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文法を『使える』ようにする練習文法は『解ける』と『言える』が別の技能。練習の向きを変えれば口から出る

原田英語7分で読める研究・公式情報 5件第6章の6/6節

文法を『使える』ようにする練習のイメージ

人工的に作った言語の文法規則を、61人の学習者が8週間かけて練習した実験があります。グループによって、ある規則は「理解」で、別の規則は「産出」で練習させました。文法問題集を何周もしたのに、話そうとすると口が止まる。そのわけが、この実験の結果から見えてきます。練習のしかたを変えると、伸びる力はどう変わったのでしょうか。

この節の目次(6項目)
  1. 「分かる」から「とっさに言える」まで
  2. 例文暗唱:1つの文法に「自分の1文」
  3. 瞬間英作文:日本語から英語を2秒で
  4. 文法問題の解き方と限界
  5. フィードバック:直され方で伸び方が変わる
  6. 1週間の練習メニュー

01「分かる」から「とっさに言える」まで

文法が使えるようになるまでには、3つの段階があります。技能習得理論の考え方を、学習者向けに言いかえると次のようになります。

段階状態合う練習
① 分かるルールを説明できる。考えれば正しい文が作れる文法書を読む・例文を理解する
② できるゆっくりなら、間違えずに言える・書ける例文の音読・暗唱、文の書きかえ
③ とっさに言える会話の速さで、意識せずに使える瞬間英作文、自分のことを話す・書く

多くの人は①で止まっています。文法問題集を解くことは①と②の練習にはなりますが、③までは届きにくいのです。

DeKeyser(1997)は、人工的に作った言語を使って、61人の学習者に4つの文法規則を教え、8週間にわたって理解と産出の練習をさせました。グループによって、どの規則を「理解」で練習し、どの規則を「産出」で練習するかを変えたところ、理解で練習した規則は理解が、産出で練習した規則は産出が伸びるという結果です。しかも上達は少しずつで、ほかの技能と同じような学習曲線をえがいていました。

ここから言えるのは、話せるようになりたいなら、口に出す練習が要るということです。当たり前に聞こえますが、文法を「読んで理解する」だけで話せるようになると期待している人は少なくありません。

02例文暗唱:1つの文法に「自分の1文」

いちばん手軽で効果が見えやすいのが、例文の暗唱です。ただし、文法書の例文をそのまま覚えるだけではもったいない。最後に「自分の文」を作るところまでを1セットにします。

手順(1項目10分)

  1. 文法書の例文を1つ選び、意味と形を理解する。
  2. 音声があれば聞き、まねして3回音読する。
  3. 文から目を離し、顔を上げて言う(リード・アンド・ルックアップ)。言えなければ見直してもう一度。
  4. 単語を入れかえて、自分のことを言う文を2つ作る。
  5. 翌日と1週間後に、例文を見ずに言えるか確かめる。

たとえば現在完了(継続)なら、こう広げます。

  • 例文:She has lived in this town for ten years.(彼女はこの町に10年住んでいる)
  • 自分の文:I've played the piano since I was six.(6歳からピアノを弾いている)
  • 自分の文:I've known my best friend for eight years.(親友とは知り合って8年になる)

自分の生活に結びついた文は、思い出すきっかけが多いので、会話でも出てきやすくなります。

03瞬間英作文:日本語から英語を2秒で

瞬間英作文は、日本語の短い文を見て(聞いて)、すぐに英語で言う練習です。日本の英語学習でよく知られた方法で、③「とっさに言える」段階を直接ねらいます。

やり方

  1. 中学レベルの短い文を、1つの文法項目ごとに10文ほど用意する。
  2. 日本語を見て、2〜3秒以内に英語を口に出す。
  3. 答えを見て確かめ、正しい英文を音読する。
  4. 全部すらすら言えるまで、同じ10文をくり返す。
  5. 日をあけて、もう一度同じ10文に挑戦する。

例(現在完了):

日本語英語
もう昼ごはんを食べました。I've already had lunch.
彼女はまだ来ていません。She hasn't come yet.
京都に行ったことはありますか。Have you ever been to Kyoto?
私たちは10年来の友達です。We've been friends for ten years.
鍵をなくしちゃった。I've lost my key.

研究とのつながりと注意点

「瞬間英作文」という名前の方法そのものの効果を、直接ためした研究は確認できませんでした。ただ、口に出す練習をくり返すと口に出す力が伸びるという DeKeyser(1997)の結果とは、方向がそろっています。

練習の間隔については、意外な結果もあります。Suzuki & DeKeyser(2017)は、日本語を学ぶ学習者に文法の形を練習させ、練習の回と回の間を短くするグループと、長くあけるグループを比べました。正確さは同じくらいで、間隔の短いグループのほうが速く言えるようになった可能性も示されました。単語の暗記では「間隔をあけるほうがよい」とよく言われますが、文法を口になじませる段階では、短い期間に集中してくり返すことにも意味がありそうです。そのうえで、忘れないための復習を、日をあけて入れておきます。

