第6章|文法6-2語順がすべて:英語の骨格英語は「結論が先、説明はあと」。語順のクセを知ると長文が前から読める

「犬が男をかんだ」と「男を犬がかんだ」。日本語では、順番を入れかえても意味は変わりません。ところが英語の The dog bit the man. を The man bit the dog. にすると、かんだのは男のほうになります。英語は、なぜこれほど順番にこだわるのか。しかも世界の1,376言語を調べたデータでは、日本語の並べ方は少しも珍しくありませんでした。長い英文で迷子になるのも、話すときに動詞が出てこないのも、根っこは同じところにあります。
01英語は「位置」で意味が決まる
日本語では、次の2つの文は同じ意味です。
- 犬が男をかんだ。
- 男を犬がかんだ。
「が」と「を」という助詞が、だれがかんだのかを教えてくれるので、順番を入れかえても意味は変わりません。
英語ではそうはいきません。
- The dog bit the man.(犬が男をかんだ)
- The man bit the dog.(男が犬をかんだ)
単語はまったく同じなのに、意味は逆になります。英語には「が」「を」にあたる目印がほとんどなく、動詞の前にあるのが主語、後ろにあるのが目的語という「位置」で役割を示すからです。
| 役割を示す方法 | 語順の自由さ | |
|---|---|---|
| 日本語 | 助詞(が・を・に) | 比較的自由。ただし動詞はふつう最後 |
| 英語 | 位置(動詞の前か後ろか) | ほぼ固定 |
英語で主語を原則として省けないのも、ここから説明できます。主語の位置が空くと、文の骨組みがくずれてしまうのです。そこで英語は、意味のない it や there まで使って主語の位置を埋めます。
- It's raining.(雨が降っている)
- It's ten o'clock.(10時です)
- There's a bakery near the station.(駅の近くにパン屋がある)
日本語で「雨が降っている」と言うとき、「それが」とは言いません。英語の It は、いわば「席を埋めるための主語」です。くだけた会話では Sounds good. のように主語が落ちることもありますが、それは例外的な省略です。
02世界の言語で見ると、日本語はふつう
「英語の語順が正しくて、日本語の語順は変わっている」と思っている人がいるかもしれません。世界の言語のデータを見ると、そうではありません。
世界の言語の文法の特徴を集めたデータベース WALS(The World Atlas of Language Structures)で、主語(S)・目的語(O)・動詞(V)の順番を見ると、次のようになっています(調べた1,376言語の内訳)。
| 語順 | 言語の数 | 例 |
|---|---|---|
| SOV(主語・目的語・動詞) | 564 | 日本語 |
| SVO(主語・動詞・目的語) | 488 | 英語 |
| VSO(動詞・主語・目的語) | 95 | |
| そのほか・決まった順がない | 229 |
日本語と同じ SOV がいちばん多く、英語の SVO が2番目です。どちらもふつうの語順で、ただ向きが逆なのです。
もう一つ、名詞をくわしく説明する「関係節」の位置も見てみましょう。
- 日本語:昨日買った本(説明が前)
- 英語:the book I bought yesterday(説明が後ろ)
WALS の調査では、関係節が名詞の後ろにくる言語が579、前にくる言語が141でした。日本語は少数派の「前」、英語は多数派の「後ろ」です。
つまり英語を学ぶことは、ことばの向きを切りかえる練習でもあります。どちらが優れているかではなく、頭の中の並べ方を、英語用にもう一つ用意すると考えると気が楽になります。
03骨格は「だれが+どうする」から
英語の文は、まず「だれが(主語)」と「どうする(動詞)」を言い切り、そのあとに必要な情報を足していきます。この骨格を5つの型に整理したのが、学校で習う「5文型」です。
| 型 | 骨格 | 例文 |
|---|---|---|
| 第1文型 SV | だれが+どうする | The baby smiled.(赤ちゃんがほほえんだ) |
| 第2文型 SVC | だれが+=+どんな | The soup smells good.(そのスープはいいにおいがする) |
| 第3文型 SVO | だれが+どうする+何を | She opened the window.(彼女は窓を開けた) |
| 第4文型 SVOO | だれが+あげる+だれに+何を | My aunt gave me a watch.(おばが私に腕時計をくれた) |
