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音がつながる・消える・変わる聞き逃しているのは難しい単語より to・of・and。英語は小さい語ほど消える

原田英語6分で読める研究・公式情報 2件第4章の3/7節

音がつながる・消える・変わるのイメージ

音声を何度聞いても分からなかった1文。スクリプトを開くと、知らない単語は1つもありません。イギリスの研究者が中級の学習者を調べたところ、聞き取りの正確さがはっきり低かったのは、名詞や動詞ではなく、to や of、and のような小さな語のほうでした。この傾向は、母語や英語力がちがっても変わりませんでした。毎日のように目にしている語が、なぜ耳ではつかまらないのか。

この節の目次(6項目)
  1. 知っている単語が聞き取れない本当の理由
  2. つながる:単語の境目がなくなる
  3. 消える:言わなくても伝わる音は落ちる
  4. 変わる:となりの音に引っぱられる
  5. 弱くなる:機能語の「弱形」を知る
  6. 音の変化に耳を慣らす4ステップ

01知っている単語が聞き取れない本当の理由

英語の音声を聞いて、あとでスクリプトを見ると「なんだ、全部知っている単語だ」と思うことがあります。単語力の問題ではないのに聞き取れない。その原因の多くは、英語の音の変化にあります。

教科書の単語は、1語ずつ、はっきり発音された形で覚えます。ところが実際の英語では、単語は前後とつながって、形を変えながら発音されます。頭の中にある「辞書の音」と、耳に入る「文の中の音」がずれているので、知っているはずの単語が見つからないのです。

特に影響が大きいのが、to、of、and、the、can、have のような機能語です。機能語は文の骨組みを作る小さな語で、ふつうは弱く、短く、あいまいに発音されます。

イギリスの研究者が中級の学習者を調べた研究では、機能語の聞き取りの正確さが、名詞や動詞のような内容語よりはっきり低いことが分かりました。この傾向は、学習者の母語や英語力のちがいを越えて、安定して見られました。よく出てくる語なのに、短く目立たないために聞き逃される。英語の「小さな語」は、聞き取りの落とし穴です。

この節では、音の変化を4つに分けて見ていきます。

  1. つながる(連結)
  2. 消える(脱落)
  3. 変わる(同化など)
  4. 弱くなる(弱形)

02つながる:単語の境目がなくなる

英語では、前の単語が子音で終わり、次の単語が母音で始まると、2つがくっついて1つの音のかたまりになります。

  • Get up.(起きて)→ /ɡe tʌp/「ゲタップ」のように
  • an apple(りんご1個)→ /ə næpl/「アナポー」のように
  • Turn it off.(それを消して)→ 3語がつながって1つのかたまりに
  • Check it out.(見てみて)→ アメリカ英語では「チェキラウ」に近く聞こえる

カタカナはあくまで目安ですが、単語の境目が、つづりとはちがう場所に移っているのが分かります。an apple を聞いて「ナップル」という単語を探してしまうと、意味が取れません。

母音と母音がぶつかるときも、間に軽い音が入ってなめらかにつながります。

  • go on → /ɡəʊ w ɒn/(間に軽い /w/)
  • I am → /aɪ j æm/(間に軽い /j/)

イギリス英語では、ふだんは発音しない語末の r が、次が母音のときだけ現れることもあります。

  • far away → /fɑːr əˈweɪ/(far の r が聞こえる)

ポイント:聞き取れないときは「単語の境目がずれていないか」を疑う。

03消える:言わなくても伝わる音は落ちる

英語では、発音しにくい場所や、なくても意味が伝わる音が、弱まったり消えたりします。

1. 子音にはさまれた t と d

  • next week → /neks wiːk/(next の t が落ちる)
  • last night → t がほとんど聞こえない
  • I don't know. → don't の t が消えて、ひと続きに

2. 破裂させない子音
good job の最初の d は、舌を上の歯ぐきにつけたまま、はじかずに次の j に移ります。そのため「グッジョブ」の「ド」がほとんど聞こえません。日本語のように「グッド・ジョブ」と母音をつけて言うと、英語らしい流れから外れます。

3. 機能語の h

  • tell him → /ˈtel ɪm/「テリム」のように
  • ask her → /ˈɑːsk ə/

him、her、his、have のような機能語の h は、文の途中で弱く読むと落ちることがよくあります。文の頭や、強調するときは落ちません。

日本語の耳は、すべての音をはっきり聞こうとします。でも英語では、消えた音を前後から補って理解するのがふつうです。聞き取りの練習では、「消えた音がどこにあるか」をスクリプトで確かめると、耳が変化に慣れていきます。