注意点として、瞬間英作文は日本語が出発点なので、それだけだと「日本語→英語」の変換に頼るくせがつきます。慣れてきたら、日本語なしで自分のことを英語で言う練習に移っていきましょう。

04文法問題の解き方と限界

文法問題(4択、並べかえ、正誤問題など)は、①「分かる」を確かめ、②「できる」を固めるのに役立ちます。入試や TOEIC、英検でも出題されるので、解き方の基本もおさえておきましょう。

解き方の基本

  1. 選択肢より先に、空所の前後を見る。主語・動詞・目的語のどこが抜けているかをつかむ。
  2. 品詞で絞る。入るのは名詞か、動詞か、形容詞か副詞か。これだけで候補が半分になることもよくあります。
  3. 時制や数の手がかりを探す。yesterday、since、every day、主語の単数・複数など。
  4. 答え合わせでは、正解の理由だけでなく、ほかの選択肢がなぜだめかも1行で説明する。

問題集を回すときは、1周目で〇(自信あり正解)、△(迷って正解)、×(不正解)をつけ、2周目以降は△と×だけを解き直すと時間を節約できます。

限界も知っておく

Ellis(2005)は、時間をかけて考える文法判断やルールの説明問題が、時間制限つきの問題や口頭の課題とは別の知識をとらえていることを示しました。つまり、文法問題で高得点を取れることは、「考えれば分かる知識」がしっかりあるという証拠であって、会話でとっさに使えるという証拠ではありません。

だから、問題集を解いたら終わりにせず、正解の文を音読し、1問につき1文でいいので自分の文に作りかえる。この一手間で、①②の練習が③につながります。

05フィードバック:直され方で伸び方が変わる

自分の英語の間違いを指摘してもらうこと(フィードバック)にも、研究の裏づけがあります。

Lyster & Saito(2010)は、教室での口頭の訂正を調べた15の研究(参加者827人)をまとめました。訂正には意味のある、しかも長続きする効果があり、答えを言わずに言い直しを促すタイプ(prompts)のほうが、正しい形を言い直して聞かせるタイプ(recasts)より効果が大きいという結果でした。

タイプ例(学習者:Yesterday I go to the park.)
recast(言い直して聞かせる)先生:Oh, you went to the park.
prompt(自分で直させる)先生:Yesterday you ...?(時制は?)

書いた英語への訂正については、Kang & Han(2015)が21の研究をまとめ、添削は文法の正確さを高めると報告しました。ただし効果の大きさは、学習者のレベル、学習の環境、書く文章の種類などによって変わります。

自分で取り入れる方法

  • オンライン英会話や先生には、「間違えたら、答えを言う前にヒントだけ出してください」と頼んでみる。
  • 添削された英文は、直された箇所を見るだけで終わらせず、正しい文を見ずに書き直す。
  • 自分がくり返す誤りを「ミス帳」に記録し、多いものから3つ選んで、次の1週間はそれだけに注意して書く・話す。

AI に英作文を添削してもらう方法については、第12章でくわしく扱います。中学生・高校生は、使う前にそのサービスの利用規約にある年齢の条件を、保護者といっしょに確かめてください。

061週間の練習メニュー

1日20分で回せる、文法を使える力にするメニューの例です。1週間で1つの文法項目を仕上げるつもりで進めます。

曜日内容(20分)
月文法書で項目を読む(10分)。例文3つを音読・暗唱(10分)
火問題集でその項目を解く(10分)。正解の文を音読し、自分の文を3つ作る(10分)
水瞬間英作文10文(15分)。言えなかった文を音読(5分)
木その文法を使って英語日記を3〜5文書く(15分)。見直し(5分)
金瞬間英作文の同じ10文に再挑戦(10分)。英文を読み、その形を探す(10分)
土その文法を使って自分のことを1分話し、録音して聞き直す(20分)
日休み。余裕があれば月曜の例文を見ずに言えるかだけ確かめる(5分)

ポイントは、同じ文法項目を「読む・解く・言う・書く・話す」の複数の向きで使うことです。DeKeyser の研究が示したとおり、技能は練習した向きに育ちます。いろいろな向きで使うほど、どの場面でも出てくる文法になります。

この節の答え

練習した向きの力が伸びる。言いたいなら言う練習を

今日からのやり方

  1. 今週の文法項目を1つ決め、例文3つを暗唱する
  2. 例文の単語を入れかえて、自分のことを言う文を3つ作る
  3. その項目で瞬間英作文を10文、すらすら言えるまでくり返す
  4. 問題集を解いたら、正解の文を音読し、1問1文の自分の文に作りかえる
  5. 1分話して録音し、間違いをミス帳に記録して翌週の注意点にする

レベル別:あなたならこうする

初級 A1〜A2

中学1〜2年の文法から、例文暗唱と瞬間英作文を始めます。1つの項目につき10文を、日本語を見て2〜3秒で言えるまで。問題集は薄いものを1冊選び、正解の文を音読する習慣をつけます。