| 第5文型 SVOC | だれが+する+何を+どんな状態に | The news made us happy.(その知らせは私たちを幸せにした) |
5文型は日本の学校でよく使われる整理のしかたで、英米の文法書には、場所などを表す語句を必要とする型を加えて7つに分けるものもあります。どちらにしても大切なのは、型の名前を覚えることではありません。「動詞のあとに何が、いくつ続くか」は動詞が決めるという感覚です。
たとえば give は「だれに」「何を」の2つを後ろにとれますが、smile は何もとりません。make は後ろの形によって意味が変わります。
- She made a cake.(彼女はケーキを作った)
- She made me laugh.(彼女は私を笑わせた)
- The movie made me sad.(その映画で悲しくなった)
辞書で動詞を引くときは、意味だけでなく後ろにどんな形が続くかまで、例文で確かめます。それだけで英文がぐっと組み立てやすくなります。
04修飾は後ろへ後ろへ足していく
日本語は、説明を名詞の前に積み上げます。英語は、1語の形容詞のような短い説明以外は、名詞の後ろに足していきます。
- a book(本)
- an old book(古い本)※1語の形容詞は前
- an old book on the desk(机の上の古い本)
- an old book on the desk that my grandfather used to read(祖父がよく読んでいた、机の上の古い本)
日本語の訳を見ると、新しい情報がどんどん左へ増えています。英語では右へ増えていきます。日本語の感覚のまま英文を読むと、文末まで行ってから戻ることになり、長い文ほど迷子になります。
後ろから説明する形には、いくつかの種類があります。
| 後ろに足すもの | 例 | 意味 |
|---|---|---|
| 前置詞のかたまり | the girl with long hair | 長い髪の女の子 |
| 不定詞 | something cold to drink | 何か冷たい飲み物 |
| 現在分詞(-ing) | people living in Tokyo | 東京に住んでいる人々 |
| 過去分詞 | a car made in Germany | ドイツ製の車 |
| 関係詞 | the friend who helped me | 私を助けてくれた友達 |
見た目はばらばらでも、考え方は一つです。まず名詞を言い、それから「どんな?」に後ろで答える。この感覚をつかむと、関係代名詞も分詞も「同じしくみの別バージョン」に見えてきます。
05前から読む・聞く・話すコツ
英語の語順を味方にすると、読む・聞く・話すが楽になります。
読む・聞く:意味のかたまりごとに前から
英文を意味のかたまりで区切り、出てきた順に理解します。
- I met a woman / who works at a hospital / near my house.
(私はある女性に会った/その人は病院で働いている/うちの近くの)
日本語としては少しぎこちなくても、この順番で理解できれば十分です。音声は巻き戻ってくれないので、聞き取りではこの理解のしかたが欠かせません。
話す:主語と動詞を先に決める
日本語で考えると、「昨日友達と行ったカフェがよかった」のように、言いたいこと(よかった)が最後に来ます。英語にするときは、まず「だれが・どうした」を決めて口に出し、あとから足すのがコツです。
- The café I went to with my friend yesterday was great.(一文で言う)
- I went to a café with my friend yesterday. It was great.(2文に分ける)
慣れないうちは、2文に分ける言い方で十分伝わります。最初に「I went」と言い切ってしまえば、あとは to a café、with my friend、yesterday と、思いついた順に足していけばよいのです。
ポイント:英語は「結論(だれが・どうした)→説明」の順。言い出す前に主語と動詞だけ決めれば、話し始められます。
英語は「だれが・どうする」を先に言い、説明を後ろに足す
今日からのやり方
- 今日読む英文から3文選び、主語と動詞に線を引く
- 長い名詞のかたまりを見つけ、名詞と後ろの説明をカッコでくくる
- 同じ文を意味のかたまりごとにスラッシュで区切り、前から意味をとって音読する
- 日本語の文を英語にするとき、まず「だれが・どうする」だけを先に言ってみる
- 言いにくい長い文は、2文に分けて言い直す
レベル別:あなたならこうする
まず SV と SVO の文を自在に作れるようにします。I like 〜. She plays 〜. のような短い文を、主語を変えて言う練習が効きます。修飾は、with や in のかたまりを後ろに1つ足すところから。
