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LとR・THなど日本人の苦手な音LとRは「口」より先に「耳」から。いろんな声で聞き分けると発音まで変わった

原田英語7分で読める研究・公式情報 5件第4章の5/7節

LとR・THなど日本人の苦手な音のイメージ

1991年、アメリカの研究チームが、日本語話者に英語の L と R を聞き分ける訓練をしました。何人もの話し手が発音した自然な単語を聞いて、L か R かを答える。それをくり返す地道な方法です。続く研究で、効き目を分ける条件が見えてきました。1人の話し手の声だけで練習したグループは、訓練中は伸びても、知らない人の声になると伸びが見られなかったのです。では、耳だけの練習は、口にまで届くのか。

この節の目次(6項目)
  1. なぜ L と R は聞き分けにくいのか
  2. 口の形:L・R・TH・V・F
  3. ミニマルペアで「耳の箱」を2つに分ける
  4. HVPT:いろいろな声で聞くと耳が育つ
  5. どの音から直すか:優先順位のつけ方
  6. 1日15分の練習メニュー

01なぜ L と R は聞き分けにくいのか

日本語のラ行は、舌先で上の歯ぐきを一瞬はじく音です。発音記号では [ɾ] と書きます。英語の L [l] とも R [ɹ] ともちがう、日本語独自の音です。

日本語では、ラ行がどんな音で発音されても意味は変わりません。だから日本語の耳は、L っぽい音も R っぽい音も「ラ行」という1つの箱に入れて聞くように育ちます。英語の light と right が同じ「ライト」に聞こえるのは、耳が悪いのではなく、母語に合わせて効率よく聞いている結果です。

そして、ここが大切なところです。耳で区別できない音を、口だけで正しく言い分けるのは難しい。自分の発音が合っているかどうかを、自分で判断できないからです。だから苦手な音の練習は、口の形を知ることと同時に、耳を育てることから始めるのが効率的です。

日本人が苦手とする主な音をまとめます。

区別例日本語でまとめてしまう音
L と Rlight / right、glass / grassラ行
TH と S・Zthink / sink、then / zenサ行・ザ行
V と Bvery / berry、vote / boatバ行
F と Hfood / hoodフ(唇を近づける日本語の音)
S と SHsea / she「シ」の音

02口の形:L・R・TH・V・F

口の形は、鏡を見ながら、ゆっくり確かめましょう。

L [l]
舌先を上の前歯のうしろの歯ぐきにしっかりつけ、そのまま声を出します。息は舌の両わきから流れます。日本語のラ行のように「はじく」のではなく、「つけたまま」がポイントです。

R [ɹ](アメリカ式)
舌先はどこにもつけません。舌先を少し奥に引くか、舌全体を盛り上げるようにし、唇を軽く丸めます。言い始める前に、小さく「ゥ」と唇をすぼめる構えを作ると出しやすくなります。

TH [θ](think)と [ð](this)
舌先を上の前歯に軽く当てるか、前歯の間から少しだけ出し、その間から息を流します。[θ] は息だけ、[ð] は声をのせます。「ス」「ズ」のように舌を歯ぐきにつけないことが大切です。

V [v] と F [f]
上の前歯を下唇の内側に軽く当て、その間から息を流します。F は息だけ、V は声をのせます。日本語の「バ」は唇を閉じ、「フ」は両唇を近づけて出す音なので、どちらも上の歯は使いません。

SH [ʃ] と S [s]
she は唇を少し丸めて前に出し、sea は唇を横に引きます。日本語の「シ」はその中間の音なので、どちらにも聞こえにくくなります。

ポイント:口の形は「知る」だけでは不十分。鏡と録音で、本当にその形になっているかを確かめる。

03ミニマルペアで「耳の箱」を2つに分ける

ミニマルペアとは、1つの音だけがちがう単語の組です。light と right、think と sink のように、そこだけ聞き分ければ意味が分かれます。

ミニマルペアの例(自作の練習リスト)

