原田英語の英語大全勉強法ぜんぶ入り

オーバーラッピングとマンブリング英語っぽさの正体は「強弱」。重ね読みでリズムを体に写す

原田英語6分で読める研究・公式情報 4件第7章の3/7節

オーバーラッピングとマンブリングのイメージ

8週間、自分の声を録音しながらシャドーイングを続けた16人がいます。その英語を英語話者22人が聞いて評価すると、分かりやすさと流ちょうさは伸びていました。ところが、なまりの強さの評価は変わりませんでした。まねる練習で変わるのは、ひとつひとつの音ではなく、別の何かのようです。シャドーイングでは口がもつれてしまう人にも、その「何か」を先に体に入れる方法があります。英語らしさは、どこから生まれるのでしょうか。

この節の目次(6項目)
  1. 4つの練習は「見るもの」と「声」で違う
  2. 英語のリズムは「強・弱・弱・強」
  3. 研究で分かっている効果と限界
  4. 弱くなる語を知ると、重ねやすくなる
  5. オーバーラッピングのやり方(1回10分)
  6. マンブリングのやり方と使いどころ

014つの練習は「見るもの」と「声」で違う

英語の音をまねる練習には、似た名前のものがいくつもあります。違いは「文字を見るか」「声の大きさ」「何に注意を向けるか」です。

練習文字声注意を向けるもの
音読見るふつう文字を自分のペースで声に
オーバーラッピング見るふつう音声と同時に、音とリズムをまねる
マンブリング見ない小声入ってくる音
シャドーイング見ないふつう音声を少し遅れて追いかける

オーバーラッピングは、英語の論文では synchronized reading(シンクロ・リーディング)や parallel reading(パラレル・リーディング)と呼ばれることもあります。Hamada(2012)が紹介した門田・玉井(2004)の分類では、「スクリプトを読みながら音声に合わせて、すべての音と抑揚をまねる」練習とされています。

マンブリングは同じ分類で、「自分の発音ではなく、入ってくる音に注意を向けて追いかける」練習とされています。

4つは別々の練習というより、階段として使えます。音読 → オーバーラッピング → マンブリング → シャドーイングと進むほど、文字の助けが減り、耳の負担が大きくなります。シャドーイングで苦しいなら、1段下りればよいのです。

02英語のリズムは「強・弱・弱・強」

オーバーラッピングで写したいのは、ひとつひとつの音よりも、プロソディです。プロソディとは、強弱・長短・音の高さ・区切りなど、文全体のメロディのことです。

日本語は、だいたい1つ1つの音(かな)を同じくらいの長さで発音します。英語は違うのです。意味の中心になる内容語(名詞・動詞・形容詞・副詞など)は強く長く、文法的な役割の機能語(冠詞・前置詞・代名詞・助動詞など)は弱く短く発音されます。大文字を強く読むと、次のような感じです。

  • I WANT to GO to the STAtion.(駅に行きたいです)
  • She's GOing to CALL you toMORrow.(彼女は明日あなたに電話するつもりです)

to や the は、ほとんど「タ」「ザ」程度の弱い音になります。この強弱があるから、英語は「タ・タ・タ・タ」ではなく「ターン・タ・ターン」のように聞こえます。

区切りも大切です。

  • When I got home, / my dog was waiting for me / at the door.(家に帰ると、犬がドアのところで待っていた)

意味のまとまりで小さく区切り、文の最後で声を下げます。オーバーラッピングでは、音声を流しながらこの強弱と区切りに自分の声をぴったり重ねます。ずれたら、そこが自分のリズムと英語のリズムの違うところです。

03研究で分かっている効果と限界

まねる練習が発音に与える効果は、少しずつ研究されてきました。

Mori(2011)では、日本の大学生20人が10週間、週1回の授業でシャドーイングと音読を組み合わせた練習をしました。練習の前後に同じ短い英文を録音し、音響分析で比べると、となり合う強い音節と弱い音節の差(長さ・高さ・強さ)がはっきりし、文の最後の語で、音の長さと高さの幅が大きくなりました。英語らしいリズムと抑揚に近づいた、ということです。

Foote & McDonough(2017)では、学習者16人が8週間、携帯音楽プレーヤーで短い会話のシャドーイングを練習しました。週4回以上、1回10分以上で、自分の声を録音しながらです。英語話者22人が録音を評価すると、分かりやすさと流ちょうさは伸びましたが、なまりの強さの評価は変わりませんでした。

ここから言えることは2つです。

  • まねる練習は、リズム・抑揚・流ちょうさなど「文全体の音」に効きやすい
  • 「ネイティブのような発音」になるかというと、そこまでは示されていない

また、どちらも人数の少ない研究で、オーバーラッピングだけを取り出して効果を確かめた研究ではありません。Hamada(2021)は、発音のためのシャドーイングは、ある程度音がとらえられるようになってから行うほうがよい、つまりそうしないと頭の処理が追いつかなくなると述べています。オーバーラッピングはその前の、負担の軽い入口として使うのが向いています。

