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年賀状の「賀正」「迎春」は目上の人に失礼? 謹賀新年との違い

結論
マナーの定説では、「賀正」「迎春」など1〜2文字の賀詞は目上の人には避けるとされます。短いぶん、敬う気持ちが伝わりにくいからです。上司や取引先には「謹賀新年」「恭賀新年」か、「謹んで新春のお慶びを申し上げます」のような文章の賀詞を選べば安心です。

1なぜ失礼と言われる? カギは「謹」の一文字

年賀状の最初に書く「謹賀新年」「賀正」などを賀詞(がし)と言います。

4文字の賀詞をよく見ると、「謹賀新年」には謹(つつしんで)、「恭賀新年」には恭(うやうやしく)が入っています。辞書『デジタル大辞泉』は謹賀新年を「つつしんで新年の喜びを申し述べること」と説明しています。相手を敬う言葉が、最初から入っているわけです。

一方、「賀正」は「正月を祝う」、「迎春」は「新年を迎える」という意味だけ。敬う言葉がありません。そこでマナーの本では、1〜2文字の賀詞は目上の人から目下の人へ、または親しい間がらで使うものとされ、目上の人には避けるよう教えています。

2でも本当にダメ? 新聞の校閲記者の意見

この定説には、疑問の声もあります。毎日新聞の校閲記者・岩佐義樹さんは、言葉のコラム(2024年1月)でこの問題を取り上げました。

よく言われる理由は「謙譲語がないから」。でも「あけましておめでとうございます」にも謙譲語はないのに、こちらは目上に使ってよいとされます。岩佐さんは、いちばんの理由は「2文字だけでは丁寧さが足りないと思われること」だろう、と書いています。そのうえで、「賀正」の年賀状を受け取って怒る人がどれほどいるのか、手書きのひと言があれば足りない分は補える、宛名の間違いのほうがずっと失礼だ、とも述べています。

つまり、「賀正」は言葉そのものが悪いわけではありません。ただ、気にする人がいるのも事実です。

3迷ったときの選び方:相手別の安全な賀詞

結局どうすればいいか、相手別にまとめます。

・上司・先生・取引先・義理の親など:「謹賀新年」「恭賀新年」、または「謹んで新春のお慶びを申し上げます」「謹んで新年のご祝詞を申し上げます」
・親戚・ふだん仲のよい年上の人:「あけましておめでとうございます」が使いやすい
・友だち・同僚・後輩:「賀正」「迎春」「Happy New Year」など自由に

印刷した年賀状を全員に同じデザインで出すなら、4文字の賀詞か「あけましておめでとうございます」を選んでおけば、どの相手にも失礼になりません。もう「賀正」で刷ってしまったなら、目上の人の分には手書きで「本年もよろしくお願い申し上げます」などとひと言そえると、ていねいさが伝わります。

4目上の人への年賀状、賀詞のあとに何を書く?

賀詞を選んだら、そのあとの文も目上向けに整えると、ぐっとていねいになります。組み立ては「感謝 → お願い → 相手の幸せを祈る」の3つです。

・感謝:「旧年中はひとかたならぬお世話になり、心より御礼申し上げます」
・お願い:「本年も変わらぬご指導のほど、よろしくお願い申し上げます」
・祈る:「皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます」

最後に手書きのひと言をそえると、印刷の年賀状でも気持ちが伝わります。「昨年は〇〇の件で大変お世話になりました」のように、その人とのできごとを一つ書くのがコツです。

賀詞がていねいでも、このひと言がないと事務的に見えます。逆に、毎日新聞の校閲記者が書いているように、心のこもったひと言は賀詞の短さを補ってくれます。

5もう一つの注意:賀詞を重ねない

目上かどうかとは別に、気をつけたいのが賀詞の重ね書きです。

たとえば「謹賀新年」の下に「あけましておめでとうございます」と続けると、同じ意味のあいさつを2回することになります。どちらか一つにして、その下は「旧年中は大変お世話になりました」「本年もよろしくお願い申し上げます」のような言葉につなげると、すっきりします。

ちなみに「恭賀新年」は、夏目漱石の『吾輩は猫である』(1905〜06年)にも「恭賀新年とかいて」と出てきます。辞書『日本国語大辞典』が、この言葉の早い使用例として挙げている場面です。100年以上前から年賀状に書かれてきた言葉です。

❓FAQあわせてよく聞かれる質問

「謹賀新年」は目上の人へのメールに使ってもいい?

使えます。メールなら「謹賀新年」を件名や冒頭に置くか、「あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました」のように文章で書くと自然です。

目下の人に「謹賀新年」を使うのはおかしい?

おかしくありません。ていねいな賀詞はだれに使っても失礼になりません。相手によって使い分けるのが面倒なら、4文字の賀詞にそろえるのがいちばん楽です。

「謹賀新年」と「恭賀新年」はどちらがていねい?

どちらも目上の人に使える、ていねいな賀詞です。意味は「つつしんで」と「うやうやしく」の違いで、どちらを選んでも失礼にはなりません。

「迎春」は会社の年賀状に使える?

取引先あての年賀状には、「謹賀新年」や文章の賀詞を選ぶほうが安心です。社内の同僚や友人あてなら「迎春」でもかまいません。

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