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フォニックス:つづりと音のルールA は「エイ」じゃなく /æ/。ローマ字読みをやめると、知らない単語が読める

原田英語6分で読める研究・公式情報 2件第4章の2/7節

フォニックス:つづりと音のルールのイメージ

「2つの母音字が並んだら、最初の母音を名前どおりに読み、2つ目は読まない」。英語圏の子どもたちが、語呂のよい言い回しで長く教わってきた規則です。ところが、1960年代に教科書の単語で当てはまり具合が調べられて以来、くり返し確かめられた結果、この規則が当たるのは半分未満でした。では、英語のつづりはやはり当てにならないのか。もっと細かく数え直すと、ちがう顔が見えてきます。

この節の目次(6項目)
  1. フォニックスとは:文字の「名前」と「音」を分ける
  2. 研究で分かっている効果と、その範囲
  3. 大人がまず押さえる、当たりやすい規則
  4. 例外だらけ、という限界
  5. フォニックスの盲点:弱くなる母音
  6. 大人のフォニックス、1週間メニュー

01フォニックスとは:文字の「名前」と「音」を分ける

フォニックス(phonics)は、英語のつづりと音の対応を、規則として順番に教える方法です。英語圏では、子どもが文字を読めるようになるための基本として使われています。

出発点は「文字の名前」と「文字の音」を分けることです。

文字名前(アルファベット読み)よく表す音例
aエイ /eɪ//æ/cat、map
eイー /iː//e/bed、pen
iアイ /aɪ//ɪ/sit、pig
oオウ /əʊ//ɒ/(米 /ɑː/)hot、dog
uユー /juː//ʌ/cup、bus

日本の学校では、ローマ字を先に習うことが多いため、英語のつづりもローマ字のように読みがちです。cake を「カケ」、name を「ナメ」と読んでしまうのはそのためです。

フォニックスでは、音を「足し算」して単語にします。c /k/ + a /æ/ + t /t/ で cat。英語圏の子ども向けの教材でも、1つひとつの音をはっきり出してから、なめらかにつなげる練習をします。

このとき大事なのが、子音を「ク」「ト」のように母音つきで出さないことです。/k/ は息だけ、/t/ は舌先をはじくだけ。母音をつけて「ク・ア・ト」とつなげると、「カト」のようなカタカナ英語に戻ってしまいます。

02研究で分かっている効果と、その範囲

フォニックスの効果は、主に英語を母語とする子どもを対象に、たくさん研究されてきました。

アメリカの National Reading Panel(全米読解委員会)の分析をまとめた論文では、38の実験から66の比較を集めて、「体系的なフォニックス指導」を、体系的でない指導や指導なしと比べました。結果は次のとおりです。

  • 読む力への効果は「中くらい」(効果量 d = 0.41)
  • 指導が終わったあとも効果が続いた
  • 早く始めたほうが効果が大きかった(幼稚園・小1で d = 0.55、それ以降で d = 0.27)
  • 単語の読み、文章の理解、つづりにも効果が見られた

ただし、これは英語を母語とする子どもが文字を読めるようになる研究です。英語を外国語として学ぶ日本の中高生や大人に、そのまま同じ大きさの効果があると言えるわけではありません。ここは正直に区別しておきます。

それでも、日本人の学習者にとってフォニックスが役に立つ理由はあります。

  1. 初めて見る単語を、だいたい正しく声に出せる。音読や単語の暗記で、自分で音を作れるようになります。
  2. つづりと音がつながるので、単語を覚えやすくなる。spring を「s・p・r・i・ng」の音のかたまりとして覚えると、ばらばらの文字列より記憶に残りやすくなります。
  3. 聞いた単語を、つづりから探しやすくなる。耳で聞いた音から「たぶんこう書く」と予想できると、辞書で調べられます。

03大人がまず押さえる、当たりやすい規則

フォニックスの規則はたくさんありますが、大人が最初に押さえるなら、次の5つで十分です。

1. 短い母音(子音・母音・子音の形)
cat、bed、sit、hot、cup。子音にはさまれた母音字は、名前ではなく「短い音」で読むのが基本です。

2. 語末の e(マジック e)
cake、ride、home、cute。単語の最後に読まない e があると、前の母音字が「名前読み」になります。cap /kæp/ と cape /keɪp/、hop /hɒp/ と hope /həʊp/ を比べると分かりやすくなります。

3. 2文字で1つの音(子音)
sh(ship)、ch(chair)、th(think / this)、ph(phone)、ck(back)、ng(sing)。2文字を見たら、1つの音として読みます。

4. 決まった母音の組み合わせ
ai(rain)、ay(day)、ee(see)、oa(boat)、oy(boy)、oi(coin)、aw(saw)。後で見るように、組み合わせごとに覚えるとよく当たります。

