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流暢さを伸ばす:4/3/2 とリテリング同じ話を4分→3分→2分。くり返すだけで話す速さが上がる練習法

原田英語6分で読める研究・公式情報 5件第10章の6/7節

流暢さを伸ばす:4/3/2 とリテリングのイメージ

1989年の論文で、ニュージーランドの言語学者 Paul Nation は、上級の大人の学習者が同じ話を3回する様子を録音して調べました。1回目は4分、相手を替えて3分、さらに替えて2分。やったのは、同じ話をくり返すことだけです。それでも3回目には、8件中7件で話す速さが上がり、「えーと」や言いかけはすべての件で減りました。ただ、その場で速くなることと、力が身につくことは別の話です。後日まで残る伸びは、どんな練習から生まれるのでしょうか。

この節の目次(5項目)
  1. 流暢さとは「止まらずに話せる」こと
  2. 4/3/2 のやり方:同じ話を3回、時間を縮めて
  3. 研究が示すこと:伸びるもの、伸びにくいもの
  4. 1人でできる4/3/2とリテリング
  5. タスク型の考え方:英語を「道具」として使う

01流暢さとは「止まらずに話せる」こと

英語の「流暢さ(fluency)」は、ネイティブのように話すことではありません。研究では、主に次のような点で測られます。

  • 話す速さ:1分あたりに話す語数
  • 間(ま):沈黙や「えーと」がどれくらい入るか
  • 言い直し:言いかけてやめる、同じ語をくり返す回数

つまり流暢さとは、知っている英語を、止まらずに、ある程度の速さで出せる力です。前の節で見たように、話すときは頭の中で「何を言うか」と「どう言うか」を同時に処理しています。「どう言うか」が速くなるほど、間や言い直しは減ります。

流暢さを伸ばす練習には、次の3つの条件がそろっているのが理想です。

  1. 中身に集中している(文法の正しさばかり気にしない)
  2. 簡単な材料を使う(知らない単語がほとんどない話題)
  3. 少し速く話すよう背中を押される(時間の制限など)

この3つを1つの活動にまとめたのが、次に紹介する4/3/2です。

024/3/2 のやり方:同じ話を3回、時間を縮めて

4/3/2 は、ニュージーランドの言語学者 Paul Nation が1989年の論文で取り上げ、広く知られるようになった練習です。Nation 自身は、この方法を Maurice(1983)が紹介したものとして書いています。

Nation の説明による手順は次のとおりです。

  1. 話す話題をもらい、数分間、何を話すか考える(メモは取らない)。
  2. ペアになり、その話題について4分間話す。聞き手は口をはさまず、質問もせず、ただ聞く。
  3. 相手を替えて、同じ内容を3分間で話す。
  4. もう一度相手を替えて、同じ内容を2分間で話す。

ポイントは3つあります。

  • 相手が毎回変わるので、話し手は「伝えること」に集中できる。
  • 同じ話をくり返すので、2回目・3回目は表現を取り出しやすくなる。
  • 時間が縮むので、自然と速く話すよう背中を押される。

Nation(1989)は、上級の大人の学習者6人の発話を録音して調べました(ある1人は別の話題でも行い、合計8件)。3回目の話す速さは、8件中7件で1回目より上がり、上がり幅は4%から77%でした。「えーと」や言いかけ、くり返しは、すべての件で1回目より3回目のほうが減りました。正確さは、全体としては大きな変化がありませんでしたが、くり返し出てきた部分では、1回目の誤りが3回目で直っている例がありました。Nation 自身も、話す速さの伸びには技能の向上だけでなく時間に追われた影響も含まれうる、と注意しています。人数が少ない観察研究ですが、その後の研究につながる出発点になりました。

03研究が示すこと:伸びるもの、伸びにくいもの

その後、4/3/2 やくり返しの効果はいくつもの研究で調べられています。

くり返しの効果は残る
de Jong と Perfetti(2011)は、ESL クラスの学生24人に、4分・3分・2分のスピーチを録音する練習を3回行いました。片方の群は同じ話題で3回、もう片方は3つのちがう話題で話しました。練習中は両方の群が流暢になりましたが、後日のテストで伸びが保たれたのは同じ話題をくり返した群だけでした。くり返した群は、話題に関係なく使える語句をくり返し使っており、言語知識が「手続き化」(使える技能に変わること)したと考えられています。

くり返しの回数と伸び方
Lambert・Kormos・Minn(2017)は、日本人の学習者32人に3種類の課題を6回ずつくり返してもらいました。話す速さは最初の3回で大きく伸び、5回目まで伸び続けました。文の途中での間は4回目まで減り、言い直しが減るのは4回目以降でした。くり返しの効果は、回数によって表れる場所が変わるのです。