中級 B1

瞬間英作文から、日本語なしで自分のことを話す練習へ移ります。1分間スピーチを録音し、時制・冠詞・3単現などの誤りをミス帳に記録して、くり返す誤りを集中的に直します。

上級 B2〜

話す・書く量を増やし、フィードバックを受ける機会を作ります。先生には答えではなくヒントを頼み、自分で言い直す練習を重視。添削された文は、見ずに書き直して定着させます。

よくある失敗と対策

問題集を何周も解くだけで終える

問題で測れるのは主に「考えれば分かる知識」です。正解の文を音読し、自分の文に作りかえる一手間で、使える力につなげます。

例文を意味を考えずに丸暗記する

意味と場面を思い浮かべながら音読します。最後に自分の文を作ると、暗記した形が自分の言いたいことと結びつきます。

直された答えを見て満足する

添削は見るだけでは身につきにくいものです。正しい文を見ずに書き直す、言い直す、までやって初めて自分のものになります。

TODAY
1 MIN

今日習った文法で、自分のことを3文、声に出して言う

友だちに出したい、この節の3問

タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。

6-6英文法は、理解の練習だけで話す力もつく?

DeKeyser(1997)の実験では、同じように教わったルールでも、理解で練習したものは理解が、産出で練習したものは産出が伸びました。文法の技能は、練習した向きにかなり特化して育つことが示されています。

X で出題する

6-6話した英語の間違い、正しい形を聞かされるのと自分で言い直すの、どちらが効く?

Lyster & Saito(2010)は教室での15の研究をまとめ、口頭の訂正には持続する効果があり、自分で言い直すよう促すタイプ(prompts)のほうが、正しい形を言い直して聞かせるタイプ(recasts)より効果が大きいと報告しました。

X で出題する

6-6文法問題で満点でも話せないのはなぜ?

Ellis(2005)の研究では、時間をかけて解く文法判断やルールの説明は、時間制限つきの問題や口頭の課題とは別の知識を測っていました。文法問題が主に測るのは「考えれば分かる知識」です。

X で出題する

X でポストLINEB!

PRACTICE KIT

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英文法の学習法を1本で攻略Atsueigo|【永久保存版】この動画1本で英文法学習法を完全攻略
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この節の根拠(研究・公式情報)

人工言語の規則を学んだ61人が8週間練習した。理解で練習した規則は理解が、産出で練習した規則は産出が伸び、技能は練習の種類に特化し、少しずつ上達した。

DeKeyser, R. M. (1997). Beyond explicit rule learning: Automatizing second language morphosyntax. Studies in Second Language Acquisition, 19(2), 195–221.出典を開く ↗

日本語学習者の文法練習で、間隔の短い練習と長い練習を比較。正確さは同程度で、間隔の短い練習のほうが速く言えるようになる可能性も示された。

Suzuki, Y., & DeKeyser, R. M. (2017). Effects of distributed practice on the proceduralization of morphology. Language Teaching Research, 21(2), 166–188.出典を開く ↗

時間制限なしの文法判断やルールの説明は、口頭の課題や時間制限つきの判断とは別のまとまり(明示的知識)を測っていた。

Ellis, R. (2005). Measuring implicit and explicit knowledge of a second language: A psychometric study. Studies in Second Language Acquisition, 27(2), 141–172.出典を開く ↗

教室での15の研究(827人)をまとめ、口頭の訂正には意味のある持続的な効果があった。言い直しを促す prompts のほうが recasts より効果が大きく、自由に話す課題で効果が目立った。

Lyster, R., & Saito, K. (2010). Oral feedback in classroom SLA: A meta-analysis. Studies in Second Language Acquisition, 32(2), 265–302.出典を開く ↗

21の研究をまとめ、書いた英語への訂正は文法の正確さを高めると報告。ただし効果は学習者のレベル、環境、文章の種類などで変わる。

Kang, E., & Han, Z. (2015). The efficacy of written corrective feedback in improving L2 written accuracy: A meta-analysis. The Modern Language Journal, 99(1), 1–18.出典を開く ↗

よくある質問

瞬間英作文の教材は何を選べばいい?

中学レベルの短い文が、文法項目ごとに並んでいるものを選びます。最初から長い文や難しい単語が出てくる教材は、とっさに言う練習になりにくいので避けます。自分で作った例文を使っても十分です。

間違いを直してくれる相手がいないときは?

自分の話を録音して書き起こし、見直すだけでも多くの誤りに気づけます。文法チェックの道具で書いた英語を点検するのも一つの手です。くり返す誤りをミス帳にためていくと、自分専用の注意リストができます。

文法の練習と、たくさん読む・聞く、どちらが大事?

両方が必要です。文法の練習は形に気づいて正確に使う力を、多読・多聴はたくさんの英語の中で形を自然に使いこなす力を育てます。原田英語のおすすめは、1日の英語の時間の半分以上を、英語にふれる時間にあてることです。