第6章|文法6-3時制と『相』:現在完了がわかる英語の時制は実は2つだけ!? 現在完了は『過去』ではなく『今』の話

未来を表す will は、can や may と同じ助動詞のなかまです。動詞そのものの形が変わって時を表すのは、現在形と過去形の2つだけ。そのため、英語の時制は「現在」と「過去」の2つだと考える文法家が多くいます。では、「継続・経験・完了・結果」と4つも用法を覚えた現在完了は、何を表しているのか。I lost my wallet. と I've lost my wallet. は、どこが違うのでしょうか。
この節の目次(6項目)
01「いつ」と「どう見るか」を分ける
英語の動詞の形には、2種類の情報が入っています。
- 時制(tense):いつのことか。現在か過去か。
- 相(aspect、アスペクト):その出来事をどう見るか。まるごと見るのか、途中を見るのか、今とのつながりで見るのか。
動詞そのものの形が変わって時を表すのは、現在形(take / takes)と過去形(took)の2つだけです。will は can や may と同じ助動詞のなかまで、未来を表す方法の一つです。このため、英語の時制は形の上では「現在」と「過去」の2つだと考える文法家が多くいます(Huddleston, 1995。未来時制を認める立場もあります)。
この「2つの時制」と「3つの見方」を組み合わせると、英語の動詞の形がほぼそろいます。
| まるごと(単純形) | 途中(進行形) | 今につながる(完了形) | |
|---|---|---|---|
| 現在 | I eat. | I'm eating. | I've eaten. |
| 過去 | I ate. | I was eating. | I had eaten. |
| will をつける | I'll eat. | I'll be eating. | I'll have eaten. |
この表があれば、「現在完了進行形」のような長い名前も怖くありません。I've been eating. は「今につながる」と「途中」を重ねた形、というだけのことです。
02現在形は「いつもそう」を表す
意外かもしれませんが、英語の現在形は「今この瞬間」を表すのが得意ではありません。現在形が表すのは、いつもそうであること(習慣・性質・事実)です。
- I drink coffee.(私はふだんコーヒーを飲む)
- I'm drinking coffee.(今コーヒーを飲んでいる最中だ)
- He teaches math.(彼は数学を教えている=それが仕事だ)
- Water boils at 100 degrees Celsius.(水はセ氏100度で沸騰する)
What do you do? が「お仕事は何ですか」という意味になるのも、現在形が「ふだん何をしている人か」を聞く形だからです。「今何をしているの?」と聞きたいなら What are you doing? です。
日本語の「コーヒーを飲む」だけでは、今なのか、ふだんなのかがはっきりしません。英語ではこの2つを形で言い分けます。
03進行形は「途中の場面」を切り取る
進行形(be + -ing)は、出来事の途中を切り取って見せる形です。始まりと終わりは画面の外にあり、真ん中だけが映っているイメージです。
- I was taking a bath when you called.(あなたが電話してきたとき、私はお風呂に入っていた)
- It's getting dark.(だんだん暗くなってきている)
- I'm living with my parents these days.(最近は実家で暮らしている)
3つ目の文に注目してください。I live with my parents. なら「実家暮らしの人です」という変わらない事実、I'm living ... なら「今は(一時的に)そうしている」という含みになります。
逆に、もともと「途中」がない動詞は、ふつう進行形にしません。
- I know him.(彼を知っている)/ I'm knowing him. とは言わない
- I like this song.(この曲が好きだ)
know や like は「状態」を表すので、途中を切り取る必要がないのです。ただし think のように、意味によって使い分ける動詞もあります。
- I think it's a good idea.(いい考えだと思う=意見)
- I'm thinking about it.(それについて考え中です=頭を動かしている途中)
04現在完了は「今」を説明するための過去
いよいよ現在完了です。学校では「完了・結果・経験・継続」の4つの用法を習いますが、まずは一つのイメージにまとめましょう。
ポイント:現在完了(have + 過去分詞)は、今の状態を、過去の出来事を使って説明する形です。話の主役はあくまで「今」です。
過去形と比べると違いがはっきりします。
- I lost my wallet.(財布をなくした)
→ 過去の出来事の報告。今見つかっているかどうかは分からない。
- I've lost my wallet.(財布をなくしてしまった)
→ 今、手元に財布がない。だから困っている、が言いたいこと。
4つの用法も、すべて「今の説明」として読めます。
| 用法 | 例文 | 説明している「今」 |