5. 母音字+r
ar(car)、or(fork)、そして er・ir・ur。her、bird、nurse の3つは、つづりはちがっても同じ音(イギリス式 /ɜː/)になります。日本語の「アー」とは別の、口をあまり開けない音です。

この5つだけでも、基本的な短い単語なら、読み方の見当がつくものがぐっと増えます。

04例外だらけ、という限界

フォニックスの最大の弱点は、例外の多さです。英語のつづりは、昔の発音や、ほかの言語から入った言葉の影響を引きずっているためです。

有名な例が「2つの母音が並ぶと、最初の母音を名前読みし、2つ目は読まない」という規則です。英語圏では語呂のよい言い回しで広く教えられてきました。ところが、1960年代に教科書の単語で規則の当てはまり具合を調べた研究が出てから、くり返し検証されてきた結果、この規則が当てはまるのは半分未満だと分かっています。

一方で、もっと細かく見ると、規則性は高くなります。アメリカの読みの研究者が、単語の出現頻度のデータを使って組み合わせごとに調べた分析では、次のような結果でした。

  • aw、oy、oi は、調べた単語で100%同じ音
  • ay、oa、ee、ai などは、4分の3以上で同じ音
  • 語末の e の規則は、a+子音+e では77.7%当たるが、e+子音+e では16.6%しか当たらない

つまり、大ざっぱな規則は外れやすく、具体的な文字の組み合わせはよく当たるということです。

ほかにも、よく使う単語ほど不規則なものが多いのが英語です。

  • said /sed/、have /hæv/、one /wʌn/、of /ɒv/、two /tuː/
  • ea の読み方:bread /bred/、break /breɪk/、bead /biːd/
  • ough の読み方:though /ðəʊ/、through /θruː/、tough /tʌf/、cough /kɒf/

こうした単語は、規則で読もうとせず、「この単語はこう読む」と1語ずつ覚えてしまいましょう。規則で7〜8割を読み、残りは1語ずつ覚える。この割り切りが、大人のフォニックスのコツです。

ポイント:規則は「必ず当たる法則」ではなく「当たりやすい予想」。外れたら辞書の音声で確かめる。

05フォニックスの盲点:弱くなる母音

フォニックスで読めるようになっても、まだ足りないものがあります。それが「強く読む位置」と、それによって変わる母音です。

英語では、強く読まない音節の母音が、弱いあいまい母音 /ə/(シュワ)になることがよくあります。

  • banana:/bəˈnɑːnə/(イギリス式)。3つの a のうち、強く読むのは真ん中だけ。最初と最後は /ə/
  • about:/əˈbaʊt/。最初の a は弱い /ə/
  • chocolate:/ˈtʃɒklət/。後ろの o は消え、a は /ə/ になる

つづりを見ると「バナナ」「アバウト」と読みたくなりますが、実際の英語では、弱い母音はほとんど聞こえないくらい短く、あいまいです。

この「どこを強く読むか」は、つづりの規則からは決まりません。photograph(PHO-to-graph)、photographer(pho-TO-graph-er)のように、同じつづりの部分でも、単語によって強く読む位置が変わり、それにつれて母音の音も変わります。

フォニックスは「音のパーツ」を読む道具、強く読む位置は辞書で確かめる。この2つを組み合わせると、つづりから正しい音までたどり着けます。強く読む位置のくわしい話は「英語のリズムと強勢」の節で扱います。

06大人のフォニックス、1週間メニュー

フォニックスは子ども向けの教材が多いですが、大人は「規則の一覧を理解して、すぐ使う」ほうが効率的です。

日やること(10〜15分)
1日目短い母音5つ(cat、bed、sit、hot、cup)を音声で確かめ、同じ形の単語を10個読む
2日目語末の e(cap/cape、hop/hope、kit/kite)を読み比べる
3日目sh、ch、th、ph、ck、ng を含む単語を声に出して読む
4日目ai、ay、ee、oa、oy、oi、aw の組み合わせを1つずつ
5日目ar、or、er・ir・ur。her、bird、nurse が同じ音になることを確かめる
6日目教科書や単語帳から知らない単語を10個選び、規則で読んでから音声で答え合わせ
7日目外れた単語を「例外ノート」にまとめ、音声をまねして3回ずつ言う