時間を縮めるかどうかで伸びるものが変わる
Thai と Boers(2016)は、ベトナムの学習者20人で、時間を縮める条件(4/3/2)と時間を一定にする条件を比べました。流暢さは時間を縮める条件で最も伸びましたが、文の複雑さと正確さには有意な変化がありませんでした。時間が一定の条件では、流暢さの伸びは小さかったものの、複雑さと正確さがわずかに伸びました。時間に追われると、前回の言い方をそのままくり返しやすくなるためと考えられています。

ここから、使い分けの目安が見えてきます。

目的やり方
とにかく速く・止まらずに話したい4/3/2(時間を縮める)
表現を増やしたい・正確にしたい同じ時間で3回、毎回少し表現を変える
両方ほしい1回目と2回目の間に、言えなかった表現を調べる

041人でできる4/3/2とリテリング

4/3/2 は本来ペアの活動ですが、スマホのタイマーと録音で1人でもできます。

1人4/3/2(約12分)

  1. 話題を決める(例:「最近見た映画」「好きな場所」「最近うれしかったこと」)。
  2. 1分だけ、何を話すか頭で考える。メモは書かない。
  3. 録音しながら4分話す。止まっても最後まで続ける。
  4. 3分にタイマーをセットし、同じ話をする。
  5. 2分にタイマーをセットし、同じ話をする。
  6. 1回目と3回目を聞き比べる。

聞き手の代わりに、「初めて聞く人に話している」と想像するのがコツです。家族に聞いてもらえるならさらに良い練習になります。

リテリング(話し直し)
リテリングは、読んだり聞いたりした内容を、本を閉じて自分の言葉で話し直す練習です。

  1. やさしい英語の短い物語やニュースを読む(または聞く)。
  2. 本文を閉じ、キーワードを3〜5語だけメモする。
  3. キーワードを見ながら、内容を英語で1〜2分で話す。
  4. 本文に戻り、言えなかった表現を確かめる。
  5. もう一度話す。慣れたら4/3/2の形で3回くり返す。

たとえば、こんなふうに話し始めます。

  • This story is about a boy who finds a lost dog in the park.(これは、公園で迷子の犬を見つける男の子の話です)
  • At first, he tries to find the owner, but nobody knows the dog.(最初は飼い主を探しますが、だれもその犬を知りません)

リテリングは、読んだ英語の表現を「自分が話す英語」に移す練習でもあります。インプットとアウトプットをつなぐ橋になります。

05タスク型の考え方:英語を「道具」として使う

4/3/2 やリテリングのように、英語そのものではなく「何かを伝える・達成する」ことに集中する活動を、研究ではタスクと呼びます。Ellis(2009)の定義を引いた Lambert ら(2017)によると、タスクの条件は次の4つです。

  1. 意味(伝える中身)が中心である
  2. 伝え合う必要のある「すき間」(情報や意見の差)がある
  3. 学習者が自分の持っている言葉で取り組む
  4. ことばの練習そのもの以外の結果がある(道案内ができた、予定が決まった、など)

タスクを中心にした授業(タスク型言語教育、TBLT)については、Bryfonski と McKay(2019)が、教室で長期間実施した52の研究をメタ分析しています。全体として学習成果への効果は大きく(d = 0.93)、学習者や先生の受け止め方も肯定的でした。ただし、効果は地域や機関の種類、実施のしかたによって変わることも報告されています。

1人の学習でも、タスクの考え方は取り入れられます。

  • 「週末の予定を決める」つもりで、候補を3つ比べて1つ選ぶまでを英語で話す
  • 「家族に旅行先をすすめる」つもりで、理由を3つ挙げて説得する
  • 「料理の手順を教える」つもりで、好きな料理の作り方を説明する

ゴールがあると、文法の正しさより「伝わるか」に注意が向き、流暢さを伸ばす練習になります。

この節の答え

同じ話を、時間を縮めて、相手を替えてくり返す。

今日からのやり方

  1. 話題を1つ決め、1分だけ何を話すか頭の中で考える(メモはしない)
  2. スマホで録音しながら、同じ話を4分→3分→2分の順で3回話す
  3. 1回目と3回目を聞き比べ、言えなかった表現を2〜3個調べる
  4. やさしい英文を読み、キーワード3〜5語だけを見てリテリングする
  5. 同じ話題を数日後にもう一度話し、止まる回数が減ったか確かめる