|---|---|---|
| 完了 | I've already finished my homework.(もう宿題を終えた) | 今は遊んでもいい状態 |
| 結果 | He has gone to Osaka.(彼は大阪に行ってしまった) | 今ここにいない |
| 経験 | I've been to Kyoto three times.(京都に3回行ったことがある) | 今の私の経歴 |
| 継続 | We've known each other for ten years.(知り合って10年になる) | 今も知り合いである |
yesterday と一緒に使えない理由
現在完了は「今」に立って過去をふり返る形です。そこに yesterday や last week のように過去の一点を指す言葉を入れると、視点がぶつかります。
| 過去形と相性がいい | 現在完了と相性がいい |
|---|---|
| yesterday / last week / two years ago / in 2020 / When ...? | ever / never / just / already / yet / since ... / for ... / so far |
- I saw that movie yesterday.(その映画を昨日見た)
- I've seen that movie twice.(その映画は2回見たことがある)
I've seen that movie yesterday. は、標準的な英語では誤りとされます。「いつ?」と聞く When の疑問文も過去の一点を聞くので、When did you arrive?(いつ着いたの?)のように過去形を使います。
日本語話者が迷う理由
日本語の「〜した」は、過去にも完了にも使えます。「宿題した?」は「今の時点で宿題は終わっている?」の意味にも、「昨日宿題をした?」の意味にもなります。日本語では区別しなくてよい差を、英語では形で区別する。迷うのは当然で、だからこそイメージで整理する価値があります。
05過去完了・完了進行形・アメリカ英語
現在完了のイメージができれば、ほかの完了形はその応用です。
- 過去完了(had + 過去分詞):「過去のある時点」を基準に、それより前の出来事で説明する。
- When I got to the station, the train had already left.(駅に着いたとき、電車はもう出てしまっていた)
- 現在完了進行形(have been + -ing):今まで続いてきた動作の「途中」を見る。
- I've been studying for two hours.(2時間ずっと勉強している)
- It's been raining since this morning.(朝からずっと雨が降っている)
アメリカ英語では過去形もよく使う
教科書どおりに現在完了を使えば間違いではありませんが、知っておくと耳が楽になる事実があります。Cambridge Dictionary の文法解説によると、アメリカ英語では already や yet と一緒でも、過去形がよく使われます。
- Did you eat yet?(もう食べた?)アメリカ英語で多い
- Have you eaten yet?(もう食べた?)イギリス英語で多い
海外ドラマで Did you finish already? のような文を聞いても、それは誤りではありません。ただし試験や作文では、現在完了を使うのが無難です。
同じ解説には、ニュースでは現在完了で「〜があった」と切り出し、くわしい経過を過去形で続ける書き方がよく見られる、という説明もあります。英語ニュースを読むときに、完了形から過去形へ切りかわる場所を探してみると、「今の話」と「過去の詳細」の使い分けが実感できます。
06形の身につき方にも傾向がある
時制と相の形の身につき方にも、研究で分かっている傾向があります。
Shirai & Andersen(1995)は、英語を母語として身につける3人の子どもの発話を調べました。子どもたちは、過去形をはじめは fell や broke のような一瞬で終わる出来事の動詞に多く使い、進行形を playing や running のような続く動作の動詞に多く使っていたのです。さらに、まわりの大人が子どもに話しかけることばにも、同じかたよりが見られました。
母語の子どもの研究なので、そのまま大人の学習者に当てはめることはできません。ただ、形と意味の結びつきが「よく一緒に出てくる動詞」から始まるという見方は、練習のヒントになります。
- 進行形なら、run や play だけでなく、live、wait、get のような動詞でも例文を作る。
- 現在完了なら、lose や finish(完了・結果)だけでなく、know や live(継続)、be(経験)でも作る。
決まった動詞だけで練習すると、その動詞とセットでしか形が出てこなくなりがちです。いろいろな動詞で自分の例文を作ることが、時制と相を「使える」ようにする近道です。
時制は「いつ」、相は「どう見るか」。現在完了は今の話
今日からのやり方
- 動詞の形の表(2つの時制×3つの見方)をノートに書き写す
- 現在形と進行形で、自分のことを1文ずつ言う(I usually 〜. / I'm 〜ing now.)