04変わる:となりの音に引っぱられる

となり合う音がおたがいに影響して、別の音に変わることがあります。

1. t・d + you

  • Nice to meet you. → meet you が /ˈmiːtʃuː/「ミーチュー」
  • Did you see it? → did you が /ˈdɪdʒuː/「ディジュー」
  • Would you ...? → /ˈwʊdʒuː/「ウジュー」

2. n が m に

  • ten boys → [tem bɔɪz]

次の b、p、m の口の形(唇を閉じる)に合わせて、n が m のように発音されます。

3. 同じ・似た音がぶつかる

  • this shop → [ðɪʃ ʃɒp](s が次の sh に引っぱられる)
  • bad dog → d を2回言わず、少し長めの1回で

4. アメリカ英語の t(ラ行のような t)
アメリカ英語では、母音にはさまれた t が、日本語のラ行に近い、はじくような音になります。

  • water:辞書でもアメリカ式は /ˈwɑːt̬ɚ/ と、t の下に「有声」の印がついている
  • a lot of → 「アラロヴ」のように
  • get it → 「ゲリッ」のように

一方、イギリス英語では、t が喉で止めるような音(声門閉鎖音)になる地域もあります。同じ英語でも、変わり方は地域や話し方で異なります。

05弱くなる:機能語の「弱形」を知る

機能語の多くは、「強形」(はっきり読む形)と「弱形」(弱く短く読む形)を持っています。ふだんの会話では、ほとんど弱形が使われます。

単語強形弱形例文
to/tuː//tə/I want to go.(行きたい)
for/fɔː//fə/This is for you.(あなたにです)
of/ɒv//əv/ /ə/a cup of tea(紅茶1杯)
and/ænd//ən/ /n/bread and butter(バターつきパン)
can/kæn//kən/I can swim.(泳げます)
have/hæv//əv/I could have helped.(手伝えたのに)
them/ðem//ðəm/Tell them.(彼らに言って)

弱形の母音は、ほとんどがあいまい母音 /ə/ です。a cup of tea は /ə ˈkʌp əv ˈtiː/ で、「ア・カップ・オブ・ティー」ではなく「アカパティー」のように聞こえます。

強形が使われるのは、主に次の場面です。

  • 文の最後:What are you looking at?(何を見ているの?)の at は強形
  • 強調や対比:It's not from him, it's for him.(彼からじゃなく、彼へ)
  • 単独で言うとき:「to」という単語を1語だけ読むとき

can と can't の聞き分けは、弱形を知っていると楽になります。I can swim. の can は弱い /kən/、I can't swim. の can't は強くはっきり読まれます。語末の t は聞こえないことも多いので、「can が強く聞こえたら否定かも」と考えるのが実用的です。

なお、gonna(going to)や wanna(want to)は、くだけた会話でよく聞く形です。聞き取れるようにはしておきたいですが、書くときや改まった場では使わないのが無難です。

06音の変化に耳を慣らす4ステップ

音の変化は、知識として知るだけでは聞き取れるようになりません。耳を慣らす練習が必要です。中国の英語学習者を対象にした教室研究では、縮約形などの音の変化を、1回約10分、30回にわたって教えたグループで、聞き取りテストに効果が見られました。知識と練習をセットにすると、効果が期待できます。

ステップ1:短いディクテーション(5分)
5〜10語の文を聞いて書き取ります。聞き取れなかった部分に印をつけ、スクリプトで答え合わせ。抜けたのが機能語か、つながった部分か、消えた音かを分類します。

ステップ2:スクリプトに記号を書きこむ(5分)
つながる所に「‿」、消える音に「/」、弱く読む語に下線。目で変化を確かめてから、もう一度聞きます。

ステップ3:まねして言う(5分)
記号を見ながら、お手本に合わせて言います。自分で言える変化は、聞き取りやすくなります。最初はゆっくりでかまいません。

ステップ4:スクリプトなしで聞き直す(2分)
最後にスクリプトを見ずに聞きます。最初より聞こえる部分が増えていれば成功です。

1日15分ほどで1セット。同じ素材を3日くり返すと、変化のパターンが耳に残りやすくなります。

この節の答え

英語は単語を1つずつ言わない。つながり・消え・変わり・弱まる

今日からのやり方

  1. 5〜10語の短い英文を聞いて、ディクテーションで書き取る
  2. 聞き取れなかった部分をスクリプトで確かめ、機能語・連結・脱落に分類する
  3. スクリプトにつながり・消える音・弱く読む語の記号を書きこむ
  4. 記号を見ながら、お手本に合わせて声に出してまねする
  5. 最後にスクリプトなしで聞き直し、聞こえる部分が増えたか確かめる