  • L / R:light / right、lead / read、glass / grass、fly / fry、play / pray、collect / correct
  • TH / S:think / sink、thick / sick、mouth / mouse、path / pass
  • V / B:very / berry、vote / boat、van / ban
  • 母音:hat / hut、sheep / ship、walk / work

聞き分けテストのやり方

  1. ペアの単語を音声で聞く(辞書サイトや単語の音声サイトで)
  2. 片方だけをランダムに再生してもらう、またはアプリで出題する
  3. どちらだったかを答え、すぐに正解を確かめる

ポイントは、答えたあとすぐに正解が分かることです。正しい答えを知ることで、耳が少しずつ「どこを聞けば区別できるか」を学んでいきます。

文の中でも練習しましょう。

  • I need to correct the data.(データを修正する必要があります)
  • I need to collect the data.(データを集める必要があります)

文になると、前後の意味から推測できることも増えます。でも、推測にたよりすぎると耳は育ちません。単語だけの聞き分けと、文の中での聞き分けを、両方やるのがおすすめです。

04HVPT:いろいろな声で聞くと耳が育つ

ミニマルペアの聞き分けを、研究で効果が確かめられた形にしたのが HVPT(高変動音声訓練) です。High Variability Phonetic Training の略で、「たくさんの話し手の声」と「いろいろな位置の音」で聞き分けを練習するのが特徴です。

始まりは L と R の研究
1991年、アメリカの研究チームが日本語話者を対象に、L と R の聞き分け訓練を行いました。1人の声や合成音ではなく、複数の話し手が発音した自然な単語で、語頭・子音のあと・語中など、いろいろな位置の L と R を聞かせて、どちらかを答えさせる方法です。最初の報告では、伸びは「小さいが確かな」ものでした。

声のばらつきが決め手だった
続く研究では、複数の話し手で訓練したグループは、新しい単語や知らない話し手の声にも上達が広がりました。一方、1人の話し手だけで訓練したグループは、訓練中は伸びても、新しい話し手の声では伸びが見られませんでした。

効果は長持ちした
3週間の訓練のあと、3か月たっても正答率は訓練直後から2%しか下がらず、6か月後も訓練前より4.5%高い水準を保っていました。

聞く練習で、発音もよくなった
別の研究では、聞き分けの訓練だけを受けた日本語話者の L と R の発音を、英語を母語とする人が判定しました。すると訓練後の発音のほうが、評価が高く、正しく聞き取られやすくなっていました。

32の研究をまとめると
カナダの研究者が HVPT を使った32の研究をまとめたレビューでは、HVPT は聞き分けと発音の両方に効果があり、その効果は長続きすると結論づけています。同時に、教師向けの雑誌ではなく専門的な学術誌に発表されることが多く、現場ではあまり知られていないことも指摘しています。

このレビューの著者は、英語の音の聞き分けをゲーム感覚で練習できるサイト「English Accent Coach」も作っています。

05どの音から直すか:優先順位のつけ方

苦手な音を全部いっぺんに直そうとすると、時間がいくらあっても足りません。優先順位をつけましょう。

1. 区別できないと困る単語が多い音を先に
英語には、その音の区別で意味が分かれる単語の組が多い音と、少ない音があります。音声学には「機能負担量」という考え方があり、区別で意味が分かれる単語の組が多い音ほど、まちがえたときに誤解を招きやすいとされます。L と R は、light / right、long / wrong、collect / correct のように、区別で意味が変わる単語がとても多い組です。

2. TH は「最後に完璧に」でもよい
国際共通語としての英語の発音を研究した Jenkins の提案(くわしくは「目指すのはネイティブ発音?」の節)では、TH は非ネイティブ同士が通じ合うための必須項目に入っておらず、別の音での代用も認められています。もちろん正しく言えるに越したことはありませんが、L と R、母音の区別、強勢のほうが優先度は高いと考えてよいでしょう。

3. 母音も忘れない
子音ばかりに目が向きがちですが、hat / hut、walk / work のような母音の区別も、意味を分ける大事な音です。

優先順位の目安

優先度音
高強く読む位置、L と R、日本語にない母音、子音の後に母音を足さない
中V と B、F と H、S と SH
余裕があればTH の精度、地域ごとの細かい音色