- 同じ出来事を過去形と現在完了の2通りで言い、違いを日本語で説明してみる
- ever・since・for・already・yet を使って、自分の経歴を5文書く
- 英文で完了形を見つけたら、「今どうなっているか」を一言で言ってみる
レベル別:あなたならこうする
まず現在形と進行形の区別から。I play tennis. と I'm playing tennis. の違いを自分の生活で言えるようにします。現在完了は、経験の I've been to 〜. と継続の I've lived here for 〜. から始めます。
過去形と現在完了を同じ出来事で言い比べ、「今」に関係があるかで選ぶ練習をします。yesterday などの時の言葉との相性表を見ないで言えるようにし、現在完了進行形も使い始めます。
過去完了が必要かどうか、アメリカ英語とイギリス英語の差、ニュースで完了形から過去形に切りかわる流れなど、実際の英文での使われ方に注目します。完了形が使われた理由を自分で説明してみます。
よくある失敗と対策
用法の名前当てに時間を使うより、「今の何を説明しているか」を考えます。4つの用法は、同じイメージの別の顔です。
過去の一点を指す言葉(yesterday、ago、last 〜、When 〜?)が入ったら過去形、と決めておきます。作文の見直しリストに入れると減らせます。
進行形は「途中」の形です。過去の途中(was 〜ing)、一時的な状態(I'm living 〜)、決まっている予定(I'm leaving tomorrow.)にも使います。
1 MIN
I've 〜 for / since 〜 の形で、自分が続けていることを1つ言う
友だちに出したい、この節の3問
タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。
6-3英語の「時制」はいくつある?
動詞そのものの形が変わって時を表すのは、現在形(take)と過去形(took)の2つだけです。will は can や may と同じ助動詞のなかまだという考え方が有力で、Huddleston(1995)がその根拠をくわしく論じています(未来時制を認める立場もあります)。
6-3現在完了に yesterday を入れられないのはなぜ?
現在完了は「今」に立って過去をふり返る形なので、「昨日」のように過去の一点で区切る言葉とぶつかります。I saw it yesterday. は正しく、I have seen it yesterday. は標準的な英語では誤りとされます。
6-3アメリカ英語では現在完了を使わない場面がある?
Cambridge Dictionary の文法解説は、アメリカ英語では already や yet と一緒でも過去形がよく使われると説明しています。Did you eat yet? も Have you eaten yet? も、どちらも実際に使われる英語です。
PRACTICE KIT
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もっと詳しく(コラム)
この節の根拠(研究・公式情報)
will は未来時制の助動詞ではなく、can や must と同じ法助動詞に属すると、形と意味の両面から論じた。英語の時制は過去と現在の2つとする立場の代表的な論文。
Huddleston, R. (1995). The case against a future tense in English. Studies in Language, 19(2), 399–446.出典を開く ↗英語を母語とする3人の子どもは、過去形を一瞬で終わる出来事の動詞に、進行形を続く動作の動詞に多く使った。大人が子どもに話しかけることばにも同じかたよりがあった。
Shirai, Y., & Andersen, R. W. (1995). The acquisition of tense-aspect morphology: A prototype account. Language, 71(4), 743–762.出典を開く ↗アメリカ英語では already や yet と一緒でも過去形がよく使われると説明(Did you eat yet? など)。ニュースで現在完了で切り出し、詳細を過去形で続ける使い方も紹介している。
Cambridge Dictionary. Present perfect simple (I have worked). English Grammar Today. 2026年10月確認.出典を開く ↗よくある質問
現在完了と過去形、迷ったらどっち?
「今」の話につなげたいなら現在完了、過去のある時点の出来事として話すなら過去形です。いつのことか(yesterday など)を言うなら必ず過去形。会話では過去形でもたいてい通じるので、迷って黙るより、どちらかで言い切ることのほうが大切です。
will と be going to の違いは?
be going to は、すでに決めている予定や、今の様子から見えている未来によく使います。will は、その場で決めたことや予測に使うことが多い形です。I'll get it.(電話に「私が出ます」)と I'm going to visit my aunt this weekend.(決めてある予定)を比べると違いがつかめます。
時制の一致は必ず守るもの?
He said he was tired. のように、過去の発言を伝えるときは時制をそろえるのが基本です。ただし今も変わらない事実なら、She said she lives in Osaka. のように現在形のままにすることもあります。



