実験・1990年

パキスタンでGRを90時間読んだ学習者、表現の流暢さと正確さが向上

Hafiz, F. M., & Tudor, I. (1990). Graded readers as an input medium in L2 learning. System, 18(1), 31–42 doi:10.1016/0346-251x(90)90026-2

Graded Readersライティング

ひとことで言うと:グレーデッド・リーダーを90時間読んだら、英語で表現するときの流暢さと正確さが伸びた。

対象:パキスタンで第二言語として英語を学ぶ学習者25名

なぜこの研究?

著者らは1989年に、英国に住む学習者を対象に多読の効果を報告していた(Hafiz & Tudor, 1989)。では、別の環境(パキスタン)でも、グレーデッド・リーダー(GR:学習者向けに語彙や文法をレベル別に制限した本)を使った多読は言語の力を伸ばすのか。この研究は、パキスタンの英語学習者を対象に、GRをインプット(言語の入力)の手段として使う効果を調べた。

どうやって調べた?

パキスタンで英語を第二言語として学ぶ25名の学習者のグループに、GRを使った合計90時間の多読プログラムを行った。プログラムの前後で、学習者の言語の発達を調べ、英語で表現するときの流暢さ(すらすら表せるか)と正確さ(誤りの少なさ)、そして使われる文の構造の幅(どれだけ多様な構文を使えるか)を比べた。90時間という量は、授業時間に換算すると決して少なくない読書時間である。測定の詳しい方法は本文で確認する必要があるが、抄録では上の3つの観点で結果が報告されている。

何がわかった?

90時間の多読プログラムの後、学習者は表現の流暢さと正確さの両方で有意な伸びを示した。一方で、使う文の構造の幅(構文の多様さ)には有意な伸びは見られなかった。つまり、GRを大量に読むことで、すでに知っている構造をよりすらすら、より正確に使えるようにはなったが、新しく多様な構文を使いこなすところまではこの期間では届かなかった、と読める。英国の学習者での前回の研究と合わせて、GRが第二言語学習のインプットとして役立つことを支える結果である。多読の効果が、流暢さや正確さなどの面によって現れ方が違うことを示した点でも興味深い。

  • GRを使った90時間の多読の後、表現の流暢さが有意に伸びた
  • 表現の正確さ(誤りの少なさ)も有意に伸びた
  • 使う文の構造の幅(構文の多様さ)には有意な伸びがなかった

主な数字

  • 参加者:25名(パキスタン)
  • 多読プログラム:合計90時間

読むときの注意(研究の限界)

参加者は25名と少なく、抄録からは比較のための対照群の有無や詳しい測定方法を確認できない。対照群のない事前・事後の比較だった場合、伸びがすべて多読によるとは言い切れない。表現力をどのような課題(作文など)で測ったかも本文で確認する必要がある。

多読をする人・教える人へ

多読は、すでに学んだ文法や表現を「使える」状態にしていくのに役立つ。一方、新しい構文を使いこなす力は多読だけでは伸びにくい可能性がある。多読で流暢さを育てつつ、新しい文法は授業や参考書で学び、読む中で何度も出会って定着させる、という組み合わせが現実的だ。多読の成果を見るときは、一つの指標だけでなく、いろいろな面の変化を見るとよい。

今日からできること

  • 文法書で学んだ構文が多読の本に出てきたら、その文に印をつけて音読してみる
  • 授業ではGRの読書を続けながら、読んだ本の要約を書かせて表現の変化を記録する

確認方法:Crossref(書誌)+ERICの抄録で確認。数字は論文の抄録・本文で確認できたものだけを載せています。

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