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英語のリズムと強勢強く読む場所がずれると母音まで変わる。聞き手が単語を見失う本当の理由

原田英語6分で読める研究・公式情報 4件第4章の4/7節

英語のリズムと強勢のイメージ

北米のある研究で、英語を母語とする大学生が、留学生の教員による講義の録音を聞きました。録音は3通りあり、ちがうのは、文の中でいちばん強く読む語の置き方です。正しい位置に置いた版、まちがった位置に置いた版、どこも立てない版。聞き終えたあと、学生たちが覚えていた内容の量にも、話し手への評価にも、差が出ました。たった1語の強さが、なぜそこまで効くのか。

この節の目次(6項目)
  1. 英語は「強弱」、日本語は「高低と拍」
  2. 「強勢は等間隔」説をどう考えるか
  3. 単語の強勢:ずれると単語が見つからない
  4. 文の強勢:いちばん大事な一語を立てる
  5. イントネーション:上げ下げで気持ちを伝える
  6. リズムを体に入れる練習

01英語は「強弱」、日本語は「高低と拍」

日本語と英語では、言葉の「目立たせ方」がちがいます。

日本語は、主に声の高さで区別します。東京方言では「はし」を「は」を高く言うか「し」を高く言うかで、「箸」と「橋」が分かれます。そして、どの拍もおおむね同じくらいの長さで発音されます。

英語は、強勢(ストレス)で区別します。強く読む音節は、

  • 長く
  • 大きく
  • 高さの変化をともない
  • 母音がはっきりした音

になります。逆に、強く読まない音節は短く、弱く、母音があいまいな /ə/ になりやすい。この「強い音節と弱い音節の差」がとても大きいのが英語の特徴です。

たとえば banana /bəˈnɑːnə/ は、日本語の「バ・ナ・ナ」のように3つを同じ強さで言うのではなく、「ba-NA-na」と真ん中だけを強く長く読み、前後はごく短くします。

文でも同じです。内容を運ぶ語(名詞・動詞・形容詞・副詞など)を強く、文の骨組みを作る機能語(冠詞・前置詞・助動詞など)を弱く読みます。

  • DOGS CHASE BALLS.(犬はボールを追いかける)
  • The DOGS have been CHASing the BALLS.(犬たちはずっとボールを追いかけている)

2つ目の文は音節がずっと多いのに、強く読む所は3つで同じです。弱い部分をぎゅっと縮めて、強い所を中心に話すのが英語のリズムです。

02「強勢は等間隔」説をどう考えるか

英語はよく「強勢拍リズム」の言語と呼ばれます。強く読む音節がほぼ等しい間隔でくり返される、という考え方です。これに対して、スペイン語やフランス語は「音節拍」、日本語は「モーラ拍」と分類されてきました。

ところが、実際の話し言葉を測った研究では、英語の強勢の間隔は等しくないことが分かっています。ある音声学者が英語やスペイン語など複数の言語の読み上げを比べた研究では、強勢と強勢の間の長さは、間にある音節の数が多いほど長くなりました。そして、英語の強勢の間隔が、ほかの言語よりとくに規則的というわけでもありませんでした。

その研究者は、英語らしいリズムの印象は「等間隔」から生まれるのではなく、次のような言語の性質から生まれると論じています。

  • 子音の連続が多く、音節の重さにばらつきがある
  • 強く読まない音節の母音が弱く縮む
  • 強勢のある音節とない音節の差が大きい

学習者にとっての結論は、「等間隔」にこだわる必要はないが、強弱の差をはっきりつけることは大事ということです。強い所をしっかり長く、弱い所を短く軽く。日本語のように全部の拍を同じ強さで並べないことが、英語らしいリズムの近道です。

ポイント:メトロノームのような正確さより、「強い所は長く、弱い所は短く」の差を大きくする。

03単語の強勢:ずれると単語が見つからない

英語を母語とする聞き手は、はっきりした母音を持つ強い音節を「単語の始まり」の手がかりにして、頭の中の単語を探すと考えられています。だから単語の強勢がずれると、正しい単語にたどり着けないことがあります。

イギリスの研究者が、2音節の単語の強勢をわざとずらした録音を作り、英語を母語とする人と母語としない人に書き取らせた研究があります。どちらのグループも、強勢のずれで書き取りの正確さが下がり、その下がり方はよく似ていました。そして、右(後ろ)へのずれのほうが、左(前)へのずれより影響が大きかったと報告されています。

その後の研究では、2〜5音節の単語で調べ、母音の音色まで変わってしまう強勢のずれが、最も通じにくさにつながることが示されました。強勢の位置そのものより、それによって母音が変わることが問題になるのです。

日本人が特にずれやすいのは、カタカナ語として知っている単語です。

単語英語の強勢ずれやすい例
hotelho-TEL前を強く「ホテル」
evente-VENT前を強く「イベント」
guitargui-TAR前を強く「ギター」
careerca-REER前を強く「キャリア」
volunteervol-un-TEER真ん中を強く「ボランティア」

