学校での自由読書(SSR)は効果なし?米国の報告書を批判し、長期では有利と反論
Krashen, S. (2001). More Smoke and Mirrors: A Critique of the National Reading Panel Report on Fluency. Phi Delta Kappan, 83(2), 119–123 doi:10.1177/003172170108300208
ひとことで言うと:授業中に好きな本を黙って読む時間(SSR)は、ふつうの授業と同じかそれ以上の効果があり、1年以上続けると特に有利だった。
対象:米国の子ども(幼稚園〜高校)を対象とした、学校での自由読書(SSR)研究の再検討
なぜこの研究?
2000年、米国の全米読書委員会(National Reading Panel)は、「子どもにもっと読ませることが読む力を高めるという明確な証拠はない」とする報告書を出した。授業中に好きな本を黙って読む時間をとる「SSR(持続的黙読)」もその対象だった。この報告は学校現場に大きな影響を与えたため、自由読書の研究を長年まとめてきたKrashenが、報告書の研究の選び方と読み方を批判した。
どうやって調べた?
新しい実験ではなく、報告書の分析を検証した論文である。報告書は、子どもに多く読ませることの効果を調べた研究として14本しか見つけられず、そのうち10本がSSRの研究で、自由読書の群が上回ったのは3本だった。Krashenは、報告書が見落とした研究や、扱い方に問題のある研究を指摘し、読解テストを使ったSSR研究をより広く集めて表にまとめ直した。研究の期間(1年未満か1年以上か)による違いにも注目している。
何がわかった?
Krashenが集め直した研究では、SSRをした子どもは53の比較のうち50で、比較群と同じかそれ以上の成績だった。1年以上続いた研究に限ると、10本中8本でSSRの群が上回り、残り2本は差がなかった。差が出なかった研究にも理由があり、例えば11人のSSR担当教員のうち実際にきちんとSSRを行ったのは5人だけだった研究では、その5人のクラスは有意に伸びていた。また、すでに学年より2年上のレベルで読んでいて読書習慣ができていた生徒を対象にした研究もあった。Krashenは、自由読書の効果は「最悪でも従来の指導と同じで、多くの場合はそれ以上、特に長く続けるほど有利」だと結論づけた。
- 全米読書委員会の報告書は、関連する研究の多くを見落とし、一部の研究を誤って記述していると批判した
- 集め直した研究では、SSRの群は大多数の比較で比較群と同等以上だった
- 1年以上続いた研究では、SSRの群が上回ることが多かった
- SSRがきちんと実施されなかったり、すでに読書習慣のある生徒が対象だったりすると差が出にくい
主な数字
- 報告書が扱った研究:14本(うちSSR研究10本、自由読書の群が上回ったのは3本)
- Krashenの集計:53の比較のうち50でSSRの群が同等以上
- 1年以上の研究:10本中8本でSSRの群が上回り、2本は差なし
読むときの注意(研究の限界)
研究者が自分の立場から先行研究を数え直した論評で、効果量を統計的に統合したメタ分析ではない。どの研究を含めるかの基準によって結論は変わりうる。報告書の委員側からの反論もあり、Krashenはさらに2005年に再反論を書いている。母語の読書の研究が中心である点にも注意。
多読をする人・教える人へ
授業中に好きな本を黙って読む時間は、ほかの指導の時間を削っても損にならず、長く続けるほど効果が見えやすい。ただし、先生が本当に読む時間を守り、本を十分にそろえ、読書を励ますことが前提になる。英語の授業で多読の時間をとるなら、短期間で判断せず1年以上続ける計画を立てたい。自習でも、数週間で効果を判断せず、毎日の読書を長く続けることが大切だ。
今日からできること
- 英語の授業や自習の最初の10分を「好きな本を黙って読む時間」に固定する
- 授業では先生も一緒に本を読み、SSRの時間を他の作業でつぶさない
確認方法:Crossref(書誌)+OpenAlexに収録された本文冒頭部分で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。