飼い主が探し物に困ると、犬は1〜2歳の子どもと同じように手伝った。猫はほぼ見ているだけ
飼い主が探し物に困っていると、犬は幼い子どもと同じように場所を教えた。猫も見てはいたが、ほとんど手伝わなかった。好物を隠すと猫も犬と変わらなかった。

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- 飼い主が困っていると、犬は1〜2歳の子どもと同じくらい手伝った
- 猫も同じくらい見ていたが、スポンジにさわった猫は1匹もいなかった
- 隠したのが自分の好物なら、犬・猫・子どもにはっきりした差はなかった
人に話すなら
飼い主が探し物をして困ってると、犬は頼まれなくても場所を教えたり持ってきたりするんだって。猫はじっと見てるのに、ほとんど手伝わないらしいよ。猫も自分のおもちゃなら動くのにね。
読む前に予想しよう
飼い主の探し物を、猫は犬と同じくらい手伝う
猫も見てはいたが、場所を教える行動は犬より少なく、スポンジを持ってきた猫はいなかった。
かぎやスマホが見つからなくて、部屋の中をうろうろする。そんなとき、そばにいる犬や猫は、あなたを手伝ってくれるでしょうか。
ハンガリーの大学のチームが、これを家の中で確かめました。飼い主が台所スポンジを探して困った様子を見せると、犬は1〜2歳の子どもとほぼ同じように、場所を教えたり持ってきたりしました。大学の発表によると、犬と子どもの4分の3以上がそうした行動を見せました。猫は、同じくらい飼い主やスポンジの方を見ていたのに、ほとんど手伝いませんでした。
犬も猫も、同じ家で人とくらすペットです。それでも、頼まれずに人を助けるかどうかは、はっきり分かれました。人とくらすだけでは、人のような「手伝い」は生まれないのかもしれません。
01犬・猫・子どもを、同じ「探し物」の場面で比べた
実験したのは、ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学のメリッタ・チェプレギ(Melitta Csepregi)さんたちです。
参加したのは、飼い犬40匹、飼い猫27匹、生後16〜24か月の子ども20人です。犬は、ものを取ってくる訓練を受けていない犬を選びました。家の中で過ごす時間が半分以上あることも条件です。猫は、知らない人をこわがらない猫を選びました。子どもは、まだ文で話せない年齢です。「何を探してるの?」と聞けてしまうと、犬や猫と比べられないからです。
実験は、それぞれの家の部屋で行いました。実験をするのは、いつも同じ1人の女性です。猫は実験にのってくれにくいことが知られています。そこで猫の飼い主には、実験の約3時間前からえさをあげないよう頼みました。
02新品のスポンジを隠し、飼い主が「ないなあ」と探した
隠すものには、新品の台所スポンジを使いました。犬や猫にとって、おもちゃでもごはんでもない、どうでもいいものです。
最初に練習をします。飼い主が後ろを向いている間に、実験者がスポンジを見える場所に置きます。飼い主は「あれ、見つからない!どうしよう?」とくり返しながら探し、見つけたら大喜びします。
本番では、まず飼い主と実験者が、30秒ほど楽しそうにスポンジをさわります。次に飼い主が部屋のすみを向きます。実験者は、犬や猫や子どもと目を合わせてから、スポンジを隠します。そして飼い主が振り返り、困った声を出しながら探します。飼い主は、犬や猫や子どもに直接話しかけません。ただ、目を合わせられるよう、ときどき見ます。30秒たっても教えてもらえなければ、実験者が場所を伝えます。
本番は3回で、だんだんやさしくなります。
- 1回目:手の届かない棚の上に置き、小さな布をかぶせる
- 2回目:手は届かないが、見える場所に置く
- 3回目:床など、見えて届く場所に置く
最後にもう1回、隠すものを好きなおもちゃやおやつに変えて、同じことをしました。「自分のためなら動くのか」を確かめるためです。

03犬は子どもと同じように「教えた」。スポンジにさわった猫は0匹
まず、どれだけ見ていたかです。飼い主やスポンジの方を向いていた時間は、犬・猫・子どもで差がありませんでした。猫も、場面には興味を持っていたのです。
違いは、その後の行動に出ました。研究チームが注目したのは、次のような行動です。
- 近づく:スポンジや、それが置かれた場所に近づく
- 教える:飼い主とスポンジを、2秒以内に交互に見る。子どもは指さしも数えた
- さわる・わたす:スポンジにさわったり、飼い主にわたしたりする
近づく行動は、犬と子どもで差がありませんでした。教える行動は、犬と子どものほうが猫よりずっと多く見せました。3回目には、スポンジを持って飼い主にわたす犬や子どももいました。わたす割合も、犬と子どもで差はありませんでした。犬は、ものを取ってくる訓練を受けていないのにです。
猫は違いました。本番の3回で、スポンジに近づいた猫はいませんでした。スポンジにさわった猫も、1匹もいませんでした。飼い主とスポンジを交互に見る猫はいましたが、犬や子どもよりずっと少なかったのです。
04隠したのが自分の好物なら、猫も犬と変わらなかった