関係代名詞や分詞のついた長い名詞のかたまりを、カッコでくくって前から読む練習をします。話すときは、言いたい文を「主語+動詞」から始め、説明を後ろに足す習慣をつけます。
主語が長い文や挿入の多い英文を、区切りながら音読して、構造を一瞬でつかむ力を磨きます。書くときは、日本語の語順を引きずった不自然な並べ方がないか見直します。
よくある失敗と対策
試験の和訳以外では、前から意味のかたまりごとに理解します。訳し上げは時間がかかるうえ、リスニングでは使えません。
日本語の感覚で Went to Kyoto. と言いがちです。英語では原則として主語が必要です。天気や時刻は It、「〜がある」は There で主語の席を埋めます。
型の名前当ては目的ではありません。動詞のあとに何がいくつ続くかを意識できれば十分です。判定に迷う文は気にせず先へ進みます。
1 MIN
今日読んだ英文から1文選び、主語と動詞に線を引いて音読する
友だちに出したい、この節の3問
タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。
6-2日本語の語順は、世界では少数派?
世界の言語の特徴を集めた WALS では、主語・目的語・動詞の順を調べた1,376言語のうち、日本語と同じ SOV が564で最多、英語と同じ SVO が488でした。日本語の語順は少数派どころか、いちばん多い型です。
6-2名詞を後ろから説明する言語は珍しい?
WALS の調査では、関係節が名詞の後ろにくる言語が579、前にくる言語が141でした。日本語は「前」に置く型です。英語の「後ろから修飾」は、世界的にはむしろ多数派のつくりです。
6-2英語はなぜ主語を省けない?
英語は「だれが」「だれを」を、助詞ではなく語順で示します。主語の位置が空くと骨組みがくずれるため、天気や時刻を言うときにも It's raining. のように意味のない it で席を埋めます。
PRACTICE KIT
この節の実践キット
この節に関係する特集
特集英語の歴史1500年を超絶わかりやすくノルマン・コンクエスト、借用語、大母音推移。英語の「なぜ?」が全部つながるこのサイトで練習する
使えるサイト・アプリ
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もっと詳しく(コラム)
この節の根拠(研究・公式情報)
調べた1,376言語のうち、SOV(日本語型)が564、SVO(英語型)が488で、この2つが大多数を占めた。日本語の語順は世界的に珍しくない。
Dryer, M. S. (2013). Order of Subject, Object and Verb. In M. S. Dryer & M. Haspelmath (Eds.), The World Atlas of Language Structures Online (Chapter 81). Leipzig: Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology.出典を開く ↗関係節が名詞の後ろにくる言語が579、前にくる言語が141。日本語は前に置く型で、英語のように後ろから説明する型のほうが多い。
Dryer, M. S. (2013). Order of Relative Clause and Noun. In M. S. Dryer & M. Haspelmath (Eds.), The World Atlas of Language Structures Online (Chapter 90). Leipzig: Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology.出典を開く ↗よくある質問
5文型は覚えないといけない?
名前を暗記する必要はありませんが、「動詞の後ろに何が続くか」という見方は、長文読解でも英作文でも役立ちます。入試の英文解釈ではよく使われる整理なので、受験生は5つの型を例文といっしょにおさえておくと、読むのが速くなります。
前から読むと、意味を取りちがえない?
かたまりごとに区切れば、ほとんどの文は前から正確に理解できます。注意が要るのは、否定や比較が文の後半にくる文です。最後まで読んだら全体の意味を一度確かめる習慣をつければ、精度は落ちません。
英語の語順で考えるには、どうすればいい?
日本語で文を完成させてから訳すのをやめ、主語と動詞だけ決めて言い始める練習をします。最初は2文に分けてもかまいません。英文をたくさん音読すると、英語の並べ方が少しずつ自然に出てくるようになります。



