第9章|音読9-2効く音読のやり方5ステップ意味がわからないまま声に出すと『オウム読み』に。効く音読は5段階

教科書の本文を、もう何十回も声に出した。それなのに、速く読めるようにも、聞こえるようにもならない。日本人学習者の音読をモデルにまとめた研究に、「オウム読み」という言葉が出てきます。意味をとらないまま、口だけが先に進んでしまう読み方のことです。オウム読みは、どんなときに起きるのか。それを避けるには、声を出す前に何をすませておけばよいのでしょうか。
この節の目次(6項目)
01ステップ1:まず黙読して意味を100%に
最初のステップは、声を出さずに読むことです。意外に思えるかもしれませんが、ここを飛ばすと音読の効果は大きく下がります。
宮迫靖靜は2005年に、日本人学習者の音読のしくみをモデルにまとめました。その中で、意味をとらないまま英文を声にしてしまう「オウム読み(parrot reading)」は、文法の力が足りないときや、英文が難しすぎるときに起きると説明しています。頭が意味の処理に追いつかないまま、口だけが先に進んでしまう状態です。
そこで、音読の前に次のことをすませます。
- 知らない単語を調べ、意味をメモする
- 文の骨組み(主語と動詞)を確かめる
- 日本語に訳さなくても、場面が頭に浮かぶ状態にする
例として、次の英文で練習してみます。
- Last spring, Mika joined the school band.(去年の春、ミカは学校の吹奏楽部に入りました)
- She could not read music at first, so she practiced for ten minutes every morning before class.(最初は楽譜が読めなかったので、毎朝授業の前に10分練習しました)
- By summer, she was playing with everyone else.(夏には、みんなと一緒に演奏していました)
このくらいの英文なら、意味をつかむのに数分あれば足ります。「全部わかった」と言えるところまでが、ステップ1です。
02ステップ2:お手本で『正しい音』を先に入れる
次に、お手本の音声を聞きます。ここではまだ声を出しません。英文を見ながら、次の3つに印をつけます。
- 区切り(/):話し手が息をつく所、意味のかたまりの切れ目
- 強く読む語(○):名詞・動詞・形容詞など、意味の中心になる語
- つながる音(‿):前の語の終わりと次の語の頭がくっつく所
先ほどの例文なら、たとえば次のようになります。
- Last spring, / Mika joined the school band. /
- She could not read music‿at first, / so she practiced for ten minutes / every morning / before class. /
どこで区切るか、どの語を強く読むかは、話し手によって少し変わります。正解を当てるより、自分の耳で聞いたとおりに印をつけることが大切です。
お手本を先に聞くのには理由があります。自己流の発音で何十回も読むと、その発音のくせが口に残ってしまいます。日本の大学生を対象にした Taguchi らの2004年の研究では、お手本の音声を聞きながら同じ文章をくり返し読む練習(アシステッド・リピーテッド・リーディング)が、黙読の速さを伸ばす点で、多読と同じくらい効果的でした。読む活動への受け止め方も、良い方向に変わっていました。
03ステップ3:意味を浮かべ、かたまりで読む
ここで初めて声に出します。最初はゆっくりでかまいません。大切なのは、次の2つです。
- かたまりで言う:「Last / spring / Mika / joined」と1語ずつ切らず、「Last spring」「Mika joined the school band」と意味のかたまりで言う
- 場面を思い浮かべる:ミカが楽器を抱えて、朝の音楽室にいる様子などを頭に浮かべながら読む
最初の1〜2回は、音声に重ねて読む「オーバーラッピング」を使うと、リズムをつかみやすくなります。英文を見ながら、流れてくる音声とぴったり同時に声を出す練習です。
英語は、強く読む語と弱く読む語の差が大きい言語です。たとえば「she practiced for ten minutes every morning」なら、強いのは practiced・ten・minutes・morning で、she や for は弱く短くなります。日本語のように全部の音を同じ強さで読むと、英語らしいリズムになりません。
この段階でつっかえる所は、あなたの弱点です。原因を分けて手当てします。
- 単語の発音があやしい → 辞書や発音サイトで音を確かめる
- 文の構造があいまい → ステップ1にもどって確認する