これは日本語話者に多い苦手な点をもとにした目安です。自分の録音を聞いて、「通じなかった単語」から直すのが一番確実です。

061日15分の練習メニュー

耳と口を両方鍛える、1日15分のメニューです。

1. 聞き分け(5分)
English Accent Coach のような、いろいろな話し手の声で聞き分けを練習できるサイトを使います。1人の声だけでなく、なるべく多くの声で聞くことが大切です。辞書サイトの音声を使う場合も、アメリカ式とイギリス式の両方や、単語の音声を世界中の人が投稿しているサイトの複数の声を聞きます。

2. 口の形(3分)
今日の音を1つ決め、鏡を見ながら口の形を確かめます。L なら舌先が歯ぐきについているか、TH なら舌が歯に当たっているか。

3. ミニマルペアを言い分ける(4分)
light / right のような組を、交互に5回ずつ言って録音します。

4. 録音で確かめる(3分)
録音を聞いて、どちらの単語に聞こえるかを判断します。可能なら、音声認識(スマホの音声入力など)に話しかけて、意図した単語が出るかも試します。音声認識は完璧な判定役ではありませんが、目安になります。

続けるコツ
研究で使われた訓練は、数週間にわたって何回も行われました。1日で劇的に変わることはありません。2〜3週間は同じ音を続け、聞き分けの正答率の変化を記録すると、伸びが目に見えてやる気が続きます。

この節の答え

苦手な音は、まず耳で区別できるようにすると口もついてくる

今日からのやり方

  1. 苦手な音の組を1つ選び、ミニマルペアの単語リストを作る
  2. いろいろな話し手の声で聞き分け練習をし、正答率を記録する
  3. 鏡を見ながら、その音の口の形と舌の位置を確かめる
  4. ペアの単語を交互に言って録音し、どちらに聞こえるか判断する
  5. 2〜3週間は同じ音を続け、正答率の変化で伸びを確かめる

レベル別:あなたならこうする

初級 A1〜A2

L と R の口の形を鏡で確かめることから始めましょう。L は舌先を歯ぐきにつけたまま、R はどこにもつけない。light / right など、身近な単語のペアを聞き比べるだけでも、耳が慣れていきます。

中級 B1

HVPT の考え方で、いろいろな話し手の声で聞き分け練習をしましょう。正答率を記録して2〜3週間続けると、伸びが見えます。母音のペア(hat / hut など)も練習に加えます。

上級 B2〜

文の中や速い会話の中で、苦手な音が崩れていないかを録音で確かめましょう。collect / correct のように、仕事や専門分野で使う単語のペアを優先して練習すると実用的です。

よくある失敗と対策

口の形だけを練習する

耳で区別できないと、自分の発音が合っているか判断できません。口の形の練習と同時に、聞き分けの練習をしましょう。研究では、聞く練習だけでも発音が上達していました。

1人の声だけで聞き分け練習をする

1人の話し手だけで訓練すると、新しい声には伸びが広がりにくいことが分かっています。辞書の米英両方の音声や、複数の話し手の音声を使いましょう。

TH の完璧さにこだわりすぎる

国際共通語としての英語の発音の提案では、TH は必須項目に入っていません。L と R、母音、強勢など、意味の区別に関わる音を先に固めましょう。

TODAY
1 MIN

light と right を辞書の米英2つの音声で聞き比べ、口の形を鏡で確かめて5回ずつ言う

友だちに出したい、この節の3問

タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。

4-5日本語のラ行は L と R のどちら?

どちらでもありません。日本語のラ行は、舌先で歯ぐきを一瞬はじく音で、L とも R ともちがう第3の音です。そのため日本語話者の耳には、英語の L と R がどちらもラ行の仲間に聞こえやすくなります。

X で出題する

4-5L と R、聞き分けの練習だけで発音もよくなる?