ここで、最後の1回が大事になります。隠したのが自分の好きなおもちゃやおやつのときは、どうだったか。犬・猫・子どもの間で、見ている時間にも、近づく割合にも、教える割合にも、はっきりした差は出ませんでした。
つまり猫は、近づいたり目で知らせたりできないわけではありません。自分の得になるときは、そうした行動をとります。飼い主のスポンジのときにだけ、動かなかったのです。研究チームは、猫は場面を理解したうえで、自分に得があるときだけかかわったのではないか、と考えています。大学の発表は、猫が意地悪なのではなく、理由がなければ見ているほうを選ぶのかもしれない、と書いています。
ただし、この実験には弱いところもあります。好物を隠す回は、いつも最後でした。そのため、猫は場面を理解するのに時間がかかり、最後の回でやっと分かった、という可能性も残ります。また参加した猫は、知らない人をこわがらない猫だけで、芸を覚えている猫もいました。一方、犬は訓練の進んだ犬を外しています。犬と猫を完全に同じ条件でそろえることは、とても難しいのです。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
「犬は知らせるために合図しない」とした2011年の研究
この研究には、反対の結果を出した先行研究があります。ドイツのマックス・プランク研究所のチームが2011年に出した論文です。題名は、犬は人に「求めるため」には合図するが、「知らせるため」には合図しない、という意味です。
今回の研究チームは、結果が違った理由をこう考えています。2011年の実験では、飼い主は紙を切る、ホッチキスでとめるといった作業をしていました。そのため犬には、どの道具が大事なのかが伝わりにくかったのかもしれません。今回は、飼い主と実験者がスポンジを楽しそうにさわってから隠しました。隠すのも1つだけでした。研究チームは、動物の「手伝い」を調べるには、何が問題なのかが動物に分かる場面を作る必要がある、と書いています。
犬と猫は、どこで違ってきたのか
研究チームは、違いの理由を、それぞれの祖先と人とのつき合い方に求めています。犬の祖先は、群れで狩りをするオオカミの仲間です。人とくらす中で、人と協力しやすい性質が選ばれてきたと考えられています。猫の祖先は、1匹でくらす動物でした。人の住まいの近くでネズミをとるうちに、人とゆるやかな関係を結んだと考えられています。人と協力する性質が、特に選ばれてきたわけではありません。
アメリカのアリゾナ大学などのチームは2021年、生後8週の子犬375匹を調べました。子犬は、人の指さしなどの合図を、教わらなくても上手に使いました。指さしについていく力や、人の顔を見る長さのちがいは、40%以上が遺伝で説明できました。犬が人の合図に敏感なのは、生まれつきの部分が大きいようです。
猫が人の合図を使えるかは、実験によって結果が分かれる
同じハンガリーの大学のチームは2023年、犬と猫が人の指さしを使えるかを比べました。研究室では、猫は犬よりずっと選ぶ回数が少なく、回を重ねるとさらに減りました。家ではもう少し参加してくれました。指さしについて正しく選べた割合は、犬のほうが高くなりました。ただ、同じ大学の2005年の研究では、人の指さしで隠したえさを見つける力に、犬と猫で差は出ませんでした。猫の場合は「分からない」のか「やる気がない」のかを見分けるのが、いつも難しいのです。
この実験で分からないこと
犬が「飼い主は場所を知らない」と理解したうえで教えたのかは、この実験では分かりません。研究チームも、犬と子どもの手伝いを示せたとはいえ、その頭の中のしくみまでは分からない、と書いています。飼い主が困っている様子を読み取れば、それだけで手伝いは起きるのかもしれません。
05まとめ
飼い主が台所スポンジを探して困っていると、犬は1〜2歳の子どもと同じように、場所を教えたり持ってきたりしました。猫も同じくらい見ていたのに、スポンジに近づいたり、さわったりした猫は1匹もいませんでした。それでも、自分の好物が隠されたときは、猫も犬や子どもと変わらない行動をしました。
人と同じ家でくらすだけでは、人のような手伝いは生まれないようです。犬が手伝うのは、群れでくらす祖先と、人と協力する方向に選ばれてきた歴史のおかげかもしれません。今度かぎを探すときは、困った声を出しながら、そばの犬や猫の目線を確かめてみてください。
研究カルテ
ハンガリー・ブダペスト
- 研究チーム
- ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学などのチーム(第一著者メリッタ・チェプレギ)
- 調べた場所
- 参加した犬・猫・子どもの、それぞれの家の部屋(研究はハンガリーの大学)
- 調べた動物
- 特別な訓練を受けていない飼い犬40匹と飼い猫27匹。比べる相手に1〜2歳の子ども20人
- 調べ方
- 隠したスポンジを飼い主が困った様子で探す。頼まずに、場所を教えるかを見た
- 分かったこと
- 犬は子どもと同じくらい場所を教えたり持ってきたりした。猫は見ていたが、手伝うことは少なかった
- まだ分からないこと
- 犬が「飼い主は場所を知らない」と分かって助けたのかは、この実験では分からない
- 論文