04弱くなる語を知ると、重ねやすくなる

オーバーラッピングで音声からずれる場所は、たいてい決まっています。機能語が弱く短くなる所です。よく出るものを知っておくと、どこを軽く流せばよいかが分かります。

語文字どおりの読み文の中でのよくある音
toトゥータ、ドゥ に近い弱い音
forフォーファ に近い弱い音
andアンドアン、ン に近い音
ofオブアヴ、ア に近い音
canキャンクン に近い弱い音
themゼムゥム に近い音

カタカナはあくまで目安です。正確な音は、辞書の音声やお手本の音声で確かめてください。

例文で確かめてみましょう。

  • I bought a cup of coffee and a piece of cake.(コーヒー1杯とケーキを1切れ買いました)

of と and と a が弱くなり、「カッパ・コーフィ・アナ・ピーサ・ケイク」のように、強い語だけが山になって聞こえます。オーバーラッピングでは、cup、coffee、piece、cake の4つの山に声を合わせ、間の弱い語は「つなぎ」として軽く通過します。

  • Can you tell them to wait for me?(私を待つように彼らに伝えてくれる?)

Can、them、to、for が弱く、tell と wait と me が比較的強く聞こえます。

強い語に合わせられるようになると、残りの弱い語は自然に音声に収まっていきます。最初から全部の語を同じように言おうとしないことが、重ね読みのいちばんのコツです。

05オーバーラッピングのやり方(1回10分)

素材は、30秒〜1分の、スクリプトを読めば意味がすべて分かる英文です。シャドーイングで使う素材と同じでかまいません。

  1. 聞いて意味を確かめる(2分):音声を1回聞き、スクリプトで意味を確認する。
  2. 印をつける(2分):もう1回聞きながら、強く聞こえる語に丸、区切りに斜線、声が上がる所に↗、下がる所に↘を書きこむ。
  3. オーバーラッピング(3分):スクリプトを見ながら、音声と同時に3回読む。1回目は速さに合わせることだけ、2回目は強弱、3回目は区切りと抑揚を意識する。
  4. 録音して比べる(2分):4回目を録音し、お手本と交互に聞く。違いを1つだけメモする。
  5. 最後にもう1回(1分):メモした1か所だけ意識して重ねる。

コツは、文字を読もうとしないことです。目はスクリプトを追っていても、耳の音を優先します。音声より先に読んでしまうなら、それは音読になっています。

追いつけないときは、0.75倍速で始め、慣れたら1倍速に戻します。それでも難しいなら、1文ごとに止めて、その1文だけ3回重ねる方法から始めましょう。

06マンブリングのやり方と使いどころ

マンブリングは、スクリプトを見ずに、口の中でもごもごと小さく音声を追いかける練習です。発音を正確にしようとしなくてかまいません。注意は、耳に入ってくる音に向けます。

やり方は簡単です。

  1. オーバーラッピングをした同じ英文を、スクリプトなしで流す。
  2. 小さな声か、ほとんど息だけで、音声のすぐあとを追いかける(1〜2回)。
  3. 追いかけられなかった所を、スクリプトで確かめる。

マンブリングの良いところは、場所を選びにくいことです。通学・通勤の歩きながら、家事をしながらでも、小さな声ならできます。周りの迷惑にならない範囲で行いましょう。

1日の流れとしては、次の順番が使いやすい形です。

順番練習時間
1聞く+スクリプト確認3分
2オーバーラッピング5分
3マンブリング3分
4シャドーイング4分

この15分で、文字の助けあり → なし、小声 → ふつうの声と、少しずつ負担を上げていけます。シャドーイングが苦しい人は、1〜3だけで1週間続けてから4を足しても十分です。

ポイント:シャドーイングで苦しいときは、やめるのではなく、1段下りてオーバーラッピングかマンブリングに戻る。

この節の答え

文字や小声で負担を減らし、英語のリズムを先に体に入れる

今日からのやり方

  1. スクリプトで意味が全部分かる、30秒〜1分の英文を選ぶ
  2. 聞きながら、強く聞こえる語に丸、区切りに斜線を書きこむ
  3. スクリプトを見ながら音声と同時に3回読み、強弱と区切りを重ねる
  4. 4回目を録音してお手本と聞き比べ、違いを1つだけメモする
  5. 同じ英文をスクリプトなしで、小声のマンブリングで1〜2回追いかける