6日目の「予想してから答え合わせ」が一番大事です。予想が外れたところに、自分のローマ字読みのくせや、英語の例外が見えてきます。

子どもと一緒に学ぶなら、英語圏の子ども向けのフォニックスのゲームや歌の動画も使えます。大人がひとりで学ぶなら、規則の一覧と辞書の音声で十分です。

この節の答え

つづりと音の「よく当たる対応」を知れば、読めて覚えやすくなる

今日からのやり方

  1. a・e・i・o・u の「名前」と「短い音」を音声で聞き比べる
  2. cap/cape のように語末の e がある単語とない単語を読み比べる
  3. sh、ch、th、ck、ng など2文字で1つの音になるつづりを覚える
  4. 知らない単語を規則で読んでから、辞書の音声で答え合わせする
  5. 外れた単語は例外ノートに書き、音声をまねして1語ずつ覚える

レベル別:あなたならこうする

初級 A1〜A2

短い母音と語末の e の2つから始めましょう。cat と cake、hop と hope のように、ペアで読み比べると規則が体に入ります。子音に「ウ」「オ」を足さないことも意識します。

中級 B1

単語帳の単語を、まず規則で読んでから音声で答え合わせする習慣をつけましょう。外れた単語に印をつけると、自分のローマ字読みのくせと、英語の不規則な単語が見えてきます。

上級 B2〜

フォニックスより、強く読む位置と弱くなる母音に注意を向ける段階です。長い単語は、つづりで読めても強勢の位置で母音が変わります。辞書の発音記号で強勢を確かめる習慣を。

よくある失敗と対策

規則を「必ず当たる」と思いこむ

大ざっぱな規則ほど外れます。規則は予想に使い、最後は辞書の音声で確かめましょう。said や one のような不規則な単語は、1語ずつ覚えるほうが早道です。

子音に母音をつけて練習する

/k/ を「ク」、/t/ を「ト」と出してつなげると、カタカナ英語に戻ります。子音は息や舌の動きだけで出し、母音を足さないように練習しましょう。

子ども向け教材を全部こなそうとする

大人は理解が速いので、規則の一覧を見てすぐ単語に当てはめるほうが効率的です。子ども向けの歌やゲームは、親子で楽しむときに使いましょう。

TODAY
1 MIN

cap と cape、hop と hope を辞書の音声で聞き比べ、まねして3回ずつ言う

友だちに出したい、この節の3問

タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。

4-2アルファベットの「名前」と「音」は別物?

A の名前は「エイ」ですが、cat の a は /æ/ という音です。英語圏の子どもは、文字の名前とは別に「文字が表す音」を習います。日本人はここを飛ばして、ローマ字の読み方で代用しがちです。

X で出題する

4-2フォニックスの「母音が2つ並ぶと前を読む」は何割当たる?

「2つの母音が並ぶと、最初の母音を名前読みする」という有名な規則は、調べ方によって当たるのは半分未満でした。一方で aw、oy、oi のような決まった組み合わせは、調べた単語でほぼ例外なく同じ音でした。

X で出題する

4-2フォニックスでは強く読む位置は分からない?

分かりません。banana の最初と最後の a は、強く読まないので弱いあいまい母音 /ə/ になります。つづりの規則だけでは、どの母音が弱くなるかは決まらないので、強く読む位置は辞書で確かめる必要があります。

X で出題する

X でポストLINEB!

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この節の根拠(研究・公式情報)

38実験・66の比較を分析し、体系的なフォニックス指導の読む力への効果は中程度(d=0.41)。早く始めるほど効果が大きかった。英語を母語とする子どもの研究。

Ehri, L. C., Nunes, S. R., Stahl, S. A., & Willows, D. M. (2001). Systematic phonics instruction helps students learn to read: Evidence from the National Reading Panel's meta-analysis. Review of Educational Research, 71(3), 393–447.出典を開く ↗

Johnston の分析を紹介。「母音が2つ並ぶと前を読む」は半分未満しか当たらない一方、aw・oy・oi は100%、ay・oa・ee・ai なども4分の3以上で同じ音だった。

Duke, N. K. (2014). Limitations of broad phonics generalizations: When two vowels go walking, the first one doesn't necessarily do the talking. Literacy Now (International Literacy Association).出典を開く ↗

よくある質問

フォニックスは子ども向けでは?

教材は子ども向けが多いですが、つづりと音の対応は大人にも役立ちます。特に、ローマ字読みのくせが強い人や、単語の読み方が分からず音読でつまずく人には、規則の一覧を一度通して見るだけでも効果があります。

アメリカ式とイギリス式で規則は変わりますか?

基本の規則はほぼ同じですが、hot の o や car の r のように、音そのものがちがう部分があります。どちらか一方の音声に決めて練習し、もう一方は「こういう言い方もある」と聞き慣れておけば十分です。

どのくらいで効果が出ますか?

主な規則は1〜2週間で一通り見られます。ただ、規則を「知っている」から「見た瞬間に読める」までには、毎日の音読や単語練習で何度も使うことが必要です。