- 口が回らない → その部分だけを5回くり返す
04ステップ4:お手本の速さまで上げる
意味を思い浮かべながら言えるようになったら、少しずつスピードを上げます。目標は、お手本の音声と同じくらいの速さで、意味を保ったまま読めることです。
速さはストップウォッチで測ると分かりやすくなります。
- 英文の語数を数える(例文の3文は32語)
- 読むのにかかった秒数を測る
- 語数 ÷ 秒数 × 60 で、1分あたりの語数(wpm)が出る
たとえば32語を16秒で読めたら、1分あたり120語です。お手本の音声の長さも測って同じ計算をすれば、目標の速さが分かります。
速くするときに気をつけたいのは、意味が置き去りにならないことです。速く言えても、内容が頭に浮かんでいなければ、それはまたオウム読みです。
宮迫と高塚の2005年の研究では、高校2年生の音読の速さを何通りかで測りました。その中で、内容を理解しようとして読んだときの速さに、内容の理解度をかけ合わせた指標が、読解力を知る参考として適していました。速さだけを追うのではなく、理解をともなった速さを目安にするのがよい、ということです。
05ステップ5:顔を上げて、見ないで言う
最後は、英文から目を離して言う練習です。イギリスの英語教育者マイケル・ウェストが、1960年の著書で「リード・アンド・ルックアップ(Read and Look up)」として紹介した方法です。
やり方は単純です。
- 1つのかたまり(はじめは1行ほど)を黙って読む
- 顔を上げ、英文を見ずに、目の前のだれかに話しかけるつもりで言う
- 次のかたまりへ進む
ウェストは、この方法では英文が「本から口へ」ではなく、「本から頭へ、頭から口へ」と流れると説明しました。そして、その間に英文を記憶にとどめておくことが、学習の半分を占めると書いています。
ステップ4までは、目で見た文字をそのまま声にしても、なんとかこなせます。ステップ5では、意味のかたまりを頭に保っていないと言えません。ここで初めて、英文が「自分のことば」に近づきます。くわしいやり方は、この章の「リード・アンド・ルックアップと音読筆写」の節で説明します。
061回15分のメニュー例
5つのステップを、1回15分にまとめると次のようになります。英文は100語前後を目安にします。
| 時間 | ステップ | すること |
|---|---|---|
| 0〜4分 | 1 意味 | 黙読、知らない語を調べる、文の骨組みを確認 |
| 4〜6分 | 2 音を入れる | お手本を聞き、区切り・強く読む語に印 |
| 6〜10分 | 3 かたまりで読む | オーバーラッピング2回、自分のペースで3回 |
| 10〜12分 | 4 速さを上げる | 時間を測って2〜3回、お手本の速さに近づける |
| 12〜15分 | 5 見ないで言う | 1文ずつ顔を上げて言う |
1日で5ステップを全部終えなくてもかまいません。初日はステップ1〜3、次の日にステップ3〜5、というように、日をまたいで進めるのも有効です。同じ英文に日を変えて何度か出会うほうが、記憶にも残りやすくなります。
ポイント:ステップを飛ばさないこと。特にステップ1(意味)と2(正しい音)を飛ばすと、そのあとの練習が効きにくくなります。
意味→音→声→速さ→見ないで言う、の順に上る
今日からのやり方
- 100語前後の英文を選び、黙読と辞書で意味を全部わかる状態にする
- お手本の音声を聞き、区切り(/)と強く読む語に印をつける
- 音声に重ねて2回、自分のペースで3回、意味を思い浮かべて音読する
- 時間を測り、お手本と同じくらいの速さで言えるまで上げる
- 1文ずつ顔を上げ、英文を見ずに言う
レベル別:あなたならこうする
50語ほどの教科書本文から始めます。ステップ2のお手本を何度も聞き、オーバーラッピングを多めに。ステップ4の速さは気にせず、かたまりで言えれば十分です。
100〜150語の長文で5ステップを通します。ステップ4ではお手本と同じ速さを目標にし、wpm を記録して伸びを確かめましょう。
ステップ1・2は短時間ですませ、ステップ4・5に時間を使います。ステップ5では言い回しを少し変えて言い換えるところまで進めると、話す練習につながります。
よくある失敗と対策
意味の処理が追いつかず、オウム読みになりがちです。まず黙読と辞書で意味を100%にしてから声に出しましょう。
まちがった発音のくせが口に残ります。音読の前に必ず音声を聞き、区切りと強く読む語に印をつけましょう。
速く言えても、意味が浮かんでいなければ効果は小さくなります。内容を思い浮かべられる速さを保ちましょう。
1 MIN
今日の英文1文の強く読む語に○をつけ、3回声に出す
友だちに出したい、この節の3問
タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。
9-2音読の前に『黙読』をはさむのはなぜ?
