第11章|ライティング11-2英語日記を3行から英語日記の本当の収穫は「書けた文」より「書けなかった文」にある

「今日は部活でへとへとだった」。英語日記に書こうとして、「へとへと」で手が止まる。調べるのも面倒で、その日は I was tired. で済ませる。こんな日が続くと、日記を開くこと自体がおっくうになっていきます。けれど第二言語の研究から見ると、この手が止まった一行こそ、日記でいちばん値打ちのある場所かもしれません。うまく書けなかった日を伸びる日に変えるには、何をすればよいのでしょうか。
01書けない瞬間が、いちばんの先生
英語日記のよさは、「自分が言いたいこと」を英語にしようとする点にあります。教科書の英文は誰かが用意したものですが、日記の中身は自分の生活です。だからこそ、知っている英語では足りない場面に毎日ぶつかります。
Swain と Lapkin は1995年の論文で、学習者は英語(第二言語)を話したり書いたりする途中で「言えない」「これで合っているか分からない」という問題に気づき、それが言い直しや修正を促すと論じました。そのとき学習者は、聞いたり読んだりするとき以上に、文の組み立て(文法)に頭を使うことになります。この「気づいて直す」過程が、第二言語の学習の一部になるという考え方です。
日記にあてはめると、次のようになります。
- 「部活でへとへとだった」と書きたい → 「へとへと」が出てこない → 調べる → wore me out を知る
- 「雨がやむのを待った」と書きたい → wait の後ろが分からない → 調べる → wait for the rain to stop を知る
つまり、日記の収穫は書けた文よりも、書けなかった文のほうにあります。うまく書けなかった日こそ、伸びる材料が多い日です。
023行の型:事実・くわしく・気持ち
何を書くか迷わないように、1行目から3行目の役割を決めておきます。
- 1行目:何があったか(過去形で事実を1つ)
- 2行目:くわしく(だれと・どこで・どうやって・何を)
- 3行目:気持ちや考え(+理由を because でつなぐ)
例を見てみます。
- I went to the library after school.(放課後、図書館に行きました。)
- I borrowed a mystery novel that my friend recommended.(友だちがすすめてくれたミステリー小説を借りました。)
- I'm excited because I've wanted to read it for a long time.(ずっと読みたかったので、わくわくしています。)
次は、よくある書き方と、それを直したものです。
悪い例→よい例
- Today I went to library. It was fun.(今日、図書館に行った。楽しかった。)
- → Today I went to the library and found a book about space. It was more interesting than I expected.(今日、図書館に行って宇宙の本を見つけた。思っていたよりおもしろかった。)
library の前の the が抜けている点に加えて、「楽しかった」だけでは中身が伝わりません。何を見つけたか、どう感じたかを1つ足すだけで、日記らしくなります。
日本語を話す学習者によく見られるミスも、日記に出やすいものです。
| よくある誤り | 直した文 | ポイント |
|---|---|---|
| Today was busy day. | Today was a busy day. | 数えられる名詞の前の a |
| I enjoyed to talk with my friend. | I enjoyed talking with my friend. | enjoy の後ろは -ing |
| I was tired, so I slept early. | I was tired, so I went to bed early. | 「早く寝る」は go to bed early が自然 |
| I have been to Kyoto last year. | I went to Kyoto last year. | last year など過去の時点には過去形 |
03書けなかった表現を調べる4段階
書けない表現に出会ったら、次の順で進めます。
- 日本語をかみくだく。 「部活でへとへと」は「部活のあと、とても疲れていた」と言いかえれば I was very tired after club practice. と書けます。まずは知っている英語で書いておきます。
- 書けない部分は( )で残して書き終える。 調べものに時間を使いすぎると、日記そのものが止まります。3行を書き切ってから調べます。
- 例文で確かめる。 辞書のほかに、実際の英文の使われ方を見られる例文検索サイトが役に立ちます。例文を2〜3個見て、自分の文に近い形を選びます。
- 表現ノートに移して、翌日1回使う。 調べた表現は、見返すだけより、次の日の日記で実際に使うほうが思い出す練習になります。
調べた結果の例です。
- 「〜しそびれた」→ I meant to call her, but I forgot.(電話するつもりだったのに忘れた。)/ I didn't get a chance to call her.(電話する機会がなかった。)
- 「雨がやむのを待った」→ I waited for the rain to stop.(雨がやむのを待った。)
- 「へとへとだった」→ Club practice really wore me out today.(今日は部活で本当にへとへとになった。)
AIに「この文は自然か」と聞く方法もありますが、AIサービスにはそれぞれ利用できる年齢の条件があります。中高生は保護者と一緒に規約を確かめてから使ってください。くわしくは、AIの章を参照してください。
04続けるコツ:習慣の研究から
Lally らは2010年、96人の参加者に、食べる・飲む・体を動かすといった行動を1つ選んでもらい、「朝食のあと」のような決まった場面で毎日12週間続けてもらいました。そして、その行動が「考えなくてもできる」状態にどう近づくかを調べました。
分かったことは3つです。
- 自動的にできる状態に近づくまでの日数は、18日から254日と人によって大きく違った
- 行動を規則正しく続けた人ほど、きれいに習慣化の曲線に乗った
- 1回やらなかったことは、習慣の形成に大きな影響を与えなかった
英語日記に置きかえると、続けるコツは次のようになります。
- 場面を固定する。 「夕食のあと机に座ったら3行書く」「寝る前に歯をみがいたら書く」のように、毎日必ずある行動にくっつける。