レベル別:あなたならこうする

初級 A1〜A2

教科書の本文や短い会話で、オーバーラッピングを中心に。1文ずつ止めて重ねてもかまいません。強く読む語に丸をつけるだけでも、英語のリズムがぐっと見えてきます。

中級 B1

オーバーラッピング → マンブリング → シャドーイングの15分メニューを習慣に。録音してお手本と聞き比べ、強弱と文末の下げ方の違いを1つずつ直しましょう。

上級 B2〜

好きな話し手の1分の音声で、抑揚や間の取り方まで写します。録音を英語話者に聞いてもらう、発音の評価がある練習道具を使うなど、外からの確認を加えると伸びが分かりやすくなります。

よくある失敗と対策

音声より先にスクリプトを読んでしまう

それは音読です。目は文字を追っても、声は耳の音に合わせます。追いつけないなら速さを落とすか、1文ずつ区切って重ねましょう。

1つ1つの音をはっきり読みすぎる

英語では機能語は弱く短くなります。全部をはっきり読むと、かえってリズムがずれます。強く読む語だけに丸をつけ、ほかは軽く流しましょう。

録音せずにやりっぱなしにする

自分の声は、話している最中には正しく聞こえません。録音してお手本と交互に聞き、違いを1つだけ直す。これをくり返すと変化が見えます。

TODAY
1 MIN

英文1文を聞き、強く聞こえた語に丸をつけて3回重ねて読む

友だちに出したい、この節の3問

タップで答え。「X で出題する」で、そのまま問題として出せます。

7-3マンブリングは、口をはっきり動かさなくていい?

はい。門田・玉井の分類では、マンブリングは自分の発音ではなく「入ってくる音」に注意を向ける練習です。もごもご小声でかまいません。目的は口ではなく耳にあります。

X で出題する

7-3シャドーイングや音読で、英語のリズムは本当に変わる?

大学生20人が10週間、シャドーイングと音読を組み合わせた研究(Mori, 2011)では、録音を音響分析すると、強い音節と弱い音節の差がはっきりし、文末の伸ばし方や音の高さの幅も大きくなりました。

X で出題する

7-3シャドーイングで、英語の通じやすさまで良くなる?

Foote & McDonough(2017)では、16人が8週間、短い会話のシャドーイングを録音しながら練習すると、聞き手が評価した分かりやすさと流ちょうさは伸びました。ただし「なまりの強さ」の評価は変わりませんでした。

X で出題する

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まねるだけで発音が変わる練習法mmmEnglish|Lesson 1 - Speak English Clearly! The Imitation Technique
つながる音で自然な英語へPronunciation with Emma|Do This to Sound Natural and Fluent in English (Connected Speech)
力を抜いてつなげて話すmmmEnglish|How to RELAX your ACCENT | Part 1 | Connected Speech & Linking in English

もっと詳しく(コラム)

この節の根拠(研究・公式情報)

門田・玉井の分類を紹介。マンブリングは自分の発音より入ってくる音に注意する練習、シンクロ・リーディングはスクリプトを読みながら音と抑揚をまねる練習と整理している。

Hamada, Y. (2012). An effective way to improve listening skills through shadowing. The Language Teacher, 36(1), 3–10.出典を開く ↗

大学生20人が10週間、シャドーイングと音読を組み合わせた練習。音響分析で、強弱の音節の差、文末の語の長さと音の高さの幅が大きくなり、リズムと抑揚の改善が示された。

Mori, Y. (2011). Shadowing with oral reading: Effects of combined training on the improvement of Japanese EFL learners' prosody. Language Education & Technology, 48, 1–22.出典を開く ↗

16人が8週間、週4回以上・1回10分以上シャドーイングを録音しながら練習。聞き手の評価で分かりやすさと流ちょうさは伸びたが、なまりの強さの評価は変わらなかった。

Foote, J. A., & McDonough, K. (2017). Using shadowing with mobile technology to improve L2 pronunciation. Journal of Second Language Pronunciation, 3(1), 34–56.出典を開く ↗

発音のためのシャドーイングは、音をとらえる力がある程度ついてから行うほうがよく、そうでないと処理の負担が大きすぎると述べている。

Hamada, Y. (2021). Shadowing procedures in teaching and their future. The Language Teacher, 45(6), 32–36.出典を開く ↗

よくある質問

オーバーラッピングと音読は、どちらを先にやればいい?

初めて読む英文なら、音声を聞いてから音読し、次にオーバーラッピングで音声に重ねる順番がおすすめです。お手本の音を先に耳に入れておくと、自己流の読み方が定着しにくくなります。

スマホの読み上げ機能の音声でもいいですか?

強弱や区切りを写す練習には、人が自然に話した音声のほうが向いています。読み上げ音声は、お手本の音声がない英文の確認用と考え、リズムの練習は人の声で行いましょう。