意味をつかまずに声に出すと、文の構造を理解しないまま口だけ動く「オウム読み」が起きやすいからです。宮迫(2005)は、文法の力が足りないときや英文が難しすぎるときに、これが起きると説明しています。
9-2音読の前にお手本の音声を聞くべき?
聞くべきです。自己流の発音で何十回も読むと、そのくせが口に残ります。日本の大学生の研究では、お手本の音声つきで同じ文章をくり返し読む練習が、黙読の速さを多読と同じくらい伸ばしました。
9-2音読練習の最後を『英文を見ないで言う』にするのはなぜ?
文字を見ながらだと、目から口へ流すだけになりがちだからです。英語教育者ウェスト(1960)は、本から目を上げて言うまでの間に英文を頭に保つことが、学習の半分を占めると述べました。
PRACTICE KIT
この節の実践キット
この節に関係する特集
特集シュリーマンの英語勉強法を今の勉強に当てはめると?半年で英語を身につけた7つのルールを、今の私たちに当てはめると?このサイトで練習する
原田英語のサイトで練習する
使えるサイト・アプリ
動画で学ぶ
もっと詳しく(コラム)
この節の根拠(研究・公式情報)
日本人学習者の音読モデルを提案。意味をとらないオウム読みは、文法の力が不十分なときや英文が難しすぎるときに起きると説明し、理解前・理解後の音読を目的と英語力で使い分けるべきとした。
Miyasako, N. (2005). A model of oral reading for Japanese EFL learners. 外国語教育メディア学会機関誌, 42, 147–167.出典を開く ↗日本の大学生で、お手本の音声つきで同じ文章をくり返し読む練習は、黙読の速さを伸ばす点で多読と同じくらい効果的で、読む活動への受け止め方も良くなった。
Taguchi, E., Takayasu-Maass, M., & Gorsuch, G. J. (2004). Developing reading fluency in EFL: How assisted repeated reading and extensive reading affect fluency development. Reading in a Foreign Language, 16(2), 70–96.出典を開く ↗高校2年生39人で、音読の流暢さや速さは読解力の指標とするほど強い関係ではないが参考になり、理解度をかけ合わせた音読速度が特に適していた。
宮迫靖靜・高塚成信(2005)「英語読解力の指標としての音読の流暢さ及び音読速度」『日本教科教育学会誌』28(3), 63–71.出典を開く ↗Read and Look up を紹介。英文を黙読し、顔を上げて相手に話すように言う方法で、本から頭、頭から口へ流れる間の記憶が学習の半分を占めると述べた。
West, M. (1960). Teaching English in difficult circumstances. London: Longmans, Green.出典を開く ↗よくある質問
音声のない教材は音読に使えませんか?
使えなくはありませんが、おすすめしません。お手本がないと、まちがった発音やリズムに気づけないからです。どうしても使うなら、単語の発音を辞書の音声で確かめ、読み上げ機能で全体の流れを聞いてから読みましょう。
オーバーラッピングとシャドーイングの違いは?
オーバーラッピングは英文を見ながら音声と同時に読む練習、シャドーイングは英文を見ずに音声を少し遅れて追いかける練習です。音読の5ステップでは、ステップ3でオーバーラッピングを使います。シャドーイングは第7章(リスニング)で扱います。
1回の音読は何分くらいがいい?
英語大全では1回15分ほどを目安にしています。短くても毎日続けるほうが、週末にまとめて長時間やるより、同じ英文に日を変えて何度も出会えます。