レベル別:あなたならこうする

初級 A1〜A2

まずは an apple、Get up. のような「子音+母音のつながり」から。教科書の音声を聞き、つながっている所に記号をつけて、まねして言う練習をしましょう。短い文で十分です。

中級 B1

to・of・and・can などの弱形を表で確かめ、ディクテーションで機能語の聞き逃しを減らしましょう。聞き取れなかった部分を分類すると、自分の弱点が見えてきます。

上級 B2〜

ナマの会話やドラマで、アメリカ式のラ行のような t、イギリス式の喉で止める t など、地域による変化に慣れましょう。速い音声を部分的にくり返し聞く練習が効きます。

よくある失敗と対策

単語を1つずつはっきり聞こうとする

英語は単語がつながって発音されるので、1語ずつ区切って聞こうとすると間に合いません。意味のかたまりで聞き、消えた音は前後から補う意識を持ちましょう。

知識だけで満足する

音の変化の規則を知っていても、耳が慣れていないと聞き取れません。ディクテーションとまねる練習で、規則を実際の音と結びつけましょう。

くだけた形を何にでも使う

gonna や wanna は会話でよく聞きますが、書く英語や改まった場面では使いません。聞き取れるようにしつつ、話すときは場面に合わせて選びましょう。

TODAY
1 MIN

a cup of tea と I can swim. を辞書や動画の音声で聞き、弱い音をまねして言う

友だちに出したい、この節の3問

タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。

4-3英語の学習者が聞き逃しやすいのは内容語?機能語?

中級の学習者を調べた研究では、前置詞や冠詞などの機能語の聞き取りが、名詞や動詞などの内容語よりはっきり劣っていました。母語や英語力のちがいを越えて、同じ傾向が見られました。

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4-3can と can't、何で聞き分ける?

最後の t より、強さと母音が手がかりです。I can swim. の can は弱く /kən/、I can't swim. の can't は強くはっきり読まれます。t は聞こえないことも多いので、can が強く聞こえたら否定を疑います。

X で出題する

4-3英語の音の変化を「教わる」と聞き取りは伸びる?

中国の英語学習者を対象にした教室研究では、gonna のような縮約形を1回約10分・30回教えたグループで、聞き取りテストの成績に効果が見られました。ただし、測り方によって効果の出方には差がありました。

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PRACTICE KIT

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使えるサイト・アプリ

動画で学ぶ

音の変化の法則を知るAtsueigo|【たった10分】発音が劇的に変わる4つの法則(音の変化)
つながる音で自然な英語へPronunciation with Emma|Do This to Sound Natural and Fluent in English (Connected Speech)
子音+母音でつながる音のルールRachel's English|English Pronunciation - Linking: Consonant to Vowel -- American Accent
waterが「ワラ」に聞こえる秘密Rachel's English|Flap T: Really a D Sound? American English Pronunciation

もっと詳しく(コラム)

この節の根拠(研究・公式情報)

中級の第二言語の聞き手は、機能語の聞き取りが内容語よりはっきり劣っていた。母語や英語力のちがいを越えて安定した結果だった。

Field, J. (2008). Bricks or mortar: Which parts of the input does a second language listener rely on? TESOL Quarterly, 42(3), 411–432.出典を開く ↗

中国の英語学習者で、縮約形を1回約10分・30回教えた群(16人)は、対照群(16人)より聞き取りに効果が見られた。ただし3つの測定で効果の程度には差があった。

Brown, J. D., & Hilferty, A. (1986). The effectiveness of teaching reduced forms for listening comprehension. RELC Journal, 17(2), 59–70.出典を開く ↗

よくある質問

音の変化は全部覚えないといけませんか?

全部を暗記する必要はありません。つながる・消える・変わる・弱くなるの4つの考え方を知り、よく出る機能語の弱形を押さえれば十分です。あとはディクテーションで出会った変化を1つずつ増やしていきましょう。

自分も音をつなげて話すべきですか?

話すときは、無理に崩さなくても通じます。ただ、子音+母音のつながりや機能語の弱形は、自然に使えるとリズムが整い、聞く側も楽になります。まずは聞き取りのために知り、言える範囲で取り入れましょう。

アメリカ英語とイギリス英語で変化はちがいますか?

共通する変化が多いですが、t の発音のように地域でちがうものもあります。アメリカ英語では母音にはさまれた t がラ行に近くなり、イギリス英語では喉で止める音になる地域もあります。両方に慣れておくと安心です。