- 量を小さくする。 3行で終わってよいと決めておく。書けそうな日だけ足す。
- 休んでも気にしない。 1日空いても、次の日に3行書けば問題ない。まとめて書き直す必要もない。
決まった日数で必ず身につく、という話ではありません。「何日続けるか」より「どの場面で書くか」を決めるほうが、続けるうえで役に立ちます。
051週間メニューと、伸ばし方
慣れてきたら、曜日ごとにテーマを決めると書くことに迷いません。
| 曜日 | テーマ | 1行目の例 |
|---|---|---|
| 月 | 週末にしたこと | I visited my grandmother on Sunday. |
| 火 | 学校・仕事で学んだこと | I learned how volcanoes are formed. |
| 水 | 食べたもの | I had curry and rice for dinner. |
| 木 | 小さな失敗 | I left my umbrella on the train. |
| 金 | 楽しみにしていること | I'm going to watch a soccer game tomorrow. |
| 土 | 見た・読んだもの | I watched a documentary about whales. |
| 日 | 1週間のふり返り+書き直し | This week, I was busiest on Wednesday. |
日曜日は、その週の日記から1つを選んで書き直します。表現ノートで調べた言い方を入れたり、3行を5行にふくらませたりします。書き直しで同じ間違いに気づけたら、それは力がついた証拠です。
伸ばし方の目安は次のとおりです。
- 最初の1か月: 3行の型を守る。時制(過去形)を正しく書くことに集中する。
- 2か月目から: 3行目の気持ちに because で理由をつける。5行に増やす日をつくる。
- 慣れてきたら: 1行目をトピックセンテンスにして、前の節のパラグラフの型で書く。
書いた日記を声に出して読み、何も見ずに言ってみると、そのまま話す練習にもなります。日記をネットに公開する場合は、本名・学校名・住所・顔写真などを書かないことを必ず守ってください。
3行で書き、書けなかった表現を調べて翌日1回使う
今日からのやり方
- 日記を書く場面を1つ決める(例:夕食のあと机に座ったら)
- 事実・くわしく・気持ちの3行を書く。書けない語は( )で残す
- ( )の部分を辞書と例文検索で調べ、表現ノートに写す
- 次の日の日記で、調べた表現を1回使う
- 日曜日に1つを選んで書き直し、声に出して読む
レベル別:あなたならこうする
1行目だけでも十分です。I played tennis. I ate ramen. のように過去形の事実を1文書き、慣れたら2行目に with my friend などを足します。
3行目に because で理由を必ずつけます。表現ノートを作り、調べた言い方を翌日の日記で1回使うところまでを1セットにします。
1行目をトピックセンテンスにした1段落の日記や、ニュースへの意見を書きます。同じ出来事を、くだけた文と丁寧な文の2通りで書く練習も効果的です。
よくある失敗と対策
書けない部分は( )で残し、3行を書き切ってから調べます。日記の時間は10分以内、調べものは5分以内などと時間を決めておくと続きます。
気持ちの後ろに because か具体的な場面を1つつけます。何が楽しかったのかを書くと、使う単語が自然に増えていきます。
週に1回、日記を読み返して1つ書き直します。同じミスを何度もしていたら、それを自分のチェック項目に加えます。
1 MIN
今日あったことを1つ、英語の過去形で1文だけ書く
友だちに出したい、この節の3問
タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。
11-2英語で日記を書くと、なぜ英語が伸びる?
聞く・読むときは意味さえ分かれば先に進めますが、書くときは時制や冠詞、前置詞を自分で選ぶ必要があります。言いたいのに言えない瞬間に気づき、それを直そうとする過程が学習の一部になると考えられています。
11-2毎日の行動が習慣になるまで、何日かかる?
毎日同じ場面で同じ行動を続けた研究では、自動的にできるようになるまでの日数は18日から254日と、人によって大きく違いました。決まった日数で身につくわけではありません。
11-2習慣づくりの途中で1日サボったら、リセットされる?
同じ研究では、1回やらなかったことが習慣の形成に大きな影響を与えることはありませんでした。休んだ日を気にするより、次の日に再開することのほうが大切です。
PRACTICE KIT
この節の実践キット
この節に関係する特集
特集シュリーマンの英語勉強法を今の勉強に当てはめると?半年で英語を身につけた7つのルールを、今の私たちに当てはめると?このサイトで練習する
使えるサイト・アプリ
動画で学ぶ
もっと詳しく(コラム)
この節の根拠(研究・公式情報)
学習者は第二言語を産出する途中で言語上の問題に気づき、それが出力の修正を促すと論じた。修正の過程で理解のとき以上に文法的な処理が求められ、それが学習の一部になるとしている。
Swain, M., & Lapkin, S. (1995). Problems in output and the cognitive processes they generate: A step towards second language learning. Applied Linguistics, 16(3), 371–391.出典を開く ↗96人が毎日同じ場面で行動を続けた研究。自動化が上限の95%に達するまで18〜254日と個人差が大きく、1回やらなかったことは習慣の形成に大きな影響を与えなかった。
Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40(6), 998–1009.出典を開く ↗よくある質問
日記は誰かに添削してもらうべき?
毎回でなくてかまいません。自分で書き直すことにも意味があります。添削を受けるなら、全部を直してもらうより、ミスの種類を教えてもらって自分で直すほうが力になりやすいです。くわしくは「添削の受け方」の節で扱います。
ノートとスマホ、どちらに書くのがよい?
続けやすいほうで大丈夫です。スマホは綴りの自動修正が入るので、綴りの練習もしたい人は手書きか、自動修正を切って書くのがおすすめです。
日記をSNSに公開してもいい?
公開するなら、本名・学校名・住所・顔写真・行動の予定など、個人が特定される情報は書かないでください。中高生は、使うSNSの年齢条件を保護者と確かめてからにします。