品詞で強勢が変わる単語もあります。

  • REcord(名詞:記録)/reCORD(動詞:記録する)
  • PREsent(名詞:贈り物)/preSENT(動詞:贈る、発表する)

同じ語の仲間でも位置が動きます。PHOtograph、phoTOgrapher、photoGRAPHic。強勢が動くと、弱くなる母音も入れかわります。単語を覚えるときは、意味とつづりだけでなく、強く読む位置もセットで覚えましょう。

04文の強勢:いちばん大事な一語を立てる

文の中にも、ひときわ強く目立たせる語があります。ふつうは、新しい情報や話し手が一番伝えたい語です。これを文の中心の強勢(核強勢)と呼びます。

  • I bought a RED bag.(青じゃなくて赤いかばんを買った)
  • I bought a red BAG.(赤い靴じゃなくてかばんを買った)
  • I bought a red bag.(ほかの人じゃなくて私が買った)

単語は同じでも、どこを立てるかで伝わる意味が変わります。

北米で行われた研究では、英語を母語とする大学生に、留学生の教員による講義の録音を3つの版で聞かせました。文の中心の強勢が正しい版、まちがった位置にある版、強勢がない版です。正しい版を聞いた学生は、内容をより多く覚えていて、話し手への評価も高くなりました。

国際的なコミュニケーションの研究でも、文の中心の強勢を正しい位置に置くことは、通じやすさに欠かせない要素の1つとされています。日本語話者は、文全体を平らに読んだり、文末を強く読んだりしがちです。「この文で一番伝えたい語はどれか」を考えて、そこをはっきり立てる練習をしましょう。

05イントネーション:上げ下げで気持ちを伝える

イントネーションは、文全体の声の上がり下がりです。英語では、気持ちや態度、話の続き具合を伝える役割があります。

よく見られる傾向を挙げます。ただし、これは絶対の規則ではなく、場面や話し手によって変わります。

  • 言い切りの文:下げることが多い。It's raining.↘
  • 疑問詞のある疑問文:下げることが多い。Where do you live?↘
  • Yes/No で答える疑問文:上げることが多い。Are you ready?↗
  • 列挙:最後以外を上げ、最後を下げる。apples↗, bananas↗, and oranges↘
  • 聞き返し・驚き:上げる。Really?↗

同じ Really? でも、上げれば「本当に?」という驚きや確認、下げれば「ふうん」と気のない返事に聞こえることがあります。

英語では、強勢のある所で声の高さを大きく動かすと、話の重点が伝わりやすくなります。

最初からイントネーションの細かい規則を覚える必要はありません。お手本の音声をまねて、「声の高さの動き」ごと写しとる練習が効果的です。

06リズムを体に入れる練習

リズムと強勢は、頭で理解するより、体で覚えるほうが早く身につきます。

練習1:手をたたいて単語の強勢(3分)
新しく覚えた単語を、強く読む音節で手をたたきながら言います。ho-TEL なら2拍目でたたく。カタカナ語から順に直していきます。

練習2:「タ・ターン」で文のリズム(5分)
文の強く読む語を「ターン」、弱い語を「タ」に置きかえて口ずさみます。The DOGS have been CHASing the BALLS. →「タ・ターン・タ・タ・ターン・タ・タ・ターン」。リズムだけを先に体に入れてから、単語に戻します。

練習3:一番伝えたい語を変えて読む(5分)
I bought a red bag. のような文を、強く読む語を変えて3通りに読みます。読むたびに、意味がどう変わるかを日本語で言ってみます。

練習4:お手本と重ねて読む(5分)
スクリプトの強く読む語に印をつけ、音声と同時に読みます。強い所で音声とぴったり重なるかを意識します。

練習5:録音して聞き比べる(2分)
お手本と自分の録音を並べて聞き、強く読む位置が合っているかを確かめます。

1日15〜20分で十分です。リズムは個々の音と並行して、毎日少しずつ整えていきましょう。

この節の答え

英語は強弱で伝える言語。強く読む位置が、通じるかどうかを左右する

今日からのやり方

  1. 新しく覚える単語は、強く読む音節を辞書で確かめてから覚える
  2. 強く読む音節で手をたたきながら、カタカナ語の強勢を直す
  3. 文の強い語と弱い語を「タ・ターン」に置きかえてリズムを口ずさむ
  4. 同じ文を、一番強く読む語を変えて3通りに読み分ける
  5. お手本と自分の録音を聞き比べ、強く読む位置が合っているか確かめる

レベル別:あなたならこうする

初級 A1〜A2

まずは単語の強勢から。教科書の新出単語を、強く読む音節で手をたたきながら言いましょう。hotel や guitar などのカタカナ語は、強勢がずれやすいので優先して直します。

