けるのが理想?

Paul Nation は、学習を「意味を受け取る・意味を伝える・言葉に注目して学ぶ・すらすら使う」の4本柱に分け、ほぼ同じ時間を配るのがよいとしました。精読は柱の1本で、全体の4分の1が目安です。

X で出題する

8-2精読に向く英文の難しさはどれくらい?

多読の国際団体ERFの手引きは、知っている語が90〜98%の英文を「教わりながら読むレベル」としています。多読には易しすぎず、辞書だらけにもならない、この帯が精読の練習にちょうどいい難しさです。

X で出題する

X でポストLINEB!

PRACTICE KIT

この節の実践キット

この節に関係する特集

特集クジラ構文は役に立たない? Xで話題の論争を決着Xで話題の論争を、オバマ大統領の演説と1つの理屈で決着

このサイトで練習する

原田英語のサイトで練習する

使えるサイト・アプリ

動画で学ぶ

英文解釈の基礎を徹底講義Stardy -河野玄斗の神授業|英文解釈で無双できる講座が完成しました。【徹底基礎講座】
関先生の長文勉強法・完全版【大学入試 & TOEIC】関正生の YouTube 英語塾『英語のカクシン』|英語長文の勉強法 (完全版) 関 正生【 大学受験/勉強法 】 №162
長文の正しい復習方法武田塾チャンネル|参考書のやり方・大学受験情報|【確実に成績が伸びる】英語長文が読めるようになる正しい復習方法6選
英語の読解力を上げる4ステップOxford Online English|How to Improve Your English Reading Skills - 4 Steps to Improve Now!

もっと詳しく(コラム)

この節の根拠(研究・公式情報)

語学の学びを4本の柱(意味のインプット・アウトプット・言葉に注目した学習・流暢さの練習)に分け、ほぼ同じ時間を配るのがよいとした。

Nation, P. (2007). The four strands. Innovation in Language Learning and Teaching, 1(1), 2–13.出典を開く ↗

英語を語ごとに訳し日本語の語順に並べ替える「訳読」を、千年以上前の漢文学習から続く日本の伝統として論じた。

Hino, N. (1988). Yakudoku: Japan's dominant tradition in foreign language learning. JALT Journal, 10(1).出典を開く ↗

知っている語が90〜98%の英文を「教わりながら読むレベル」、98%以上を多読向きと説明。精読と多読は補い合い、両方必要だとした。

Extensive Reading Foundation. The ERF Guide to Extensive Reading(多読の手引き。英語版・日本語版ほか)出典を開く ↗

8か国661人の調査で、知っている語の割合と理解度はほぼ直線的な関係で、急に理解が上がる境目は見られなかった。

Schmitt, N., Jiang, X., & Grabe, W. (2011). The percentage of words known in a text and reading comprehension. The Modern Language Journal, 95(1), 26–43.出典を開く ↗

よくある質問

精読用の教材は何がいいですか?

解説つきで、1本が200〜400語くらいの長文問題集や教科書がおすすめです。全文の構文解説がある教材なら、自分のカッコの付け方が正しいか確かめられます。

文法がまだ不安でも精読はできますか?

できます。むしろ精読は文法を使う場です。わからない構文に出会ったら、その文法項目だけ文法書で確認し、また英文に戻ってください。文法の基本は第7章も参考にしてください。

精読にどれくらい時間をかけるべき?

1本の英文に30分以上かかるなら、教材が難しすぎるかもしれません。1日の英語の時間のうち、精読は4分の1くらいを目安にし、残りを多読や音読、聞く・話す練習に回すとバランスがとれます。