日本語話者の大人が L と R の聞き分けだけを訓練した研究で、発音練習をしていないのに、英語話者が聞いて判定した L と R の発音も上達していました。耳の学習が口に移ったのです。

X で出題する

4-5L と R の聞き分け、1人の声だけで練習するとどうなる?

1人の話し手の声だけで訓練したグループは、その声では上達しても、新しい話し手の声では伸びが見られませんでした。複数の話し手で訓練したグループは、新しい声にも上達が広がりました。

X で出題する

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PRACTICE KIT

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使えるサイト・アプリ

動画で学ぶ

RとLを並べて比べる4分間Rachel's English|How to Pronounce R and L Sounds - Comparison - American English Pronunciation
LとRの発音、もう迷わないサマー先生と英会話!|超わかりやすいLとRの発音の仕方!《サマー先生の英語発音講座#6》
2つのTHを口の形から完全理解Rachel's English|English Sounds - The Two TH Consonants [θ] and [ð]
thの発音をマスターしようサマー先生と英会話!|「Th」の発音の完全版!ちょっとしたコツでマスターできます!《サマー先生の英語発音講座#22》

もっと詳しく(コラム)

この節の根拠(研究・公式情報)

多くの話し手の自然な発話といろいろな位置の /r/・/l/ で日本語話者を訓練したところ、以前の方法より確かな効果があり、事前と事後で小さいが確かな伸びが見られた。

Logan, J. S., Lively, S. E., & Pisoni, D. B. (1991). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: A first report. Journal of the Acoustical Society of America, 89(2), 874–886.出典を開く ↗

複数の話し手で訓練した群は新しい単語・新しい話し手にも上達が広がったが、1人の話し手だけで訓練した群は新しい話し手の声に一般化しなかった。

Lively, S. E., Logan, J. S., & Pisoni, D. B. (1993). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/. II: The role of phonetic environment and talker variability in learning new perceptual categories. Journal of the Acoustical Society of America, 94(3), 1242–1255.出典を開く ↗

3週間の訓練の3か月後、正答率は訓練直後から2%しか下がらず、6か月後も訓練前より4.5%高かった。

Lively, S. E., Pisoni, D. B., Yamada, R. A., Tohkura, Y., & Yamada, T. (1994). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/. III. Long-term retention of new phonetic categories. Journal of the Acoustical Society of America, 96(4), 2076–2087.出典を開く ↗

聞き分けの訓練だけを受けた日本語話者の /r/・/l/ の発音が、英語話者の評価と聞き取りの両方で改善していた。知覚の学習が発音に移った。

Bradlow, A. R., Pisoni, D. B., Akahane-Yamada, R., & Tohkura, Y. (1997). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: IV. Some effects of perceptual learning on speech production. Journal of the Acoustical Society of America, 101(4), 2299–2310.出典を開く ↗

HVPT を使った32の研究をまとめ、聞き分けと発音の両方にとても効果的で、効果は長続きすると結論。専門誌中心のため教師に知られていない点も指摘した。

Thomson, R. I. (2018). High Variability [Pronunciation] Training (HVPT): A proven technique about which every language teacher and learner ought to know. Journal of Second Language Pronunciation, 4(2), 208–231.出典を開く ↗

よくある質問

大人になってからでも L と R は聞き分けられますか?

伸ばせます。日本語話者の大人を対象にした研究では、数週間の聞き分け訓練で正答率が上がり、数か月後も効果が残りました。ただし伸び方には個人差があり、短期間で完璧になるわけではありません。

HVPT はどこで練習できますか?

研究者の Ron Thomson が作った English Accent Coach では、いろいろな話し手の声で英語の音の聞き分けを練習できます。辞書サイトの米英の音声や、世界中の人が単語を発音した音声を集めたサイトを組み合わせる方法もあります。

TH を S で言うと失礼になりますか?

失礼にはなりません。国際共通語としての英語の発音を研究した Jenkins の提案では、TH は必須項目に入っておらず、別の音での代用も認められています。ただ think と sink のように意味が変わる場面もあるので、余裕ができたら正しい形を練習しましょう。