中級 B1

文の中で内容語を強く、機能語を弱く読む練習をしましょう。スクリプトの強く読む語に印をつけ、音声と重ねて読むと、英語のリズムが体に入りやすくなります。

上級 B2〜

文の中心の強勢とイントネーションで、意味やニュアンスを伝え分ける段階です。プレゼンや会議で使う文を、一番伝えたい語を意識して読み、録音で確かめましょう。

よくある失敗と対策

全部の音節を同じ強さで読む

日本語の拍のように均等に読むと、英語の聞き手は単語の形をつかみにくくなります。強い所は長くはっきり、弱い所は短く軽く、と差をつけましょう。

カタカナ語の強勢のまま話す

hotel、event、guitar などは、カタカナと英語で強く読む位置がちがいます。知っている単語ほど思いこみが強いので、辞書で強勢を確かめ直しましょう。

イントネーションの規則を暗記する

上げる・下げるの規則には例外が多く、暗記だけでは使えません。お手本の声の動きをまるごとまねる練習のほうが、自然なイントネーションが身につきます。

TODAY
1 MIN

hotel・event・guitar を、強く読む音節で手をたたきながら3回ずつ言う

友だちに出したい、この節の3問

タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。

4-4英単語の強勢がずれると、母音まで変わる?

英語では、強く読まない音節の母音が弱いあいまい母音になります。そのため強勢の位置がずれると、母音の音色まで変わりがちです。研究では、母音の音色が変わる強勢のずれほど、通じにくさへの影響が大きいことが分かっています。

X で出題する

4-4「英語の強勢は等間隔にくる」って本当?

実際に測ると、英語の強勢の間隔は等しくありません。間にある音節が多いほど長くなります。ただ英語では弱い音節が短く縮むので、日本語よりずっと強弱の差がはっきりしたリズムに聞こえます。

X で出題する

4-4英語の文で、一番強く言う位置をずらすとどうなる?

英語を母語とする大学生に講義を聞かせた研究では、文の中心の強勢が正しい版のほうが、ずれた版や強勢のない版より、内容をよく覚えていて、話し手への評価も高くなりました。

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PRACTICE KIT

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動画で学ぶ

英語は「強勢のリズム」で話す言葉Rachel's English|English: A Stress-Timed Language - American Pronunciation
英語はリズムでしゃべる言語English with Lucy|Rhythm for English Speaking (How British People Really Speak English)
単語アクセントのルール総まとめPronunciation with Emma|WORD STRESS in English - What are the rules for Word Stress in English?
文のどこを強く読む?完全ガイドPronunciation with Emma|Sentence Stress and Intonation in English (The Complete Guide)

もっと詳しく(コラム)

この節の根拠(研究・公式情報)

単語の強勢をずらした録音を書き取らせると、英語を母語とする聞き手もそうでない聞き手も似た影響を受けた。影響の大きさは、ずれの向きや母音の変化で変わった。

Field, J. (2005). Intelligibility and the listener: The role of lexical stress. TESOL Quarterly, 39(3), 399–423.出典を開く ↗

2〜5音節の単語で調べ、強勢のずれは母音の音色の変化をともなうときに最も通じにくくした。ずれの向きの影響はそれより小さかった。

Ghosh, M., & Levis, J. M. (2021). Vowel quality and direction of stress shift in a predictive model explaining the varying impact of misplaced word stress: Evidence from English. Frontiers in Communication, 6, 628780.出典を開く ↗

文の中心の強勢が正しい講義を聞いた大学生は、ずれた版や強勢のない版より内容を多く思い出し、話し手の評価も高かった。

Hahn, L. D. (2004). Primary stress and intelligibility: Research to motivate the teaching of suprasegmentals. TESOL Quarterly, 38(2), 201–223.出典を開く ↗

強勢の間隔は間の音節が多いほど長くなり、英語がほかの言語より等間隔というわけではなかった。リズムの差は音節構造や母音の弱まりなど言語の性質から生じると論じた。

Dauer, R. M. (1983). Stress-timing and syllable-timing reanalyzed. Journal of Phonetics, 11(1), 51–62.出典を開く ↗

よくある質問

個々の音とリズム、どちらを先に直すべき?

どちらも大切ですが、強勢は単語の見つけやすさに直結し、母音の変化も引き起こします。カタカナ語の強勢を直すだけで聞き返されにくくなることもあるので、早い段階から取り組む価値があります。

強く読む位置にルールはありますか?

傾向はあります。2音節の名詞は前、動詞は後ろが多い、-tion や -ic で終わる語はその直前が強い、などです。ただ例外も多いので、ルールは目安にして、新しい単語は辞書で確かめるのが確実です。

イントネーションは通じやすさに関係しますか?

関係します。特に文の中で一番強く読む語の位置は、聞き手の理解や話し手の印象に影響することが研究で示されています。一方、細かい上げ下げは地域や個人の差も大きいので、まずは強く読む語を正しく立てることを優先しましょう。