- Animal Behaviour(2026年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Do pets help us when we cannot find something? Scientists in Hungary tested 40 dogs, 27 cats, and 20 small children.
At home, a scientist hid a kitchen sponge. Then the owner looked for it and said, "Oh no, I can't find it!" Nobody asked the animals or the children for help.
Many dogs looked at the owner and then at the sponge. Some dogs even brought it to the owner. The children did the same things. The cats watched too, but they did not touch the sponge.
Next, the scientist hid the pet's favorite toy or food. This time, the cats acted like the dogs. So cats can do it, but they may only try when it helps them. Dogs may help because their history with people is different.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. What did the scientist hide first?研究者が最初に隠したものは何ですか。
最初に隠したのは、動物にとってどうでもいい台所スポンジでした。
Q2. What did the cats do when the sponge was hidden?スポンジが隠されたとき、猫はどうしましたか。
猫も同じくらい見ていましたが、スポンジにさわった猫はいませんでした。
Q3. When did the cats act like the dogs?猫が犬と同じようにふるまったのは、どんなときですか。
自分の好物が隠されたときは、犬・猫・子どもで差がありませんでした。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Csepregi, M. et al. (2026) Dogs' behaviour is more similar to that of children than to that of cats in a prosocial problem situation. Animal Behaviour 論文確認済みdoi:10.1016/j.anbehav.2026.123488
- 2Eötvös Loránd University(2026)プレスリリースttk.elte.hu/en/node/321166
- 3Kaminski, J. et al. (2011) Dogs, Canis familiaris, communicate with humans to request but not to inform. Animal Behaviour 論文確認済みdoi:10.1016/j.anbehav.2011.06.015
- 4Bray, E. E. et al. (2021) Early-emerging and highly heritable sensitivity to human communication in dogs. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2021.04.055
- 5Miklósi, Á. et al. (2005) A comparative study of the use of visual communicative signals in interactions between dogs (Canis familiaris) and humans and cats (Felis catus) and humans. Journal of Comparative Psychology 論文確認済みdoi:10.1037/0735-7036.119.2.179
- 6Salamon, A. et al. (2023) Dogs outperform cats both in their testability and relying on human pointing gestures: a comparative study. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-023-45008-3
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