レベル別:あなたならこうする

初級 A1〜A2

時間を2分→1分30秒→1分に縮めた「ミニ4/3/2」から始めます。話題は自己紹介や好きな食べ物など、簡単な単語で話せるものにしましょう。

中級 B1

本来の4/3/2を週2〜3回。リテリングはやさしい多読の本や学習者向けニュースで。3回目の録音で、1回目より止まる回数が減ったかを確かめます。

上級 B2〜

意見を述べる話題(賛成・反対)で4/3/2を行います。時間を一定にした3回のくり返しで、毎回表現を言い換えて語彙と正確さも伸ばしましょう。

よくある失敗と対策

原稿を書いて読み上げてしまう

書いた原稿を読むと、その場で組み立てる練習になりません。考える時間は1分だけにし、メモなしか、キーワードだけで話しましょう。

1回話しただけで終わりにする

流暢さは同じ話をくり返す中で伸びます。最低でも3回、できれば日を変えてもう一度同じ話をして、止まる回数の変化を確かめましょう。

正確さばかり気にして止まる

4/3/2 の目的は止まらずに話すことです。細かい間違いは気にせず最後まで話し、正確さは録音を聞いたあとの見直しで補いましょう。

TODAY
1 MIN

「最近うれしかったこと」を2分→1分30秒→1分で3回話す

友だちに出したい、この節の3問

タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。

10-6話す練習『4/3/2』は、だれが考えた?

Paul Nation が1989年の論文で研究し、広く知られるようになりましたが、Nation 自身は Maurice(1983)が紹介した方法として書いています。同じ話を相手を替えながら4分・3分・2分で話します。

X で出題する

10-6話す練習は、同じ話をくり返すのと毎回ちがう話、どちらが伸びる?

de Jong と Perfetti(2011)の実験では、練習中はどちらの群も流暢になりましたが、後日のテストまで伸びが残ったのは同じ話をくり返した群だけでした。くり返しは手抜きではありません。

X で出題する

10-6話す練習『4/3/2』で、正確さや文の複雑さも伸びる?

Thai と Boers(2016)では、時間を縮める条件で流暢さは最も伸びた一方、複雑さと正確さに有意な変化はありませんでした。時間を一定にした条件では、流暢さの伸びは小さいものの、複雑さと正確さが少し伸びました。

X で出題する

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PRACTICE KIT

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もっと流暢に話すには?BBCが回答BBC Learning English|How can I speak English more fluently? Ask BBC Learning English
ロッド・エリスが語るタスクCambridge University Press ELT|Rod Ellis - Using tasks in language teaching
即興で話す力を鍛える名講義Stanford Graduate School of Business|Think Fast, Talk Smart: Communication Techniques

もっと詳しく(コラム)

この節の根拠(研究・公式情報)

Maurice(1983)の4/3/2を上級の大人6人(8件)で観察。3回目の話す速さは8件中7件で上がり(4〜77%)、言いよどみは全件で減った。

Nation, P. (1989). Improving speaking fluency. System, 17(3), 377–384.出典を開く ↗

24人が4・3・2分のスピーチ練習。同じ話題をくり返した群も話題を変えた群も練習中は流暢になったが、後日のテストで伸びが残ったのはくり返した群だけだった。

de Jong, N., & Perfetti, C. A. (2011). Fluency training in the ESL classroom: An experimental study of fluency development and proceduralization. Language Learning, 61(2), 533–568.出典を開く ↗

20人で比較。時間を縮める条件は流暢さが最も伸びたが複雑さ・正確さに有意な変化なし。時間一定の条件は流暢さの伸びが小さい代わりに複雑さ・正確さが少し伸びた。

Thai, C., & Boers, F. (2016). Repeating a monologue under increasing time pressure: Effects on fluency, complexity, and accuracy. TESOL Quarterly, 50(2), 369–393.出典を開く ↗

日本人学習者32人が3種類の課題を6回ずつ。話す速さは最初の3回で大きく伸び5回目まで向上。間は2〜4回目まで減り、言い直しは4回目以降に減った。

Lambert, C., Kormos, J., & Minn, D. (2017). Task repetition and second language speech processing. Studies in Second Language Acquisition, 39(1), 167–196.出典を開く ↗

教室で長期に実施されたタスク型言語教育の52研究を統合し、学習成果への全体的な効果は大きかった(d = 0.93)。関係者の受け止め方も肯定的だった。

Bryfonski, L., & McKay, T. H. (2019). TBLT implementation and evaluation: A meta-analysis. Language Teaching Research, 23(5), 603–632.出典を開く ↗

よくある質問

同じ話ばかりで飽きませんか?

飽きを感じるくらいくり返したときに、表現が考えずに出るようになります。話題は1週間ごとに替え、その週は同じ話を育てる、という区切りにすると続けやすくなります。

1人だと聞き手がいなくて張り合いがありません

録音して聞き比べると、速さや止まる回数の変化が自分で分かり、それが張り合いになります。家族に1回だけ聞いてもらう、ペットやぬいぐるみに話すのも立派な工夫です。

時間を縮めると内容が薄くなりませんか?

それで大丈夫です。Nation の研究でも、話し手は時間に合わせて、主に細部を省くことで内容をまとめ直していました。要点を短く言う練習にもなります。内容を増やしたい日は、時間を一定にしてくり返しましょう。